75 サプリカント王国の双子
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―自室―
不安、ですか…。
[一人になってから、思い返す。 >>4:91シメオンの言葉から滲んだ感情。 ディーンに会うことで、何かが、崩れてしまうかもしれない。 それでも、この会話を断って部屋へ閉じこもっても、何も解決しないと思ったことも事実だったから。
大丈夫ですよ、と答えたのに、嘘はない。 嘘でないようにしようと思いながらの答えだった。
自分を第一にと心配して駆けつけてくれる彼を、本当にありがたく思う。 それが当たり前だと思わぬようと心がけてはいるが、わざわざ考えずとも、嬉しい気持ちで胸がいっぱいになっていった。]
(0) 2012/01/16(Mon) 17時頃
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[ため息を落とす。 不安も、動揺も、気を抜けば爆発してしまうかもしれない。 形ばかりはまともに保っているのは、これまで築いてきたものと、大事な人々が支えになっているからだろう。
ちらりと時計を見れば、そろそろ取り決めた時間だろうか。 過去の"友人"と会うために部屋を出ようとする頃、シメオンはいたろうか。 いなくとも、代わりに護衛も兼ねた使用人は近くにいるだろうが。]
(1) 2012/01/16(Mon) 17時頃
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シメオンは、まだ仕事中ですか…
[扉を開いて早々、少し残念そうな顔を見て取った使用人は、彼でなくてすみませんねと苦笑した。 内心の苦い舌打ちを隠した苦笑はしかし、"宰相となるべき王女"の目を誤魔化せはしない。 シメオンの出自をよく思わない者があることは知っていたが、そういう者が自分の警護に当たるというのは。指揮系統も混乱しているらしい。
冷ややかな目で見てやれば、使用人も背を正す。 自分が誰からも認められる宰相になれば、こんなこともなくなるのだろうか。]
[自分がいなければ、彼はそんな目で見られながら働く必要がなくなるのだろうか。]
[馬鹿な考えを振り払うように頭を振る。 伝えた時間より早めに到着した客室で、ゆっくりと客人を待った。]
(14) 2012/01/16(Mon) 21時頃
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―客室―
エゼルレッドさん… お待ちしておりました。 おかけくださいな。
[金髪の客人を迎えればソファを指し示し、自分も向かい側に座る。 緊張を表に出さぬよう、微笑んで]
それで。お話とは?
[近くには、それなりに長く仕えてはいるが、当然過去のことなどしらぬ使用人の姿。 客人とはいえ容疑者との対話は、警戒に値する。 ディーンが女王や庭師を殺害するとも思いづらい今、過去のことが話題になるなら、その使用人は邪魔でしか無いのだが。]
(15) 2012/01/16(Mon) 21時半頃
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[>>22彼はまた、緊張してしまっているだろうか。 はい、と続きを促して。]
…… 素敵なこと、だと思います。
[唐突な質問に、瞬き数度。 言われて、意図を探るように記憶を掘り起こし。 そうして、幼い約束のようなものを思い出した。 「ありがとう 楽しみにしてるわ」なんて、よくわからないままに答えた、ような、曖昧な記憶。
過去の思い出から、揺さぶろうというのか。 バレないよう、と気を張りながら、バレてなにが悪いのだと囁く声。 微笑は感情を濁す。]
姉様に贈り物でしたら、…そうですね。 ペリドットは、ネックレスをお持ちでしたけど、合わせた指輪はお持ちではなかったと思いますが…
(26) 2012/01/16(Mon) 23時半頃
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[>>27うろたえるさまを見れば、やはり目的は姉へのことではないとわかる。 険しい表情から押し出された次の問は予想外で]
…… そうです、が。 童話ですか…?
[「王女は、王都生まれの王都育ち」設定通りの答えを返して、]
…… 訪れた鳥が、林檎を咥えて、海へ連れて行ってくれましたね。 その林檎の種が流されて、川べりに樹を生やして… 海を知らない林檎たちに、海を話してあげるんでしたか。
[思い出しながら、ぽつぽつと語る。 王女となってからは、聞く機会もなかったお話。 懐かしさに目を細めながら。]
…… もう、暫く聞いていませんね。 この話が、なにか?
(31) 2012/01/17(Tue) 00時頃
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[>>34気づくことはできなかった。 王都へ来た頃にはもうすぐ10になる頃だったし、覚えねばならないことが山積していたため、童話などに触れる暇はなかった。 だから、童話だけで彼が納得したふうだったのが、理解できなかった。]
…… なに、が ……?
