231 獣ノ國 - under the ground -
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[ 泣きすぎた。 頭がぽうっとするし、何より目元がぱんぱんに腫れていて
( 誰にも会いたくない なぁ )
お腹はすいたけれど、 誰かに泣き腫らした姿を問われでもしたら 兄さんが何を言ったものか 想像しただけで怖い。
ごろ、と転がって シーツを抱きしめ あの「ひと」が額を押し当てていった中心をなぞる。 …まるで、人間のように扱われた気がした。
少し寝てしまおう。寝ちゃえば、空腹も気にならない。 こういうとき鳥は少し便利だ 暗くすれば それなりに眠気が来るのだから。 *]
(230) 2015/07/12(Sun) 00時頃
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[額に額を寄せて、伝わる温度に何の意味があるのか 彼は知らない。
ひたり、と合った視線に、彼は唇を閉ざしたまま。 ついと目線をそらそうとすれば ふと投げかけられた言葉に ざあ、と宵の海は音も無くざわめいた。
フィリップに対し 一度も”兄はどこにいる”と聞かなかった事。 ”どうして君達は別れてしまったのか”と聞かなかった事。 ――それらの意味は、]
……いいや、卑怯だよ。
[彼はそう云って、ゆるりと首を振った。 フィリップは――この繊細な心の獣人は、 とても優しいと思った。]
(231) 2015/07/12(Sun) 00時頃
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良く言われます、…ええ。
[ もう落ち着けたのだろうか。先よりか穏やかな声色>>222が鼓膜を叩いた。 おとに引き摺られるまま、彼女を見れば少なくとも「 憤怒 」では無い。 困惑、に近しいそれに、得たのは少しの満足感。
――また、そのまま続けられた文句にも聞こえる声に、男は昔を思い言葉を吐いた 。 まるで色の違う数多の花弁を一枚一枚剥くようにして露わにする本音は、実に、心底、不気味で信用ならないと。 ――悪魔の誘惑を糾弾されたことも、あったろうか 。
男に” 邪気 ” など、毛頭無かったのであるが。 ]
(232) 2015/07/12(Sun) 00時頃
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[どうして「また」と言ったのか、 その深い理由もわからぬまま 彼は、こくこくと頷くフィリップに柔らかく微笑む。
それから着物の裾を翻して、 白い無機質な部屋を歩き去る。
『マタネ!』と叫ぶ鳥の声に、上をみあげて「ああ」と答えた。 ふわり落ちてきた赤い羽根を掌で受け止めて、
がちゃん、ぱたり。 ――フィリップの部屋の前で、 白い掌に落ちたそれを、一度、
柔く握った。]
……卑怯なのさ。
[もう一度、呟いて 彼は白い施設内を、歩きだした。*]
(233) 2015/07/12(Sun) 00時頃
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「意味」こそ、…そのうち貴女にも解るでしょう。 ……きっとね。
ああ、それと私は「猿」ではありません。 「 ヴェスパタイン 」です。
[ 目蓋を伏せた後、男はぴしりとひとつ指を立てて、言葉を紡いだ。 他の管理人への呼び方を直そうとは、考えることさえ無かった。一先ず己のみ。 常々そうである。
あの荒れ模様の中、残った卵サンドには拍手さえ送る気を持ちつつ。いやはや、良く串刺しにならなかったものだと、僅少笑えた。無論、先とは別の笑みで。
よもや己が梟に、悪趣味>>221だと突つかれているとは知らずに。 また、喧騒の中呟かれた音色も拾えずに。 割と人間味に寄った食事>>203を前にする彼女に、破片が及ぶことは無かったろうかと顔を向ける 。……破片が及ぶ範囲には、座って居なかったかもしれないが 。]
大丈夫でしたか。
[ ―――掛けた声に、彼女は何と返して来ただろうか。 もしかしたら、声が聞こえることも、返されることもなかったかもしれない。 それはそれとして、 男はまた目前の彼女に顔を向け直すのみ。 ……ただ返事が返されたら、二三交わすこともあっただろうか 。]
(234) 2015/07/12(Sun) 00時頃
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―――そう言えば、ジリヤさん。 貴女を部屋まで送る約束をしたのですが、ご予定は?
