162 絶望と後悔と懺悔と
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[焦げ臭い、匂いがした。 誰かがシチューの鍋を焦がしたなんて匂いじゃない。 違う。 これは。]
……火事?なんで?
[火の扱いは気をつけている。 孤児院が出火元なんてなったら、余計苛められる。 それ以上に、住む場所がなくなる。
だからこそ、いつでも火の始末は気をつけていた。 なのに。なのにどうして、火事が。]
(19) 2014/02/08(Sat) 00時半頃
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[頭を振る。 今はそんなことを考えている場合ではない。 此処にいてはいけない。]
逃げる、ぞ。 大丈夫だから、な。僕が一緒にいるから。
[手を繋いで、背中にもしがみつかせて、孤児院から逃げ出そうとして。]
リッキィ!どこ行くんだ、待て、 そっちは、
[離れていくリカルダ>>0:467を追いかけられずに、ただ、その背を見るだけで。
見るだけしか、できなかった。]
(21) 2014/02/08(Sat) 00時半頃
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[リカルダを追いかけられずにいて。 しかし、手に両手で縋りついて来る子らのことを思えば、ぎゅっと握り返して、逃げ出した。
煙の匂いと、鉄が錆びたような匂い。 それが、血の匂いだと気付いたのは、炎と違う赤が目に入ったから。
離さないように、手を握って逃げて。 助けを求めようとして、走って。
意識は、そこで途切れた。*]
(97) 2014/02/08(Sat) 02時半頃
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[意識を取り戻すまで、夢をみていた。 それが、どれ位の間だったのかは分からない。
長かったのか、短かったのか。 ただただ、昔の夢をみていた。**]
(98) 2014/02/08(Sat) 03時半頃
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― 夢 ― [みていたのは、孤児院で過ごした何気ない日々の夢。
涼平と遊んでいて、うっかり壁に小さな穴をあけてしまったこと。 素直に謝れば良いのに、慌てて何とかしようとして。余計に穴を広げてしまった。 結局「おかあさん」に叱られた。
それから。 明之進と初めて二人でおつかいに行った時のこと。 迷子になって、皆に心配をかけてしまった。 自分が道を間違えたのに、明之進がぼーっとしてたからだと文句を言ってしまった。 あれは、あとでちゃんと謝ったっけ?
思い出そうとして、意識が戻った。]
(118) 2014/02/08(Sat) 15時半頃
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[目を開けて、まずそこが何処なのか分からなかった。 白い天井、白いシーツ。 孤児院で使っていた布団よりも、良い手触り。
何があったか思い出し、身体を起こせば止められた。 そして助かった者たちの名と、生死が不明の者たちの名を聞いた。
他に何か聞いたかもしれない。でも、聞こえなかった。 目の前が真っ暗になって、指先が冷たくなっていく感覚だけが妙に現実だった。]
(119) 2014/02/08(Sat) 15時半頃
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[暫くして。 動けるようになってから、一度だけ孤児院に行った。 全焼した孤児院は、まだそのままだった。 焼け残った壁と、そこに残る血の跡。
部屋を一つずつ覗く。 行方が分からなくなった彼らはいないだろうと思いながらも、いて欲しいと思って。
入った部屋で、何か蹴飛ばした。 少し焦げていたが、燃えずに残った鶯笛。 そこがどの部屋か分かれば、それが零瑠と交換したもの>>44だと気付く。 それを拾えば俯いて、涙が零れそうになるのを堪えた。
鶯笛はそっとポケットに入れた。 作って渡そうと思った、ガラスの欠片もそこに入ったままだった。]
(120) 2014/02/08(Sat) 15時半頃
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― 帝都・守護部隊隊員養成所 ― [同室者の起きた気配で、目を覚ます。
何度となくみた、夢。 あの日の夢。
行方不明の者の中に、リカルダの名があると知って。 あの時、止めていれば。追いかけていれば。 リカルダは。
リカルダだけじゃない。 他にも一緒に逃げることができていたら。
身体を起こして、じっと手を見つめる。]
……僕の手は、
[あまりにも小さい。**]
(122) 2014/02/08(Sat) 15時半頃
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[白い天井の病室で、安吾と話した時か。 助けられなかった自分が、許せなくて唇を噛み締めながら呟いた。]
僕は、年上なのに。 男なのに。
[大人で、しかも訓練を受けた隊員たちもやられた。 だから仕方がないと言われた。
でも、そんなことはどうでも良かった。 伸ばした手が届く範囲は、とても狭くて。]
