299 さよならバイバイ、じゃあ明日。
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[ばさり。
粉屋の軒先で雨宿りをしていた狐は、降りてくる羽撃きの音を聞いて鼻面を上に向けた。
白い大鷲の姿がそこにある。
その口から伝えられた粉屋の死に、あっさりとした答えを返して。]
ええ、昨日お譲り頂いたカラフルでございます。
きっと普段の紅に混ぜれば、虹の輝きを併せ持つ極上の紅ができると思ったのですが。
ソランジュがいないのならば仕方ありませんね、自分で調合するとしましょう。
[狐の家にもすり鉢や乳棒はあるから、粉屋に頼まずとも塊を粉にして、他の粉に混ぜることはできる。
それでもここに来たのは、それが狐にとって特別な化粧となるからだ。]
[たった一度だけ、死出の旅路を彩る紅。
狐は自分の死期が近いことをわかっていた。
八度目の死。
それは今まで繰り返してきた死とは意味合いがまるで違う。
いくつもの生と死と世界を越えて、大願が成就する時。
鮮やかに染めた着物も、虹色に輝く紅も。
待ち望んだその瞬間を迎えるための死に装束だ。
故にこそ、調合と目利きの腕を信頼している粉屋に頼みたい。
それだけと言えばそれだけのことだった。]
[そんな内心をおくびにも出さず。
狐は大鷲の"嫌なものだ。"という感想を神妙な顔で聞いた。]
慣れ、そうかもしれません。
[狐は元より、他者の死を悲しむ質ではなかった。
死ぬ度に別の世界に渡り、幾度も生まれ変わってゆく途中、自分以外の多くの死もまた見ることとなった。看取ったことも、凄惨な死に立ち会ったこともある。それこそ数え切れないほどに。
そのひとつひとつを悲しむという情緒は、生まれついての妖である狐にはない。大願に辿り着く通過点のひとつに過ぎない、通り過ぎてゆく者達だから――ということでもなく。狐は元々そういう性質のものだ。
ただ、悼むということは覚えたし、少しの寂しさを感じることはある。粉屋の死に関しては、この狐にしてはかなり"悲しんでいる"方ではあった。]
慣れるということは、守ることでもあります。
この街では毎日のことですから、都度嘆き悲しんでいては身が保ちません。
[狐は別に都度嘆き悲しみなどしないので、これはきっとそうなのであろうというただの憶測だ。
狐はもっともらしく推測を語る。
それは、この街に溶け込むため。
この街で無事、八度目の死を迎えるため。]
故に、太陽の子。
慣れることを嫌だと思う貴方様は、やはりお強い方でございます。
[そう言って狐は目を細めた。
大鷲が飛び去るのが先か、狐が家路につくのが先か。話が続くならもう暫く。
狐は、妖にも人にも少しずつ似ている、この街の住人と話すのが好きだった。**]
[草屋は昨日の姿のまま。
様々な植物に覆われている。
その成長はコーラの死と共に止まっているが、
それらはその場所に生きており、
これからも死ぬまで生きるのだろう。
生態系が少し狂ってはいるが、
ささやかな問題である。
ぽっかりと空いた空から滴が降り注ぐ。
雨だ。
恵みの雨だ。
コーラも雨は好きだった。
そのコーラの生きた結果が、
雨に打たれ、風に吹かれ、揺れている。]
[昨日の姿のまま←ちょっと嘘だった。
下半身、
草と繋がっている所が食べられている。
約束通り、喜ばしい事だ。
もしこのままここで体が朽ちるとしても、
それは草花の栄養になっていくのだろう。
さわさわさわと、
頭の上の葉っぱが風に揺れた。]
[竜の死骸が撫でられても、
いつものように首を擡げる事はない。]
[声を返す事も無い。
遠くから祭囃子が聞こえても。
楽し気に問う声はここには二度と。
―――強い光にすべての植物が、
一度同じ色になる。]
[竜の身体から離れていく気配、
それを感じる事も出来ないし、
それになにかを言う事も出来ない。
死とは無力だ。]
[けれど植物は、
枯れる前に種子を残す。
遠くに、遠くに運ぼうとする。]
[だからこそ、
この街を去っていく誰かの手元。
"コーラの育てた植物の中で一番遠い場所に在るそれ"
に。
新たな生命が宿っても、
それは草の竜にとっては
珍しい事でもなんでもなかった。]
[イナリはいつ気付くだろうか。
榊の葉に褐色の宝珠のような滴が不自然に一つ。
くっついて、小さなそれは
時折ふるふると揺れている事を。]*
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