207 Werewolves of PIRATE SHIP-2-
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ヴヴ……ル……!
[牙を剥き、低く唸る。
”おまえは誰だ!”と訴えるように。
最早これは、己の知る、絶望の象徴ではない。
まったく異質な、見知らぬ恐怖。]
― 第三甲板、階段上方から見下ろして ―
[この船は随分と軽くなったと思ったが、
こうして見下ろすと、死者も留まっていたらしい。
自分もそうか、と存在の希薄な手のひらを見下ろす。
船長――だったもの。
綺麗な、真白い狼。
最期を齎すのは、やはり彼ではなかった。
彼に最期を齎すのは――?]
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[涙で濡れて光る瞳を見下ろし、 何か言おうと開きかけた唇は 獣の咆哮を聞いて、すぐに引き結ばれる。
両眼を目蓋で覆い、視界を閉ざして。
セシルの首筋に顔を埋め、噛み付こうとして。]
ゥ゛ゥ゛ア゛……――
[セシルの上からソロリと退いた。
白い獣、おれの大切なものの傍へ行くために。]
(106) 2014/12/17(Wed) 01時頃
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[傍に、傍に――……と願うも虚しく、 ガタガタ震える腕は 自らの巨躯を支える事さえ儘ならない。
死に瀕した白狼の傍へ行けるなら、 最期の力は、彼を抱き締めるために使おう。]
(112) 2014/12/17(Wed) 01時頃
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……知ってる。
[膝を抱えて座っていれば、隣から厳しい声。
少し首を竦めて、口ごもりながら答える。
そもそももう飲めないから、彼にまた狂乱を見せることもなかろう。
おまけに、と。透ける手を眺めて、ふい、と視線を床に一瞬向けて。
顔を上げた]
――ああ。
[嘆く声は、ジェレミーに今日は誰が死んだと言われた時に口にした。
『ああ、あいつはいいやつだったな』
『寂しくなるなあ』
その音と、同じだった。
血が舞って
床を、壁を、染める]
─── 。
[何かが跳ねる音がして。
波紋が広がった波間はそれきり、静かになった**]
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[片腕で抱いた白狼の身体は温かい。
血に濡れた毛並みに顔を寄せて深く息を吸うと、 どこか懐かしい匂いがした。
首筋の血流に触れる牙を受け入れ、 おれは、獣と共に紅く々々染まっていく。**]
(116) 2014/12/17(Wed) 01時半頃
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[ついてきたニコラスとグレッグが自分たちの後ろに腰を下ろす。
目の前の光景に悲鳴をあげつつ酒にという単語に反応したニコラスに、お前はやめとけと言いたかったが、先にグレッグが制したので突っ込まなかった。
ちらりと二人の方を見て、また白狼の方に視線を戻す。
先客のヴェラも近くに居たが、特に何か会話するでもなくただ様子を見ていた。
銃弾が飛び交い、剣の音が、咆哮が鳴り響いて―――。
どこか暢気に会話しながら眺めていたはずが、
いつしか食い入るようにして目の前の戦闘を見つめていた。]
[やがて、血をまき散らして満身創痍になった白狼が
ギリアンの方に歩み寄り、互いに抱擁する。
―――嗚呼、きっともうすぐ終わりなのだろう。
薄々そんな風に悟りながら、只無言でじっと腕を組んで。
血で紅く染まる白狼と、慈しむような動きで牙を立てられるギリアンを見つめていた。**]
[これは呪いだ。
死を終わりだと、救いだと思う者があるならば、
それらにとって、正しく呪いだ。
眼前の光景から目を逸らすように首を振る。
疲れた、と呟くが、身体はどうにも軽い。当たり前だった]
………あーあ
[溜息残して、そのまま階段を上ることとする。
もし、新しい風が吹くならば――
いつもの場所で、船首でそれを感じよう。
呪われた死者にも、それくらい許されたっていいだろう]
[ヴェラーヴァルが唸り声を上げている。
興味をなくし。
ふとギリアンの腕は何処にあるのかと思った。]
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