人狼議事


233 逢魔時の喫茶店

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視点:


[何やら特徴のある厚めの紙に注がれていた視線は、
耳元に届く優しい風に、ゆるりとめぐり。

――今すぐ呼びたいのに。
お預けを命じられればくしゃりと顔を歪めて。
頬を擽る指先の冷たさに、自身の熱を思い知らされた。
言い付けを素直に守る処は我ながら可愛げがあると思う。]

  えっ、嘘、どこ

[遮られた言葉の代わり、
滑る指先にうっとりと目を細めた先の指摘に
はっとなって触れる部分には何の感触もなく。

嘘だと気づけば、またからかわれたと拗ねてみせる。
何が口惜しいって。
それでも構われて嬉しいと、こころのどこかが綻ぶことだ。]


――― 夜の戸張から ―――

[おれは、寝ても醒めても走らないから
何時も、公園を駆け抜け去っていたリツ
歩き、流れる景色を、今は二人で、過ぎた。]


 リツに、その心算がないから。

 ……… ないから、おれの勝手。


[それは、彼の所為にしたくない我が儘でもあった。
眉尻の角度も、唇の角度も、今は笑っている。
それで良い――― と、思う。]


――― 部屋 ―――

[大丈夫

そう言いながらも一度目を瞑るので
獏の身としては、 ……寝るのか、寝るのか?
そんな面で、横顔を眺めてしまったけれど。

足取りはゆるやかでも留まることはなくて
見慣れない集合住宅、人間なら見慣れた景色。
角部屋に案内を受けた。]


 ………


[青が目に安らぐ、視界。
きょろ、きょろ、視線を揺らすのは、許せ。]


[人間は、寝る前に歯を磨く。
人間は、寝る前に、着替える。

リツは、如何か、窺い、動くのならば、手を離す。
なにもしないなら――― ベッドか布団か、攫うのだ。
大の大人、おれみたいな図体が伴うサイズとして
如何なのだろうと言う感慨は、持たない。
狭くとも広くとも獏は約束を果たすので。]

 リツ。

[寝る前に、呼ぶ。
此処まで来ると、ねむい、また、おれは、ねむい。
獏の添い寝に誘って、夢の約束に、誘って。]


[夢まで伴えば――――…


此処に居るのは、獏だ。
全身を黒く染めた、やたら図体のでかい、獏。
でかい尻を地べたに付けて、細長い尾を揺らして
夢だろうと、ふわあ、欠伸を漏らす**]


―帰り道

―――、
……あんたが、そう、言うなら

[笑っていたから。
何だか照れくさくて、
目をそっと、そらした。]


メモを貼った。


 −それから−

[店内のあちこちで、いくつかの熱が灯る中。
緩やかに時は進み、やがて閉店の刻を迎えた。
昼の営業から、夜の営業までは数時間の空白がある。

常ならば一旦帰宅し、
食事や風呂、仮眠を取って過ごすのだが。
水以外は喉を通らず、一睡もできなかった。]

  どーしちゃったんだろ、おれ

[あの男――千冬のことを、
ここ数年意識していたことは、違いない。

この地を去った養父の帰りを待ちながら、
いつしか彼の来訪をこころ待ちにするようになって。

また来年、と去る背を見送る度に、
これが最後かもしれないと、一時不安と寂しさに襲われて。]


[今年も、同じだろうと思っていた。
気まぐれにやってくる東洋の神秘。

しんしんと降り注ぐ雪のような静かな、優しさに。
触れたくて、振り向いてほしくて戯れを繰り返し。


口惜しいと呟く度に募らせた想いの、名は。]

  ――…

[思う処はいくつかあるが、とにかく、会いに行こう。
籠った熱を落とすようにシャワーを浴びて、

職場に飲みに行くのに、畏まるのも気恥ずかしい。
あえていつも通りの、
カットソーとデニムというラフなスタイルで。
髪型だけ、営業時と同じように緩く束ねて部屋を出た。]


  お待たせ。――…いこ

[待ち合わせの場所は何処だったか。
時刻通り姿が見えれば、なるだけ平静を装うも
逸る鼓動と、火照る体温は制御不能。

並んで、慣れ親しんだ路を歩く間。

訊きたいこと、言いたいこと。
何から、どうすれば。

繰り返しの年月に終止符を打てるだろうか。
ちらちらと横目で伺いながら、
ここ数日ずっと思案していることを、脳裏で繰り返す。]**


メモを貼った。


ー 夜 ー


[夜中に閉ざされたこの領域は、昼間と色違う姿を現す


     ―――、そしてそれは、自分も同じ事。  ]




[例えば長いこの黒髪は、夜に似合わぬ細い銀糸と変わる。
それは、トレイルも恐らく見慣れた姿でもあろう。
隠すものでは無いと、夜には曝け出していた。


されど、変化はもう一つ。
それは、トレイルが義父を強く思い続けた間の話
ホレーショーと口論を交わした翌年から


人前で晒すことの無くなった
深紺の着物の中の、―――純白なままの翼。]
   


[待ち合わせ場は
デニーが経営するバーの路地裏
時刻ぴったりに来たので到着はほぼ同時か。


今は外。当然昼間と同じ容貌の自分の双眸が
視界の端に捉えた影は
遅刻とは程遠い誠実さ
行動で以って性格を裏打ちしてくれる人物の姿

自然と両の足は、彼の元へと近づき
そのまま夜の喫茶店へと、共に向かおう]


   …似合っている。


[真面目にか、それともからかいか。
されど、一途な眼で普段と違い彼を見遣り
そっと指差すは、束ねた彼の前髪ら辺]



[ それと、 ]


  …――ひとつ、問おう。
  普段の私と、夜の私、お前はどちらが好ましい。


[彼が何を問うか葛藤する間
此方は、今日この時間まで
先に伺おうと予定していた疑問を放ち]


   店に着くまでに応えなければ、このまま…。
   

[静かに奪ったのは、自分より一回り小さな彼の利き手。
繋いだ指。
先程から地味に刺さる視線を、無理に合わせ
最悪を口にすると、薄く笑い飛ばす]





[間もなく着く、喫茶店へと歩む足音
スーツケースを引く、不協和音


其れ等を越えて、耳横でずっと響くのは
随分と懐かしく思える、自分の心臓の音色だった**]


メモを貼った。


―部屋

……寝ない

[視線をかなり感じたので、
大丈夫、と同義のつもりでそう言った。

自分の部屋に誰か居るというのは、
ちょっと、不思議な感じだが。]

ベッドとか、座ってて、いい

[小さい椅子とか、
机備え付けの椅子とかでもいい。
エフはきょろきょろしている。やっぱ、始めてくる部屋だし、落ち着かない、か]


[酔っているとはいえ、
ざっと、シャワーくらいは浴びよう、という考えくらい残っている。

指先を離すとき
名残惜しげに思ってしまうけど。]

……あんたは、どうする?

[シャワーとか、使いたいならどうぞ、と言うつもり。
いつもどおり、
上着を脱ごうとして
エフの視線、感じて慌ててバスルームのほうに隠れた。


なにしてんだ。
どういう意識の仕方だ。
おちつけ]


ベッド、狭いかも

[ふわっとした意識で、
寝にくかったら悪いな、と
思いつつ歩みよる。

そうして、そのまま、攫われる。]

……―っ、

[寝る前。名前を呼ばれる。
添い寝されるとか、いつぶりだ。]

…エフ、

[そっとささやくような声になる。
どきどきはするけど、それ以上に、心地いい感。意識がほどけていく、ねむい。]


―夢の中―

[――閉じたはずの目を
また開いくと――そこは、黄昏の街。
俺はぼんやりと、座り込んでいる。


ふわぁ、と気の抜けるような
あくびが聞こえた。
そろり、と顔を向ける。見上げる。]

――ぁ

[大きな、大きな、獏がいる。
長く伸びた、夕暮れの影みたいに真っ黒。]

――…、エフ?

[遠慮がちに名前を呼び、そろりと手を伸ばす。すごい。夢の中だろうに、触ってる感覚が、ある]


メモを貼った。


―夢:黄昏の街―

……――でかい

[でも、こわくはない。
コテツ店員に、言ったとおり]

こんな、でかいんだな、……あんた

[ちゃんと、約束通り。
ゆめのなかに、いる。]


[ 黄昏。
いつもの悪いゆめは、
珍客に関係なく、
思い出を再生した。 ]

――ぁ。

[ 通りの向こう側。
親友と、あいつの彼女の背中がある。]

……、……
――

[ 俺は、ただそれを見つめているだけだ。 ]

……エフは、この夢、覗いたのか

[ 俺はいま、どんな顔してるんだろう。
自分じゃ、分からない ]


[月明かりと、薄暗い街頭の中。
浮かぶ漆黒の揺らぎは、
夏の夜風に擽られた艶髪。

昼間の、誰もが知る姿。
しかしそれは、彼のすべてじゃない。
それをトレイルはもう知っている。

長らく眼前に晒されない翼。
無くしたのか、秘匿しているのか。
その理由は知らない。
気にはなっても、詮索したことはなかった。

彼に限らず、人ならざる者の夜の姿は、
人間の利己で悪戯に暴いてはいけないと
養父からきつく教えられていたから。]


  −−…どーも

[開けた視界に映る双眸の真摯さに、
からかい混じりでもいいやと世辞を受け取り。

答えを探し、見つからない間に投げられた問いに、
物思いは一時中断して、睫毛を震わせ。

そうだなあ、としばし逡巡するうち、
心地いい涼が掌に伸び、指先を包む
利き腕から心臓まで電流が走った。気がした。]

  ……

[答えはとうに出ているが、でも。
店に着くまでは無言で、歩く。
逸らそうとしても捉えられる視線に、
愉快そうな笑みに、つられるように笑って。]


[手を繋いで歩くなんてこどもっぽいと、
数年前のトレイルならすぐ振り払っただろう。

今はそんな、もったいないことはできない。

ぎこちなく指先に力を込めたり緩めたりを繰り返し、
温い夜風の中を進む。

石畳を踏むスーツケースの無骨な音が、
心音を誤魔化してくれないだろうか。
重なる鼓動は、より大きく響いて耳朶を擽る。

やがてツタに覆われた、怪しげな外観の先。
普段開けることのない扉が見えれば足を止めて。
一寸、向かい合い。空いている方の手で、
さらりとした絹の如き一束を掬う。]


[ここから先は、彼らの領域。
中に何が待ち受けているかなんて知り尽くしているが。
客として訪れるのは初めてで、深く息を吸う。

畏れは、ない。不安もない。
あるとすれば常連や同僚の揶揄くらい。]

 さっきの、あれだけど
 ……どっちも、千冬でしょ?
 選べないから、楽な方でいいよ

[本来の姿の、天然の銀髪や広がる翼も。
仮初めの東洋の神秘も、
トレイルにとっての価値は同じだ。

欲しいのは、惹かれたのは器だけじゃない。]


  あ、でも店が混んでたりして
  邪魔になりそうだったら
  翼はしまっといて

[さりげなく、意を決して名を呼んだ後。
こみ上げる恥ずかしさとか、
解禁となった悦びを誤魔化すように早口で追加するのは、
店員らしい注意混じりの冗談。

摘まんだ毛束を離すついでに、
するりと払うように肩を撫でて、いざゆかんと扉に手をかける。]

  ……どーも
  どこ行く? 奥のテーブルでいい?

