204 Rosey Snow-蟹薔薇村
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―居間― [>>0眉間のしわが 何故刻まれているのかを知らないトレイルは ニコラの不満も、わからぬまま プリシラとディーンの様子を見ていた。
視線が向かうのは、ニコラの方 ディーンの唇が震え、けれど音を発しない。
トレイルがよく訴える際にみせる仕草だ 彼が言いたいのは―― 手のなかの、殆どなくなったインク瓶を握りしめ 後ずさる。
台所の方から、フランシスの姿が見えた>>10。 眉間のしわについての説明も ――ニコラの抗議と共に、彼等に向けられて]
(13) 2014/11/17(Mon) 12時半頃
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―居間、入口傍― [――今のディーンに、謝罪するのはどうだろう。 タイミングが悪かったかもしれない。 トレイルはそう考えた。
そっと後ろ手に 瓶とペン、黒く染まった紙を隠す。 ペチカの方へ、近づくことをせず 入口傍で二の足を踏む 俯いたその横を >>11通り過ぎる音があった]
(14) 2014/11/17(Mon) 12時半頃
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[食べたい――そんな衝動は、いまだ感じたことがない。 喉の渇きは、幾度も感じ ひとを見つめながら舌なめずりする事はあれど
それは、無意識 衝動とは、思わず
いまは、それよりも どうやったら、もう一度 あの音を手に入れられるのか それが、食事のときにしか発しない音なのならば
たべられたいと
トレイルは、願う]
(24) 2014/11/17(Mon) 14時半頃
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[親しいほど、食べたい それが衝動だと教わっていた。 ノックスの昔話も、フィリップからの告白も 聞いたのは、「食べたい」という衝動の話
だからきっと、これは別のモノだ]
(25) 2014/11/17(Mon) 14時半頃
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[肉を裂かれ まだ温かな血で彼の喉を潤し 骨を押し分けて 柔らかな内臓を食まれる
その時、 どんな声で鳴いてくれるだろう
ディーンに謝罪を。 でも、今は そんな葛藤の中でも、燻り続ける衝動
きっと、未発達なこの身は 骨と脂身ばかりで美味しい所は少ないかもしれないけれど 望む音を手に入れられるなら 手足の1、2本、くれてやっても良いのに。
ノックスは嘆くだろうか ニコラは? ああ、二人はどんな声で鳴くんだろう**]
(26) 2014/11/17(Mon) 14時半頃
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[プリシラはニコラの行動をどう捉えたろう。 怯えているなら、トレイルはかれをなぐさめる為に微笑みかける。
大丈夫 こっちへ
唇のゆっくりした動きで、彼がトレイルの透明な声を聞いたかどうか 両手は罪の隠蔽に使っているから、差し伸べられない**]
(39) 2014/11/17(Mon) 16時頃
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[美味しそうな匂い。 すん、と鼻をならす。
けれど
両手は、使えない。 隠さなくては*]
(49) 2014/11/17(Mon) 17時半頃
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[トレイルは、静かに居間を出た。 瓶もペンも、紙も 全て持ち去る。
ディーンの意識はこちらへ向かず プリシラには保護者がきて ニコラは、トレイルを忘れている
居場所がないな、と思った瞬間
ひどく、胸がざわめいた。
喰われたい 喰われたい 喰われたい 喰われたい
消えてしまいたい]
(89) 2014/11/17(Mon) 21時半頃
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[静かに、階下へ。 物音は立てない
寒さが肌を突き刺すけれど
ゆっくりと、階段を下りて 貯蔵庫の、荷の後ろへ
直ぐには、見つからないだろう ここは音が少なくていい
来たときと同じように 生成りの布にくるまって 小さな身を更に縮めている**
(90) 2014/11/17(Mon) 21時半頃
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ー貯蔵庫ー
[暗がりに、無音
居間の、騒ぎを知らずにすんだのは、幸運か不運か 故に、トレイルの内にあるおもいは 音が優先されている。
無意識に選んだ場所は 鳥を連れたフィリップとあった場所 ノックスが抱き上げてくれた場所
ーーーーいまは、独りだ]
(193) 2014/11/18(Tue) 01時頃
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トレイルは、音は、立てない。静かに、布の中。
2014/11/18(Tue) 01時頃
