25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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― 大広間 ―
[月光が降る舞台にて、 鳥が歌うは月を偲ぶ歌。
雲間の月への道は、朽ちて儚いけれど。 届かぬ月に恋をした、雛鳥の涙歌]
(4) 2010/08/03(Tue) 01時頃
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[歌い終われば、紅石榴が探すは月の佳人の姿。 館の主の傍にその姿を見つければ、 ふわりと花のかんばせを綻ばせる]
さあさ。 鳥の歌をご所望あらば、なんなりとお申しつけを。
――今宵は花祭。
鳥の歌も祭りを彩る花となれば、 これより嬉しき事はございませぬ。
(14) 2010/08/03(Tue) 01時半頃
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[佳人に褒められれば、素直にそのかんばせは笑みを作る。
花主たちの求めるまま、 星に、花に、と。 忍ぶ恋や焦がれる歌を、鳥は囀るだろう。
沢山の歌を囀りつつも。 鳥の双眸を彩る紅石榴は、 なよたけの君だけを其処に映し続けて居た]
(22) 2010/08/03(Tue) 01時半頃
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[なよたけの君からの手招きに、素直に礼を一つ。 羽根の代わりに、長い袖を翻してその傍へと侍れば、 差し出された杯を両手でうやうやしく、受け取った]
鳥は歌うのが仕事。 それにこうして甘露の褒美がもらえるのなら、 幾らでも歌い続けましょう。
(31) 2010/08/03(Tue) 02時頃
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皆で…?
[頂いた甘露に、喉をこくりと小さく鳴らして見上げて]
今まで誰かと合わせた事なんて、なかったけれど。 なよたけの君がそう仰るならば。
[大変美味しゅうございました、と。杯を返上し、 眸を覆う剣を腰に差す花と、笛を持つ花へと紅石榴を一つ送る]
(43) 2010/08/03(Tue) 02時頃
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[今まさに始まらんとする、笛と舞を見て、 鳥は月の傍から二つの花の傍へと、 羽根の代わりの薄衣を翻し、舞台を翔ける]
…………。
[翔けた後、秋と冬を纏う友人へと。 なよたけの君が向ける言葉を背中で聞いて。
僅かに紅石榴を悲しげに揺らした]
(48) 2010/08/03(Tue) 02時頃
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[笛と舞いにあわせて囀るは、 戦へと赴く男を湛える戦歌。
鳥の華奢な声には、やや荷が重いそれも、 笛と舞が重なり、妙なる様を生み出すか]
(65) 2010/08/03(Tue) 02時半頃
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[弦の音が交われば、 尚も高く張り上げる鳥の声。
それは一つの舞曲として、 舞台の上で盲目の花の舞に彩りを添えるだろう]
(81) 2010/08/03(Tue) 02時半頃
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[今までただ一人、囀るだけだったけれど。
こうして誰かと合わせる事も、楽しいのだと。 鳥は初めて知る。
ちらりと紅石榴を、琵琶を弾く佳人へと向けて。 ふわりと幼いかんばせに浮かぶ、花の笑み]
ああ…僕は。 歌と同じく、雲間の月へと――
[歌の合間に呟く声は、 笛と琵琶にかき消されて。誰の耳にも、届かない]
(95) 2010/08/03(Tue) 03時頃
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小僧 カルヴィンは、舞台を翔け、琵琶を弾く佳人の傍へ。月明かりの中、寄り添うように楽しげに囀って。
2010/08/03(Tue) 03時頃
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[全ての音が終わる時。 鳥は疲れ果てたと謂う様に、膝をつく。
それでもそのかんばせは、楽しかったと。 笑みを浮かべた侭]
……これが、合わせると。 謂う事なのですね。
[息が乱れ、とぎれとぎれになりながらも。 満足感に身を浸して呟いた]