[ ―――と云うよりは、何故そもそも彼女は逃げ出したのだろうか。 逃げ出したにしては、脱走の気も見えないが。 犯人が飄々としているあの男とは知っている 。その別、男は彼女の思考を汲み兼ねて首を傾げた 。よもやその理由が、憂さ晴らし>>0:48とは到底思わずに、ゆうらりと長い髪を揺らす 。
そうして彼女が戻ると言うならば、そのまま秘密棟まで足を向けたことだろう 。また、別所へ行くようなら、両者共々へ処罰を下されることだけは避けようと相応の手段を探りつつ。 ]**
(235) 2015/07/12(Sun) 00時頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2015/07/12(Sun) 00時頃
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アタシにもわかるって…胡散くせぇ…
[無事だった卵サンドを飲み込む。惨状は片付ける気はない。考えのとっかかりすら掴めないから、聞いているのだが。のらりくらりとかわされてなんとも調子が狂う>>234]
あー、あー、わーったよ。ヴェスパタイン。これでいいだろ
[困惑は止まない。反抗する気すら起きない。それよりは、こいつの真意を知りたい。なぜ、アタシにもここまで関わるのか。相手がマユミに話しかけ、その存在に気づけば、嫌なところを見られたとバツの悪そうな顔をする]
予定?気の向くままって予定が死ぬまで入ってる。
[要するに、帰るつもりはない、という宣言。まだ、イカ女医の顔と手に針を刺したくらいで、満足できない]
(236) 2015/07/12(Sun) 00時半頃
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――プール――
[ わるいこ。 “ いただかれます ”の挨拶だったろうか。かすかに聞き覚えのあるそれ>>188に、ちかりと意識が点滅する。
赤みがかった茶色、自分とにた機械ごしの声。ふれかけてそらされる背後からのびる尾っぽ。
『だめだよ。』
ひた と、ベルトの留め具を弄る手が止まる。くせじみた、反射的な静止であれば、自分でもぐいと首をひねった。―――だめ。たべたら、どうしてだめなんだっけ?
“はは”も“ちち”も知らないまま、施設で育った己に、さとす声を思い出す。――いついつも、おなじすがたのこわいろの、そう彼は。ここは。
うみじゃないから。
ああ、と。水滴の音にかき乱される頭の奥、あまいにおいの混じった嘆息が漏れる。幼いころ、本にならぶ“うみ”の綴り。その発音をしったのは、そう――この声だったろうか。
告げられる「ほんとう」を、どこか凪いだ意識で聞きながら。]
(237) 2015/07/12(Sun) 00時半頃
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チェビィ、
[ いついつも――朝も夜も人工的につくられるここで、年月や“きせつ”のそれは、鈍い頭に殆どすり切れていたが――記憶のうち、 かわらないままだった気のする彼のなまえは、いつかどこかできいたのだったか。 わずかに“マトモ”な低い声で、ふると揺れる頭へ落とす。 それでも髪に触れる湿めった空気が。空腹が。じわとその身からたつにおいが、どうあっても。――ヒトにはなりきれない、と叫んでいる。]
しんかい、
[ きみの、と覗き込まれる瞳>>189に一瞬、獣ともひととも付かない、“乞い”を滲ませながら。 それはそとの? おれにもあるける?と、 おれはいつになったら、と。 綯い交ぜになった意識がおおきく平均台上で傾いていく。
――それもぐう、と服下、再度本能が鳴けば、ひたと乾く喉奥側へと雪崩こみ。パコン、と存外軽い音をたてマスクが外れたなら、 まるでにげだすように、鮫は亀に歯を立てかけた。 ものの、*]
(238) 2015/07/12(Sun) 00時半頃
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いッ……、っ
[ 無防備に晒した感覚器官の、――ひと際過敏なそこを摘まれたなら。それだけでヒトらしい仕草で眉間をぐ、と顰めさせ、苦悶を訴える。
まま壁に押し付けられるのにも、怯んだ身におよそ反応し切れる筈もなく。 痛みにひゅうと吸う喉奥、あまいにおいが水気を含んで滑り込み、欲に暈された視界が整っていく。]
――、ッ…あ、………俺、
[ 鼻を捕まえる正体の奥と焦点を合わせながら。苦痛に浅く息を吐いては、軽くその腕へ手を叩き解放をアピールする。]
――…、ま、た。
[ 見知る姿に気まずげに、面体で覆われていない瞳を逸らしかけ。 じわとのぼる血のにおいに耐えては、相手を確認する。生存欲。当然のごとく映る瞳のいろ。あまいにおいのしみ込んだ体に、じりと腹の虫を抑え込みつつ。 やがて状況を理解すれば、“ばつか”、と。諦観じみる声で尋ねかけながら。 これで何回目だったろう、ひとをほかを、襲うのは。秘密棟のすすけたにおいは鼻腔の奥染み付いている。 ――いい加減、『処分』かもしれない、と。転がるくつわを一瞥しては、目の前の相手へ視線を戻し。言い渡されるだろう処遇を待った。]
