270 食人村忌譚
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時は来た。村人達は集まり、互いの姿を確認する。
アイリスが無残な姿で発見された。
噂は現実だった。血塗られた定めに従う魔物“人狼”は、確かにこの中にいるのだ。
非力な人間が人狼に対抗するため、村人たちは一つのルールを定めた。投票により怪しい者を処刑していこうと。罪のない者を処刑してしまう事もあるだろうが、それも村のためにはやむを得ないと……。
現在の生存者は、ゆり、エツコ、イルマ、櫻子、ミナカタ、ススム、錠、イスルギ、志乃、リツ、鬼丞、源蔵の12名。
村中を渡り歩き、
村中の耳に届くところとなった、
その出鱈目な歌は、
いつか途切れた。
(#0) 2017/11/25(Sat) 01時頃
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ハイハイ。相思相愛って奴だな。 石動さんも喜ぶよ。
[まさに言葉通り>>1:285、惚気を双方から聞かされた気分だ。 ご馳走様と口にしたら、流れでおかしな考えに 取られても仕方ないから噤んだまま]
食べて食べられて。 お互い欠けることない兄弟愛か。
麗しいけど、あまり人前では言わないこった。
平等に村の命を繋ぐ命になる。 [不公平もある気がするのは判っているし、 彼が特別兄に依存しているから、俺の前で言う分には 強く咎めるつもりはなかった]
(0) 2017/11/25(Sat) 01時頃
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火に当たったままでも火傷するから気を付けろよ。 生きたままとろ火で芯まで焼かれた肉には なりたくないだろ?
[さっさと話題を変えて、錠の具合を見れば あまり良くはなさそうだ]
これ以上悪くしなければ痕は残さず治る。 血行を良くするには温めるだけじゃなくて 自分で動かさないといけないぞ。
[指を摩る背中>>1:289にも、彼がやれる事を 付け足して、彼が村の話>>1:292をするなら 今度は俺が耳を傾ける]
(1) 2017/11/25(Sat) 01時頃
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脳髄か。 傷みやすいし、近い人が持っていくから あり付けないのも有り得るな。 食べたことはないだろうが、進君の脳髄なら 食べたがる連中は多いだろう。
櫻子ちゃん、また子供が出来たのか。 村には良いことだが、負担にならないといいな。
愛理ちゃんは……前からおかしな唄や おかしな事を言うと 思ってたがいよいよ変な事言い出してたな。
もしかしたら悪い風邪でも貰ってるのかもしれん。 捕まえることが出来たら診とくわ。
[そんな感想を1つ1つ律義に返し、 出来た軟膏を貼り方、頻度を説明して1度処置した後。 求める薬を用意すると、散歩ついでに 車椅子を押してまた送って行くくらいはしただろう*]
(2) 2017/11/25(Sat) 01時頃
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明くる時、出鱈目な歌を口ずさむ少女は、
愛理は、死体となって発見された。
無残な死体、明らかに獣などにやられたのではない、
人間に殺された、有り様で、見つけられた。
――「理由」のない殺人は、村において、絶対の禁忌である。
食らわれねば、
許されざる罪、その一つである。
その罪を見出し、裁かんために。
村の要の一たる――権力者たる翁によって、程なく、一部の村人が集会所に集められる事になるだろう。
そして、下される。
許しが。 命が。
(#1) 2017/11/25(Sat) 01時頃
その罪を裁くためならば、
裁き、許すためならば、
殺しても、許されると。
――殺せ、と。
(#2) 2017/11/25(Sat) 01時半頃
盗み食いをした犬が、赤い口で遠吠えしていた。**
(#3) 2017/11/25(Sat) 01時半頃
巫女 ゆりは、メモを貼った。
2017/11/25(Sat) 01時半頃
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あーあ。 やっぱりまた増えてるのか。
[盛りの家畜は増えるのが早い。 鼠よりはマシだが、と。 草を潰す音に力が籠る。
やはり早く年頃の女は潰しておかないと。
さてどうするか、と意識は明後日。 そぞろで作った調合の量が間違えていたとしても、 石動が弟を食べる日が近くなるだけだ**]
(*0) 2017/11/25(Sat) 01時半頃
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発明家 源蔵は、メモを貼った。
2017/11/25(Sat) 01時半頃
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―回想:進の来訪―
はーい?