(110) 2010/08/03(Tue) 03時半頃
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小僧 カルヴィンは、説法師 法泉が此方へ向かうのに気づけば、佇まいを直して。息を整え、花としての笑みを。そのかんばせへ。
2010/08/03(Tue) 03時半頃
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[舞台の袖で起こっていた事には未だ気付かぬ雛鳥一羽。
いきり立つ同年の若桜に紅石榴を瞬かせながら、 去っていく秋と冬を纏う友人の背を見送る]
……幸得の得手は。
[と、口にしようとして、唇を閉ざす。 彼の事は彼が話さねば意味がないのだろうから]
(123) 2010/08/03(Tue) 03時半頃
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[夜行と名乗る花に、慌てて一礼を返し。 己が名を告げる。
また何時か。 あなたの笛に乗せて歌いたいと、一言付け加えて]
(125) 2010/08/03(Tue) 03時半頃
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[僧衣の男に、一礼を捧げた後]
迦陵頻伽と申します、法泉さま。 歌を得手とする、花にございます。
[向けられた視線を受け止め、ふわりと。 花のかんばせを綻ばせた]
(130) 2010/08/03(Tue) 03時半頃
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[頭を下げる若桜と、 舞台を降りる夜行と。 二人を見送り、紅石榴は再び僧衣の花主へと]
……判りません。 鳥は名の為に歌うものではありませんから。
ただ囀るだけです。 それが法泉さまのお心に届けば幸いと、願うのみ。
(141) 2010/08/03(Tue) 04時頃
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小僧 カルヴィンは、奏者 セシルへと笑みを向ける。それが答えになるだろうか。
2010/08/03(Tue) 04時頃
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法泉さまには、ですか……?
[不思議そうに紅石榴を瞬かせて。 金の髪を揺らしながら首を傾ぐ]
……そうですね。 僕はやはり鳥として囀るだけです。 でも名前を着けて下さった師の恥にはならぬよう、 努々気をつけようと。 法泉さまのお言葉に、思いました。ありがとうございます。
(152) 2010/08/03(Tue) 04時半頃
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それでは鳥はこの辺にて。 ごきげんよう、主様がた……。
[袖を合わせてお二方に一礼した後、座を辞して。 しゃらしゃらと手足の金の輪を鳴らしながら、 舞台を降りる。
鳥は其の侭秋と冬を纏う友人が出ていった方へと、 金の残滓を残して*翔けていった*]
(155) 2010/08/03(Tue) 04時半頃
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― 広間→廊下 ―
[名前を呼びとめられ、友人の元へ向かう足を止める。 振り向けば月と慕うなよたけの君と同じ顔が、そこにはあった]
構いません。 ですが、彼が主様にお逢いするかまでは、 鳥には約束できませんよ。
[幼い顔は何の表情も生まぬまま、そう告げて。 友人の香りを追って、 しゃらりしゃらりと音を響かせてまた翔ける]
(214) 2010/08/03(Tue) 11時半頃
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[子供の身軽さで、人の波を掻きわけていく。 後ろを追う高嶺の主が着いて来ているか、気にも留めずに。 ただ、あの冬の静謐な香りを追い掛けて]
…………すん。
[鼻を一つ鳴らす。 あの鳥の心を静める香りが、 鉄錆のそれと混じり鼻腔を掠めた]
ロビン……。 此処にいるのかい?
[古い紙の匂いに囲まれた部屋の戸を開けて。 彼の部屋を訪れる時と同じように、囀る様に声をかけた]
(215) 2010/08/03(Tue) 11時半頃
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いないものはね、ロビン。 返事などしないものだよ。
[くすりと笑い、その傍へ。 赤く濡れた包帯を見れば、僅かに紅石榴を細め]
さっきまでなかった。 どうしたの……?