[できるだけ、なんでもない風を装って
出迎える店員に軽く挨拶を送る。
自然に剥がれない限り、指先は触れたままで。]**


メモを貼った。


メモを貼った。


――― 寝る前 ―――

[喫茶店に人間を招いたことも初めてだが
人間の部屋に、きちんと玄関から訪れたのも初めてだ。
鍵の掛かっていない夢の扉を開くこととも、違う。

ぼんやり、眺めていたら、促す声
獏は素直なので、うん、と、頷く。]

 天井、届きそうだな。 …… 届いた。

[背の丈と、腕の長さで、言った矢先。
伸ばした指が天井に触れて、笑った。
それから、ベッドの隅に腰掛け、リツが来るのを
じい、と、躾けなく、眺め待っていたのである。]


[解いた指先は、両手を組み、腕は膝の辺りに。
すこし気を抜いた姿勢で
如何するか、と、リツに対して、首を傾ぐ。

明らかに、何を指されているのか理解していない顔。
だから、なにが、と、言おうと、口を開いたのに
視線の先がそそくさと逃げてしまったので、瞬く。]

 …………
 …………

[おれは素直なので
座って、と言われたベッドから
リツが戻って来るまで離れなかった。
物言いたげな面くらいは、していた。]


――― 夢 ―――

[獏の添い寝に
腕で攫って、呼ぶ名前を子守唄に、目蓋を降ろした。

その次の視界、目を開けば、黄昏の街並み。
夕陽に向かって男女が仲睦まじく歩く、光景。
その陽を受けて、おれの影が長く広く伸びていた。]

 うん。

[ぱたん、細長い尾が地面を叩く。
どちらが先に見付けたか、僅差でリツだな。]

 おはよう。
 腕が短いのは、難だねえ、
 今まで考えたことがなかった。

[両腕を揺らした。人間の半分だ、この長さは。]


[でかいだろう、と、黒い生き物は、黒い目を眇める。

短い足で器用に尻餅を付いていて
視線の先に、知らない二人組、改めて映す。]

 あんたの夢を覗いてから

 ずっと、この夢は何なんだって、考えてた。
 悪夢なのか、大切な夢なのか。
 結局、後者……… だったのか?
 


メモを貼った。


― 夢 ―

[尾が揺れる。
なんだか、愛嬌があった]

――おはよう、

[夢の中で、変な感じ、だけど。
 部屋の中でさえ
天井に手がつくくらいだったのは、この元の姿のせいもあるに違いない]

そか。
届かない、か。

[ゆれる腕にも愛嬌がある。手を伸ばしてみたが、でかいせいもあってなかなか遠い。]


―夢―

―――、……

 [黒い獏から、遠くを歩く男女の背に顔を向けた。遠い、とおいな。親友(あいつ)は、何にも知らないのだ。しあわせそう。
唇を引き結ぶ。
なんだろう。
なんと、言おう。]

……大切だけど、
悪夢でもある、か な

……俺の中で、だけ。


[ぱたん、ぱたん、左右に揺れる尾は
おれの意思と関係なく揺れるので、始末に悪い。

夕陽が落とす影の下。
立ち上がるのが億劫なわけではない――― が
起き上がらず、のったり
5M近い高さからリツを見下ろす。]

 うん………

[よいしょ、まあるく腰を折り曲げる。
短い足の裏を、ぽふん、リツの頭にタッチ。]

 届いた。

[しかし、バランスが取り辛い、全体的に震えている。]


[夕陽に向かって歩く二人の影は
遠いのに、距離は開くはずなのに、消えない。
此処は夢のなかだから。

しあわせそうな様子は、背中を見ても、分かる。]

 遠くに行ってしまうから、?
 それとも、一緒に居られないからか。
 …… ああいう、風に。

[どちらが、その大切な背中なのか。
確かめるように、黒い目は、まるまる、眺めて。]

 うん。

 でも、大切な悪夢なら、あの日に食わなくて良かった。


[ぽふ、と触れた足の裏、
頭を撫でるように触れてくる]

……転げるなよ?

[そ、と。撫でてみる。
うん、なかなかの毛並み。

――店で、エフは聞く、と
言ってくれたから。
俺は、いままでろくに開いたことのない思い出の蓋をじわじわと、開けた]


……俺、 仲いいやつがいて
……そいつに、彼女ができた

そのときのこと、夢に見てる


[掌、と呼ぶより、前足と呼んだ方が良い。
重心を傾けるのも難しくて
ぽん、ぽん、二度リツに触れて、離れた。

身体を起こすとそのまま引っ繰り返りそうだ。]

 ………

[転びそうなので返事をしない、素直なおれなので。
撫でる指が心地よくて
バランスも取れなくて、前後にゆらゆら揺れる。

――― それから、身体に比べれば小さな耳を
ぴくぴく揺らして、彼のはなしに耳を傾けた。]

 うん。
 …… 何時のはなしから、繰り返し、見てる?

 あんたは、寂しくてああいう顔をしていたのか。
 


[返事がない。大丈夫じゃないのか。
ゆらゆらゆれる。そっと支えるように
手を添えたまま。]


――、そう  だな

遠くに、 行かれたみたいな。
気持ちに、なった

半年―――いや、もう、ちょっと前か。

[自分の頬に片手を当て、それから胸の前に滑らせて、服を握り締める。]


……情けない顔、してたか

[じわじわと、喉の奥が痛むような感覚。]

さみしい――くるしい。

なんか、どうしようも、なくて。
いまだに、こうして夢に見る。

[俯く。ああ、バーじゃ耐えたのに、泣きそうだ。]

……食べなくて、よかった、っていったけど
あんたに食べてもらえたら、
見なくて、すむようになるのかな……


[前後する身体を腕に支えられて
巨体のくせに、体重を、感じさせない、夢だから。

何処か首だか分からない首を傾ぎ
リツに目を落とす。辛そうにも見える、仕草。
眇めた視界に見えるのは、主に頭上だ。]

 そういう感覚は、おれも、分かる。
 寂しい……… ような気持ちだな。 うん。

[頷き、]

 半年。
 …… も、ずっと、見てたのか、あんたは。

[人間の半年は短くもない、と、分かるので
すこしおれまで寂しくなって、表情を歪めた。
分かり辛い。]


 
 してた。

[隠れていたから、背中ばかり見ていたが。
夢に生きる以上、なんとなく、理解る。
――― そういうもんだ。]

 いまも、苦しい?

[尋ねる声は、囁くくらいの、温度。
鼻先を額の辺り、狙って、押し付ける。
泣きそうな気がして、撫でるんだか、そんな、ぐりぐり。]

 これは、リツの夢だから、なあ。
 あんたが辛いままだったら
 食っても、…… 夢を見たことを忘れる、だけだな。

 おれは、あんたが辛くなくなれば良いと、おもう。
 



……ん


[わかる、と言ってくれることに
変な話、安心する。
大きいのに、夢の中だからか
ふわふわと、雲のように軽いおおきな獏]

みてた

――最初のころより、随分、ましになったけど

[仰ぎ見る獏は
わかりづらいながらも
つらそうな顔をしているように見えた。]

……もう過ぎたことなのに
俺が女々しいだけなんだ


[黄昏の向こう、親友に向けてたのは
こい、だったのだきっと。
気づいたときには何もかも手遅れの。]

――そか

[はっきり言ってくれるから、
いっそ、たすかる。
ぐりぐりと寄せられる鼻先、夢の中だからと言い訳して自分も摺り寄せた。震えた息と一緒に、目じりから涙が伝ったのが、わかる]

……――、忘れるだけか
それじゃ、いみ、ないな

[ごく微か、苦笑気味。小さく、息を吸う。]


[店内はいつもより隙間があった。

優しい悪魔が、新米魔術師のために。
或いは親交の厚い店員の、特別な一夜の為に。

早速、無償で働いてくれたお陰、
だとは気づかぬまま。

これくらいなら、休んで問題なかったかと。
密かに安堵の息を吐く。]*


――つらくなくなる、……か

[額に押し付けられる鼻先、撫でながら
意を決するまでの
長い間のあと]

……、――あんたと、いると
……うれしい


[ぽつりと、俺は。
正直なきもちを、
告げる]

たぶん、
つらいことも、
少しずつ、忘れられる、気がする くらい


[人間の感覚と差異があれど
理解は出来る、と言う感覚は、伝わったか。

短いいらえに安堵を覚えて
ゆら、ゆら、揺れて、リツに支えられる獏。
瞬きは、ゆるい、未知ではない感覚よりも
彼が辛そうにしている方が、苦く、感じて。]

 過ぎたことでも、それも、大切だったんだろ。
 あんた、悪夢でも、大切だったって、言ったな。
 その、……… 友達のこと。

 忘れたら、あんたじゃなくなる、と、思う。
 



なん、だけど


その

[そこまで言って 恥ずかしくなった。俯いたまま顔を上げられない]


 
 だから、覚えていれば、良い。
 ……… どっちにしろ、おれにそれは、食えない。

[黄昏の向こう側に進んでいく背中。
相変わらず消えない背中を
隠すみたく、ずんぐり、姿勢を、傾けた。

影が、深く、長く、伸びる。]

 その上で、

[視界で、涙が零れた。
夢でも、確かにそれは、黄昏色を映して
きらきら光るその筋に、鼻先を押し付ける。
拭う、溢した苦笑いごと。]


 
 おれの方、見てろ。

[喫茶店で、そう、口にしたのはトレイルだったか。
ことばの矛先もまるで違うけれど
此処で借りるのは、ズルじゃあないと、良い。

うれしい
そう告げるリツに、重ねるかたち。]

