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【人】 看板娘 櫻子── 地下牢 ── (72) 2014/09/22(Mon) 04時半頃 |
ー寂寥の日ー
……また新しい方がいらっしゃいましたか。
[娼館の裏口停まる荷馬車一台
売られた人、これから売られる人を集められた鳥籠がそこに鎮座する。定期的に新しい花を卸しに来る商人が、また新たに連れてきたらしい
此処にある花、どれを買うかは分からねど娼の主が検分を始める。自分は丁度手が空いていたので主の証文等々の荷物持ちとしてその場へと立っていた
主がその荷馬車の主であろう人と交渉しているその中で、目を引いたのは茶の髪をした少しばかり身なりのいい商品
その頃はまだぼろぼろの爪ではなかったろう。それで己が額に掛かる前髪払い]
――……?
[と、彼が呟いた名に、聞き覚えがあった気がした]
亀吉君を、君はご存知なのですか?
[もしかしたら、聞き間違いだったかもしれないがそう尋ねてみた]
メモを貼った。
メモを貼った。
─?─
[ピクリと睫毛が震える時、漏らした声は掠れていた。]
[突如暗くなった視界の中。ぼんやりと覚えているのは勝手気儘に揺れる身体。
鼻を掠める人の気配を意識の外で微かに感じながら、鉛のように重さを持った体躯が、硬い膝元に沿うように寝そべっていることに気付いたのは、耳朶から顎をなぞる肥えた指先が幾度か往復してからのこと。]
──…っ!
[息を飲む音。強張る肩。
反射的に顔を背ければ止まる指の動き。代わりに響いたのはガシャン、という金属の音。
不快な旋律に顔を顰めれば図ったようなタイミングで掴まれる頤。
視線の先、映るはいつかのあの男
水面にて映った影
「迎えに行くと言ったじゃないか」
[囁く男の声は猫を撫でるような甘いもの。背筋に冷たい一筋を垂らしながら青年は瞳を見開かせたまま、男の指先に捕まり]
…ぃ、やだ……ッ!
[寄せられる顔。逸らしたのは一瞬。
歪む口元は青年のものではなく、男のもの。
叩きつけられたのは臥榻の上。
何処か埃臭い布は所々黄ばんでおり、記憶のものに比べて随分と薄汚れたものとなっていた。
それは花籠での暮らしが恵まれていた故か、この金持ちの生計が何年か前此処で閉じ込められていた時より傾いてしまった故かは知らぬところ。
どちらにせよ、記憶の片隅で比較してしまうこと。出来てしまうことに眉をキツく寄せては押し倒されるまま銀糸を散らす。
口籠る青年を満足げに見下ろす黒い影。]
「また伸びたのか」
[喜色を含んだ男の声が、結えられた髪を梳いていく。
不興を買って花籠へ連れて来られた時とは異なる愛玩するような手付きで。
ぞわりと悪寒めいた感触が身体を蝕む。背けることを許さないとばかりに寝台に張り付けられた鎖の先端。
男の脂切った指が、つま先がそっと、そっと髪紐へと向かい、暴かれていく。
白に揺れる銀色。満足そうに見下ろす男の口元は弧を描く。
乱された花頭に過るは射干玉の香り。何処からか射し込む光は陽か灯かは分からない。
けれど広間にて寄せられた櫻の花弁が散らしたそこを、散らされてしまう指先を、心底恨めしそうな顔をして歪ませただろう。]
[途端、男は笑み失せたつまらなさそうな顔で寝台に張り付けた青年に視線を向ける。
けれど青年の首元に残る所有の印を見やれば下卑た笑みへと代わり]
「…ああ、『花』だったのか」
[揶揄るような声が小さな小部屋にて響き渡る。
蟻走感を覚える青年より先に不躾な指の腹が首筋から首元へと辿り、花籠を抜け出す際に緩んだ衿元を寛げようと踊り出し]
「ほら啼いてくれよ 亀吉──…」
[全身を覆う陰がそっと、覆いかぶさった*]
[そして再び意識が浮上する頃には男の姿は見えず。
代わりに吐き出された欲がてらてらと腹を汚し、はっきりと男の痕を残していた。備え付けられた簡易な小窓に這いつくばるようにして近寄ろうとして、金属音が厭な音を立てる。]
「外の世界を好いてただろ?」
[行為の最中、揶揄るように並べられた言葉。
愛のない所有欲のためだけに身体を揺らされながらも、その台詞だけは拾っていた。
主人曰く──…
好きな分だけ見ればいい。
小窓からはお前の好きな街が見られる、と。
その度に首元から奏でられるは捉える為の楔。
犬や猫を飼うのと同じ、首輪。
喉仏を圧迫する枷を楽しそうに時折引いては嘔吐かせられた。
男が満足したのはどれくらい経ったのかは手放した意識の後が知ること。静まり返った部屋は殺風景で寝台以外は何の変哲もない場所。
自身の首元を覆う革以外は。]
[窓から射し込む光に近寄ろうとしたのは、首輪が不快な音を立てる前。
男の口とは裏腹に、ギリギリ小窓に届かないくらいの距離で留められた鎖。
乾いた舌の音が部屋に響くが気にしない。
咎める人は今いない。
だからこそ、喉仏を締め付ける首輪の圧が加わろうとも、身を乗り出し小窓の下を覗き込もうとして──視界に掠めたそれは──…?]