(219) 2010/08/03(Tue) 11時半頃
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なにを拗ねているの? 鳥は囀るもの。誰の前であっても、気ままにね。
[細い指先を伸ばし、秋色の髪へ。 彼が払わなければ、そっと一つ。櫛づいて]
眼鏡が。 それで君の冬色の眸は、濡れているんだね。
(223) 2010/08/03(Tue) 12時頃
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うん。初めて歌った歌だからね。 新しい鳥籠? どうだろう。
[緩く首を傾げる。 この身は花として在れど、未だ幼い雛鳥は、 誰かに手折られる事など考えた事もなくて]
濡れているよ。
[声が震えているもの―― 呟き、秋を撫ぜる指を埋めた顔へと滑らせた]
(230) 2010/08/03(Tue) 12時頃
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小僧 カルヴィンは、執事見習い ロビンの頬を、そのまま一つ、撫ぜて。
2010/08/03(Tue) 12時頃
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厭だよ。鳥は君の事、好きなのだもの。
[他意はなく。自然と唇が紡ぐ言葉。 冬色を濡らすその雫を、寄せた唇で拭うか]
君の心は冬の様に孤高で。 なのに秋の憂いを含んでる。
鳥はそんな秋と冬が、
[好きだよ、と続けた]
(233) 2010/08/03(Tue) 12時半頃
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冬ながら 空より浄土を 囀るは 雲のあなたの 春にならんと
[拒む手に、微かに寂しそうな顔をして鳥は身を離す。 ただ、一節だけ。彼のためだけに、その唇は歌を紡いだ]
また、来るよ。 僕は鳥だけど、物好きな鳥らしいから。
秋冬へと迷う事もあるよ。 幸福な王子へと侍り続けた燕のように、ね。
(239) 2010/08/03(Tue) 13時頃
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[しゃらりと、羽音の代わりに金環の音を鳴らして。 鳥は部屋を飛び立つだろう。
戸口で待つ、雲間の月と同じ顔の佳人を見やって]
…………。
[少しだけ悲しげに、紅石榴を揺らした]
(240) 2010/08/03(Tue) 13時頃
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それでも。 あの燕は、世界で一番幸福な燕だったんだよ。
[部屋を出る前に投げられた言葉に、秋と冬を纏う友人へとそう笑んだ。
佳人の指先が、金の髪を撫ぜれば。 驚いた様に一寸見上げ。
ぺこりと、言葉なく礼を一つ捧げて、 何処かへと翔けていく]
(245) 2010/08/03(Tue) 13時頃
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― 庭園 ―
[足が赴くままに、辿り着いたのは…… 先程までなよたけの君と共に在った月下の庭。
朱塗りの欄干の上で羽根を休めて、 真円になり切れぬ月を見上げる]
秋の夜の 月の光はきよけれど 人の心の 隈は照らさず
[囀る歌は誰へと向けたものか。 鳥自身にも判らぬまま、紡ぐ歌]
(250) 2010/08/03(Tue) 13時半頃
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[だけど―――]
――――……っ。
[僧衣の花主と、なよたけの君が寄り添うように歩むのを、 その紅石榴が捉えれば。 ぽろぽろと、その双眸から落ちる雨]
(251) 2010/08/03(Tue) 13時半頃
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小僧 カルヴィンは、説法師 法泉の隣に寄り添うなよたけの君をじっと見て。
2010/08/03(Tue) 13時半頃
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どうして……僕は。 悲しいと思うのだろう……?
[降るままにさせた雨は、頬を伝い、薄衣へと染みていく]
僕は鳥なのに。 どうして――――…?
[自分でも判らぬ初めての感情に、僅かに身体を震わせて。 眸を反らす事も出来ずに、 紅石榴を幾重にも、*濡らし続けた*]
(256) 2010/08/03(Tue) 13時半頃
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小僧 カルヴィンは、執事見習い ロビンの声が聴こえた様な気がしたけれど、今は己が心に戸惑ったまま。
2010/08/03(Tue) 14時頃
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― 庭園 ―
[止まぬ雨はないと謂うけれど、 未だはらはらと。紅石榴を濡らす涙雨。
朱塗りの欄干の外に身を乗り出し、 鯉跳ねる池へ映る月に、想いを寄せる]
嗚呼…あの方が。 僕を鳥から人へと変える。
[水に浮かぶ月を見詰めて呟くは、 雛鳥にしては悩ましく辺りに響くだろうか]
(431) 2010/08/04(Wed) 01時半頃
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[鳥には触れる事が叶わぬ月へと、その指先を伸ばせば。 バランスを崩したのか乗り出した欄干から、]
(落ちる――…っ)
[そう思った時には、大きな水音を立てて。 涙雨すら隠す水の中]
(436) 2010/08/04(Wed) 02時頃
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