 うん。

[正直なことばが、羞恥心か、何か
消えそうになるまで、小さな耳で、聞いて。]


 
 そりゃあ

 嬉しいが増える方が、良いねえ。

[ふ、は、洩れる、笑み声、獏から。
苦くした表情が緩むのを、感じた。]

 おれも、あんたと居ると、楽しい。
 辛そうに見えるのは、辛い。

 ……… だから、おれの方を見ていれば、良いな。

[そう、ことばを重ねて、しかし
獏の身体は矢張り、腕が短くで、リツの顔
上げさせるには、至らないのだった。]


[獏は、身体を擡げて、リツの身体に身を寄せた。

腕は届かないが、―――口も、ことばも届くから
良いか、と、うれしく、笑い声を溢して。
起きるまで、起きても、このままで居る心算で**]


メモを貼った。


  
[夏の空は、冬より低い位置に、蒼が広がる。
率直な問いは、湖水を閉じ込めた彼の瞼を振動
隣に居る彼まで影を伸ばし、意向を待つ最中


―――…
一向に返事が来ないと
僅かばかりの驚愕に、彼を盗み見る

それを大義名分に
ずっと、指を繋いだ侭と、申した筈
悩ませる意地の悪い質問だった自覚在れ]



[ただ瞳に映した
曰く初心を見せる横顔に、間を置いた。

離す理由の欠如した指から伝わる
上がり始めた彼の体温は
昼間で知った温いものより、肌に馴染み]



   ―――何時か離すのが、 惜しい…な。


[それに今宵は少し危険な薫りが、孕んだ空気。
トレイルに不和無く、此処で出逢う夢夜を呉れた
満月の悪魔に、宛ら心中で礼を述べ

ふ、と息を付き強弱見せる彼の指を愉しむ
何時人が訪れるとも知れぬ、路地裏で勤しむ密事]



[肉球或る猫の足音より
静かに歩むは、時間稼ぎ

本末転倒に。新鮮な笑みを見せる彼を
このまま浚う事も、一瞬浮かんでいた故
目的地に誘えば、離そうとした手を引き止めたのは
黒髪を掴む彼の指]


   ――― …………、


[
何方かを出は無く、自分自身を
求めて貰えることが、受け入れられることが。
 こんなに喜ばしいなんて、初めて識れた。
それから]




   ――……名前 、
   奥の席でも、読んでくれる?

   
[トレイルの弱々しい声に、隠れた主張に弦月を描く唇。
彼の恥辱を理解しながらも、繋げた瞳は誘う色。
己の稚気を受け入れるよう、捏ねる駄々は稚く。

離れていく指を追うよう
頭部から毛先まで、銀色が髪上を走った]


[開いた夜の扉、トレイルの後に続いて侵入
近くに店員、または店主が居れば、簡素に]


   とりあえず酒に合う つまみ。
   トレイルも口にできるモノを。


[寝癖の残った彼の襟元を見つめて銀糸を揺らし
着いた奥のテーブルに腰かける前に
指を名残惜しく離そうとしながら]


   仕事以外で、此処に来ることは稀だろう
   ……… 緊張するものか


[スーツケースを机下に仕舞い
漆黒に似た双眸は、ジッと、間近から彼の顔貌を覗いていた。]


メモを貼った。


―夢―
……、――

[ゆらゆら、ゆれる獏。
なんだか、揺りかごみたいだ。
手のひらでゆっくり撫でる]

――、ん。

[大切だった。
そう、大切。きっと今も。]

……うん

[ 涙声になるのがわかる。
黒くて長い獏の鼻顔を埋めるような、ありさま]


[長く長く伸びる影。
 包まれる心地がして、
ほっと、する。あたたかい。]


―――、エフ……


[見てろ、なんて、
ずるい。涙が溢れてしまう。]



――……――っ

[ 促され、少しのためらい。
そろりと、見上げる。
つぶらな目が俺をみている。
押し付けられた鼻先、抱きしめた。]


……、見る。
―――あんたの方、……だから


[あんたも。見ててほしい。
小さいわがままは、抱きしめた鼻先に行きと一緒にとけた。
気づくのが遅すぎた知られざる恋は、顧みられることなく朽ちたから。]


―自室

[――どれくらいか。
夢の中の黄昏のゆるやかに、
明けるころ。

現実の、ベッドの上でも、
泣いていた。]

……ぁ、…

[ぼんやりと目を開いたとき。
エフの腕を強く抱きしめていたのに気づいて、幾度目かの羞恥におそわれたのだった**]


メモを貼った。


[身体の一部を繋ぎ、
歩く足並みは微妙にそろわない。
ずれる度に揃えようとして、次第と速度を落とす。

最後にこうして歩いた相手は養父で、
その時のトレイルは今よりずっと小さかった。

庇護を受けるのでなく。導かれるのでもなく。
少しでも近くで、触れたい衝動。
触れたら、離れがたくなる願望。
混ざる体温に、感情も共有されたのだろうか。
囁きに頷くかわり、指先に力を込める。

いつかの、エフとリツの姿が重なった。
彼らもこんな気持ちだったのかもしれない。]


  ――…用事が、あったらね

[名前を。呼んだだけで。
そんな反応みせるなんて、ずるい。
店の中だけでいいの? とか
そもそもどうして、という疑問は音にならない。

タネも、仕掛けもなく黒から銀への変化に見惚れて、
誘うような瞳に吸い寄せられて、
紡ぐ言葉を瞬間失ってしまったようだ。

結果、可愛いおねだりには態とそっけなく返し。
それでも繋がりは解かずに扉に手をかける。

そうでもしないと衝動にまかせ、
何もかも放りだしここでないどこかへ
駆け出してしまいそうで。]


[来店の予定は、店員たちには既に知れ渡っている。
ケイが何やら妙なことを口走っていたっけ。

予想に反し、他の客と同等の出迎えを受ければ、>>*0
僅かに緊張をほどき、
普段常連客が占拠している奥のテーブル席へと向かう。
注文は千冬のそれに、空のグラスを2つ追加しただけ。

4人掛けの。昼間ゴロウ達と歓談した其処は
今は落ち着いた照明の元、静かな佇みを見せて。

向かい合う形で腰かけるために、
絡まりをほどくように離れる指先から銀糸、
その先の昼より鋭さと妖艶さを増した双眸を見つめ。]


  そりゃあ……稀っていうか。初めてだし
  緊張は、してるよ

  ここに、人間を招き入れるってことは
  それなりに、意味があること、だし

[種族が違う者同士連れだっての来店は、ままある。
しかし相手が人間となれば、また別だ。]

  ――…千冬
  
  千冬。その……そっち、
  ちょっと詰めて

[スーツケースを置き、奥に腰掛けた彼の。
向かいに行きかけた足を止め。
その手前の――つまりその隣の、椅子を引く。]


[背に翼を収めた彼には窮屈を強いるかもしれない。
でも、それでも。

一旦縮めた距離を、今は少しでも離したくなくて。]

  千冬
  ごめん、さっきちょっと嘘ついた

[彼に向けてやや斜めに身体を傾け、
肘をついた先に顎を乗せながら

覗き込むような角度で、隣の男に語り掛ける。]


  ここに客として来るのが初めてだから
  ――…じゃなくて

  千冬の、隣にいるから

  緊張っていうか、なんか、どきどきしてる

[きっと場所が何処だって、それは変わらないと。
悪戯を懺悔するように、困ったように眉を潜め。

一旦離れた掌を掴むと、自身の手首に導く。
時計の針と違い、不規則に脈打つ鼓動を伝えるように。]

  俺、どうしちゃったんだろ

[苦笑いを浮かべるように、くちびるの形を変えて。
独白めいた自嘲を、繰り返す。

ね?と。首を傾げた表紙に、
結わえた前髪が僅かに零れた。]*


メモを貼った。


――― 夢 ―――

[触れるリツの指に
眠たくはない――― 眠たくはないが
自然と、目蓋を降ろして、人間態と似た、半目。

擡げた鼻先には、面差しが触れて
濡れた感触を得て、それを拭う、押し付ける。
泣いていると理解しても
顔が近過ぎて、その泣き顔を見ることは叶わず。
たが、涙の感触だけを、拭い続けた。]

 はは。
 ……… いま泣かせたのはどっち、だろうねえ。

[過去の大切なものか、それとも、違うのか、と。]


メモを貼った。


[獏の身体は、重たくはない。
獏の身体は、体温があった。
何時までも落ち切らない黄昏の温度と、同じ。

腕を回すことは出来ない、短い腕で
傍目から見れば、これはこれで、事案だ。
拭っても拭っても溢れる涙
地味に慌てるのも、おれの方。]

 うん。

[今は、そのことばは、飲み込んだ。
その代わりに。]

 あんたが生きてる限りの、責任は取る。
 


 
 ああ、 ……… うん?

[すこし、間抜けたおとで。
あんたも、おれも、と、彼が言うから。
抱き締められた鼻先を揺らして、目を瞬かせて。]

 見てた。
 見てる。
 また、探すさ。

[とろりと崩れる、夢の終わりに。
確かに、そう、答えたんだ*]


――― 部屋で ―――

[目覚めたのは、変わらず、リツの部屋。

気付けば、朝陽が差し込んでいて。
現実でも泣いた跡の残る頬を
拭っていなければ、今度こそ、指で拭いたがる。]

 おはよう。

[食わなかった夢は、彼の記憶に残っている筈だが
いつものように、そう告げて、笑った。
部屋を出て行くのは、完全に陽が昇ってから。

――― 数日後には、また、喫茶店に誘うのだ。
公園で待ち構えて、と言うよりも、寝こけて。
まさかその時間が、客と店員に変化を齎しているとは
思いも寄らない、のだった。]


メモを貼った。


―夢―

[ 淡い体温に落ち着く。
短い腕は俺に届くことはないけれど。]

――、……頼もしいやつ

[生きてる限り。
ああ、ほんとうに、たのもしい。]


―自室―

―――、

[蜂蜜みたいにとろける黄昏の中、
 夢と現の狭間に聞いた。
胸の奥に、刻み込まれる。]

……お、おは、
   ……おは よ う……

[うろたえ、全面的に声に出た。
言ったこと、したこと、
いろいろ一気によみがえってきて
頭が沸騰気味だった。

――そばに居てくれるのは、
ほんとうに、ありがたかった、けれど。]


―あれから。―

[昼まで居る間、
ミネラルウォーターや、
よく食べているパンやらを
差し出してみた。]