(239) 2015/07/12(Sun) 00時半頃
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[何か――聞いてはいけない事を、聞いてしまった。
普段ならまず言い淀んだりしない先生が、言葉の次を口に出すのに時間を掛けたとき。すぐにそれは分かった]
先生は、優しいんですね。その人の願いを叶える為に、こんな"バケモノの巣"、みたいな所まで来るなんて。
[いくら私でも、取り繕うように付け足された言葉が真意でないことくらいは分かる。
でも、それが。それが先生の願いならば。それを叶えることで、先生が喜ぶのなら]
私に出来ることなら、なんでも言って下さい。 その人がヒトになるまで、"バケモノ"の私でよければ。
["幸せ"がどんなものなのか、知らない私には。周りの人が幸せである時にしか、それを実感することは出来ないのだから。
私がどうなろうが、周りの人が――先生が、幸せになってくれればいいと。そう思う]
(240) 2015/07/12(Sun) 00時半頃
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[『衣がなくては天に帰れません』 『どうかお返しください』
そう嘆願する天女を宥め賺し、騙して、 地上に留め 夫婦となりし男を題材に 話を書いたことがある。
天女に置いていかれる者の気持ちは、 とてもよくわかる気がしたからだろうか、 いつもよりは早く筆が進み、 出来も悪くなかったように思う。]
『この羽衣がお前に天を思い出させるならば 迦具夜が着た天の羽衣のように おれと通わせた情まで喪わせるならば――』
(241) 2015/07/12(Sun) 01時頃
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[男の妄執は狂気の沙汰にまで至る。 けれども結局、衣を見つけ、 天に還る彼女を留めることはできない。
彼女が行ってしまった後は、 空しき朝が地上を照らし出す。 男は取り残されるばかりだ。]
[握り締めた掌を開く。 赤い羽根がそこにはある。 鳥の獣人はこの施設内に何人いただろうか。
( ……願わくば…… )
彼らが逃げ出せればいいのに、と、 ――彼は只、静かに思う だけ。*]
(242) 2015/07/12(Sun) 01時頃
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はい。
[大丈夫か、との問い>>234には短くそう返した。最低限の、礼節。 ジリヤから向けられたバツの悪そうな顔>>236に、また珍しいものを見た、と思う。 けれど、私は無表情なのだ。白目の見えない猛禽の瞳は、わずかばかりの感情の変化など伝えはしない。 そっと首を傾げてみせるにとどめ、私は静かに食事を続ける。 調子を狂わされっぱなしのジリヤの様子に、私はアーロンへの評価を改める。 よくわからない人間、から、食えない人間、へと。 その評価が、株が上がったことになるのか下がったことになるのか、私にも良くわからない]
(243) 2015/07/12(Sun) 01時頃
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― 第二図書室 ―
[廊下を抜け、においのしない花々を視界に収め 庭園を抜けてその部屋へ。 彼は、扉を開けたとたんに、ぱちりと瞬きをして それからそこで眠る人の姿に 少し肩の力を抜いた。>>220]
ノア君。 ……こんな所で寝ては、風邪を引くよ。
[第一、鼻がつまったりしないのだろうか。 呼吸器が丈夫なのだろうか。 薄く埃の積もった本の数々を見渡せば、 禁止されているはずの本もそこにはある。
彼はそれらを「見ないふり」をして、 一旦は踵を返すと、 施設の備品入れからタオルケットをとってきて そっとその男の体にかけておいた。]
(244) 2015/07/12(Sun) 01時頃
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[ノアが起きるころには、ずり落ちて 見えないところにいっているかもしれないが、 ……まあ、ないよりはマシだろう。
きっと疲れているのだな、と同僚を思ってから、 ふと部屋の中の地図に視線を転じた。 施設内の地図。
……一瞬、隠してしまおうかとも思ったが ふるり、首を振って、その妄執を取り払うと 一冊の本に手を伸ばし、抜き取り、 そのまま図書室の外へと静かに出て行った。*]
(245) 2015/07/12(Sun) 01時頃
