24 明日の夜明け
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[渡り廊下で見上げた太陽は高い位置にあって、
霧に覆われたように霞んで、
何故か赤く染まっても見えた。
太陽じゃない、と、そう思った瞬間にずきりとして]
…………――生きて
お願いだ、
生きて……!
[痛みに近い熱を持った両眼を押さえて、声を絞る]
全てをうけいれ笑っていなければ…
私は…大丈夫なのだから
[そう思って…いたいと願った場所は生徒会室のいつもの椅子の上]
[力のない様子に、小さく息を吐く。
こんな時、どうすればいいのかわからなくて。
それが、どうにももどかしくて。
どうしようもなくなって誤魔化してた事が多いとか、なんでこんなタイミングで気づくんだ、とか。
過ぎるのは、多々の苛立ち]
……なんか、オレ、こんなんばっか。
お前、悲しませたくないのに、いっつも裏目に出て、さ。
[自嘲を込めて呟いて。
ただ、手を離したらいけないような気がしたから。
支える手はそのままに、フェンスの向こうへ視線を向けた]
[もう一度メールが届いた。着信音は、ソフィアといる時に、最後にかけたあの曲。そんな設定してないよね?と自嘲気味に笑うと。内容を見た。]
…ま〜あ、よくわかること。
[その時の表情は、いてつくような笑みだっただろうか。読んでいるときの目の黒が、薄くなった気がした。]
さて、僕は行きますよー。
シチューおいしかったです。
[ホリー先輩か会長がいればそちらに。いなければ、そこに居た人にそう伝えてくれと言っただろう。]
―調理室―
[全身が痛いような錯覚を覚えながら、急いだ。
確かに調理室の方からは家庭的な匂いがしてて。
戸口でサイモンの姿を見つけたら]
サイモン、これ。
[反射的に放り渡した、六角形のチョコ菓子の箱。
何時の間に自分がそれを手にしていたのか、
自覚する暇はなかったけれど]
まゆげ、あると良いけどね。
……行ってしまうの?
……会長……、
[腕を伸ばし、少しの間だけ服を掴んで。
頭を預けるように、絶対に表情だけは見せないように]
……もう、終わるのかな。
[主語のない呟き。風に、樹の葉のざわめく音が響く]
[懐かしげに生徒会室を見廻して]
あれ?そろそろ時間…なのか
―― 屋上 ――
[気がつけば夜だった。屋上に横になる形で、天を見ている]
…今日もたくさん泳いだね…。
あー…そういえばシチューのメール、気づくのもう少し早ければなぁ…。
[とはいえ、約束はこちらにあったので、こちらに来たのだが。傍にはクラスメイトの金髪の少女]
『今日ほど綺麗に見える日もなかなか無いと思うよ』
そう。…そうなのね。……じゃあ、ゆっくり、眺めておこうね。
[そして、あの子犬はマーゴを守る様に傍に座っているのだった]
…… 、ちがう よ。
[何処かで、ギターの音色がした。終わりの音楽。
涙は止まらない。
さっき、それを止めてくれたクラスメートには、もうきっと、頼れない。
だから、自分で泣き止まないと。
きゅ、と手に力をこめれば、やっぱり震えてしまうんだけど、掠れる声で、のろのろ顔を上げ。
にへりと笑ってみせるのは、出来た]
わがまま、言わなきゃ良かった。
高校卒業するまではなんて、甘えてないで、はやく、お兄ちゃんから一人立ちしたらよかったんだ。
[もう何も無い、小指を握りこむ。
なににもならなかった、契約]
お兄ちゃんは、わるくないんだ。
…… ごめんね、あたしが……、いつまでも、置いてかれたくなくて、あと、ついて回ってたから。
[見なくていいものを、見せてしまったのは。
きっと自分のせいだから。
ごめんね、と謝るのは、自分のほうで。
ごめんね、と笑うしか出来なかった]
[気がつけば屋上に立っていて、星をさがす準備をしているマーゴの背中に声をかける]
ここの空には 星がみえる?
[手を伸ばした空には星もなくたた暗闇が広がっていたのを思い出す。
なぜか自然と声はおちついていて]
終わりも、別れも、始まりも。
[始まり、だけは少し遠慮がちに。]
いつか訪れること、全て。
[ふ、と木を見上げ、屋上を見上げる。強く、抱きしめた後。]
……星、見に行きましょうか?
[それから、アイリスの姿を見つけて、傍に寄る。
笑顔でいるけど、頬には涙の跡があるから、抱き寄せた]
アイリス。
……――星が見たいんだ、一緒に。
[流星群が見られると、テレビか何かで言っていたと思う。
もう良く覚えていないのだけど。
出来れば、皆で見たかったのだけど]
―― 屋上 ――
『楽しい?』
そうだね。
『満足した?』
まだまだ流星群が来てないよ。
『じゃあ眠ってしまわないようにね』
そうだね。
『もしかしたら、これが夢なのかもしれないけど』
そうだね――。でも。
覚めない夢は無い、よ。良い夢も、悪い夢も、ね。
『わかってるってこと?』
んふ。そうだね。とてもとても…前から、ね。
マーゴちゃん、サイモン君、カルヴィナ、ズリエル君。
たとえ『敵』に捕まってしまったとしても。
ここがただの理想郷だったとしても。
皆と一緒に過ごせて、嬉しかった‥‥‥。
でも、どうして‥‥‥。
なんで、最後まで一緒に居られないの?
