194 花籠遊里
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[煙草の香りはいつも彼から薫る刻み煙草のモノとは違うが一時溺れ忘れ去るには十分な刹那の香り
黒衣の背越しに見上げる月 せめて雲に隠れぬ様にと、懇願するように見つめるも――やがてそれは雲に隠れて見えなくなって
一筋、涙が零れ落ちた]
(*60) 2014/09/19(Fri) 01時半頃
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可愛い、可愛い吾が子達。 今宵も大層疲れただろう。
部屋でゆっくりと休むがいい。
[男は今日も地下牢へとやって来ては、吹雪を降らせて花々を見下ろす。 優しげな面持ちで、或いは非道な笑みで。 一輪、一輪、狂気を含んだ声が撫で付けた。]
(*61) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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丁よ。 お前は屈折していて可愛らしい。
吾が子に相応しき、素直な焔花。
(*62) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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亀よ。 お前は夢見がちで悩ましい。
銀月映す、儚き水面花。
(*63) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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櫻よ。 お前は頑なでいて微笑ましい。
散るを知らぬ、咲かない櫻花。
(*64) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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朧よ。 お前は動じぬ姿が誇らしい。
陰る貌こそ、艶かしい月花。
(*65) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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藤よ。 お前は磨かれた心が、美しい。
割れれば綺羅綺羅、光はなつ鏡花。
(*66) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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明日も甘い毒抱きて、蝶を誘い惑わせるがいい。
愛しい“罅割れぬ”花たちよ。
[口許に三日月を浮かべて嗤い、男は消え行く。 一輪切り捨てることを、暗にして。]
(*67) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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―早朝― [裏口から下町の花屋に引き渡される割れた鏡の花一輪 花籠に戻ることはもう、ない*]
(*68) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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