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[音のないトレイルを探すのは、気配でも読めない限り 移動する可能性があるだけ、失せモノ探しより難しい。 今は貯蔵庫を出ることなど思い浮かばない。 胸の内にあるのは
生成りの布から、埃のにおい。 持ってきた紙は真っ黒に染まって もう、トレイルの声を読み取れはしない 瓶をあけて、ペン先でつつく。 インクがついたかどうか、うす暗くてわからない。
芋の入っていた箱の横で、座り込んだまま 床に広げた紙に、文字を綴る]
(207) 2014/11/18(Tue) 01時半頃
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[読み取れはしまい。
”ノックスは、過保護な兄 きっと、二人が一番大事
ニコラは、大きな子供 可愛くて手のかかる、残酷な”
――――弟 と、続けようとして 止めた。
じわ、と視界がかすんで、鼻がつんと痛い。 ぐしゃりと紙を握りつぶした。
よく懐いた飼い犬が突然他人にじゃれはじめた時 きっとこんな気分になるんだろう]
(209) 2014/11/18(Tue) 01時半頃
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―貯蔵庫―
[きっと、 ニコラはトレイルを忘れてしまった。
もう、いなくなっても 嘆かれない。
あとは、ノックス。 彼がトレイルを忘れたなら
その時は、フィリップにお願いしよう 食事の際に発した あの声をもう一度、聞かせてほしいと。
あつい滴がほとほとと、紙におちていく。 ペンを握ったまま、膝をかかえた]
(214) 2014/11/18(Tue) 01時半頃
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[彼が死ななくて済むなら、食べて貰えるはず。 でも、彼の衝動は起こりやすいから
例えば、あれがトレイルでなくても 食べようとしたんだろう
――――雫の落ちる音 テンポが、上がった]
(217) 2014/11/18(Tue) 01時半頃
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―貯蔵庫― [トレイルが、ノックスに会ったのは 声を失った後だ。 有象無象の顔など一々認識していないが故に。
だから。 きっと彼は、トレイルの本質を知らない。 そう 思っている。
どれほどの時間が経ったろう。 身体が冷え切って、指先の感覚がなくなって ペンがころころと転がっていくくらいまでは 待った。
静寂]
(235) 2014/11/18(Tue) 02時半頃
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[締め切った扉は、音を遮断してくれていて 小屋にたどり着いてからずっと騒音に悩まされていた耳は 少しだけ休息をとれたよう。 ずっと感じていた頭痛も、今は収まりつつある。
空腹感を覚えたけれど 居間に戻る気はなかった。
トレイルを忘れたニコラを見る気にはなれない。
思い出す、という可能性を考えないのは 父の所為 記憶の蓋が、じわりと溶けている]
(237) 2014/11/18(Tue) 02時半頃
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―貯蔵庫― [しんと静まり返っていた、貯蔵庫の扉が開く音。 続く声は、知っている。
落胆と、安堵。 トレイルは、動かない。 生成りの布の塊。少し先に転がったペン。
このまま、空腹をかかえて 眠ってしまえば 朝には冷たくなっていられて
干し肉にでもしてくれれば 暫く彼の衝動を抑えられるんじゃないかと ぼんやり思う
――音を聞く、望みが 抜け落ちている]
(239) 2014/11/18(Tue) 02時半頃
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トレイルは、ノックスが呼びかけている間にも、頬を伝う雫は止まない。
2014/11/18(Tue) 02時半頃
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[生成りの布でできた小山がある場所は、同じ。
声にこたえる体力は、 欠落した身体には、残っていない。
それもあって トレイルはぼんやりと、にじむ視界の先を見ているだけ]
(241) 2014/11/18(Tue) 03時頃
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[じゃり、と何かが潰れるに似た音。 衣擦れ それから 熱が触れた。
瞬き、涙をこぼしたまま笑う 唇は、彼の思う名を告げているだろうか
――――ニコラ そう、形取る]
(243) 2014/11/18(Tue) 03時頃
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[トレイルが見たのは、固まったディーンに近づくニコラ プリシラを迎えに、細工師が来た所まで。 その後の騒ぎは、あずかり知らない
知ればきっと 今頃こんなところで震えてはいない]
(244) 2014/11/18(Tue) 03時頃
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?