(205) 2014/02/08(Sat) 21時半頃
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[大きくなったら。 強くなったら、手が届く範囲は広がるだろうか。
助けられなかった彼らも、助けることができるだろうか。 行方が分からないなら、死んではいない。 死んでは、いないのだ。そう信じて。
死んでいなければ。もう一度会って、手を伸ばして。
また、一緒に暮らしたい。]
(208) 2014/02/08(Sat) 21時半頃
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[一番古い記憶は、孤児院に連れて来られた時のもの。 だから、孤児院が自分の家で。 皆は家族だ。
家族と言う物を知らないと、陰口を叩かれたこともあった。 確かに、血の繋がりはない。 でも、自分にとっては家族だった。
大事な家と、家族を取り戻したい。 そう願う。]
(214) 2014/02/08(Sat) 22時頃
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でも、僕は……。
[安吾>>215へと言いかけ、しかしそれ以上言葉が続けられなかった。 慰めてくれているのは分かる。 でも、理解はできても納得できないのだ。 欲しいのは、慰めではなくて。]
……うん。 ありがとう、安吾。 僕は、
[その言葉>>216に、ぎゅ、と拳を握る。 どうするかは告げなかったが、決意は伝わっただろうと。 掴めなかったと後悔はしたくない。 今からでも、また取り戻せると思いたい。
冷たかったはずの指先は、体温を取り戻していた。]
(220) 2014/02/08(Sat) 22時半頃
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[保護されてから、数日が経った。 大して怪我をしていなかった身体。すぐに病室から移動した。
安吾と一緒に孤児院へと行って>>218。 壊れた「家」に、思いをさらに強くした。
ガラスの破片。工作して作った、根付のような飾り物。 持って帰った鶯笛と一緒に、大事にしまってある。]
(229) 2014/02/08(Sat) 23時頃
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[養成所で過ごすようになってから、隊員に名前の由来を聞かれた。
キャロライナという名前が、女の名前だと知ったのは直円が読んでいた異国の本に書かれていたのだったか。 きっかけはよく覚えていない。
ただ、からかわれると、陰謀だ!と直円の口癖を真似して言って騒いだこともある。 その言葉の意味さえよく分かっていなかったけれど。
だから。 隊員の誰かに確認のように聞かれた時も。 陰謀です。 と一言だけ返した。]
(230) 2014/02/08(Sat) 23時頃
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[強くなりたいと。 伸ばした手が、届くように強くなりたいと。
そう願うだけでは強くなれない。 怪我は殆どしていない。 だからこそ余計に焦って。早く強くなりたくて。
気持ちだけが急いてしまっていた。]
(262) 2014/02/09(Sun) 01時半頃
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[周たちのように、「外」で喧嘩していたわけではない。 本気で殴り合いをしたことも殆どなかった。
喧嘩をしても、所詮子ども同士。 手が出てしまうこともあったが、怪我をさせたことも稀だった。 喧嘩をするよりも、一緒に遊ぶことの方が楽しくて。
ぼんやりと見ているだけだった明之進>>195が、一緒に遊ぶようになった時は嬉しかったのを覚えている。 それが、一緒に買い物に行った時のことがきっかけになっていたとは、覚えていなかったけれど。 皆と一緒に過ごして、遊んで、眠るのが。 どんなに幸せなことだったか、今ではよく分かる。]
(268) 2014/02/09(Sun) 02時頃
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[基礎のきの字も知らない為、訓練は基本から教わった。 基本的な身のこなし方、それから身の守り方。
誰かが守ってくれていた、子どもではなくなった。 自分の身は自分が守る。 そんな簡単なことができなくて、誰のことを守れるというのだろう。 そう自分に言い聞かせて。 伸ばす手の届く範囲が少しでも広くなるようにと、訓練を続けていた。]
(284) 2014/02/09(Sun) 02時半頃
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[「聖水銀」の話は、いつ聞いたのだったか。 怖いとは思わなかった。 それが必要ならば、拒否するはずもない。
早く、早くと思い、与えられた量よりも多く飲もうとしたこともある。 それを実行する前に止められたが。
分かっていても、気持ちばかりが焦っていた。]
(287) 2014/02/09(Sun) 02時半頃
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なあ、周。 組み手の相手、してくれないか?