……ト、…ィ…
[囁く声は掠れて *響く前に落ちた*]
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【人】 許婚 ニコラス へえ、とうもろこしかあ。 (73) 2014/09/22(Mon) 14時半頃 |
【人】 許婚 ニコラス 僕が好きなのは悲劇だから。 (74) 2014/09/22(Mon) 14時半頃 |
【人】 看板娘 櫻子 ベルさま。 (77) 2014/09/22(Mon) 17時頃 |
【人】 看板娘 櫻子 (78) 2014/09/22(Mon) 17時頃 |
― 人売りの馬車 ―
[皮肉な物だと、一人自嘲した。
籠から逃げ出した蝶は形を変えて花籠へ、戻る事になるだなんて。
目前で繰り広げられるは花の売り買い。人による人の欲の為の、花の売買。ひとつひとつ乱雑に摘み上げられる花達は、それまた乱雑に分別されては要らぬ根を、足を伐採される。――契約書と言う名の鋏に依って。
自分まではまだ数も在るだろうか。
恨めし気に役人を見ることはあるけれど、売られる花には一瞥もくれず。共に咲くことになるだろう花のことなど、知りたくも無いと顔を背けては茎となる前の手足に力を入れ
――そうしている内に聞こえて来た声
…キミこそ…、…亀吉を知ってるのかい。
[その姿は花売りには到底見えず。ただ傲慢な売り人買い人の側に立つ彼はまるで「花」。まさかと睫毛を震わせるけれども、返答を貰わずには声も出ず。
ただその代わりに、否元から懇願する気は有ったのだろうが――急いだように言葉を紡いだそれは此処から出る術を尋ねるもの。
「ねえ、ちょっと、ここから出してくれない」
なんて、冗談めかし、苦笑混じりに籠を押す。
まるで少しだけで良いからと、無垢な子供が境界線を知らずに大人に疑問を掛けるように。
…そんな事をすれば、子供で無い自分は、地位の持つ立場でない限り。此処の役人が余程の「甘人」でない限り。彼の身に降り掛かるモノが視えているはずなのに。]
[ただ脳裏に浮かぶ朧月は今や好い人。
其れがどうにも泣いているような気がして、かの瞳が魅せたいつの日かの寂寥が余計に気持ちを焦らせる。余裕を見せたつもりの言葉はただ早歩きしているようにも思た。
然しそれでも、気のせいかもしれないけれども。
星に宿されたとんでもない出来事が、堕ちた月へと降り掛かる様な胸騒ぎがした。]
…――俺、急いで帰らなきゃならな、…いんだけど…さ。
[ 一刹那。
気持ちを誤魔化し弛めた頬を引き締め、神妙に言の葉を紡ごうとしたその視界の隅にて。遠い遠い道の果て。大きな屋敷に造られた窓辺
そこに彼が、居た気を持ったならば。
…今や花に成り掛けた蝶の顔は強張り、ただその紺瑠璃を酷く揺らし咽は水に飢える。]
…ええ。昔の知り合いです。
[絞り出す声はどこかよそよそしい
出して
……今は無理です。でも、脱走する手引きなら。
今はこの廓の主に買われて下さい。
水揚げまでには時間があるでしょうし、それまでに機を伺えば今ここで逃げ出すよりは逃げ伸びる事の出来る可能性は高い。
主に口を聞いてこの花を買ってと甘言することはできます。
……どうなさいますか?