[首を傾いだ。 どうしてノックスが泣くのか、トレイルにはわからない。
フィリップは違うよ、と首を振る。 衝動の証は、指輪の下 この薄暗い中では見つけにくい。 何かしたのは――それは、内緒の話。
ニコラは、僕を忘れたみたいだ。 ノックスはいつ、僕を忘れるの いつ僕を捨てるの? 父さんみたいに。
唇から音はこぼれない。 くしゃりと握った紙は、書く場所なんて残ってない]
(247) 2014/11/18(Tue) 03時頃
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[布から顔を上げたノックス 雫は見えない 触れられたくちびるが、少しあつい。 冷え切ってしまっていたから、感覚がおかしい。
ノックスはいつ 僕を捨てるの。
沢山の思いを抱えて、選んだ言葉はひとつ 彼に対しての問いかけ。 その日はいつか来ることを いままでずっと考えずにいた。 ニコラが離れて 漸く、思い出した 黒く濁った、記憶]
(249) 2014/11/18(Tue) 03時半頃
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[どれほどのつながりがあっても 捨てられる時は、あっさりしている。
一音一音、ゆっくりとはっきりと 唇は形作れど、音は今日も出ない]
(250) 2014/11/18(Tue) 03時半頃
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[いつ、捨てられるだろう 寒さに身を震わせ、音を待つ
あの時は、風の音がしていた 今は、他に音はない
ショックで声を失ったトレイルを 父は忘れ 痛みと熱から、逃げるように 彼の元から離れたのは、もうずっと昔の話
知らぬ女に指差され 知らぬ男に引きずり込まれたゴミ捨て場 くろい衣服はその時から しろい汚れをびしゃりと浴びせられ 玩具のように扱われるも、父は助けに来なかった]
(262) 2014/11/18(Tue) 10時頃
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[死ぬのかもしれないと思ったのを覚えている。 下卑た音が去って 噛みちぎられた痕のこる下肢をむき出しに 月明かりの下に転がっていたら 痛みと声が降ってきたのだ
今振ってくるのは、あの時から耳に馴染んだ質の音 頬をたたく痛みでなく、涙をぬぐう暖かい手]
……
[そんな日は、来ないのか。
困ったな。
彼の口癖。 真似て、眉を下げる。 彼はまだ、二人が大事なままなんだろう 吐き出す息とともに、涙は止まる]
(263) 2014/11/18(Tue) 10時頃
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[あの時は耳障りだったフォルティッシモ ぼんやりと見上げた先に、明るいいろ 月明かりの下で最初に告げたのは、罵倒
不愉快な音をまき散らすな 耳が痛い
しかし空気が漏れる音以外が唇から毀れる事はなく 結果、弱り切った身体は彼に庇護を求める事になった そんな始まり。
今聞こえてくるのは、カルマンド 混じるのは、悲壮か懇願か。 怖いという言葉の意味は、この状況にか それとも。 トレイルは、じっと彼を見つめる]
(266) 2014/11/18(Tue) 11時頃
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[いけない兄 そうだろうか 彼が居るから、ニコラもトレイルも こうして生きている それは、感謝すべきことだ。
ただ、彼がゴミの中から拾ったモノは はたして、彼にとって価値があるものなのか 不器用で、生業ひとつ身につける以前に 生活力すら低い トレイルももう幼いだけの子供ではないから 自分がどれほど彼らに負担をかけているかは、気付いてる。
ゆっくりと首を振った。 彼らがトレイルにするように 頭を撫でてやろうと、冷えた手を伸ばす]
(268) 2014/11/18(Tue) 11時半頃
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トレイルは、ノックスの心の内読めず、仕草に瞬く。
2014/11/18(Tue) 11時半頃
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[少し困ったことになったと、髪に触れながら思う ニコラは まだ、ノックスを忘れてはいないだろうか
トレイルはニコラほど器用ではないから。 弱った様子のノックスに どうしていいか、わからない。
ありがとう お礼の言葉は、彼らに出会ってから覚えた音の羅列 でも、良い兄でいる必要はないんだ そう告げたいけれど、音は出ない。 抱えあげられそうになって、はっと思い出す。
駄目だ。 居間には行きたくない。 理由は二つ。 トレイルは、傍に転がるほとんど中身のなくなったインク瓶と、真っ黒な紙を指さし、ノックスを見て、それから視線をそれらへ向けた]
(275) 2014/11/18(Tue) 12時頃