……腹減ってるなら、
食べてよさそうな、夢、あったら、
……食べていいし

[俺の、夢。そうは言ったが、見分け方はあるんだろうか。]


―喫茶店への誘い

――、また、寝てる。

[エフは公園で昼寝中。
一風変わった待ち合わせといえば、
そうなのかもしれない。
会えるのを、心待ちにしてるのも、ほんとう。
そっと、顔を覗き込むくらい。

自覚してるとおり、俺は鈍い。
目の当たりにするまで、
客と店員の間の関係が変わっていることにも、気づかないのだった。]


――― 部屋では、 ―――

[夢と現、違うのはおれの様相。
なにも――― 夢を口に運ばなかったので
寝起き風情から一発、欠伸が漏れた。]

 ふわあ、 …… どんな顔だ、それ。

[夢とは異なる、リツの狼狽えように
眠気まなこのおれでも、指摘する。

涙を拭った指には、濡れた跡が残っていて
そういえば、涙を糧にする人外の存在も
思い出した。美味いのか、舐めてみる、素面で。]

 ………

[しょっぱかった、と言う顔を、した。眼鏡の裏。]


メモを貼った。


[そして、差し出される水に、パン

好んで口にすることのない
人間の食べ物に、まじまじ、興味を示す獏だった。
見て、一口食べて、糧にはならないが
リツが差し出す物なら取り敢えず食べる、素直さで。]

 死神。

 死神に追われてる夢、なら
 食べて良い夢だねえ。

[分かり易い、悪夢。
悪夢も見分けが付けやすいものばかりではないから
ぼんやり説明しながら、その日は過ごした。
見付ければ、きっと、夢に、食べに来る*]




[藍色の空より、近い彼に意識が向き
ゆっくりな時間稼ぎをしても
すぐに辿り着く目的地の扉前


期待したYESでは無く
ケースに寄るとは、はぐらかされた感覚
不満を表わすよう、繋いだ手に、爪でもたてようか悪巧み
――交わす視線の熱に、悪戯心が融けた


手を結んだ儘、緩慢な足取りで訪れた精霊

店内は想像より、人が少なく
マスターは相変わらずの愛想の良い接待か]


  


   

   ……お世話になるな。


[>>*1出迎えてくれたのは、親しい天邪鬼
黒がベースの制服姿に、柔和に声かけ]


  黒が基調とされた服も似合う。
  普段と色が違うだけで、随分と印象も変わる


[悪びれも恥じらいも欠如した、指を結んだ2人
4人掛けテーブルに向かう際に、簡素
されど長らかな立ち話は紡げずとも、喜色を噛んで

注文したつまみとグラスは間もなく到着]


  そう。 
  昼と夜では、招待する意味は変わるからね。


[実際はこの喫茶店に人外が人間を誘う、一般的理由に乏しい

されど、自分がと或る昼間に出逢った
梧郎を此の喫茶店へ誘った時と
今彼を招待した時とでは

自分の中でも
意味も、価値も、大きく変わる案件

予想を裏切らない返事に、頷きで応え]

  
  …… 狭いが、平気か

[言われた通り、起因を見出すことなく奥の席
冷気を失わない男の隣りには、呼気を感じる彼の音]


――― あくる日 ―――

[その後も、昼間は寝て、夕方は寝る、日々。
元々昼間の喫茶店に顔を出すのも
連日とは言えない頻度で、夜の方が多かった。

寝転ぶベンチは、先日蛇が座っていた、特等席。
仰向けにうたた寝。
眼鏡の掛けたままで、ちょっと、角度がずれている。

今日は金髪のこどもに邪魔されることなく
その為に、起きるまで、時間が、かかった。
何せ、そっと、静かにされたものだから。]



[―――嘘
 見当が行方不明な前置きに顔を寄せ]


   …おま、え


[知らず指は、彼の鼓動を、脈を聞き。
一度視線を外したが、再度湖水の眼に吸い寄せられる。
間近でぶつかる眼差しが、瞼も下ろさず問いかけ]


  ……その顔も、――…中々良いな。


[甘ったるく強請るような視線に
 煩い鼓動を鷲掴まれたような――そんな錯覚
参った、と静かに笑気を吐いて、そのまま]
 


   そう……それは私が、怖いから?


[自覚がないのか、此方を喜ばせたいのか。
どちらだ、と問いかける代わり
試すような口振りは、それでいて縋るよう]


   …――しかし、困ったね。
   そんな顔を見せられては、

   私は今夜お前を、 
   子供として扱えないかもしれない


[優しい響きを伴って注ぐ言葉は、穏やかな物腰を取り
相反、躊躇いを払った仕草で、彼の腰に腕を回した]




   …――もっと、近くへ。
   
    ほら、酒を注いでやるから。


[密会を交わすような淡い声量の囁きは
スーツケースから取り出した箱を開いて
中から、甘露の強い、日本酒を登場させても継続]


  グラスを持って。
  酔ったお前は、介抱してやるから、安心を。


[そのまま透明のグラスに、遠慮なく琥珀を満たしていく。
自分のはその後に。
されど彼の方が、アルコールの量が多いのは
逃したくないと言う、短絡な願望の所為だ。**]


[―――… ぱち。


いくらか時間をかけて、目を開く。]

 リツ。

[既に、逢魔が時に近い、時刻。
寝起きの口が、おはよう、より先に名前を呼んだ。
それから、両手を伸ばす、起こしてくれ。]


― 公園と、先日 ―
[――顔を見れば、思い出す。

 どんな顔だ、と言われたこと。
半分シーツに顔を隠しながら
「あんたのせいだ」
とぼそりと答えた。

意識してるのが
俺ばっかりみたいじゃ ないか

眉間にしわを寄せていたところで
ぺろり、となめられた。
本気で頭がショートした。――素面で!やるな!

そんな、その。意趣返し、こめて]

――今日は、俺の勝ち

[と。額をかるく、つついたのだ]


 −時は少し遡り−

  ……どーも

[店主からの出迎えは常と変わらなかったが、
同僚その1は少し違った。>>*1
昼間、ブローリンとケイの様子が少しおかしかったが
そういえばコテツもゴロウと何やら話していた気がする。

もしかしたら、千冬の爆弾発言も
聞き逃してくれていたのかもしれない。

誰より混乱し、舞い上がっていたトレイルは正直、
あの時とその後の記憶が既にあやふやだ。]


[千冬とコテツが、
装いの色彩について語るのを小耳に。
そういえば甚平の色がどうとかという話だった、
なんてぼんやりと記憶を手繰り。

厨房から姿を覗かせる同僚その2には。>>*2
目線だけで、挨拶を送る。

何だか感慨深い視線を感じれば、
いたたまれないような、こそばゆいような
複雑な心境で。

兄、というのは彼のような存在だろうか、
なんて想像してみる。

本人に伝えるかどうかは、
何れ運ばれてくる料理の出来映えで決めようか。
なんて生意気な思想を孕み。]


 公園―
[エフに名前を呼ばれるのは、すきだ。]

 ―――、…ん。

[伸ばされた両手を掴んで、
力をこめて引き起こす。
最初に喫茶店前でしたときと同じ。]


メモを貼った。


 −それから−

[以前と似た問答に対しての。
新たな解に、意外そうに目を瞠る。

昼と夜の違いについて、
把握していると改めて告げられば、より高まる鼓動。
それは緊張している時とも、似ていて。

遅れて届く、いっそ切なさすら感じる歓びに。]

  俺は、へーき
  千冬は? 翼、痛くないの

[座る席を決めるのに迷いはない。
すでにこころはぎゅうぎゅうづめで、苦しく。
隣で発せらる冷気で鎮静が間に合わないほど呼気に熱が、籠る。]


[リツの表情は、くるくる、回る。
公園で見掛けた際は
もっと、前だけ見て、表情は少なかった気がした。

理由を、もっと、理解しなければならないのだが
 『あんたの所為』
なんて言われてしまえば、尋ねるよりも
はは、と、抜けるみたく、笑う方が先に出て。]

 三勝二敗…… 四勝二敗だったか。

[小突かれて、後頭部、ベンチに逆戻り。
夢の分も数えて
指折る獏は、ぼんやりと、意趣を叩きこまれた。]


[今日、今、触れたのは、額ではなくて、後頭部。
別に、痛みはない――― あの日とは違う。

あの日は、半分、寝ていたし。]

 あんた、負けず嫌い?

[それでも、デジャヴする視界に、笑う。
伸ばした指はあの日と同じように甘えて
また、起こされる、立ち上がる。

そのまま指を離したがらないのがおれで
起こされたくせに、引き寄せて、先を歩く。
陽が落ちる、黄昏の夢と違う、じき星が出る。
ぽつ、ぽつ、街燈が点って、世界から取り残される。]


[情けないほど余裕のなさを素直に吐露できたのは、
じょじょに安心と、希望が湧いた所為。

困惑しているように取れる言葉に。
また、からかわれるかもしれない。
そんな予想は、少しどころでなく、外れた。]

  ――…は? 何言って……

[否定の言葉は、有耶無耶に途切れる。
珍しく先に逸らされ、噛み合う双眸の奥に。
漏れる笑みに参っているのはどちらか、なんて明白で。
口惜しさと、違う何かが混ざる眼差しを向けるのが精一杯。]


  違うよ
  ……怖いのは、千冬じゃない

[試すような問いに即答し、
やや憤慨したように眉を寄せ、彼から遠い拳を握りしめる。

怖いものがないと虚勢を張れない弱さに歯噛みして。
続く宣言が何を意味するのか、
今はまだ理解が及ばない頭は、むうと目を細め。]

  何言ってんの
  そんなことされたら、困る

[先と違い、はっきりと言い切る。
そもそもまだ子供扱いするつもりだったのかと
半ば呆れるが。

――背中を通り抜け、腰に回る冷気に。
大げさに跳ねてしまって、頬に熱が集まる。
突然感じた冷たさに驚いたのだと、言い訳しながら。]


  ――…ん。ありがと

[この位置で、距離でしか届かない程度の声を追うように、
言われるがまま、身を寄せる。
こんな時だけ素直に応じる処は我ながら可愛げがあると思う。

グラスとつまみが運ばれて、酒瓶が現れれば
漸く約束の杯を交わす時が訪れる。

以前と違う、琥珀色でより甘さが漂う香り。
追悼会で飲んだ酒はどれくらいの濃度だったっけ、
なんて思い出しながら。
注がれる量の違いに首を傾げるも、深く考えることはなく。]


―公園

――、……

[こんな、こころ乱されるのは
本当に、ひょっとしたら
初めて位かもしれない。]

わらうな。

[何か、また変な顔をしたのか俺は。]

――たぶん、それくらい。

[ まだ負け越しだ。]

負けず嫌いだ。

[そこは、自覚がある。掴んだ手は離されなかった。引き寄せられる、その手の熱に翻弄されっぱなし、で]


  ……だから、こどもじゃないって
  自分の限界くらい、知ってるし

[介抱の心配は無用だと。
虚勢というよりは、威勢を張り。

――…しばし無言で、グラスを見つめ。
それから、すぐ隣の男に目線を合わせて、淡く、笑う。]

  じゃあ、……そうだな
  千冬の、これからの旅の無事を祈って

[乾杯、と端を軽く触れ合わせると、
ひとくちめを勢いよく喉に運び入れる。

嗚呼、そうだ。こんなことも、今夜限りで。
そう遠くないうちに彼はまた去るのだと、
唐突に、思い出してしまったから。

少しだけ睫毛を伏せ、憂いを振り切るように。]


  はぁ……っ、美味い、ね
  これ何ていうの?

