204 Rosey Snow-蟹薔薇村
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―ヴァニラ/過去―
[昔の昔。 ノックスの世界には2つの灯りがあった。温かく足元を照らす光。 職人の師匠と、幼馴染みのバーナバス。
生きる術と生きる心を得た。
幼馴染みが旅に出たとき。 記念の匙を贈った。
一時の別れと言い聞かせた。]
バーニィにはバーニィの、人生があるもの。
バーニィは、……僕が居なくても平気だもの。少しぐらい寂しくても、平気。
[ぽつり。 道を照らす明かりはひとつになった。]
(264) 2014/11/26(Wed) 02時半頃
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『愛してるよ、ノックス……。』
[粘り気のある声、耳許の囁き。 愛しい人が、自分の腕の中に在る幸福。自分の裡に在る悦楽。自分の指先ひとつで、喜んでくれる充実。
少しずつ喰らいあい、少しずつ狂っていく。
他の男に犯されている間、あの人は上擦る声でノックスの名を呼び、自らを慰めていたから赦してあげた。
他の人間を喰らう様を見た時、衝動に駆られて抑えきれないのだなと憐れみ赦してあげた。
ノックスには、愛を捧げるその人しか居なかったから。
ぽつん。 道を照らす明かりはひとつだけ。]
(265) 2014/11/26(Wed) 02時半頃
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やめてっ! 殺さないで!!
『あれは、本能を制御しきれなくなった魔獣だ。せめて、‘保護者’だった自分が引導を渡すのが務めだ。』
銃声による耳鳴りと火薬の臭いが一晩経っても拭えなかった。 ――あの人は殺された。>>3:417
その意味を知ったのは、大人になってから。‘良い保護者’は仔狼をよく躾、よく諭し、時には自らの手で厳罰を与えなければならないと知った。
――。 道を照らす明かりは、消えてしまった。]
(266) 2014/11/26(Wed) 02時半頃
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[その人は、蛍のような人だった。 閑古鳥の鳴く露天業。始めてノックスの作品を好きだと言ってくれた。]
『私ね。ノックスさんの本棚がとても気に入ったの。 他にはどんな家具を造るのかしら?
ねぇ。いつか、私の為に……私だけの為に、何か造ってくれません、か?』
[互いに気遣い、高めあう。そんな愛し方は初めてだった。体を重ねて得た熱と、快楽と、美酒に酔い――…衝動に負けて、獣に成り果てた。
その人は、蛍のような人だった。 仄かに静かに夜に光り、鳴かぬまま身を焦がして――…消えた。**]
(267) 2014/11/26(Wed) 02時半頃
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