158 雪の夜に
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……心当たりが増えたか?
[この町にはかつて人狼が居て、その正体を暴く者が居た。 それを知る者も、まだ生きていると。
言ったのは女自身だ。]
(*6) 2013/12/25(Wed) 23時半頃
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[喪服の婦人は首を横にふる。]
……そうですか。 残念でしたね。
[彼女でも、船は出しては貰えないらしい。 同情の言葉をかけたようでいて、ヒュー本人こそが残念がっていたのかもしれない。 チーフを受け取ってもらい、ヒューの一本しか使えない手が、空になった。]
――…… ラウンジですか。
[エレクトラ、という船名が出て、懐かしむように、または見とれているように、停泊している船を見た。]
……。 はい。
[ヒューは、喪服の婦人を集会場へ連れていった時のように、手を差し出した。]
(141) 2013/12/25(Wed) 23時半頃
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わかんないけど、ちがうみたい? あんまし話してくれないから
[話してくれない、ということは、つまりそういうことなのでしょう。ハナも若干言いづらそうに、言いよどみます。]
おかみさん、すぐかえってくるっていったもん。
[彼女はふてくされたように唇を尖らせました。 ちいさなちいさな彼女にとっては、その事実のほうが大事なのでしょう。]
[不意に、だれかの呼び声が聞こえました。 ハナを呼ぶ声です。]
おかーさん?
(142) 2013/12/25(Wed) 23時半頃
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[振り向けば、息を切らしながら彼女の母親がやってくるところでした。 線の細い、どちらかといえばハナとはタイプの違う母親は、ヤニクの姿に気がつけば会釈をしたことでしょう。
『探したのよ。教会へ行くっていっていたでしょう。>>32』]
え? そ、そうだったっけ? 今日おいのりの日じゃないよ?
[どうやら、彼女の家庭は一般にもれず、定期的に教会へと通っているようでした。 母親の細い腕が、ちいさなハナの手を引きます。
『それ、どうしたの?』]
ええと、じーちゃんにもらって、その。
[少女は少し困った様子で、ヤニクのほうを見上げました。]
(143) 2013/12/25(Wed) 23時半頃
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[ヒューは、婦人を案内する。 古巣であるように、慣れた様子で。]
……俺の話ですか? ……。
[婦人の要望に、意外そうに聞き返した。 目は隠れているために、紅色の口許へ、自然と目が向いていた。 ヒューは考えごとをするように、一度黙り込む。 渋っているわけではない。 面白くも何ともない、つまらない、空虚な話にしかならないと思っていたから、話すことに躊躇いを感じていたのだ。]
エレクトラ号に、のっていました。 一年前までのことです。
(144) 2013/12/26(Thu) 00時頃
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……、いいえ。
[今は老いた彼のことを、 囁きに乗せることをしなかったのは]
方法は知らないの。 ただ、教会の司祭様に、 そうだ、と告げられただけだから。
でももうその司祭様も生きてはいないわ。
(*7) 2013/12/26(Thu) 00時頃
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[ヤニクの囁き >>103 には、困った様に笑いながら首を振った。 自分はそんな事が言える立場には無いと思っていたから。
ホレーショーが雑貨屋に姿を見せたのはその直後だっただろう。 タイミングがタイミングだっただけにソフィアが挨拶した声は少しだけ慌てた様なものになっていたかもしれない。]
(145) 2013/12/26(Thu) 00時頃
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そっか。
すぐ帰って来るって、言ってたからか。 ……女将さんが人狼じゃないって、信じてる?
[子供には尚更、知り合いが人喰い狼かも知れないだなんて 信じられる事ではないのかも知れない。>>142]
[やがてハナを呼ぶ声に振り返ると、母親らしき女性の姿。>>143 にっこと会釈を返して、母親の手に子供をそっと押しやる。]
売り物に出来なくなったのを譲るって、確か言ってたよ。 嬢ちゃんは何も悪さしてないから安心して。
[困ったような視線に言い添えた。]
道案内、ありがとな?
(146) 2013/12/26(Thu) 00時頃
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そうか。 他の人間にも真似出来るような方法なんだったら、 当時の事を知っている人間がやろうとする可能性はあるよな。
[優しい人を明かそうとしない女の深層を、慮る事はない。]
[声が聞こえても人間は人間。
人間が人間の形をしたものに抱く情と、 人狼が人間に抱く情は違う――と、狼は己の経験で知る。]
もっとも、そんな簡単に真似出来るんだったら、 町の人間みんな、こぞってやる気がするけど。
(*8) 2013/12/26(Thu) 00時頃
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[差し述べられる手に重ねる手、 女もまたごく自然に慣れたような所作で、 青年のエスコートを享受する]
ええ、あなたの話よ。
[エレクトラ号に乗っていた、 それにはゆると瞬いたが、女の紅い口唇が問うのは、その続き]
そして今はこの町に、いる。 ……そう、だから居心地が悪そうだったのね。
[望んで船を離れたのではないのだろう、 それは女もかつて知った、痛みだ]
(147) 2013/12/26(Thu) 00時頃
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…お、おじいちゃんっ!?
