166 あざとい村
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幼馴染としてじゃなく 兄としてじゃなく
一人の男として、僕をちゃんと見て。
[声に、乞うような響きを乗せて、 アオイの髪に唇を寄せ、囁いた。]
(202) hana 2014/03/13(Thu) 03時頃
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[細い肩に、セシルの指が柔らかく食い込む。 少し身を引いてアオイの表情を窺い]
──僕が、アオイを狩人にしたくない理由が、わかった?
[首を傾けて、瞳を覗きこんで問う。]
(203) hana 2014/03/13(Thu) 03時半頃
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[家族以上に、特別に愛しい小鳥が 危険な場所に羽ばたいて行ってしまったら、 僕はきっと自分を許せないよ──?
そう囁くセシルの声は、 最後まで甘く優しく──そして少しだけ、狡かった。**]
(205) hana 2014/03/13(Thu) 03時半頃
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セシルは、ジリヤwwwww お、おはよう……
hana 2014/03/13(Thu) 03時半頃
セシルは、見直さないでwww
hana 2014/03/13(Thu) 04時頃
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[震える声も、詰まって苦しそうな吐息も、 泣きそうな顔も、零れ落ちた涙も、 ひとつも見逃さないように──目で、肌で、感じて。
今、アオイが感じているであろう葛藤も、逡巡も、苦悩も、 そうなるだろうとわかっていて言葉にすることを選んだのだから 目を背けずに、全てを受け止め、アオイを包み込む。]
(233) hana 2014/03/13(Thu) 16時半頃
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[弱り切った雛鳥の笑み>>229に、 やっぱり感じる、針の先ほどの──黒い優越感。
──きっと、アオイにこんな顔をさせたのは僕が初めてで アオイのこんな顔は、僕以外誰も知らない。
──カイルでさえ、きっと知らない。]
(234) hana 2014/03/13(Thu) 16時半頃
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[弱々しく詰る声>>230にさえ 肌を撫でて抜けてゆく春風の甘やかさを感じてしまい アオイの肩を支える指に 力を込めてしまいそうになるのを堪えた。
肯定も否定もせず、 口角を綺麗に上げた、女子生徒に騒がれる笑みを見せ アオイの言葉の続きを待つ。]
(235) hana 2014/03/13(Thu) 16時半頃
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……うん。
[>>231前置きの呼び掛けに、ただ頷く。
その時の、アオイを見詰める眼差しはやはり兄のように優しく けれどひたむきで、貫くような男の熱さも孕んでいた。]
(236) hana 2014/03/13(Thu) 16時半頃
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[深呼吸の後の、確かめるような声音に]
────、
[セシルは一度目を丸くした後、 クスリと笑って、頬に刻まれたえくぼを深くした。]
(237) hana 2014/03/13(Thu) 16時半頃
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[アオイの目尻に残る水滴を 今度は指でなく、ジャケットの袖口でそっと吸い取らせ──]
──── そうだよ。
[微笑んだまま、アオイの言葉を肯定する。
セシルの瞳は、 その先に続く、アオイの言葉を待っているようでもあった。*]
(238) hana 2014/03/13(Thu) 16時半頃
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[>>239照れ笑うアオイの額を 緩く握った拳の関節で、コツンとやる。]
────鈍感。
(245) hana 2014/03/13(Thu) 18時頃
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うん
[真っ直ぐに見上げて来た眼差しを受け止めて]
うん ──うん。
[自分の危うさを認めて口にする一言一言を 否定してはやらずに、正直に頷く。]
(246) hana 2014/03/13(Thu) 18時頃
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────────……。
(247) hana 2014/03/13(Thu) 18時頃
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[目を逸らさずに、じっとアオイを視界に捕えたまま 長い沈黙を経て──]
泣いて、ぶつかって ……転んだ先に、鋭い爪が待ち構えてる。
そういう世界に、アオイは踏み込もうとしてる。
(248) hana 2014/03/13(Thu) 18時頃
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僕に、それを黙って見ていろって言うの?
[月と星の煌きを背負って、 綺麗な──綺麗な笑顔のまま、 セシルは容赦なく言葉のナイフを振り下ろす。]
(249) hana 2014/03/13(Thu) 18時頃
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たった一度のミスが命を奪うこともあり得る。 そういう世界を、僕達は目指してる。
一歩間違えれば死んでしまうかもしれない。 そんな道を、一度も転ばずに歩き続ける強さと、 それを身につけるだけの覚悟が──…、
……────アオイには、ある?
(250) hana 2014/03/13(Thu) 18時半頃
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セシルは、へへっ
hana 2014/03/14(Fri) 00時半頃
セシルは、若さ…………いや、青さと言い換えてもいい。
hana 2014/03/14(Fri) 00時半頃
セシルは、家まであと15分!
hana 2014/03/14(Fri) 00時半頃
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嫌だ──って。 無理だって言ったら、どうする?