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[食事を終え、席を立った時、ジリヤたちはまだ食堂にいただろうか。 翼のせいで、背もたれのある椅子は横向きにしなければ座れない私は、立ち上がると椅子を元に戻した。 カウンターにトレイを返却し、ジリヤたちがまだいたなら、小さく一礼して、私は食堂を後にする。 夕食時になる前に、離れておくべきだ。
そうして、向かうのはいつもと同じ、第二図書室。 誰にも煩わされることのない、私の居場所]
(246) 2015/07/12(Sun) 01時頃
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[――――……その、はずだったのに]
どうして。
[第二図書室には、先客>>220がいた。埃っぽい、およそ眠るのに適していないこの場所で、ご丁寧にタオルケットまで掛けて>>244眠っているのは、よりにもよって人間のマーティンだ。 溜息が零れる。眉間に皺が寄る。 どうして、人間が、こんなところに]
どこに行けば、私は、放っておいてもらえるのかしら。
[それとも、嫌がらせだろうか。私が、ここなら誰に煩わされることもないと言った>>130から。 読みかけだった百科事典を持ち出そうかと考えて、躊躇った。ここには禁止されている本もあるという。もしもその禁止されている本の中に、百科事典が含まれるとしたら、誰かに見咎められれば厄介なことになる。 溜息をもう一つ吐いて、結局私は何も持たず、踵を返した]
(247) 2015/07/12(Sun) 01時半頃
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[仕方ない。今日は第一棟の図書室の本を借りて、自室で読もう。あそこの本なら、持ち出しても見咎められることもないだろう]
……ああ、もう。
[思わず声が漏れる。 こんなことになるとわかっていたら、こちらには来なかったのに。第一棟の図書室なら、食堂からすぐだったのに。 無駄足にまた溜息を零しながら、私は来たばかりの廊下を戻り始める]
(248) 2015/07/12(Sun) 01時半頃
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[ ぱちりと、浮かんだ ” 理性 ”に、僕はほぅと息を吐いた。 獣同士の力比べも、 また若い頃より衰えた人としての力比べも、彼に到底勝てないから。 だから、壁に押し付けた、彼が。 …その唇から漏れる、苦悶の色。歪む人の顔。―――「 抑制 」と「 躾 」の狭間で、その限界を測って、――きっと、長くは続かないだろうと思った。 ]
…わるいこだなあ。モスキート。
[ 叩かれる腕に、僕はいつもと変わらない顔で、声で、返した。 逸らされかける瞳は、頬をぺちんと叩いて咎め。諦念の色を滲ませたのには、こてりと首を傾げた。 僕の濡れ髪から、雫が零れる。ぱたぱたと落ちる。音。
「処罰。ほしい?」
からかいに染まって投げたそれに、彼はどう返しただろう。 秘密棟に閉じ込める。 実験される。 痛みに悩まされて、また出てくる。 ―――そして、 ]
(249) 2015/07/12(Sun) 01時半頃
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――→第一棟 第一図書室 ―
[もう陽は落ちた頃だろうか。 時間がわからないこの地下では いつ夜がくるかもまた、わからないのだけれど。
彼はそのまま管理室に戻る気にもなれず その手前、暖炉がある図書室で足を止める。 見回りはした……といえるのかどうか。
椅子をけだるげにひくと、 静かに腰掛け、手にした本を開いて、 ――そうして、しばらく活字の海に溺れる。]
(250) 2015/07/12(Sun) 01時半頃
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あのね。モスキート。 君に好きに生きて、食べてもらうこと。僕は願うよ。
でも、僕は…僕”も”、いちどでしんでしまうから。
[ 一度で死んでしまうから。 そしたら、鶴に怒られてしまう。恨まれてしまう。 一度で死んでしまうから。 そうなったら、今みたいに、処罰を軽くできないから。
―――死んでしまったら、 夢は泡沫に、弾けてしまうから。 ]
(251) 2015/07/12(Sun) 01時半頃
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[内容自体にあまり興味を惹かれないのは、 彼自身が元々「外」の人間だからだろうか。 そんな事を、その本を読みながら思い、
何の異変もなければ、 暫くした後、暖炉を潜り梯子を昇って、 管理人の部屋に向かおうとしただろう。]
(252) 2015/07/12(Sun) 01時半頃
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……君はどうしたら、” ここ ”で、誰かを食べないでいてくれる?