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[ノックスもニコラも、よく触れ合っていたから いつのまにかそれが習慣。 彼の意図知らず ニコラもよくじゃれるから 意味合いは同じ
今も 彼にとってのトレイルが 酔狂で拾ったゴミ以上の価値を持っているのか、わからない。
いらないもの。 インク瓶と自分がダブった気がして そこから視線をそらせない
音を言葉と認識しないまま、頷いた]
(278) 2014/11/18(Tue) 12時半頃
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[冷え切った身体を美味く動かす事が出来ない トレイルは、抱えられるに任せて 冷たい貯蔵庫から、温泉へ
湯のある場所は ふと思い出した、そう遠くない過去に 落ち着かない様子で辺りをみわたし
見つけた二人の音 眉を顰めかけたのを誤魔化すよう 一度ゆっくりと瞬く。
温泉に入りに来たのか 問いかけに、抱かれたままノックスを見あげる。 どうするつもりだったのか]
(282) 2014/11/18(Tue) 13時頃
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[自分とは違う体つき 湯気の間に、見える
永遠に手に入らない身体 浮かび上がる劣等感
何度目になるのか、絶望を殺し 穏やかに、無感情に 務めるのは]
(283) 2014/11/18(Tue) 13時半頃
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[知っているだろう 知っている筈 ノックスを見て、フィリップを見て ラルフを見た。 それから、下ろして欲しいと身じろいで]
……
[ラルフと同じように首を振る。 冷たい手足 いきなり湯につけては]
(292) 2014/11/18(Tue) 13時半頃
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[それに。
胸にあるのは 焦りと、それから
距離の近いふたり 食べる所だったのか
彼の衝動はおこりやすい
トレイルでなくても、かまわない トレイルであるひつようはない
僕は]
(297) 2014/11/18(Tue) 14時頃
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―温泉― [下ろしてもらう事が叶わなかった。 トレイルの体力では、暴れたところで無駄だと幼いころから身に染みて、いまだ彼にかなわないと思い込むまでに至っている。
ここで湯に入るには、服を脱がなくては ラルフに見られたくない このままではいけない
フィリップが他の誰かに牙をむけるなんて あの音を 他の誰かのものにするなんて このままではいけない
同時に思いが混じり合い、衝動は破裂する。 トレイルの右の手が、自身の鎖骨の指輪で隠していた 噛み跡に爪を立てた。 そのまま、ガリと広げるように力を入れて下に引く]
(308) 2014/11/18(Tue) 14時半頃
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[トレイルの名を形取った大きな音 耳の近くで聞こえ、身を竦ませる。 爪では、深くまで抉れない なにか尖ったものをと探すトレイルの脳裏に浮かんだのは、いつもノックスが木彫りに使うナイフ
片膝をついた、ノックスに右手を掴まれた。 床が近い。 身じろいで、手を伸ばす。 ラルフへ、フィリップへ
どうして ノックスはラルフと 顔を合わせないようにする必要があるのか どうして ラルフはフィリップを つれてゆこうとするのか どうして]
(315) 2014/11/18(Tue) 15時頃
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トレイルは、悲鳴の形に口を開いた。空気が漏れるだけだ。
2014/11/18(Tue) 15時頃
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[もともと、ここには湧き出る湯の独特なにおいがある ノックスに掴まれた右の手が抉った赤も 左の手が擦った赤も においは、すぐに掻き消えてしまうだろう
傷跡は残る。 ラルフが急くように風呂を後にする。 フィリップが続く。 ノックスの発する音はラメンタービレか それとも、
トレイルは気の抜けたような顔でノックスを見上げた]
(320) 2014/11/18(Tue) 15時半頃
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[壁際に下ろされ、背をつける。 ふ、と息を吐くと同時、彼の腕の中に包まれた。 音量の落ちた哀しい声 どうかしたか、と問われて
ラルフ
唇はそう、形を作る。 フィリップとのことは、内緒 こんな時でも、その約束は頭の中にあった。 ノックスが既に彼に忠告したとも知らないで。
ラルフに、顔を合わせないようにするのはどうして? ノックスは、大人なのに衝動を感じたの? ノックスも、ラルフがいいんだ?