[一歩、決意に近付いた少女に 兄だった男は尚も言い募る。]
(273) hana 2014/03/14(Fri) 01時半頃
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[本当は縛る力なんてないただの我儘が まだ未熟な、自分の背を追い続けて来た雛鳥にとっては 物理的な枷以上の拘束力を持っていることを知っている。
けれども]
(────だからこそ)
[危険に満ちた空へ羽ばたき飛び立とうとするのなら、 その枷を、自分の力で壊して行けなければ安心出来ない。]
(274) hana 2014/03/14(Fri) 01時半頃
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教えてよ、アオイ。
──アオイは、狩人になって何を護りたい。
狩人になりたい理由は、父親への憧憬? それとも僕の模倣?
[──まさか、違うよね。
柔らかくも鋭い言葉の爪で アオイの心を──その奥のアオイの真意を抉り出そうとする。]
(275) hana 2014/03/14(Fri) 01時半頃
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アオイを心配する家族や、 誰よりもアオイを大切に想う僕の手を振り切って。
そうまでして───…、 …───っ
[しかし、言葉の途中で、 一度セシルの言葉は途切れた。]
(276) hana 2014/03/14(Fri) 01時半頃
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[不意に、アオイの二の腕を掴み、 強引に引き寄せると、アオイの頬を自分の胸へと押し付けた。]
────……、
[まるで、視界を塞ぐように しっかりとアオイの後頭部を押さえて]
狩人になって護りたいものは───…… 何?
[努めて冷静な声で、続きを口にした。]
(277) hana 2014/03/14(Fri) 01時半頃
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[遠く──アオイの背後に見える校舎から、
シノンと手を繋いでこちらに歩いて来る、少年が見えた───*]
(278) hana 2014/03/14(Fri) 01時半頃
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[走れなくても、泳げなくても、 歩けなくても、一人で呼吸さえ出来なくてもいい──と思う。
アオイが沈まぬようにずっと支え続ける手はここにある。
今まで考えたこともなかったけれど アオイが望むなら、狩人になる道を諦めて、 アオイの側に居続けたっていい──のかも、しれない。
だけどそれは──言葉にはしない想い。]
(289) hana 2014/03/14(Fri) 03時半頃
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[ゆっくりとした足取りで、どこかはにかんだような顔で 近付いて来る少年を睨むように見据えたセシルの腕の中、 よちよち歩きの幼い雛鳥に等しかった少女が、 一つの答え>>286に行き着く瞬間が訪れる。
大人への過渡期にあるまだ薄い胸板に阻まれて 呼吸もままならない狭い空間に、 少女の声が直接振動として伝わって来る。]
(290) hana 2014/03/14(Fri) 03時半頃
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[小鳥の羽を毟りたいわけじゃない。 空の見えない水底に沈めてしまいたいわけじゃない。
だから──アオイにとって残酷な事実を突きつけて 大事な人に順位を付けさせて、 大人の狡いやり方で、無理にでも成長を促した。
無垢なだけの小鳥を空に放つのが怖くて、 少女の純粋さを汚してしまうのが──少しの罪悪感。]
(291) hana 2014/03/14(Fri) 03時半頃
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だったら───…
[もっと強くなりなよ──。
そう、続けようとして]
……────っ
[少女が口にした名前に、唇を噛んだ。]
(292) hana 2014/03/14(Fri) 03時半頃
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どうしても──…カイルじゃなきゃ、駄目?
[耳触りの良いテノールに煩悶を滲ませて、尋く。
尋いてから────後悔した。]
(293) hana 2014/03/14(Fri) 03時半頃
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[近付いて来る二人の結ばれた手は、 きっと少女を傷つけるのに、 どうしたらそれから少女を守ってやれるのかわからずに、焦る。]
アオイ────……
[珍しく混乱して、両手でアオイの肩を掴む。]
(294) hana 2014/03/14(Fri) 03時半頃
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ごめん──
[アオイの耳許に、声は幽かに届くか。]
(295) hana 2014/03/14(Fri) 03時半頃
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[グラウンドの砂を踏む二つの足音が、ごく間近に迫った。
──瞬間、 セシルはアオイの顎を指先で掬い上げ 避けることの出来ない素早さで、 薄桃色の果実に己のそれを重ねた。]
──────。
(296) hana 2014/03/14(Fri) 03時半頃
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[朝礼台の上に、 重なる青年と少女の影が 月灯りにくっきりと浮かび上がった───**]
(297) hana 2014/03/14(Fri) 03時半頃
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