[ヤニクとハナを見送ったのち、今度は祖父の言葉に肝を冷やす事となった。 祖父には聞こえぬようにヤニクに話したつもりだったが、聞こえていたのだろうか。 それとも自分達の仲を進んだ仲だと思っているのだろうか。
視線を向けられ、ソフィアは頬を染めた。]
(148) 2013/12/26(Thu) 00時頃
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[道行は青年に任せて、 目的の場につくかつかぬかの頃か、 女はぽつりと言葉を落とす]
……あなたが船を離れた理由は、 人狼とは何か関係があって?
[集会所の夜の彼の、 “人狼”という言葉への反応。
重ねた青年の手をやわと握る、 隠された眼差しは動かぬ方の片腕に注がれた]
(149) 2013/12/26(Thu) 00時頃
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[ヤニクのフォローを受けて、母親はハナの親だと思えないほど丁寧に頭を下げました。]
ん、しんじてるよ。 女将さんはちがうよ。
[母親に手をひかれるさなか、ハナはヤニクを振り向きます。]
いっしょにお祈りする?
[教会といえばこのすぐ近くです。ハナにとっては軽い気持ちだったのでしょう。]
(150) 2013/12/26(Thu) 00時頃
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はい。この一年間は、ずっとこの町に。 市場で仕事をもらって。
……居心地が悪そうでしたか?
[声をたてずに笑った。歯の隙間から息が漏れた、その程度の音だけが空気に残る。]
そうですね…… なんだか。無駄なように、思えて。 だからでしょうか。
(151) 2013/12/26(Thu) 00時頃
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こんな時だからついて行ってもらった方がいいのかもしれないけど…、お墓には参らなくていいの?
[カウンターの前に造花を出しながらソフィアは逆にホレーショーに問いかけた。]
ごめん、造花になっちゃうけど…。 森まで行けば、何かしら咲いてるとは思うんだけど、今摘みに行くのはちょっと無理だから。
[頬に手をあてる。 まだ熱を持っていて、早く冷めないかと手の甲を押し付けた。]
(152) 2013/12/26(Thu) 00時半頃
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じゃあさ……
[一体誰が、人狼なんだろうな。
小さな子供にだけ届けた囁きに、反応があるかは知れない。 続いた誘いには、きょとんとした青鉄。>>150]
えっ?
俺、生まれてこの方、カミサマに祈った事とかないんだけど。
……ぺーんって追い出されるんじゃね?
[こてりと首を傾げる。]
(153) 2013/12/26(Thu) 00時半頃
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そんな方法があったら、 人間は人狼を脅威に思うことも、 なくなるでしょうね。
……ただの人間にそんなことが出来るとは思えないわ。
(*9) 2013/12/26(Thu) 00時半頃
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―街中― [雪の中を1人宛てもなく歩く。 途中、雑貨屋から出てくる赤い旅人と子供の姿を見た。 声を掛けることもなく後ろ姿を見送った。 2人の姿が、記憶の中の父娘と被る。]
…どちらかというと、 親子というよりは兄妹さね。
[友達になったらしい2人の姿を 微笑ましいものを見るように瞳を細めて、 白い息を吐いて彼らとは違う方角へ。]
(154) 2013/12/26(Thu) 00時半頃
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えっ……?
[驚きに目を瞠り、少女は男を見返しました。
『大丈夫ですよ。神の家はだれにも開かれていますから』
そう答えたのは、ハナの母親だったでしょう。まだ年若いはずの彼女は、相応の苦労が見て取れました。 拒まれなければ、そのまますぐ近くの教会へともに向かったはずです。]
(155) 2013/12/26(Thu) 00時半頃
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[太く節ばった指は、婦人の手をとったままだ。 二人はラウンジに到着する。]
……。
[感慨に浸る一瞬の時間を、婦人はくれた。 重ねた手が、やわらかく握られて、ヒューは婦人の口許を、じっと見た。 ぽつり、とされた質問に、困ったように、眉を情けなくした。言葉を濁して、苦笑する。 ヒューは、嘘つきと呼ばれたことを、気にしていた。]
……。 俺も、訊きたいことが、あるんです。
あの晩、あなたに、心当たりでも、ときかれた事が…… どうしても、それが気になって、……。 ……いえ。
[躊躇うようにして話していた言葉を、一度切った。]
気にしなければ、ならなくなりました。
(156) 2013/12/26(Thu) 00時半頃
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人狼なんて、 おとぎ話やただの子供への脅し文句だと、 真に受けないのが、当たり前と思っていたから。
あの晩、あなたがそうしなかったのこそが、 俺には、あなたにこそ、何か、心当たりがあるように思えて。
ないと仰るなら――、 いいです。それで、構いません。
(157) 2013/12/26(Thu) 00時半頃
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[神に祈った事がない者が珍しかったのだろうか。 ――あるいは?