[>>35続いたのは、何かの確信を得たかのような言葉で。 応援するような。励ますような。 このやりとりだけでは、傍の使用人は理解できまい。 問い詰めるにしても、それは自分がミラだと認めるということで。
バレた。 思った瞬間、どっと肩の荷が降りたような心地になった。 これで、「終われる」と。 けれど、この言い回しは…彼は、告発する気はないということか。
暖かい言葉を、呆然と見つめていた。 しかし途中、>>36廊下からの騒がしい音にはっとして]
(50) 2012/01/17(Tue) 08時半頃
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シメオン…… !?
[騒ぎの中に、彼の名を聞いてしまえば、貼りつけただけの冷静さなどどこかへ吹き飛んでしまい]
いかなきゃ… ディーン、すみません!
[あの頃のように、名で呼んでしまったのは、ミス。 ごめん、でなくすみません、と言えたのは、王家での教育の結果。 結局どちらにもなれずにいた女は、王女としての責務も、楽になってしまいたいという甘えも忘れ、部屋を飛び出した。 心配、だけが胸を満たして。]
…… ありがとう、
[横を通り過ぎる際の囁き声は、彼に届いただろうか。
使用人は慌てて、"王女"の後を追った。 途中、ディーンに向けて「王女に何をした」と言わんばかりに鋭い眼差しをむけてから。]
(51) 2012/01/17(Tue) 09時頃
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あなた!シメオンが、ハンスが、どうしたんですか!
[廊下にでてすぐ、ばたばたとどこかへ走って行こうとする使用人をとっつかまえ、話をさせる。 詳しいことは知らぬらしい彼でも、「ハンスが重傷を」「シメオンがそこに」ということだけはなんとか話した。]
ハンスの部屋、ですね。 ありがとう、
[いうが早いが、そちらへ向けて駆け出す。 話を聞いている間、追うものがあれば追いつかれたろうか。
けれどそちらへ気を向ける余裕はなく、「お一人では危険です」という声を尻目に、シメオンの姿を探した。**]
(52) 2012/01/17(Tue) 09時頃
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―ハンスの自室―
[見張りや、調査する人々。止める声。 辿り着いた時は、ちょうど担架に乗せられた男が搬出されるところだった。
被せられた布。おびただしいほどの紅。 咄嗟に壁際に身を寄せた横を、失礼しますと焦った様子の人々が通りすぎてゆく。 目の前、真っ赤な手指が、通りすぎていった。]
ハンス……!
[思わず漏れた声に、反応は見えなかった。 足が震える。いよいよと身近に迫った危険に、倒れそうなのを、気力で支えた。 まだ、止まるわけにはいかない。]
(83) 2012/01/17(Tue) 23時半頃
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あなた… 今の状況、わかるだけ説明をお願いします。 シメオンがどうしているか、知りませんか。
[近い使用人へ、肩を掴みそうな手を押さえ、尋ねれば]
『私達も、これから探すところです。 彼はブローリンの第一発見者で 彼も、容疑者ですから。 今、容疑者たちの情報の統合を急いでおりますが…彼は、危険です。 ミッシェル様も、お気をつけ下さいませ。 お一人で、彼に不用意に近づかぬよう…。』
え…… 何を、いってるの……
[淡々と、噛み締めるように話す使用人。 理解が及ばない。問い返す。 けれど、何度でも彼は同じ事しか口にしない。]
きちんと、調べたの? シメオンが、そんな、
[何度言っても、何を言っても。]
(88) 2012/01/17(Tue) 23時半頃
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―――― もう、結構です!! 私が、直接聞いてきます!!
[終いには、癇癪を起こす子どものように、叫んだ。 目の裏が真っ赤になるような、怒りなのか、憤慨の気持ち。 彼が、ハンスを襲った? もしかしたら、ベネットやメアリーや、 グロリアも?
―――そんなばかな。]
……っ!!
[お待ちください、と叫ぶ声を置き去りに、また走る。 身を翻した大きな動きで、髪飾りにあしらわれた生花が、ひらりと花びらを散らした。]
(89) 2012/01/18(Wed) 00時頃
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[王女を彩った花が散り、飾りが崩れるのも構わず、走る。 ヒールでの動きは慣れたとはいえ、駆けるのには向いていない。 動きにくいと判断すれば、脱ぎさってでも走った。
自室も、彼の部屋も、姿はなかった。 すぐには見つからない場所。 どこに。
そうして、ふと見下ろした庭へ見えた、
ふたつの金のかげ。 ]
[気づけば、動くのは早かった。 窓を開け放ち、雨が降り込むのも構わず、叫ぶ。]
(93) 2012/01/18(Wed) 00時頃
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すぐにいきます!!そこで待ってなさい!!