[喉奥が灼け付くような感覚が、むしろ今は心地いい。
二杯目を要求する早さは、常の倍以上だった。


――そして。]


  ちふゆってさー……
  いっつもこっち来て、帰る時ってー
  
  どうやって移動してんのー?
  その羽で? それともワイバーンに乗って?

[緊張と諸々からの逃避か、
完全にアルコールに支配されたトレイルは。
やたら上機嫌で、先日夜間清掃時の話題をもち出し
日ごろなら有り得ない揶揄を飛ばす。]


[その後も、着物は何枚持っているのだとか、
寝泊りはどうしているのかとか。
少しでも彼のことを知りたい欲が、
どうでもいい質問となって次から次に、溢れ。]

  ――…おれのこと、欲しい、なんて
  言ったけどさ……

  どうせまた、置いてくんでしょー?
  おれが、……だから……

[記憶が正しければ二度、届いた願い。
けれどあの時、来年の話題もあったのは事実。

つまりまた、ここを離れて
トレイルの知らない秋と冬と春を過ごすのだろうと。]


[ベンチから眺める間は、視線は、上。
起こされれば、背丈の所為で、下。

笑うな、と、リツが言うから
10秒ほど表情を引き締めて、―――緩んだ。
おれの口は馬鹿になったらしい。]

 無理だねえ。

[素直に。]

 あんたが追い越したら
 ……好きなものじゃあなくて、欲しいものなら。

[あるか、と、ズルを厭った彼に、尋ねた。
見付けたいと言う欲と
見付けられたいと言う欲が、半分。
如何にも制御に行き詰り
せめて、繋いだ指に力を籠めた。]


  ちふゆ――…千冬……

[最後は言葉にならず、深紺の布地を握りしめる。
行かないで、の代わりに。

どうすれば、何といえばいいのだろう。
何故こんなにも、この男と離れ難いのか。

教えて、と縋るような眼差しを。たった一人に注ぐ。]**


 
 そういうところ、好きだな。

[負けず嫌いを覗かせるところ。

彼の負けず嫌いは、正統派だ。
それを好ましく、横顔を眺めて、黄昏時を歩く。
足音は、車の音は徐々に遠退いて
ぽつりと浮かぶ喫茶店の"BAR"の文字。]


メモを貼った。


――― トワイライト ―――

[夜の店、彼と潜るのは、二度目。
既に賑わいを見せている、席。

決して目新しくはない筈だが
店員としてではない席に、その背、視界の端。
おれは疎く、あれ、と首を捻ったり、した。]

 リツ、カウンターとテーブル、どっちが良い。

[先日はカウンター席、隣だった。
今回は、ボックス席も丁度空いていて
向かいか、隣か、どちらが良い、と、尋ねた。

―――そのどちらでも、彼が良いと言った席に
腰掛けるわけで、夢を越えて、甘やかしている**]


メモを貼った。


[ 見上げるのも、
見上げられるのも、きらいじゃない。

ただ、引き締めたはずの
口元がすぐゆるむのは、
どういうことなのか]

……なんでだよ

[唇を少し、尖らせた。
無愛想で名をはせるくらいなのに、俺]

――、……ほしいもの?

[ほしいものって、
それは、と今思い浮かぶのは
エフに関することで、どうした俺の思考回路――と、頬が染まる]


― トワイライト ―

あれ…

[ エフと同じほう、
トレイル店員と、
例の綺麗な東洋の人が座っているのが見えた。

――もしや、もしかして、と。

エフに夜のトワイライトに
誘われた経緯を思えば
鈍い俺でも、何かしら察するところは、ある。
邪魔をしないように、気をつけよう。]

……――どっち、ええと、
……

[迷う。顔が見えるほうか、隣に居られるほうか。]



か、 ……カウンターで

[考えて。
顔を見られて、
落ち着かない様子を晒すのは、と結論。
それに、隣に居られるのが、うれしい、し。]

―――こないだ、飲んだやつ
ゴールデンドリーム?

…また、飲みたい

[ちゃんと調べたのだ。
ひっそり、エフの横顔を窺って**]


[温かい視線を感じてた気がした。>>*2
それは、彼にとって義父代わりの
まるで家族のような存在から。

誰かに見守られて居るからとて
トレイルに対する態度が変わる配慮は
生憎欠如しているが

そんな温もり或る2人の関係は、純な羨望が募るばかり


さて、此処まで主張の激しい微熱を
トレイルに注ぐ一夜が在っても
未だ、純粋な心した東洋人との関係を疑う
古い友人の存在は、当然に知らぬ侭。


静かに、想い人だけを、視界に閉じ込める]


[そして長年蓄積した意思を持つ瞳は
彼の動揺の揺らぎを捉えても
硬く、甘く、彼に固定された侭である

翼を気遣う言葉には、有難うと応答
翼越しに身体まで、痛覚は現在通って居ない
  

寧ろ其方こそ、冷えた気温が辛ければ
正直に申告して欲しい――と

ジ、と彼の顔貌を見据えて、一言忠告
彼の傍が恋しくて、彼の体温が愛おしくても
自分の霊力の所為で、トレイルの躰に支障が在っては堪らない]
  


  ………

[不器用な彼だからこそ
つつける要素が在って、楽しいが
確かに可愛げ溢れた従順な態度に、また興が惹かれる

だから自分の限界を把握しているらしい彼に
過去に友人のバーで、随分酔っぱらった記憶は指摘せず]

   
   有難う、――――…乾杯。


[掠めたグラス同士、軽快な音を

その間、振り向けば姿の見えた2人には
軽く手を挙げて、挨拶を交わしたのみ]



―――――…

    見栄っ張りな、やはり子供?


[訊かれた日本酒の品名を応える間には
既に出来上がっていた彼に、宣言と違うと間近に溢した溜息
それでも自ら捧げた毒素に染まり色付いていったのは、愛しい過程]
 
  ……深夜に羽を広げて。
  まあ、数日位かけて此処に来るね。
  着物は、故郷には十数着……
  
[やがて質問の乱舞に、わりと隔たりなく素直に応え
寝泊りに関しては、それこそ山小屋を勝手に借りたり…
そこまでは、公表する事は止す

舌足らずな口調で、名を呼ぶ聲
子ども扱いして、からかおうかと、口を開いた刹那]


[届く声が
彼の本音が
クリアに鼓膜を震わせる。

彼が恐れていた矛先は、もしや自分に繋がって居たのかと
繋ぎ穂を合わせ推測すれば、途端左胸が重く痛む]


   ―――…トレイ…ル…


[慣れぬ毒素に、喉も、声も 焦がす想い人

 駄々を捏ねる勝手な幼児の如く
それでいて家族を待つ寂しがり屋な息子みたいな]



[考えるより先
服を掴む身体ごと
傍らにいる彼を、羽の様に、そっと抱きしめる。
端から見れば、酒に脆弱な彼の介抱をする仕草で]

  
   なんだ… お前は  …今も   
   誰かに置いていかれる事が、怖いのか


[温かさも 癒しも無い身体は、彼の体温を容赦なく浚い
されど、彼の瞳に篭るのは拒絶ではなく、期待を増長させる代物]


   私は、自分を必要とする人間の傍に居ないと
   ”消滅”する  脆弱な存在だから


  
   ………、お前も
   私を 欲しがってくれるなら
     
    傍から離れる事は、止すよ


[漏らした言葉は自分も自覚せぬほど乾いた。
彼が強請る以上に、己は不足を覚えていたのか
意図も込めず、掌は彼の背筋をあやすよう撫で擦り]
  

    トレイルは 私にとって   
    誰よりも―――……特別な人


[氷の腕の檻中
曝け出した額に合わせた唇は、夏の日差しなどより余程熱く、**]


メモを貼った。


メモを貼った。


[夜の喫茶店に向かう道すがら
背を伸ばせばまた見下ろす姿勢で、歩く、走らない。

口許を緩ませた笑みは
リツが拗ねたみたいな顔をするから
引き締め直すことも出来なかった。]

 たのしい、…… から?

[傍に居るだけで、見詰める、だけでも。
首を傾ぐような響きになったのは
伝わるかな……… と言う獏の心情に寄る。]

 あんた、そういうの
 さっぱりしてそうだなあ、 …あるのか。
 


[まるで
今はほしいものがある、ような反応をするから
好奇心も傾き、あるのか、なに、繰り返した。

そうして、幾らか静かに扉を潜り
店員の隣に、涼しげな色、手を振る仕草で
ああ、ああ、二度、頷いた。
ひとの手を此処に、引いてきたのだと、理解して。]

 うん。

[カウンターを誘う声に、意識が戻る。
隣に居られる場所に、腰を据えてから、手が伸びた。]


[あの日と同じように
近い指先を攫いたがる、手で。
厭われなければ、絡める、カウンターテーブルに。]

 はは、 黄金の夢。
 ……… いい夢が見られそうだねえ。

 じゃあ、おれも、前のと、同じ。

[オレンジ色の酒と、コーヒーの酒、砂糖抜き。
忙しそうな店長に注文して
"前の"と言う注文でも、彼なら、用意が叶うだろうから。

目の前に並ぶ、甘い、苦いいろに、視線を落とす。]


 
 そういえば

 酒……… 弱い?

[注文を終えてから
今更、と、隣に尋ねる。
知ったところで、カクテルは勧めるのだけれど**]


メモを貼った。


……たのしい ?