[急いで帰らなければ、と言ったその亀吉の知り合い
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【人】 半の目 丁助[それ程の長居はせずに、おぼろの部屋を後にする。 (79) 2014/09/22(Mon) 20時頃 |
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[こてりと。緩にちいさく余所余所しい返答へ首を傾げた。
男はただ前籠で花や蝶が行方不明になっているとは梅雨知らず、無知故に訝しむ視線さえ投げながら――そうして来たる返事にはこくりと浮かんだ疑問を腹に降ろしては「何かが在った気がした」窓辺から視線を外す。]
―――み、…水揚げ、
[ぱちり、ぱちりと瞼は瞬いた。
廓に通って居た自分が知らぬわけではない其れ。以前酒場にて小耳に挟んだことによれば其のような花を買った人さえ。]
……それ、一歩間違えば俺…ヤバいでしょ。
[伏せ掛ける瞳は凄みさえ垣間見え。自分が自分の気に入らない輩に抱かれること、そしてその姿なんて考えたくも無いと、首を振り髪を揺らし。ひとつ、瞬き。
首筋に掛かる髪先に擽ったさを覚え、その首元へと手を置いたのならば。軈ては吐息を空に混ぜ、彼の提案
……裏切らないでよ。
[そんな言葉を手土産に。]
……そうですね。間違えば貴方は汚されますでしょう。
でもそれは私が身体を張って止めましょう。
亀吉君の知り合いなら、此処へ繋がれているのは本意ではないのでしょうし。
この薄汚れた身で誰かを助ける事ができるなら、その方がいい。
[亀吉の名を切なげに呟いていた彼
ならばそれを助けるもまたいいかと笑み零し]
裏切ったならこの首へし折っても構いません。
助けますよ――空にかかる月に誓って。
[逡巡の後この提案を受け入れた彼に微笑みかければ、主へと声をかけに馬車を後にしたろう]
【人】 許婚 ニコラス[僕は櫻子が去った後も広間でゆっくりしていた。 (80) 2014/09/22(Mon) 21時頃 |
[視界の隅に捉えた二つの影
遠目からと、一瞬の出来事にそれが誰であるかなどは分からない。
だからこそ青年が望むのはただ一つ]
(……どうか、知り合いでありませんように)
[首元を繋ぐ鎖に視線を落としながら、唇を噛み締める。
舌に広がる鉄錆。少し乾いた唇を湿らせては、張り付いた喉を潤す。]
(…お腹、空いた)
[呑気なあまりにも悠長な生理現象。自身に呆れつつも、下げた顎を上げ睫毛を上向かせた先は扉の向こう]
……俺は『花』じゃない。『人』だ。
[いつか、彼は告げていた。
物語を紡ぐのは人であると。
花籠を壊すことは出来ない。
花は翅を望んではいけない。
(それは花に与えられた運命であるけれど)
小鉢にて尾びれを揺らした梅の花。
小さな水面の下でしか咲けぬ命。
箱庭にて根を下ろす花々達の香りは未だ忘れることはない。]
(…でも、俺にはあの手がある。
月の下で、引いてくれたあの人の手の感触を俺は…覚えてる)
[月が綺麗だと謂って『外』へと導いてくれた手。
青年の脳裏に浮かぶは霧雨の中でもはっきりと歪んだ脣。がなり立てる金属音は騒々しく空気を軋ませる。]
──…ッ、こんな、モン…っ
[爪が革に食い込み、厭な音の後鋭い痛みが走る。
青年は眉間の皺を刻みつつも、やめる気配も見せず続けること少し。
閉ざされていた扉が開かれた]
[“煩い”その理由一つに見張りだろうか。屈強な男が現れては此方を見下ろす。青年はたじろぐことなく睨み返せば男の舌打ちが小部屋を揺らす。
それでも怯むことなく視線を投げつければ、やがて歪められた男の脣は弧を描き、下卑た笑みを浮かべて]
「嗚呼、紫とは大違いだ」
[と、比較するような言葉を投げつける。]
…紫?
[青年が不思議そうに鸚鵡の如く問いかければ、男は瞳に愉悦を滲ませ言葉を転がす。]
[そしてその“紫の人”が此処にいる男娼の一人であること。
艶やかな黒髪の持ち主であること。
そして、訪れた日にちを耳にして、瞳を強張らせただろう。]
………嘘、だろう。
[“藤之助さん?”問う声は儚く響く。
(あるはずがない。そんなこと。けどあの花見習いが嘘を吐いたのか?本当に?)
憔悴はまともな思考を、判断を鈍らせる。
狼狽しきっていた青年は気付かなかった。厭らしい貌をした男が一歩、二歩と距離を縮めていることに。
顎を掴まれてしまうまで。]
【人】 墓荒らし ヘクター[早々に談笑を切り上げてしまうと、 (82) 2014/09/22(Mon) 22時頃 |
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