[名を呼ばないのは、使用人たちや警察に先に捕らえられるのを防ぐため。 とはいえ、これだけ叫べばそれも時間の問題かもしれないが、彼が、彼らが動かなければ、それで十分だった。
身を翻し、近い階段の手すりを滑り降りるように。 一階の窓から、庭へ飛び出した。]
(94) 2012/01/18(Wed) 00時頃
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[王女になってから、こんな乱暴をしたのは初めてだった。 ためらいもなく動けたのは、昔の日々のおかげだろう。
雨の中、傘もささず。 ドレスや髪飾りは崩れ、靴さえ脱いで。
間に合えば、それでよかった。 話せれば、それでよかった。
荒い呼吸、整えるまもなくても。]
(98) 2012/01/18(Wed) 00時頃
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は… 止めるなら…そばにいてくれなくては、ね。
[>>97叫び声は耳に入っていた。 ゆっくり歩み寄りながら、ディーンへは泣き笑いのような笑顔を向けて]
エゼルレッドさん…いまの、ご覧に、なりました? …最初のおねがい、です。いまのは、忘れてください。
[おてんばどころでない、乱暴な動き。 秘密ねと、庭の果実をもいだあの頃のように、人差し指をたてた。]
(99) 2012/01/18(Wed) 00時半頃
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ねえ、シメオン。
…… どうして、部屋へ戻らなかったの。 どうして、傘もささずにこんなところで… 濡れているの。
[淡緑を細めて。 まっすぐに立って。 震えそうな声を抑えこんで。]
……ごちゃごちゃと、いろんな情報があって、混乱してるの。 端的に、聞くわ。
あなたが、犯人なの?
[そらさず。]
(104) 2012/01/18(Wed) 00時半頃
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[私は目を逸らさない。
あなたも、逃げないで。]
(*2) 2012/01/18(Wed) 00時半頃
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[>>106名を呼ぶ、"幼なじみ"。 その言葉に、否定も肯定もしないことが、遠まわしの肯定。
あの頃は、彼にもっと気概をと思っていた。 告げ口などしなかった彼にはもう、彼なりの気骨があったというのに気づいたのは、もう何も伝えられない頃になってからだった。 今はもう言えない、ごめんねとありがとうをたくさん、胸に仕舞って。
こんな大きな秘密を抱え込むのは、苦しい。 誰にでも預けられるものではないのだ。 世話役一人と分け合えたら、それだけで十分だから。]
(109) 2012/01/18(Wed) 01時頃
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[己のためだと、違和感を得るほどにきちんとした笑みのままに、彼は告げる。 この笑みで、彼はどれほどの物を覆い隠してきたのだろう。 洗い流されたいものがあるとラルフに告げたのは、ほんの数時間前なのに、相当昔のことに思えた。
みっつめの答えに、ぐっと眦に力をいれて]
(112) 2012/01/18(Wed) 01時頃
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あなたが、私に、胸を張って言えるというのなら、信じます。
[断言した。 己を預ける世話役を信じられなくて、どうするのだ。 彼のすべてを信じる覚悟がなければ、世話役としてそばに置き続けることなどできないのだから。]
シメオン。 あなたの言葉で、聞きたいのです。
[曖昧な言葉などでは、終わらせない。]
(113) 2012/01/18(Wed) 01時頃
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っ ―――――
[息を飲んだ。 ある意味、覚悟していた通りの言葉だった。 唇を噛む。ぷつりと血が滲むそれをそのままに。 様々な、彼を庇うような言い訳が頭をめぐり、すべてを即座に否定。
信じると、言ったではないか。]
どう、して ……っ
[背後の建物から、人の声が聴こえる。 ざわざわとしたそれは、近づいているはずなのに遠く聴こえる。]
(118) 2012/01/18(Wed) 01時半頃
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[雨に紛れて、涙がぽろり。 己も気づかぬ雫がこぼれた。]
(*3) 2012/01/18(Wed) 01時半頃
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…… そう。 それで… あなたは、満足、したのですか。
[彼が望んだのは、なんだったのだろう。 彼が認めた以上、止めることもできない。 彼は逮捕されるだろう。死罪になるだろうか。 法はどうなっていたっけ。
雨で体は冷えていくのに、頭はいっこうに冷えなくて。]
あなたは、警察に捕まるでしょう。 法に裁かれ、罪を償うことになります。
女王、及び複数名の殺害… ………… それと、虚偽の、罪。
[感情を抑えようとして、失敗する。 くしゃりと顔を歪め、ひくり、喉が鳴る。]
(124) 2012/01/18(Wed) 01時半頃
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無事、に……はいって、言ったじゃないですか……!
[わがままの塊。無茶な命令とわかっていたけれど。 無事でいろという命に、彼は頷いたのに。 罪と言えないほどの偽りを、なじる言葉が出て。
ああ、彼が遠くへいってしまう。 女王殺しと王女は、決して近くにはいられない。
気を張っていた足ががくりと震え、雨にぬかるんだ土に座り込む。 別れの足音が、すぐそばまで迫っていた。**]
(125) 2012/01/18(Wed) 02時頃
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