[ 思わずオウム返し。
首を傾いで、確認するみたいな仕草が見えた――からかうような意味じゃないらしい。]

そ、そうか。へんな、やつ

[くすぐったい心地でついぶっきらぼうに。
たのしいー―例えば俺も感じてる、あえてうれしい、とか。そういうのか。しまった、それだと俺も「へんなやつ」じゃないか]


俺にだって、
ほしいものくらい、…ある

[さっぱりしてそう、という感想は
わりと合ってるとは自分で思う。
走り込みも、
記録を上げたいというのも、
自分で叶えるもの。
強請るものじゃない。

でも、
エフに関することだと
どうしたって
こいつに願ったり、働きかけたりしなくちゃいけないわけで。それは。とても、気恥ずかしい。慣れてないんだ、そういうのは。食い下がるな、やめろ、やめてくれ。]

い、いいだろ、
気にすんなっ

[ 繰り返し聞くエフとの押し問答、店に着くまでひそひそ続いた。]


[トワイライトの先客、
ヴェスパタインは手を小さく上げた仕草も絵になる。トレイルを連れて来たんだ。邪魔しないように、の心構えは変わらずに小さく会釈をした。


座るカウンター、
なんだか馴染んできた、気がする]


――、っ、

[手を絡められる、
拒む理由なんてない。
期待、してるくらいかもしれない
繋ぐ手をちらと見ると、
気恥ずかしいような、うれしいような気持で、心拍数が上がる]

いいゆめだと、
あんたは、食えないけど

[死神に追いかけられる夢、とかなら食べると言っていた。うん、黄金の夢じゃないな。怖い本でも読めば見れるか。悪夢。]

……気に入った?

[あの、カクテル。それなら、嬉しい。 前の、と頼む姿はまさに常連。]



え?

[ 今聞くか。それ。
前回の酔い方を知ってるだろ。
ぼそり、と答える。
飲める方が格好いいのだ、というのは部活仲間の共通認識ゆえ、俺は立場が強くない。余談。]

飲むのは好きだけど
――あんまり つよく、ない。


[弱いと謂わないのはなけなしのプライドだ。あまり強くない、と弱い、の間にはれっきとした壁が――ある。多分。多分な。]

エフは、どうなんだ

[飲める方なのか。どうなのか。**]


メモを貼った。



「前の」でちゃんと分かるの
……すごいすね

[>>*5 エフのざっくりとした注文にも
スマートに答えている。
格好いい。]


メモを貼った。





[甘露の濃いアルコールは
同じ温度で隣の彼の喉を温める


喫茶店に広がる笑い声の中
男は遠慮しがちに、店主の姿を探した
>>*3 大切な店員との交酒は認証済みだが
持ち込みに関しての許可は、得て居ない立場故

――微弱ながらも
自分を気遣った優しさに関し、知る機会は
もう少し過ぎてからの話か**]


メモを貼った。


[昔からこの男の近くはいつだって温度が少し低くて、
それが何とも心地いいのは、
彼の正体と、夏の相性の所為だと思っていた。

でも――きっと、それだけじゃない。

体調を慮う忠告には、同じように返す。
本人が知れば嫌な顔をさせてしまうかもしれないが。

このまま、すべての熱を奪われ凍り漬けになったとしても。
此処を離れるつもりは毛頭ないし。

そんな杞憂すら起こらないほど、
ふつふつと滾る慕情は増すばかり。]


[まだ、意識が明瞭な時。
千冬が何かに気づいたようで、ふと視線だけを巡らせ。

先日昼夜共に変な客の仲間入りした同胞と。
彼をここに招いた常連客の連れが見えれば。
軽く首を揺らして挨拶を送るが、
先日のように声を掛けることはできなかった。

数刻前の想像を振り返り。、
客観己もあんな顔をしているのかと思えば、
あまりにも照れくさくて。]


[触れられた瞬間こそ、肌が粟立つ感覚に襲われたが
それも次第に、慣れていく。]

  んー? なーに
  俺のどこがこどもだっつーの
  
[胸の底に澱のように溜まった憂鬱も、緊張も。
ひとまずアルコールで沈めて。
呆れたような吐息が届けば、
重心を肩に預けるように身体を捩じる。

嫌がらせのようにも甘えているようにも見える仕草。
次第に蕩ける意識に、剥がされていく虚勢。]

  まじで。すげー
  おれも空飛んでみたいんだよねー
  今、ケイに頑張って貰ってるとこ

[建前に本音を混ぜ込み、やがて取り繕うことも叶わなく。]


  ――…千冬? どうしたの

[酩酊し、無様な醜態を晒してる自覚もないまま、
痛みを孕む声で名前を呼ばれ、不思議そうに顔をあげ。

そのまま、包み込むように淡く抱きしめられて
漸く、己が何を口走ったのか悟った。
そのまま、銀糸に顔を埋めるように目を閉じる。]

  ……違うよ
  "誰か"に置いて行かれるのが怖いんじゃない

[養父のことは、こころのどこかで得心していた。
母のように見限ったのでなく、
人間の元へ返そうとしてくれたのだろうことも。]


[初めて知らされた、彼の存在の儚さに。
数度瞬き、続く言葉に欲しかったものを、知る。

己だけに注がれる、視線と熱と、想い。
何かの代わりでない。
誰も変わりにはなれない、特別なひと。]

  ほしい。千冬が、欲しい

  ずっと、おれの傍にいて
  もう、置いて行かないで

[額に受けたくちづけは、不思議と冷たくなかった。
このまま近くにいて、溶けてしまうのではと不安になる程。]


[まるで幼子をあやすように、背中を撫でる掌に目を細め。
握りしめたままだった布を解くと、
銀糸に指先を差し込み、頬に手を宛てる。]

  千冬が――…好きだ

[そのまま指を滑らせ、親指の腹で頤からくちびるをなぞり。
重ねようとしたところでふと、
ここがどこだか思い出したようにぱっと、瞳を開き。]

  あー……

[羞恥と、酒精に頬を赤く火照らせながら、
そのまま胸元に顔を埋めた。

今なら恥ずかしさで、死ねる。]*


メモを貼った。


メモを貼った。


 
 たのしい。
 ……… そうだな、如何、言えば、いいかな。

[睡魔を含んだ半目と
繋いでいた指先を、引き寄せる。
ことばに変換することを諦めて。]

 ここが、跳ねる、たのしい。

[ぶっきらぼうな
変な奴 何度も口にされたことば。
今は、おれには擽ったく響いて、笑って。
引き寄せた指は、おれの左胸に。
人間とおなじみたく、鼓動みたいなものが、跳ねる。]


 …… わかるか?
 


 
 知りたい。

[口にしてくれるのかと思いきや
リツがはぐらかすので、欲が、口を突く。

 ――― 知りたい

二度、告げる、強請る、これは強請るものだと思った。
気にするな、なんて言われてしまえば
尚のこと気になってしまう。
絡めた指まで、力を籠めてしまう、そのくらい。]

 ずるい。

[こう言うのは、ズルだと理解している口振りで。]


[そして、カウンター席まで
繋いで、離して、繋いだ指は、テーブル上。
片手でも食事も酒も嗜める。
前回の来店で、それは、よく理解していた。]

 そうだなあ。
 きれいなあんたの夢は、見てる。

 …… たまに、如何にか、悪い夢を見てくれ。

[悪夢の作り方、図書館の蔵書にあるかも知れない。
それでなくとも、ホラー、夏の定番。
おれが勧めるのは如何なんだ、首くらいは傾ぐ。]

 苦くて、美味い。 あんたも飲んでみるか。

[並ぶ対照的なカクテル色>>*5
味も対照的なのに、そう、尋ねて。]


 
 ……… ふわあ、流石。

[おれの端的な注文を、しっかりと作り上げた店長に。
欠伸が混じるのは種族柄。
感嘆としたおとは、本物で。]

 覚えておく。
 あんまり、飲み過ぎると、また送る。

 おれは、……… あまり、酔わないなあ。

[顔色も変わらなければ、感覚も、然程。
ただし一度だけ、本当に強い酒を飲んで
此処で寝こけて、うっかり朝まで寝こけたことはある。

肩を揺すられても頭を叩かれても
夢のなかの夢まで、目が覚めなかったので、良くない。]


[そして、視界の隅に、トレイルの視線。
こちらに気付いたことに気付いて
眼鏡の奥、眠りまなこを、眇めた。
目配せを挨拶に摩り替えたつもりで。

話し声は、耳を欹てなくとも、それなり聞こえて。
匂い立つような、擽ったい、優しい会話に
口許を綻ばせるくらいは、許せ。]


メモを貼った。




  悪気のない子供なのだろう。
  …――それともわざと煽っていると?


[呆念の溜息を吐いても、ある意味逞しく反論を綴る相手
叱るようなたしなめるような声を落とし、躊躇いの無い疑問は
肩にかかる体重に、心の揺れを更に揺さぶられ、声尻が上がる]


  ………ケイは
  空へ羽搏く翼を 持っていただろうか


[そして、此処でケイを頼る言に
少しの不可思議と、それ以上の嫉妬]




   
   ………
   無償に 抱きしめたくなった。 
   とても。
   

[引き寄せた胸板付近で声がすると
いま彼を抱きしめて居る実感が、生々しく呼び覚まされる

即座に逃げてしまわない気配に、喉を揺らして笑気を漏らし
顔を上げた彼へ、介抱とは名ばかりの
甘やかす振りした執着も添える]



[温度も違う
立場も相違
常に心の中心にいて、遠い存在の彼を
何度も躊躇いながらも、結局
腕の中へと強引に納めている

ぬくい…、と胸に巡らせた筈の独り言が小さく唇から零れた。
やはり、彼は温かい]


     ――――  …



[ 調べは、視線をかちりと合わす
覗き込む眸は、相変わらず美しい。
固く閉ざした心の氷壁は、清らかな淡雪のように溶けてしまう

―――― 君の、熱で]



[息をするより、彼をもとめて。
何かを考えるより、言葉をもとめて
彼の熱が現状を混ぜ込んで真実へと誘った]


      トレイ ル…


[冷たい声を吐く唇に、甘い名を呼ばせる。]

 
      …――有難う。

   自分で告げた言葉。 今更、反故にするなよ
  

[願い、求めた、約束
クーリングオフなど許す善良な選択肢は、思考に存在しない]


[掌から頬に伝う体温
酒に酔っても、場の熱を浴びても。他と混じらぬ体温
そっとすり寄る仕草は、彼の顔貌に影が掛かろう
こんな顔、他の誰にも見せたくないのだから]



    ―――好きだぞ、トレイル。


[囁いた声は、彼にしか届かない。
彼だけが知っていれば良い、情熱。]


     置いて往かない……、ずっと、
  
      別つことなく、傍らに。
      ―――…私の、可愛い人。


……、 ぇっ

[ 左胸。
指先に触れて、
俺の胸のほうが、跳ねた]

……――ぁ、わ、……わかる…

[かあ、と耳まで赤くなっているのが自分でわかる。ちかい。近い、って]


 

[されど、近づいた気配の口付けは、来ない]
  
   ………、…… 

   此処が友人のバーだったら、いくらでも…


[普段なら柔らかな前髪が邪魔をして
揺らぎを測りづらい彼の瞳も、羞恥を曝け出している
されど、メンタルが瀕死寸前の彼に、告げた本音は
慾を自覚させた自分にも、ダメージが]


   ―――っ、……

[今だけは苦し紛れに
背を撫でていた手は、彼の顔を隠す
頬が熱い]



…――ぅ

[ 知りたい、と。

2回、含めるように。
耳の奥に、響いてくる。]

――ぐ

[ずるい、と言われれば。
言い逃れしようとしている自覚は、あるわけで。]

……そ、その、……
―――あんたと、なんか、色々、できたらとか、 ええと、

[まとまれ、言葉、まとまらない。]




   ……、結構飲んでいたが
    具合は大丈夫か。

   水でも……
  それとも、もっと酒を楽しみたい?