なんで、私たちだけ‥‥‥。
[ふっと、辺りが暗くなる、そこはもう学校ではなくて、赤い月の世界]
フィリップ君、メアリーちゃん、二人も、間に合わないんだね。
『敵』は理不尽だね‥‥‥。
別れは、いつも唐突だから、『死』は皆に忌避されるんだよね。
こんな形でみんなとお別れなんて、したくなかった。
ごめんなさい、私は皆と一緒に逝けなくて。
[がくりと崩折れて、口を押さえ声を殺しながらただただ泣く事しかできなくて、何も力がない自分がもどかしかった]
[カルヴィナが来ていた ]
あ。――カルヴィナ先輩。
見えますよ。綺麗な星空が。
見たいと思った星空を――きっと。見る事が出来ると思いますよ。
[ラルフに抱き締められれば、そこは夜の学校で]
‥‥‥うん、大丈夫、ここは『夢』だから。
きっと、無理な事なんてないよ。
[愛しい人の腕をぎゅっと掴んで崩壊を目の前にした理想郷の屋上へと場面は切り替わる、そこにはアリスや黒い子犬を引き連れたマーゴの姿もあるだろうか]
マーゴちゃん、もっと、お話したかった。
水泳、教えてほしかったな。
ねえ、どうしても逝かなきゃいけないの?
一緒に戻る事は出来ないの?
そう…
[マーゴの返事に静かに頷き]
恐ろしいように怖いように感じられても
…実は死は誰にでも平等に優しいものかもしれない
[なんとなくそんな事を考えると遠く狼の鳴き声が聞こえた気がする]
[訪れること、全て。小さく、でも強く頷いて]
――うん、見に行きたい。
[抱きしめられたとき、ひとつ、涙が零れた。
自分でもそれに気付かないまま、屋上を見上げていた]
マーゴちゃんも、いるかな。
[立ち上がり、無理矢理ではない笑みで、手を差し出す。
そうして屋上へと向かえば、夜空が広がっているだろうか]
星に願いをかけるというのは――。
遥か昔から、祈られてきた事。
私の祈りは――誰かに届くかしら。ね。
[涙には、何も言わずに、見に行きたい、と言う言葉に、屋上を見た後、目を見て、頷いた。]
……いますよ。みんな。
[そっと、軽く胸に抱きしめて、零れた涙を受け止めて。笑みを返して、手を取った。
屋上は、いつの間にか夜空で、けれど、不思議とは思わなかった。]
[崩折れる彼女の肩を抱いて、傍にいる。
泣かないでとは、言えない。
自分達と彼等の境界線を嘆く事ももう出来なかった。
ただ、もっと強く願えていたら。
何か変われたんだろうかって思う]
……でも、そんな謝り方をしたって、
逆に悲しませるだけだ、アイリス。
[やがて、映画のシーンが切り替わるように、視界は屋上へ]
おま。
こんなタイミングで、そゆこと、いう。
[告げられた言葉に、ちょっとだけ、くらりとした。
気づけなかった、気づこうとしなかった事。
自分の鈍感さに、頭が痛くなる]
……置いてく気なんか、ねぇよ。
その気があったら、そも、ここにいねぇっての。
[それだけ、ぽそり、と言って。
いつの間にか、屋上に現れていた気配にひとつ、ふたつ、瞬いた]
あ、そっか。
流星雨。
[聞こえた言葉に、小さく呟いて、空を、見た]
ええ。お疲れ様。チョコは頂いておきますね。
[抑揚の無い表情、抑揚の無い声。そして、瞳の色がどこかしこかぼんやり薄かったり濃かったり。]
先輩たちのお姿は、もう、眩しすぎですよ。僕にはそろそろ見えなくなってます。
[ アイリスが泣いている]
んふ。何のことかな。わからないよ、先輩。
…どうだろうね。もしかしたら、そういう結末はありえたのかもしれないけれど。
わたしは、約束したから。ね。…泣かないで、先輩。
メーちゃん、約束のお話、聞かせてくれる?
そうしないとわたし、フルート吹いてあげないよ?
[どこかで自分がそう微笑むのを、聞いた気がした。
屋上へ着いたなら、マーゴやカルヴィナ、アイリス達の姿]
わ、今日の空、凄い……。
[頭上に瞬くのは、幾つもの星。
燃えて、いつか消える運命のそれは、きれいで輝いていた]
[マーゴとカルヴィナの姿が見えた。ソフィアやテッド、アイリスにラルフも。
サイモンの姿は分からなかったけれど、そう言われると。ここにはいない誰かも含めて。いるのかな、とも思った。]
エド君。ソフィアちゃん。
…元気で。メアリーをよろしくね、って言いたいんだけど…。
ボーダーライン、かも。ね。
んふ。
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