[ある日、訓練が終わった後に周へと頼んだ。 彼が裏庭の片隅で独り稽古をしている>>256と知ったからだ。
武器を持っての訓練はまだ拙い。 技術的にもまだまだではあるが、少しでも強くなりたかった。 技術のない者の自主練よりも、誰かと組んだ方がずっと良い。 そう思って頼んだが、周にとっては迷惑だったろうか。]
(295) 2014/02/09(Sun) 03時頃
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― 試練 ― [それは、突然だった。
いつものように、与えられた「聖水銀」を飲んだ。 その時は何も変わらなかったと思う。
部屋に戻り、寝台へと潜り込んだ。 訓練で疲れた身体。 直ぐに眠りが訪れると思っていた。 いつものように。]
(308) 2014/02/09(Sun) 04時頃
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う゛あぁぁああぁ……ッ
[呻く声が、部屋に響いた。 同室のサミュエルは其処に居ただろうか。
彼は既に試練を経験していたか。 もし経験していたなら、何が起きているか直ぐに分かっただろうし、経験していなくとも察することはできたかもしれない。
全身の血が焼けるように熱く、内側から焼かれるような感覚。 息をするのがやっとで、縋るようにシーツを掴む。]
サ、ミュ、
[助けを求めるように、同室者の名を呼ぶ。]
(309) 2014/02/09(Sun) 04時頃
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[熱い。熱い。熱い。 焼けるような痛みに、気が狂いそうになって。
それでも。]
僕、は、
[こんなところで死ぬわけにはいかない。]
(310) 2014/02/09(Sun) 04時頃
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[人参を押し付けあっていたあの日を思い出す。
何故か人参に親近感があるのだと。 人参が苦手だった零瑠には、こっそり言ったことを彼は覚えているだろうか。
結局食べていなかったリカルダにも、それを教えていたら食べてくれていただろうか。
一緒におつかいに行って以来、一緒に遊ぶようになった明之進。 また一緒におつかいに行こうと約束していた。今度は迷わないようにと思っていたんだっけ。
そうだ、直円に「陰謀」とはどういう意味なのかまだ聞いていない。]
(311) 2014/02/09(Sun) 04時頃
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[まだ理依から、あの手品のような技を教わっていない。 怪我をした時手当てしてくれたマユミに、今度お礼をすると言っただけだった。
他にも、まだある。 死にたくない。負けたくない。]
僕は……俺は。
[強く、なりたい。
うわ言のように呻いて。
試練に打ち勝った時。 手にすることになった武器は、長巻。**]
(312) 2014/02/09(Sun) 04時頃
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― 試練 ― [苦痛に悶えてそれでも打ち勝てたのは、負けたくないという思いと、何よりサミュエルの声が聞こえていたから>>319。 その時は意識になかったが、抱き締めてくれている間>>320の言葉は、確実に支えになっていた。 無意識に暴れてその爪がサミュエルの頬を傷つけてしまった。 呻き声が漏れ、堪えるために何処かしら噛んでしまったことも、その時は気付かなくて。
先に経験していたとはいえ、サミュエルがそうしてくれたことを知って感謝した。 彼が傍にいなければ、あの長い夜は終えられたかは分からない。**]
(327) 2014/02/09(Sun) 10時半頃
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