[苦し紛れに、羞恥を煽る雰囲気からの
解放の糸口を言葉にする

傍に控えた水を差し出す際、腕を解こうと

もっと酒を求めれば、用意されたそれらが
店員から運ばれてくるのだろうか>>*6**]


[ カウンター席について、つながる指をなお意識する。あんたと一緒に、とか、何言ってんだお前、と思われるんじゃないかと。]

―――がんばる。
ホラー映画でも、見てみる。

[とはいえあんまり得意じゃない、けど。]

ん、いいのか?

[くん、と体ごとグラスに顔を近づけて嗅ぐ。
コーヒーの、いいにおい。]

俺のほうは、……いっか、甘いもん、な。


メモを貼った。


メモを貼った。


[ちろり、なめてから一口。]

――にが、……

[うお、…ほんとに苦かった。
マジブラックだ。]


[シャツの上、左胸に、リツの指を添えて
その手の甲に、おれの掌が重なった。
夏の日照りは陽が落ちた今、そこまで暑くないけれど。

リツの体温が上がった気がして
こちらまで、少し、熱くなった感覚。]

 わかるか。

[目尻が緩む、すこし、顔色が伝染った。
繋いだ指先は、そうして降ろして。]

 あんたと居るのは、たのしい。

[もう一度、告げた。]


[強請ったことも、功を奏した

聞き洩らさないように、ゆるい口も、噤む。
最初は首を横に傾いで
次に、首を縦に、揺らした。
理解しているのか如何かは、表情に、出ない。]

 秋が来て、冬が来て、春が来て
 …… いろいろ、出来るさ。

 公園より遠くに、行ったって、良い。

[あのベンチはとても寝心地が良いけれど。
強請って得た答えも、大事にしたい、と
勝敗を放り投げて、強請る、次。]


[飲み慣れぬ酒に支配され、
身体もこころも弛緩すれば日ごろの鈍感さにも磨きがかかる。]

  んー? 仰ぐ?
  何、千冬も、暑いの?おれもー…

[ついでに耳まで遠くなるらしい。
子供じみた嫌がらせ、もとい甘えは加速するばかり。

自身の発する不用意な一言が、
これまでと違う焔を煽っているなんて気づけない。]

  なんかねえ、練習してるんだってー
  
[へらりと笑って、
追及されれば先日の社員旅行の話題を繰り返そうか。
共に空を翔けたい対象が増えたことによる密かな期待は、

白く美しい羽が潜む背に向ける、眼差しに閉じ込めて。]


[そうして、繋いだ指先の、手の甲を
人差し指で撫でる、おれである。

頭を撫でる要領で、いいこ、いいこ。

応えてくれたリツに。]

 はは、……
 本当は、見ようとして見るもんじゃあ、ないんだが。

[努力を、慈しむよう、目を眇めた。
目の前のカクテルには、まだ口を付けていないから
一口、促して、苦味を堪える顔に、また笑う。]

 ………

[繋いだ手を、ふと、解いた。]


[傍らを真似るみたく

おれも、リツのカクテルに手を伸ばす。
黄金色に気泡が揺れる、それを、一口。
グラスの縁に口を付けて、]

 あま。

[語調が強くなった、甘かった、当たり前だ。]


[突然の抱擁、じわりと混ざり溶ける体温。
どれもこれもが、トレイルのこころを綻ばせ拓いていく。
甘く、優しく、そして少しだけほろ苦い。]

  んー……?

[無自覚が継続しているうちは、
つられるように笑い、かと思えば拗ねる。
酔っ払いの機微は、山の天候より変化が激しく。

その激しさが時に、恵みのスコールを呼んで、
乾いた大地を潤わせ命をはぐくむ。

愛情に飢え、怯えていたこどもが、
漸く見つけた、確かな答えに手を伸ばすように。]


[ 問われて頷く、
ぎこちない、仕方ないだろ、緊張、してるんだ。]

わ、わか  る

[そろりと見上げた顔が
少し、赤いみたいで。
俺だけじゃない、と思えば
緊張も少し、ほどけるもの]

――、……そか
……よかった

[うれしい、と。俺は自分でもわからないくらい自然に、口の端をあげていた]


[ゴロウの祖父の訃報で思い知らされた
いくつかの仮定と、事実。
人間はどうあっても、彼らより短命であるということ。

千冬にとっての氏の存在の大きさ。

同じ東洋の血の方が、――彼に、似つかわしいと。
惹かれる想いと、後ずさる感情の葛藤。

懸念事項はほかにも、いくつもある。
それでも抑えきれず、
過去も、未来も一旦すべて放り投げ。

そして――掴まえた。]


[ ゆるく、ゆれる、
夢の中、獏の姿のときみたいだ。
表情からは、うまく、どう思っているかはわからない。]

――、……いいのか?

[公園より遠く。
それは、一緒に出かけたり。
それから。

――たぶん、俺の顔、輝いてたと思う。]


  そんな勿体ないこと、しないって

[今夜の約束を交わした時のような念押しに。
面映ゆい笑みを浮かべて。

もしかしたら、――もしかしたら。
この気持ちを、恋と呼ぶのかもと。

豪胆なのか、小心なのか解らない男に捧げた、
生まれて初めての、告白に。
秘匿し、独占するような仕草と共に
同じ言葉が返れば、歓喜のあまり箍が緩む。

場所を弁えない行動を瞬間引き止めてくれたのは、
僅かばかりの理性と、同僚の用意してくれた、料理の香り。]


[ 手の甲を撫でられる。
なんだか、とても、くすぐったい。
あやされてる、気分]

……でも、
あんたが腹減ったままのは、……なんか、悪いし

[俺なりの努力だ。
やったことな方面の努力だけど。]

――?

[つないだ指先が離れた。
あ、とひっそり指で追いかけそうになって、少し、まだ、遠慮]


[ 俺は瞬く]

甘いだろ。

[そりゃ、甘い。ふ、と小さく笑ってしまった]

苦手じゃないのか。


[リツの緊張が伝わった、ような
動揺を映すことも少ない面が、はにかんだ。
緊張を共有するような、感覚に、近い。]


 …………… 暑い。


[―――… あつい、ねむい。
昼間、あの日、公園で会ったときみたく
慣れない感覚を紛らわす為に
事実と異なることが、口を突いたんだ。]


[一度我に帰ってしまえば、立て直すのは難しく。
言葉にならない呻きをあげながら、
それでも身体を退くという選択肢を選ばない処に、
――惚れた弱みと、己の可愛げに自画自賛を贈って。]

  友人の……って。ゴドウィンさんの?
  それって――…

[ふいに漏れ聞こえた呟きに、意味を咀嚼すれば。
また違う動揺とざわめきが全身を巡る。

きっ、と。少しでも動けば触れ合うほどの距離で、
睨むように見据え。]

  今までは、……どうしようもないし
  気に、しないように頑張るけど

  もう、だめだからな


[恋愛経験がないからといって、
まったくそういう方面への知識がないわけじゃない。

養父はその点も、それなりに教育してくれた。
彼が去ってからは、兄弟のような同僚たちが。
たいがい、興味がないとスルーしていた。

最近知ったあの店の秘密と、
何もかも訳知り顔な男に刺すのは、初めての嫉妬。

とはいえ、前後の言動を思えば不満顔の維持も難しく。]

  ――…だいじょーぶ
  乾杯、し直そう

[彼がここを去らないと、己と共に在るという記念の杯に。
相応しい酒が厨房で待っている気がする。
予感は、きっと当たるだろう。>>*3>>*6]*


メモを貼った。


[それから、首の動きは獏よろしく、鈍い。

仕草で伝えられない分を補うべく
繋いだ指先を、手の甲を撫でる、繰り返し]

 おれは、あんたと一緒に歩くから
 そう、決めてるから、あんたが行きたい場所に
 ………行く。 走るなよ。

[駆け出されたら、追い付けない。
釘を刺して、離す、視界の端
追い掛けるような指が見えて、眼鏡の奥が瞬いた。]

 本当に腹が減ったら
 ちゃんと、食ってるから、大丈夫だ。
 


[悪夢を探すのは専ら昼のはなしで
くいっぱぐれも珍しくはないが、それはそれ。

リツの指の代わり、触れたグラスから手を離す。
すすすすすすす、彼の前に、黄金色を戻して
まるでそれこそ苦虫を噛み潰したみたいな、面で。]

 ……… 苦手………

[心底、と言った響きだ。]


[ ――あぁ、]

ん、あつい、な

[誤魔化すみたいで。
そっと、添うように、繰り返した。]


[ 撫でられるたび、じわじわ、
熱を共有するみたいだ。]

……、わかった。
はしらない。
あんた、置いていったり、しないから。

[安心しろ、と。
そう続けた。
獏は、のんびりやだから。]

――食ってるなら、いいけど。


[確かに、耳が遠くなっているようだ
――と、思考の端で]


   ………
   
   そう。 ケイの努力を 私は知らなかった。
   
   私等を見守る年上にも
   当然悩みは 有った筈なのにね

   社員旅行   ……楽しかった?

