261 甘き死よ、来たれ
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……そうだ。 うんうん、良い考えだよね。
[そう言うと、軽自動車はどこかへと走り出していく。 陽菜子の考えを誰かに話す間もないまま。
行先だけは決めていたから。]
(29) 2016/12/16(Fri) 08時頃
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―最期の時―
[わたしが聴き惚れていたのは、血の中から流れてくるような音楽。すべてが溶けてゼロになるような。ブラッド・ミュージック。
何かが耳に押し当てられていても、その事にも気づかなかった。]
ぁ……
[だけど、音楽がなりやんで、少しして。
流れ出ていく何か。
地面に広がりゆくなにか。
わたしの一部だったものが取り外されて残る感覚がした。]
[でもそれは嫌なものではなかった。
何か、残るんだ。
どこか安心感にも似た心持ちのまま、わたしの意識は途絶えた。**]
―ここはどこだろう?―
[気がつくと辺りは乾いていて、暑くて、寒かった。輻輳する矛盾した感覚。見えるものはぼんやりとぼやけて、何があるのか誰がいるのかも分からなかった。]
あー、……そうだ。
眼鏡、眼鏡。
[見えないのはきっとそのせいだ。無意識にかけ直す仕草。ぱちぱちとまばたきする。次第に視界がはっきりしたくる。
奇妙なことに、気づいた。]
えーと。尾崎さん、に、歌瀬ちゃん。
……その数字は、何?
[二人の頭の上にある数字。
カウントダウンのように、見る間に減っていってた。桁数はたっぷり八桁くらいはあるようだったけれど。]
ねえ。ねえってば?
[何度呼んでみても、わたしの声は聞こえてないみたいだった。それどころか居ることにも気づいてない様子で去っていく。]
……はぁ。仕方ないな、誰か探そ。
[とりあえず南シェルターに戻れば、冷くんがいるかな。そう思って移動し始める。]
――ん。あなた、誰?
[少し進んだところで、誰か――あるいは、何か?居るのに気づいた。首を傾げて、眺める。]
[彼女の頭上には、名前。
尾崎さんや歌瀬ちゃんと同じように。でも、違うのは。
さっきのカウントダウンの数字が見当たらなかったこと。
何故だろうと思いつつ、名を呼んでみた。]
中秀、春。ちゃん?
[ぴくり。
聞こえてはいる、気がした。しばらく待ってみようか。思い当たる事がないわけじゃない、し。**]
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― とある廃墟 ―
んー……ダメかな? 使えそうもないか。
[元はラジオ局だったそこに来ていた。 時折咳をするたびに。
そこに混じる鮮血には苦笑しか漏れなかったが。]
(98) 2016/12/16(Fri) 21時半頃
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[ラジオが無いなら勝手に放送すればいい。
どこのお姫様なんだって発想で動き始めたのだけれど。 どうにも空振りだったようで。
苦笑すると懐から煙草を取り出して一服した。
未だに貨幣を使って生活をする彼女。 それを妙な目で見る人も居た。 文無しなら相手にされないと思う人も居た。
ただそれでも――]
(99) 2016/12/16(Fri) 21時半頃
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[彼女は未だに奇跡を願っている。]
(100) 2016/12/16(Fri) 21時半頃
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―廃駅?―
んー…?
[何も変わっていやしない。
地面に自分の死体が転がってる以外には。]
えへっ、そりゃ無理に決まってるよなぁ。
[夢と現実は違う。
ドラ○もんやディ○ニーの世界じゃあるまいし。
勿論心の奥底から祈っていた"願い"なら神は振り向いてくれるのかもしれないが、思いつきの様な考えを口にした所で無意味なのは確かだ。]
[暫くその場所に佇んでいる、いや動けなかったと表現する方が正しいか。
すると藍がやってきた。]
…藍か。
すまねえな。
[届くはずの無い声を贈る。]
なあ、春ってのは待っても来るもんじゃねえ。
自分で奪い取らなきゃ、冬眠から目覚められないぜ?
[お供えとしてメリーの瞳を置くのは、やはり藍らしいなんて思いながら。
静かに立ち去る彼女に手を振る。]
…あばよ。
[中秀、春。ちゃん?
おっと再び来客か。
驚かすんじゃねえ、と声の主の方へと向く。
―――が、何かが違う。
いや、同じとも言えるか。]
お前は誰だ?
ってか、なんで俺の名前知ってるんだ?
どっかで会ったか?
[質問の嵐をぶつけてみる。
そして最後に]
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― 廃墟入口付近 ―
[車に戻ろうとすると、車に近づく影。 気が付くと笑顔で笑いかけて。]
どうしたの? なにか探し物?
それとも、雑貨屋に用事だったかしら。
[何かあっても良いように。 荷物は積みこんでいたから。
尤も、自分が必要なアンテナは用意して無かったが。]
(123) 2016/12/16(Fri) 23時頃
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[生前のわたしだったらきっと物怖じしてしまってたようなQの羅列だけど、いまのわたしには怖くなかった。淡々と一つずつ答えていく。]
わたしは小山内恵都。
あなたの名前は見えてるわ。
どこかですれ違うくらいはしたかもね。
[ そうして、ワンテンポ置いたらしい質問に、
ええ、とにっこりうなずいた。]
――そう、生きてる間に、シェルターかどこかで。
じゃあわたしからも尋ね返そうかな。
わたしの名前は見えてなかったの?
じゃあ、現世は見えてる?
現世の人たちの名前は?
その頭上に数字があることとカウントダウンされてること、その意味は?
春ちゃんがさっき見てた人、
彼女もうすぐ、こっちに来ることは?
いくつ気づいてたかな。いくつ知ってるかな?
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ノコギリにドラム缶ね……ノコギリはあったと思うから。 ええと……
[軽自動車の荷台を探すとノコギリを取り出して。 値段を彼に告げてから。ノコギリを手渡した。]
ドラム缶は流石に取扱いが無いなあ。 その代りになるものかぁ。
[考えては見たけれど。 今一つ浮かばなかった。]
(131) 2016/12/16(Fri) 23時半頃
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春ちゃんはさ、死後の世界ってあるとしたら、どんなのだと思ってた。
[ これは質問というより、語るための呼び水。]
わたしは、うーん、ざっくりだけど、たぶんね。
もっと平坦だと思ってた。
平穏っていうか。
もっと生々しくないっていうか。
[感覚的には生きてる頃とそんなに変わらない感じがする。現実に生きている人や物体に触れないことで、ああやっぱり、って確認してしまうくらいに。]
たぶん、この状態からでももっかい死ぬとか、しそうなくらいに。
幽霊とかゾンビってさ、ふつう眠ったりしないじゃない。
でも、なんか、……ふぁ。
急に眠くなってきたりとか、しそうで。
[わたしに合わせるように、だろうか?
春ちゃんも生欠伸したようなのが見えた。
まあ、思い込みと言われればそれまでだけど。
人は見たいものをみてしまう。
元人間の幽霊だってたぶん同じだろう。]
ん……と、ごめん。わたし、寝ちゃうかも。
[くらりと頭を泳がせた。
気を抜くとふわぁって身体が浮いてっちゃいそうだ。]
あ、でもまあ、まだ成仏しそうな気配はないから。
安心して?
[何を安心するかわからないけど、とりあえず。]
それと、天国に行ったりもしないから。
わたしは極楽送りが約束されてるのです。南無阿弥陀仏。
春に向かってまくし立てて、両手を合わせるとそのまま健やかな眠りについた。
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