261 甘き死よ、来たれ
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-夕刻・南シェルター→???-
[ズキズキ、と体が軋む感覚を覚える。 肌の表面は焼き付くようなチリチリとした感覚を伝えていた。 道化のメイクで隠していた火傷のような傷が生きているかのように痛みを発している。]
おぉお……うぉおあ……っ!
[全身を焼いた鉄針で刺されているかのような拷問じみた痛覚。 それに加え、内部はブリキでできているかのように動くたびに軋みを上げる。 ネイサンと名乗っていた伊座 寧々子は獣のような呻き声を漏らしていた。 それでも、彼女は髪を振り乱し、どこかへと必死に走る。]
はあっ…!はあっ…!うぁあっ……!
[剥がれ落ちた皮膚が粘土のようになって地面に落ちても、血糊が点々と後に続こうとも、彼女が走れる限り、どこまでも。]
(21) 2016/12/19(Mon) 23時頃
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[―――そうして彼女は辿りつく。桜の大樹に。]
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(22) 2016/12/19(Mon) 23時頃
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―夜・桜の大樹―
あぁあーー……うあぁ……!
[もう歯も零れ落ち、髪も千切れ落ちた。 骸骨が溶けた肉を纏っているだけの状態で、彼女の眼球はそれでもひと際大きい桜の木を見上げていた。 生きるもの全てが徐々に死に絶えている世界で、この桜だけが爛漫と花を咲かせている。 近くに毒の噴き出す地形にあっても、延々消えない火の海が燃え盛る場所の近くにあっても。 この桜だけは、まるで死んだ人の魂を啜っているかのように、威風堂々と在り続けた。]
(29) 2016/12/20(Tue) 00時頃
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(―――これが、最期に見たかった……!)
[こんな綺麗な桜なのに。 世界が死に染まっていく中で、見る者も居ない世界で、 美しくも凛と咲くその花の無為さ。 この桜に見せる、最初で最後のお仕舞いの芸。]
ホ、ホホホ……!
[桜よりも鮮やかな、血を噴かせ肉を溶かす、 肉の塊が消える姿。]
[もう表情筋を動かすだけで血しぶきが舞うこの肉袋が、 数刻もしないうちに死に絶える道化が最期に考えたのは。]
(30) 2016/12/20(Tue) 00時頃
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[この景色こそ自分の救い。 痛みも醜悪さも全て自分への罰。 この終焉こそが、道化の己に相応しい。]
(31) 2016/12/20(Tue) 00時頃
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[溶けていく。 骨も皮も肉も臓も、細胞から崩壊しているかのように。 ゼリー状に、粘土状に、溶岩のように、ペースト状に。]
(32) 2016/12/20(Tue) 00時頃
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[最後には、泥に咲くしゃれこうべだけが残った。**]
(33) 2016/12/20(Tue) 00時頃
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