じくじくと痛むところをそっと抑えた。 傷口から流れる血は隠れない]
(326) 2014/11/18(Tue) 17時頃
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[傷口に触れられるのは、痛みを伴った。 近づいてくる、ビスケットいろの髪で視界が埋まる。 何をしているのか 気付いたのは、首にかけたチェーンが引かれてから。
父と母とのつながりは ぷつんと、切れて
深くに落ちる水音と共に消えた。
つと、頬を伝うのは透明なしずく。 どうしてほしかったのか―― それは、彼に言ってはいけない事だと思った。
フロスティブルーは全てを見透かしているよう]
(327) 2014/11/18(Tue) 17時頃
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[その目から、逃れなくてはいけない。 そんな強迫観念。 故に、応えにならないよう答えを告げる
僕を食べて
音にならない音をこぼし、ぎゅうと自ら抱きついた。 鎖骨の噛み痕を広げた傷 流れる血をすする音は、テンポ・ルバート
紅い あかい
あの鳥の色に似ているな、と思いながら ゆっくり目を閉じた**]
(328) 2014/11/18(Tue) 17時頃
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[瞳を閉じて、音を拾う。 困らせた――会わない 街を出る時と似た話だと、思う。
唇のはしが歪む。 家族――酔狂で憐れな、同行者 けれど、彼等がいたから、安心して旅を続けられた
昔を忘れようと何度も振り払うたび 何も持たない自分に嫌気がさし トレイルは何度も音に逃避する。
時折水音が聞こえていた。 天井にたまった水滴が、湯へ落ちる音]
(403) 2014/11/19(Wed) 00時頃
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[おなかがすいた のどがかわいた
さむい あったかい
いたい]
(405) 2014/11/19(Wed) 00時頃
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[自分で広げた傷だ じくじくと
痛むのは
黒を侵す手が止まるのを感じて シノワズリがぼんやりと開かれる
トレイルは、 音のない音を 唇に乗せる
――いたい]
(413) 2014/11/19(Wed) 00時頃
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トレイルは、ノックスが解放してくれるものと思っていた矢先。
2014/11/19(Wed) 00時半頃
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[視界に迫るのは 護ってくれると約束した大人。 彼に任せておけば、安心だった 筈だった。
トレイルは両の目を見開いた 突然ふさがれた唇が震える。 咥内に広がる、血の味 呑みこむ喉に、違和感
眉を寄せて 両手が引きはがそうと、彼の両肩にかかる。 力なく]
(426) 2014/11/19(Wed) 00時半頃
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[音が、 唇が離れ はっと 息を呑んだ
唇を噛み、視線を落とす。 トレイルの嫌いなたまごの話 覚えている、と頷く]
(436) 2014/11/19(Wed) 00時半頃
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[箱の話――トレイルのきらいな、卵の話 親しいほど、気になる相手ほど、食べたいと トレイルは、思う事がなかった。 あれは、醜い衝動の塊だ。 ごくりと喉を鳴らしても ぺろりと舌で舐めてみても それは無意識
初めて自分の意思で 彼に食べられる、夢の続きを見る 最初は、アダジェット アチェレランド インカルツァンド クレッシェンドがかかるあたりで ファルセットに変わる―― 思い出すだけで、愉悦が身を包む。
もう一度 もういちど 音への逃避は、止まない]
(457) 2014/11/19(Wed) 01時頃
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[痛みは、苦手だった
>>435声が出なくなってすぐのころ 攫われた大人の連れ子に何度も眠りを妨げられた。 マロン色を掴み、>>437騒音を巻き散らかす子供。 憤慨して、抵抗しようとしても 食いちぎられ、内面のバランスの崩れた身体が 言うことを聞かなかった。
ニコラと、痛みは同じモノという認識が出来上がる。 グレーの瞳が真っ直ぐ見つめて 謝罪を口にして>>438、悪戯は回数を減らして それでもしばらくは、ニコラを避けていた 諦めたのは 慣れたのは いつだっただろう。
痛みは、苦手だった筈だった]
(458) 2014/11/19(Wed) 01時頃
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[そっと額が触れる程の距離。 トレイルは、ノックスを見て
瞬き、 首を振る。
彼の言葉に、否定を。
――――もう一度あの音が手に入るなら 僕だけのものにできるなら でも、ノックスが残されてしまう。 どうしたら良いだろう]
(459) 2014/11/19(Wed) 01時頃
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[ニコラの存在は、トレイルの痛み。 慣れて、諦めて、受け入れる そうすれば、悪い事ばかりではなくなった。
