151 雪に沈む村
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─午前・時計塔─
さて、と。取り敢えず掃除からだな。
[村に一つだけの山道への入口。そこにある古びた時計塔の玄関で、キャソックの腕を捲ったチャールズは、腰に手を当て、ふむ、とひとつ息を吐いた。
石造りの四角い塔は先端に緑の屋根がついた尖塔となっており、壁面には装飾の施された天文時計が設置されている。
山間の小さな村にはおよそ不似合いな豪奢な様式は、百年も二百年も前のものと言われていたが。実際、チャールズには馴染みでもあり、懐かしくもあるものであった。
それは、村中にある教会と同じ様式、同じ時代のもの。この時計塔も、祈りの家のひとつだったのだろう、真冬になれば雪に埋まってしまう一階部分にはこじんまりとした礼拝堂が設けられている。
しかし、矢張りそこに祈りの対象である神を現す偶像は存在せず。
過去、その信仰に「何か」があったのは明白であった]
……ここを綺麗にして、先ずはサイラス君の旅の無事を祈る事にしよう。
[今朝早く、未だちらちらと雪の舞う空へと旅立っていった金の髪の翼人。
クシャミと共にその背を見送って、数刻経つ。
帰ってくる、旅の無事を祈ってくれ。そう言った彼が、思う通りの旅を続けられるように。
ここに宿る神はもう居ないけれど、もしかしたら彼ら翼人を加護する神聖な存在に届くかもしれない。
よし、と小さく呟いて、珍しく気合を入れた表情で、チャールズは掃除に取り掛かったのだった。]
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