[こんこん、と控えめに扉を叩く音>>1:294がする。 首を傾げて、扉を開けた。]
勿論! 一口だけなんて言わずに、食べてってよ。
お礼?そんなのいいのに。 ……なら、今度サツマイモをお裾分けしに行くとき 運ぶの手伝って。私一人じゃ大変なんだよね。
[そんなことを言いつつ、進を招き入れて、 机に出したのは、牛の舌の味噌煮の椀と、 炊き立ての米をお茶碗一杯分。]
(3) 2017/11/25(Sat) 01時半頃
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おかわりもあるから、いっぱい食べて。
……あ、江津子おばさんに届けに行くから、 一人分は残さないといけないけれど。
[彼が腰を落ち着けるようなら、 その向かいで頬杖をついて、彼と、食される料理たちを眺める。 良くある光景だ。
ふと、幼いころの光景を― 私と、進と、それから、ゆりとで囲んだ食卓を思い出す。 進の為に握ったおにぎりと、おまけに自分たちの分も作って。
懐かしいそれを思い出して、感傷に浸ってしまったのは、 きっと、昼の源蔵とのやり取りのせい。**]
(4) 2017/11/25(Sat) 01時半頃
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PPP イルマは、メモを貼った。
2017/11/25(Sat) 01時半頃
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―容の家―
いつもありがとう。
……感謝の気持ちを、どうしても形で伝えたいんだ。 お裾分けのサツマイモか……勿論!
[ホッとした顔で、敷居をくぐる。 机の前、椅子に腰かけて 出てきた味噌煮になっているものをみて、容を見て 本当に食べて良いのかと皿を見て ごくりと喉を鳴らし、箸をとる]
――――頂きます。
(5) 2017/11/25(Sat) 02時頃
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[命を頂く。 牛の舌は、蕩けるほど柔らかかった。 味噌の他に食欲を増進させる香味もする。 一口だけ、と言ったはずが 白米は瞬く間にススムの胃に収まった]
美味しいよ……これ、 何でお肉がこんなに柔らかいんだろう
味噌の味も、すっごい……
[舌を細切れにして口に運び、噛みしめるように味わって 白米を一口、二口、もうひとくち。 すっかり腰を落ち着けてしまって、向かいで食事を見守る容へ美味い、美味いと箸を進める度に口にする。 幼いころは、己も図々しいもので 彼女らと食卓を囲む事に対価が必要など思いもせずに 与えられるままに喜んでいたけれど 何故、食事を与えられるのか かんがえるようになってからは、素直に味わう事を忘れてしまっていた]
(6) 2017/11/25(Sat) 02時頃
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[対価を約束したことで、味わう事の罪悪感が薄れた。 空になった茶碗 味噌煮の椀に残った汁の上に白飯を落として食べたら きっとまた同じ味が楽しめるだろう そう、思いは過ぎったけれど お替りまでは要求し辛い]
これ、江津子さんも、きっと喜ぶよ。 美味しいごはん、ご馳走様。
[だから、ゆっくりと箸をおいて 食事と、作ってくれた容へ 感謝の両手を合わせる]
お裾分けに行く前の日には声をかけて。 朝一で迎えに行くからね。
[帰り際、そんな約束など交わして容と別れる。 翌日、思いもよらぬ話に巻き込まれる等、その時のススムには知る由もなかったから**]
(7) 2017/11/25(Sat) 02時頃
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[其れは完全にススムの失態であった。
牛の舌を味わう事で 不味い人の肉など矢張り不要だと 決意も新たに先ず向かった愛理の元 その辺の農家から持ち出した鉈を手に夜着姿で 夜這いでもかけるかのようにそっと、忍び込んだ
眠る彼女へ、一振り。 峰の方で頭部を殴って目覚めぬようにし 倒れた彼女の首を刃の方で掻き切った。 すっぱりと割れた首の皮の間から、どくどくと血が流れ 床に溜まってゆく
命を奪うというのは 思ったよりもあっけない]
(*1) 2017/11/25(Sat) 03時頃
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[彼女を吊るそうとしたところで この家に、丁度良い縄が無い事に気が付いた。 これでは上手く解体出来ない。 出来るところまで、と足先から刃を入れ皮一枚剥ごうとしたが 肉と皮の境目を綺麗に削いでいくのは至難の業だった。 足首を超えたあたりで、下脚の肉に刃が食い込んでしまった。
皮を剥ぐのはあきらめ、一度鉈を引き抜いて 頭部を切断しようとする。 何度も何度も首に刃をふるい、漸く胴体から離れた頃には 随分体力を奪われてしまっていた。 これ程力のいる作業を、江津子はこなしていたのかと 改めて知る事実が一つ]
(*2) 2017/11/25(Sat) 03時頃
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[満足な血抜きもしないまま、愛理の衣服を切り裂いて 内臓を取り出そうと、後肢を開き 陰部をあらわにして、鼠径部からゆっくりと力を込めて 臍へ向けて刃を入れる。 仔を孕ませる子宮から、摘出しようと思ったのだ。 腹の皮をぺろりと捲ったその向こうに 望む部位があった。 けれどススムには、其れが”そう”である確信がない。 何より灯りを付けぬ作業では、これ以上進めるのは困難だ。
知識だけを手にした初めての解体は その時点で断念する事になる]
(*3) 2017/11/25(Sat) 03時頃
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[僅かな落胆はあったが これから始める殺処分の一人目を終えた事への満足感はある。 次はもっと準備をして、うまく捌いてみせよう。 失敗を糧に、成長すればいいと 反省を胸に、汚れた衣服のまま家へ戻る。 転がった頭と、下腹部を割いた胴体を放置して。
脱ぎ捨てた衣服に使った鉈を包んで、炉の中へかくしておいた。 夜着が無くなってしまったが、致し方あるまい。 次からは汚さぬように気を付けなくては
身体にこびりついた血を水で洗い清め 寒さに身を震わせながら、薄い布団に潜り込んだ。
ススムはすっかり忘れていた。 己にとっては理由のある殺人が 家畜共にとっては、禁忌に触れてしまう事を**]
(*4) 2017/11/25(Sat) 03時頃
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おいしい。 あけのしん、おいしいね。
あけのしん、うまれかわれたかな。 生まれ変われたのかな。 だったら、いいなあ。
[食事の後、娘はそう言って、笑った。 あけのしん。あけのしん、 けらけらの笑いながら、軽やかに、 そのまま部屋から、神社から、去ろうとして、 振り返る。ゆりを見つめ、]
あ、
ゆりさま。
(8) 2017/11/25(Sat) 03時半頃
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ゆりさまは、
誰か。 一番、食べたい、人、 なんて、
いる?
