262 【突発誰歓RP】聖夜におうちに帰れない村
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ー ある日のこと ー
[その日はひどく緊張しながら私は膝の上で手を握りしめていた。これから人生の伴侶となる女性に初めて顔を合わせるのだということも去ることながら、普段着とは違う門付袴など窮屈なものに押し込められて私は何度も座布団の上で身動ぎをする。
『こら、しゃんとしなぁ』
これもまためかしこんだお袋にきつく叱られ私は更に貝のように縮こまった。茶の1杯でも欲しいところだが、強請ればまた叱責が飛んでくる気がして。]
(22) 2016/12/21(Wed) 21時頃
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[何度目かになる身動ぎの後……もう少しで石にでも転じてしまいそうなほど長い間待ったような気がしたけれど、そっと音もなく障子が開けられて。
はっと顔を上げれば、まず私の目に飛び込んできたのは料亭の庭園に設えられた石の灯篭に雪がうっすら積もっているところだった。 出てくる時にはちらつく程度だった雪も、しんしんと音もなく降り積もりすっかり外は真っ白だった。
その銀世界より眩しい、胡粉を塗った人形みたいなまっさらな指先がきちんと揃えられ……その指先に被さるように絹糸のような髪が垂れて……。
『マツと申します。』
鈴を転がすような声に、私は心の奥がぎゅうっと締め付けられる。 そしてその顔があげられた時……私は]
(23) 2016/12/21(Wed) 21時頃
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[きっと私はあの時、世界一の幸せ者だったに違いない。]*
(24) 2016/12/21(Wed) 21時頃
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ー 現在 ー
[ふらふらと当てどなく歩いてきた。片手に持った缶はいつの間にか空になっていた。いつから持っていたのか、中に何が入っていたかは相変わらず判然としない。
人気のない住宅街を歩いている。 ぽつぽつと思い出したように点滅する街灯が照らす地面はうっすらと白い。誰も踏みしめたあとのない雪を踏む度ぎゅっぎゅっと音がする。
雪を見ると、何かを思い出しそうな気がする。 寒いのは嫌いなのだけれど、あの瞬間はとても幸せだった。
ずっと一緒にいるものだと思っていた。 今が幸せなまま変わらないと思っていた。 誰だってその手で幸せを掴んだのなら疑わない。 その幸せはずっと握りしめていさえすれば失われることはないのだと。
そう、傲慢にも、誰かの生命でさえそうだと思ってしまうことさえあるのだ、人間というものは。]
(28) 2016/12/21(Wed) 21時半頃
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…………ぁ。
[誰かに呼びかけようとして……儂は言葉をまた見失う。 なんと呼べば答えてくれるのだろう。 ……その人はここにいるのだろうか。
分かっているつもりだった。 それを失う日が来るとは思っていなかった。
……けれど、今儂はたった1人だった。]
(30) 2016/12/21(Wed) 21時半頃
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……お砂糖さんやい、お砂糖さんやい。
[小さく呼ぶ。言葉を返してくれる人なんかいないだろうけれど。
そう、大事なものは角砂糖に似ている。 大切な砂糖の粒を丁寧に一つ一つ固めあって、確りした一つの大きな角砂糖。
それを大事に掌に握りしめていたのに……ある瞬間、温かな紅茶のカップの中にそれを落っことしてしむえのだ。
そんなつもりはなかったのに、角砂糖はどんどん溶けていく。 どんどん形を無くして……元の形も分からないように、透明になっていく。
……角砂糖は無くなったとしても、砂糖は変わらず紅茶の中にいるのだといくら聞かされても変わりやしない。 愛しい角砂糖はもう見る影もなく、透明に溶けて何処かに行ってしまって、二度と戻っては来ないのだ。]*
(33) 2016/12/21(Wed) 21時半頃
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ー ある日のこと ー
[私は桜の吹雪く中、妻と、娘と共に歩いている。 今日は娘の学校の入学式だった。初めて背負った真っ赤なランドセルを弾ませて娘は私と妻の間を跳ねる。 まだ寒い時期だった。 娘は『手が寒い!』と駄々をこねるのを、妻は眉を寄せて『子供は風の子!』とはね返すのだ。 そして妻の話は、昔買ったばかりの赤い手袋を如何にして娘がすぐさま駄目にしてしまったかの話になる。
まあいいじゃあないか。 次は間違えちゃあいけないよ。
妻の長い話に終止符を打つと、だんだんしょんぼりと下を向き始めた娘の顔がぱっと明るくなる。 そうやっていろんな話をしながら家族3人、桜の下を歩くのだ。 その話は取り留めもなくて……その日の記憶にすら残らない。だけれど、その瞬間はとても幸せだった。]
(37) 2016/12/21(Wed) 22時頃
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[そしてようやくその姿が見えてくる。
帰るべきところ。
我が家だ。
戸に手をかけたのは誰だっけ?
きっとそれは誰でも良かった。
だって誰だってこういうのだ。
中に誰もいないけれど、ここが帰るべきところと知っているから。]
(38) 2016/12/21(Wed) 22時頃
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ただいま。
(39) 2016/12/21(Wed) 22時頃
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ー 現在 ー
[儂はたった1人……何も無い空き地を前に立っている。 住宅街の中にぽつねんと、そこだけくり抜かれたみたいに、地面がむき出しになった更地があった。]
……ああ。
[諦めたようなため息が、皺だらけの口から漏れた。 求めていたものがここにあった気がしていたけれど……本当にここにそんなものがあったのか、何も分からない。 ただそこに何も無いという事実が、ひどく苦しくて、少し濡れたちゃんちゃんこの肩を抱きしめる。]
(40) 2016/12/21(Wed) 22時頃
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……なあ、こんなつもりじゃあなかったんよォ……!
[何も無い空き地を前に、吐き出すように呟いた。 ここに来れば温かいはずだったのだけれど、何故そう考えていたのか……そんなことも何もかも全てが有耶無耶になっていく。
誰かの忘れ物みたいにそこに置かれた土管があって……儂は逃げるようにその中にするりと入り込んだ。 雪は遮ってくれても、凍えた空気は黴臭い土管を容赦もなくひゅうと吹き抜ける。]
「にゃあ」
[土管の中にいた先客が、怯えたように鳴く。儂は宥めるようにその顎を撫でてやる。触れた指先がほんのりと暖かい。 漸く少し満たされた気がして、儂はにんまりと笑うのだ。]
(41) 2016/12/21(Wed) 22時頃
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あんなぁ、赤い手袋をなァ……買いに行こうとしたんよ。 でも、みんなみんな、消えてしもうてなァ。 どっこにも見つからんのよ。
[先客は喉を鳴らすばかりで何も答えてくれない。 それでも失ったものを少しでも見つけたくて、この苦しい気持ちを吐き出したくて、儂は身体を丸めながら土管の中で呟き続けた。]*
(42) 2016/12/21(Wed) 22時頃
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