103 善と悪の果実
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[不意を突かれたのは不覚だった。 あの林檎がそいつを狂わせたのなら、それも当然の帰結だったのだろうけれど。
脇腹に刺さった冷たい刃は、普通ならばどう考えても致命傷。 されど、呪いか呪いのせいか。 止まるはずの心臓は止まらぬ。]
テメ……ぇ……
[悪態は弱々しく掠れて、覗きこむ姿には届かない。 視界が失血で霞む。 背格好と髪の色で、あのお巡りだとは知れたが。]
(+0) 2012/09/28(Fri) 09時頃
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[一度では死に切れぬ。 それは二度死ぬ苦痛を否応なく味わうハメになるということ。
コイツが自分を恨んでいることぐらい、知ってはいたが。
深く押し込まれる刃。 傷口抉られる痛みに、カッと両目見開く。 声にならぬ断末魔。]
(+1) 2012/09/28(Fri) 09時半頃
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ふざけン、なッ……!!
[罵声はもう、空気を揺らさぬ。 その声が現世に届くことは、もう無い?]
[否、それは、罪深く思慮浅いエヴァの末裔達へと届く。 黄金の林檎の魔性に堕ちた者たちの元へ届くのは、 それに人生を狂わされてきた数多の亡者たちの声だ。
その実に焦がれ、その実を求めたが故に死んだ、 数多の者たちの呪詛を吸って、 林檎は、空気揺らさぬ音楽を奏でるのだ。]
(+2) 2012/09/28(Fri) 09時半頃
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[思慮浅く、誘惑に堕ちるは、女。 唆され、その実を手に取るは、男。 人が人としての叡智を手に入れた日は、 その手を罪に染めた日だった。
小さなアダムと小さなイヴ。 ただひとつ違ったのは、イヴがアダムから作られたのではなく、 アダムが半分作り物の機械人形だったことか。
繰り返される愚かな罪を、林檎はその金の皮に映し、 罪深き愚かな亡霊たちの啜り泣きを束ねて唄う、唄う。]
(+8) 2012/09/28(Fri) 10時半頃
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…畜生、め。
[腹を押さえて、ヨロリと立ち上がる。 殺したのは、誰だ。
いや、殺される切っ掛けになった、 罪深き果実に手を出したのは誰だ。
こちら側は安らかな世界などでは無い。 自鳴琴は。黄金の林檎は唄い続ける。
あの世からの呪詛を紡いで、音にしたのがその音色。]
(+9) 2012/09/28(Fri) 11時半頃
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[恨みが、魂を染めて怨霊となる直前、 胸元にひとひらの純白の花。]
ケッ、モノ好きな。
[その気紛れに手向けられた花に、魂はほんの少し救済されたなど、信心深くない男には解らぬ。**]
(+10) 2012/09/28(Fri) 13時半頃
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おまえじゃあ、ねぇの?
[責めるように聞こえる声は、果たして幻聴……?]
(+11) 2012/09/28(Fri) 13時半頃
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…そら、お前の両手はこんなに赤い。 赤い、赤いぞ? 何故、赤い?
[林檎は唄う。罪深き欲の虜となった男に聞こえる声で。]
拭おうと洗おうと、罪の色は消えぬ。 ならば手首でも切り落とすか?
[ざわざわざわ。 奪われたものたちと、巻き込まれたものたちと。 無数の呪詛が紡ぐは不協和音。]
(+12) 2012/09/28(Fri) 23時頃
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