(9) 2017/11/25(Sat) 03時半頃
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[唐突なような問いを。 脈絡もない、意味もないような問いを。 娘は常の、白痴美の笑みに、向けて。
そのままあてもなく去っていった**]
(10) 2017/11/25(Sat) 03時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2017/11/25(Sat) 03時半頃
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―前日・自宅― [遅い昼食の後、男は再びトンテンカンと椅子を作る作業に戻っていた 丞さんが家に来る頃には無事、椅子も完成していたことだろう
そうして、その日はそのまま家で過ごし、何事もなく眠りについた**]
(11) 2017/11/25(Sat) 06時半頃
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―回想:深夜―
[明日>>0:238と、そう言ったから。 進が帰った後、私は慌てて家を飛び出した。 夜の顔をした村を駆ける。
程なくして辿り着いた江津子おばさんの家からは、 灯りが窓から漏れ出ている。誰かが動く音もする。 どうやら、彼女は家にいるらしい。安堵に息を吐いて 扉を叩きかけたところで。
振り向く。奇妙な音がした。 目の前の家からでなく、幾らか離れた家の中から。
そこは、確か、愛理の家だった。]
(12) 2017/11/25(Sat) 08時頃
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[目は悪くない。耳もいい。 けれど、間は悪い。誰よりも。
だから、聞こえてしまった。
何かを殴るような鈍い音。 何かを引きずるような音。 非力な愛理とは結びつかない―― そう、牛舎などで時折聞くような、不快な音。]
(13) 2017/11/25(Sat) 08時頃
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[脳裏を過ったのは、神社を飛び出したあの日のこと。
扉の向こうを見てしまえば、全てが変わってしまう。 見てはいけない、これ以上、聞いてはいけない。
気付けば私は、弾かれたように踵を返していた。 鍋を彼女に手渡すことなく、行きと同じく それを抱えたまま、私は家に逃げ帰った。]
(14) 2017/11/25(Sat) 08時頃
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[あの音が何だったのか、何が起こっていたのか。 朝には嫌でもそれを知ることになる。
唯一つ、私に言えるのは、江津子おばさんは、 それが起こったときに家にいたということ。 あの音の主が、彼女ではないということ。
即ち、今の私が心から信用できるのは 彼女だけということだけだった。**]
(15) 2017/11/25(Sat) 08時頃
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PPP イルマは、メモを貼った。
2017/11/25(Sat) 08時半頃
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―深夜/自宅で―
[行燈に灯が揺れる中、行李の中を探っていく 櫻子に纏わす古着>>1:173を探すも、 出てくるものは、闇に溶け込むような、黒衣ばかり 一人息子の大美の服は、独り立ちの日にすべて託した 着飾る彼女に相応しい衣を探るうちに、 昔のものへ、昔のものへと遡り――――]
……まだ、残っていたんですね
[広げて掲げてみたものは、フリルのついた洋装のドレス 黄ばみ、霞こそすれど、優雅な白は、そのままに 遠い遠くの彼方を彷徨う、かつての記憶を蘇らせる]
(16) 2017/11/25(Sat) 16時半頃
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―回想/40年前の出来事―
[古事記>>1:250の冒頭を飾る神、 『イザナギ』を祀る神社があったという 遠い遠いかの地へ参りに、馬車で山道を揺られていた
廃刀令を守らぬ賊に、襲われたのはその時のこと 家族も御者も切り捨てられる中、 1人山へと逃げ込んで、彷徨ったのは幾日か
もはやこれまでと運命を受け入れようとした刹那、 辿り着いた山村は、少女を迎え入れてくれた ゆっくり休んでいくといい さあさ、これをお上がりなさい
いくら休んでも構わない 食べてしまって、構わない
ただし――――――――]
(17) 2017/11/25(Sat) 16時半頃
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