[ ――無期限に。
……そんなこと、言えなかった。僕は続けようとした声を唇に閉じて隠した。 僕の血濡れた腕を食べたら、君は止まるの? 僕を全部食べたら、君は止まるの? 海には到底及ばない、プールに放して、何もかも自由にさせたら 、君は。
――止まらない、だろ。
「 本能 」は。
………人間だって、そうじゃないか。
虚しさが胸をせり上がる。無期懲役的に閉じ込められて、そのまま。 寿命で散った命も、殺傷分も、実験ミスも、いろんな死に様を見た。
では、長く生きてしんでしまうのと、 そとに生きてしんでしまうのでは、どちらが良いのだろう? ( ほしぞらも、 見えないまま、僕もいずれ )。 ]
(253) 2015/07/12(Sun) 01時半頃
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……“バケモノの巣”って。あなた。
[アマルテアはクラリッサの言葉>>240に絶句してしまう。 自分の生まれ育った場所を、“バケモノの巣”と表現することを厭わない少女。彼女をそうさせてしまった一端は、間違いなく自分にあるのだ]
クラリッサ。
[彼女の頬に、そっと手を当てた。 上手く言葉が見つからない。 ただ、なんて憐れな子なのだろうと思う]
あなたは、本当に良い子ね。
[結局、口から飛び出したのはそんな言葉で。 穏やかに微笑む女医は、間違いなくどこかが狂っていた。 ふたりの関係は、ひどく歪だった]
(254) 2015/07/12(Sun) 01時半頃
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ねえ、モスキート。お腹が空いたなら、ご飯たべようよ。
[ 僕はこてりと首を傾げた。 濡れてずり落ちる機械を直しながら、床へ落ちた彼のくつわを拾い上げて、また彼の背からも手を離した。 他に何か用事があるなら、とプールを尻目に見ながら、彼にくつわを手渡して。 ]
君の知りたいお話をひとつ、してあげるから。
[ ―――ああ、だから彼は余計、外を焦がれてしまうのかなあ。なんて。
でも、僕はそれ以外に、正しく欲を止める方法を知らなかった。 ]**
(255) 2015/07/12(Sun) 01時半頃
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次は、もっと良い薬を作るわ。
[もっと強い薬を。 クラリッサの身体にある“ヒトではない証”をすべて消し去ってしまえるくらいに、強い薬を。 彼女は「私に出来ることなら何でも」>>240と言ってくれたのだ。 だったら、この“実験”への協力も。彼女の望みなのでしょう?]
また、ここへ来てくれるわね?
[その結果、クラリッサがどれだけ苦しむことになろうと。 例え運悪く×××しまったとしても。 それが彼女の望みならば。 自分は、それを利用するだけだ。 アマルテアは自身の倫理観と罪悪感に、そっと蓋をした]
(256) 2015/07/12(Sun) 01時半頃
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― 部屋の前:廊下 ―
[ ぷあ、としまらない欠伸をひとつ。 どのくらい経ったのか、気にする必要がないから 時計もないし、空も無い。
僕は自分の腹時計だけを頼りに起き上がる。
( あー、むり げんかい。喉乾いた……)
ばっさ、と飛んできた兄さんも腹が減ったと喚いているし まだ目元に違和感が残るけれど 流した泪のぶんくらいは水を入れねば乾いてしまう。
ぎいいい、と開いた扉、半分のぞかせた顔。 ちら、ちら、と薄暗い廊下を左右に見て ( 誰にも見つからないと、いいんだけどなぁ。)
足音など消せない足は、食堂まで密かに着けるだろうか。 ひんやりとした廊下の空気が 頬を撫でていった。]
(257) 2015/07/12(Sun) 01時半頃
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[それからクラリッサと何かを話しただろうか。 いつの間にか医療室の時計は、夜の時間を示していた]
まだ顔色が悪く見えるけれど。 今日は自室に戻れるかしら。 それとも、無理をせずこのまま医療室で休んでいく?
[クラリッサに優しげに問いかけて]
私は、まだここで。 しばらく、仕事をしていくから。
[今回の“実験結果”を、まとめなければならない**]
(258) 2015/07/12(Sun) 01時半頃
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―第一棟・図書室―
[道中で、誰かに会うことはあっただろうか。 図書室にたどり着くと、本を選ぼうとして。また零れそうになった溜息を飲み込んだ。 図書室は、無人ではなかった>>250。もっとも、それは当然予測できたことだ。 ここだと誰かに煩わされるから。だからこそ、私は第二図書室の方を気に入っているのだから。 できるだけ気配を消して、私は並ぶ本の背表紙を眺める。 最低限の礼儀は示すけれど、気づかれなければわざわざこちらから声を掛けることはない]
(259) 2015/07/12(Sun) 02時頃
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