哀れで酔狂な大人の拾った 図体の大きな子供 トレイルが正しく躾けてやらなくては これは、余所に出せるものではないだろう 目的ができたとき 声を失っても、生きていく意味ができた。
そういう意味では、ニコラは、ノックスは トレイルの、大事なモノ 悲しませるのは、本意じゃない]
(461) 2014/11/19(Wed) 01時半頃
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[首を傾いだ。 ノックスの言い分 彼には言ってもいいことになる。 彼は残されて、痛みを感じるのに。
どうして、 そこでフィリップの名が出るんだろう 上手く隠しているつもりのトレイルは
困った顔をして、背を壁に預ける。 息を吐いた。 ずっと熱気の中に居て 身体が温まり過ぎているのかもしれない]
(484) 2014/11/19(Wed) 02時頃
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|
[軽い眩暈。 血の気が抜けたおかげか、思考は正常
思い出した空腹感 居間にはいきたくないが
外の世界がどう変わっているかも知らず ちらとトレイルを見上げる シノワズリ]
(486) 2014/11/19(Wed) 02時頃
|
|
[手を取られ、視線をその先へ移す。 舐られる間も、ずっと、そのまま。
まるで人形だ
穏やかな笑みを湛えて、お礼を言う真似事。 彼の望むトレイルを続けていたら きっと彼は満たされるんだろうと思い
でも 僕はどうやって満たせばいい? 浮かんだ言葉を、押し殺す]
(494) 2014/11/19(Wed) 02時頃
|
|
[欲しいのは、声だ。 誰もが羨み、妬み、望んだ あの声はもう戻らない
ニコラはまるでトレイルを居ないモノとして扱った ノックスはトレイルを際限なく甘やかしてくれるけれど 生きていく理由をうわまわる望みを見つけたら
音が聞こえる。 反響する室内に ノックスの声と、時折聞こえる水音
傷口をそっと見下ろすも、視線の届く位置ではない。 鎖骨の下が痛い。 流れる赤が、着ている黒も汚したろう 着替えは、荷の中に]
(495) 2014/11/19(Wed) 02時半頃
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トレイルは、ノックスに上を指さして見せる。
2014/11/19(Wed) 02時半頃
|
[落ちた指輪を、トレイルは忘れた。 父が、声の出ないトレイルを忘れたように。
出たいかと問われて、迷い、頷く。 どのみち湯場に居続けるわけにもいかない]
(499) 2014/11/19(Wed) 02時半頃
|
|
[生成りの布は、ごわごわとして きつく締められた胸が苦しい。 トレイルは嫌な顔ひとつせず、されるがまま。 黒ではない、少し大きめの服を着て 当然のように両手を伸ばし、抱え上げられた。
熱気のこもった湯のにおいがふわりと外に逃げる。 冷たい空気に交じるのは濃く新しい血の香り。 赤い鳥の鳴き声を久しぶりに聞いた。 耳に痛い。
身を縮めて首を振る。 目を閉じ、両手で耳をふさぐ。 耐えられないのは、血のにおいよりも
騒音]
(503) 2014/11/19(Wed) 03時頃
|
|
[音が一層強くなり、そして遠ざかる ゆっくり耳から手を離した。 水が遠く、激しい音をたてている。
シメオン 誰かの名 そう、ニコラとフィリップと 内緒の話を邪魔した少年
ノックスの声。 閉じた目を開く
血のにおいがする場所で その少年が息絶えていた。
誰が、と周囲を見て 見てはいけなかったのに
>>500保護者がフィリップを藁の寝床に運んでいる姿を見つけてしまって]
(506) 2014/11/19(Wed) 03時頃
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|
[ああ、キミの衝動は 本当に些細な事で起こってしまうんだね。 僕の時は止められたのに 彼の時は止まらなかった
僕の価値は――――彼以下だったわけだ。
呆然と、見送る目から光が消える。 息を吐いて、力を抜いた。 指先でノックスの腕をつつく。 もういい、 ここは寒くて臭い]
(507) 2014/11/19(Wed) 03時頃
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[過ぎるのは、幼いころの思い出
ゴミ溜まりのピアノ以下だね、酷い雑音だった。 そう告げた年上の少女 不完全な、売り物にもならない楽器だ そう告げた年上の少年
いまの自分が、それ以下だと 知っている 思い出させないで]
(510) 2014/11/19(Wed) 03時半頃
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|
[あれ以来
やっと、役に立てるかもしれないと思ったのに やっと、望むものをみつけたのに
また、駄目だったのか]
(511) 2014/11/19(Wed) 03時半頃
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|
[失っても、うしなっても、傍にいる 酔狂な大人に身を預けて
トレイルは小さくわらった]
(512) 2014/11/19(Wed) 03時半頃
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|
[中央の死体を見て、 湯所とは逆側の階段へ向かうノックス
抱えられたトレイルは、揺れる天井を見上げていた。 穏やかな、微笑みで**]
(518) 2014/11/19(Wed) 03時半頃
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