目を瞠る子供をちらり見て、その母の答えに微笑んだ。>>155]
じゃあ、ちょっとだけ。
[教会の中は、神様の為に趣向を凝らして飾られている、 というのを聞いたことがある。
時計塔の中に潜り込んで見学できないかも気になったが、 後で単身教会に入るのは相当やりにくいだろうな、と思い、 同伴させてくれる人がいる内に、そちらの見物を選ぶ。]
(158) 2013/12/26(Thu) 00時半頃
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[その次に見かけたのは負傷の友人と黒の女性。 この組み合わせを見るのは二度目だ。 元々の知り合いといった様子でもなさそうだった。
宴の時と同様、なんとなく声の掛け辛い雰囲気に 遠巻きに港へ向かう姿を見送った。
エクストラ号を眺めて、白い息が零れる。]
(159) 2013/12/26(Thu) 00時半頃
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― 教会・礼拝堂 ―
[礼拝堂にはいつになく、人が集まっていました。 きっとこの人狼騒ぎで町が閉鎖され、人心が不安になったのでしょう。 蝋燭の火に浮かび上がった聖者の像が、場の静謐を保っていました。
ハナは母親に倣い十字を切り、見よう見まねで手のひらを組んで、祈りを捧げます。]
(160) 2013/12/26(Thu) 00時半頃
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[青年の手に重ねた指は、するりとすべり落ちた。]
……そうね、 私にこそ、心当たりは、あるわね。 私はその存在のあることを、確かに知っているけれど……、
[そしてその手は目深に被った帽子をとる。 黒髪はさらりと零れ落ち、憂いを帯びた蒼の瞳は、 目の前の青年をひたと見つめた]
たとえば、もし、 ――私が人狼だと言ったら、 あなたはどうしたいの?
[見守るような言葉と声で]
(161) 2013/12/26(Thu) 01時頃
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[女が街中での散歩で最後に見かけたのは 雑貨屋を営んでいるティモシー爺だった。]
あれ、雑貨屋の爺さんじゃないかい? ああ、あたしは船の者だよ。 たまに雑貨屋には買い物に行ってたんだけれど 覚えちゃいないかねえ?店はいいのかい?
[軽く声を掛けて、少しの間会話をする。]
爺さんも事件の容疑者なんだっけ? あたしもなのさ、アリバイってやつがなくてねえ…。 昔同じことがあったって自警団は人狼人狼言ってるけれど、 手がかりもなさそうだし、そんなんで 犯人を見つけられるのか。
(162) 2013/12/26(Thu) 01時頃
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[ちょっとした好奇心でした。
こういった場で不慣れだろうヤニクはどうしているだろう、とハナは閉じていた目を開きました。 すると、母親が祈る声が聞こえてきたのです。]
[ハナの母は、今まで見たこともないほどに一心に聖句を――そして呪いを唱えていました。
『ああ主よ、イエス・キリストよ。あわれな私たちをお救いください。』
『救いの御業をもって、力なきわれらをお守りください。』
『私たちに害為す悪魔を、あのひとを奪った人狼をどうか、どうか――』]
(163) 2013/12/26(Thu) 01時頃
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(うそだ――――――――!!!)
(164) 2013/12/26(Thu) 01時頃
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見分けられるからって侮るのは悪い癖だけどな。 そうなったら、人狼が出るたび狩り尽くすのかねえ……
[想起するのは、かつて立ち寄った街。 ――いつか、再び訪れるかも知れないと告げた、 とある同族の残る街だ。]
(*10) 2013/12/26(Thu) 01時頃
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[気がついたら、ハナはその場から逃げ出していました。
長椅子から転がるように逃げ落ちた少女は、あんなにおさないとは思えないほどの足の速さで。
あっという間におとなたちの視界から消え去ってしまったのです――]
(165) 2013/12/26(Thu) 01時頃
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