   
[逸る恋情に相反した、穏やかさを漂う
酔い煽る酒より、己の身体を甘く麻痺させるのは、確かに彼で
暑い、とは その通りの感覚を、初めて抱いているのかもしれない

甘えたな猫を、寂しがりやな子供を
掌は、何度も 頭や背を撫でてやる]


[ 心底苦手そうな様子に
笑い含み、ながら]

じゃあなんで飲んだ。

[へんなやつ、と。口直しにどうぞとばかりグラスを戻した。]




[東洋を愛しているとか、
欧州を敬遠しているとか
彼も重々承知しているだろう現実を無視して、


そう、漸く、生に充実を感じている
きっと漸く、捕まえた

見付けた、私の幸福の象徴。
それは、腕の中で]


     …良い子。

[子供として見ぬと宣言しながら
まるで子ども扱いするのは
彼の反応を楽しむ目的と
紡がれる一言一言に
鼓動を急かされ、余裕が足りない反動

呉れた告白は、夢のようで居て夢では無い。
まして、ローブを着た魔法使いに
無理強いされ告げた想いでも無い

まぎれもない彼の言葉
だから、 ほら、こんなにも お前が愛おしい]


      ……、 だめって  
    ………バーに行く事そのものが?

[散らした笑気が夜気に拡がり、腕力に任せて彼を引く。]


[フィールドを屋外から屋内に移しても
空調の行き届いた風に触れても
カクテルを一口飲んでも、含んだ熱は晴れなかった。

リツも、同じだと、応えてくれたから
伝染った感覚は、深く息を吐き出すことで如何にか。]

 あんたも同じなら、良いか、良いな。

 …… うん。

[良いのか、良くないのか
納得させるために頷いたくせに、自分の頬に指で触れた。]



   困ったね。 
   私の数少ない愉しみが減る。その代わり
    
   …――勿論、お前が 私を愉しませて。


[目頭に熱が灯り、ジンと眼窩が焼けた。
充実に満ちた聲。 そして、笑み
傍に居て彼に手を伸ばす理由への
大義名分にでも、利用させてもらおうと心算

何を取って困ったと言うのか、まるで白々しい]


    おや、食事まで…?  有難う。


[そうしてテーブルに並んだ、料理>>*3>>*6
彼の家族にも似た彼らのサプライズとご褒美を、目の当たり]


[暑い、と言った指は
おれ自身の体温と、リツの体温が混ざる。
暑い、熱い、と感じて、軽率に離したんだった。]

 はは、 公園を走るのなら、良い。

 ……… それ以外は、歩いてくれるか、嬉しい。
 置いて行くのは、いつかの話だねえ。

[過ぎったのは、ひとと、獏の寿命の差。
ぽろ、と漏れたのなんて、甘いカクテルの所為だ。
のんびりしていたって、こればかりは抗えない。]

 食ってる、 ……なんだ、心配?
 


[すすすすす、戻されるカクテル
お口直しに、グラスを掬って、飲み干した。

甘くなった舌を、上から塗り替える濃い苦味。]

 リツが飲んでるから。

[咽喉を過ぎる、濃いアルコールの味に
一心地ついたタイミングと一緒に、吐露して。]




     豪華すぎない…か………
     愛されているな、トレイル。


[そう、目の当たりにし。呆然
されど、料理や酒に凝縮された愛情は、他人から居ても明瞭
新しい酒を注いだグラスを、お互いが持つと、重ねる]

  
    …――乾杯。

    今後から、この日が  
    お互いの記念日になる事を祈って。 

   
[一口、酒を含んで、喉を潤うアルコールを嚥下
日本料理も並んでいたら、箸は熟せるかも尋ねよう]
   


[ 同じ。おなじ、か。]

――わるくない。な。

[――あつい、って。
原因は、こころのせいなのだ。
頬に触れるしぐさを、じっと見て。
自分も、真似して。]




   ゆっくり味わいたい…――。
   なかなか個性があるが、美味な物ばかりだ。
   

  されど、食べ終わったら。家まで送る。
  今のお前を一人外に出しては、あまりに危険だ



[悪魔にでも浚われてしまう、なんて
揶揄を混ぜ込み、声も傍で低く
 されど、酔いで色欲を纏う彼への、真の按配

食事に浸る彼の髪に、密会めいた音の無い口付けで
強引な契約*]


[ 離された指を
ゆるく握って、ゆるめて。]

――公園走るのは、日課だから。

もちろん、
そうするつもり―――

[置いていく。いつか。
――初めて喫茶店に行ったとき。
――追悼の話を、していて。

くらり、アルコールのせいだけじゃなく揺れる。
ぐ、と。思わず腕の服を、掴んだ。]

……――、…しんぱいだ。わるいか

[額をそのまま押し付ける。心配だが、獏はきっと、長生きだ。人間は、長くて100年生きられない]



――、……

[ 額を押し付けたのだって
アルコールがちょっと、
箍を外したせいだ。]

無茶しやがって。

[誤魔化すみたいに、言った]


メモを貼った。


[コーヒーの水面に、ミルクを投じたくらいの、渦。
その不思議な感覚に、ぐるり、と眩暈を覚え

 こころが火照るから身体が火照る。

そんな簡単なことに、動揺する。
簡単なことで、未知だ。
二人して頬の熱さを確かめることも。]

 あんたの顔色が変わるのも
 こんな感覚、なのか。

[感覚を、確かめる、ぽつり、と。]


メモを貼った。


[体温を手放した指は
その後は、飲み乾かしたグラスに触れた。

すこし冷えて、体温が逃げる。]

 はは、 それを見るのが、おれの日課だねえ。

[片や駆け、片や寝ている、何時かの光景。
思い出して、笑み声を漏らしてから

唇が固まった。黙って、しまった

腕を、布を引く指先に
押し付けられた額から、体温を受け取って。
否応にも縮まることのない寿命の差を思い出して。]

 ……… リツ、

[名前を、絞り出して、それから、]


[あの日――深夜の呼び出しにより始まった、>>1:*2
社員同士の戯れを披露する際はやや自慢げだったかもしれない。

誰も、彼も。
かけがえのない、仲間だから。

社員旅行についてはまだ未達成だが、
相談だけでもじゅうぶん楽しかったので笑顔で頷く。

トレイルが非番の日に、別の旅行計画が
持ち上がるのだがそれはまた後日のこと。]


 
 あんた、いま、そういうのは、反則。

[悪くない。
悪くはないが、―――ずるい。

嬉しいような、苦いような、矢張り甘いような。
慣れない味を口にした、所為か。
いとおしい気持ちが込み上げた。

だから、顎を引き、押し付けられた額の上。
髪の上から、そっと唇を落とす。
子守唄と一緒に母親が送るような
そういう慈しみとは、行動は似て、かけ離れて。]


[会話の隙間に、そっと聞こえた天邪鬼>>*8の声。

甘いものを苦いもので塞ぐような
あるいはその逆か、彼にも覚えがあるものか。
――― 同じ人ならざる者同士。

困ったなあ、みたく、そっと目を細めた。
アマノの感覚も、今なら僅かでも
獏でも理解出来るような気が、したから**]


メモを貼った。


  だから、こども扱いすんなって

[正しい意味で、そう扱われてないことは解ってる。
これも、きっと甘えのひとつで。
――すべて見透かし、一歩先を行く彼に。
正面から不服を申し立てることが、未熟の証。]

  だめなのは店、じゃなくて休憩室

[損ねた機嫌も、腕を引かれれば抗うことなく凪いでいく。
『ファミリア』に行くことに異論があるわけじゃない。
トレイルだって今後も赴くつもりだ。
時にはひとりで。そして、ふたりで。]


[ 俺はひとつ、瞬いて。
ゆるやかに目を伏せる。恥ずかしくて、目をあわせられなかった と いうか。]

……そ、そう、
なんじゃ、 ない、か。

こういうの、ええと、
あんまり、ない のか?

[獏は、のんびりやだし、――疎いのかもしれない。]


メモを貼った。


["困った"の意味をやや湾曲して受け取り、
過去どれだけ愉しんだのやらと嘆息する。

不機嫌を露わにしたのに、何やら愉快な笑みと。
今後に期待を寄せられれば、勿論と即答。]


  ――…ていうか
  おれの部屋にだってベッドぐらいあるし


[根なし草の誰かさんとは、違うのだと。
良い子は、悪い大人の企みに知らず知らずに乗って、

細く、それでも確かな男の指先を揃えて掴み
その先に素早くひとつ、くちづけと言う名の宣戦布告。]*


  あー……ホール、コテツひとりだし
  直接注文してくるから、待ってて

[白々しい挑発と計略に真っ向から挑んだ結果の、
己の行いに羞恥が戻ったのは直後のこと。
抱擁で崩れた後ろ髪をくしゃりとかき混ぜる。

少し、落ち着かなければ。舞い上がりすぎだし
そろそろ少し離れなければ――このまま癒着しそうで。

名残惜し気に、身体を剥がし、席を立つ。
何なら一部、配膳も手伝おうか。]


[再びテーブルに戻る時も、やはり、隣。
食事のために多少、隙間を空けても交わす視線の熱は変わらず。]

  ケイは、うちの自慢のシェフだし
  ――…兄貴、みたいなもんだから

[祝福の詰まった品々と軽い揶揄に、照れ臭そうに頷く。
コテツも同じく実年齢は上なのだか、
彼についてはどうしても、年下のように扱ってしまう。
素直じゃなくて、素直すぎて、微笑ましい同僚のひとり。

運ばれる料理は、どれもこれも食欲をそそる。
新たなグラスに注がれた酒に、目を細め。

乾杯の合図の後含むそれは、滑らかに舌を、喉を潤す。]


[ 日課。
毎日、毎日、それが続くならいい。
でも、どうしたって、俺が、いつか。

酔ってるせいだ。
何でもない顔できればいいのに。
ひどくさみしい。
くるしい。]

……エフ、……

[驚いたろう、あやまらないと。
でも、エフもわるい。
そんなこと、言うから。

なお、強く額を押し付ける。]



―― 反則、って  なに。

[ぎゅ、と服を掴んだまま。
目に水がにじむのを、
隠すようにしながら。]

……っ、…

[ふ、と。額の上に影ができた。
ついで、額にやわらかい触感。
なに、え――キス、され た――?]

…っ、 ―― 〜〜っ。!

[あたまが、まっしろになった。
ずるい、なんだよ、ずるい、ばか。]


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