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…『知ら、ない』
[良く解らなくて、床に頬をつけたまま緩く首を傾げた。
性に興味を見いだせなくなってかなり久しいから、
そんな事を学ぶつもりもなかった。だから、知らない。
やって見せて、と言われたところで先に先行するのは戸惑いで。
ただ、ここで拒否したらまた機嫌を損ねるのだろうというのは解る。
それだけは理解できた幾らかおぼろげな頭で、説明されたとおりにしてみる。
幾らかぎこちない手付きは、知らないが故に、時々困ったような顔をしただろうか]
仕方が無いな、教えてあげるからその通りにするんだよ。
[戸惑ったような顔の青年に、一から十までのやり方を教えていく男はまるで経験者のような語り口]
先ずはしっかり其れを舐めて濡らしてご覧。
穴は……充分ほぐれてるから、そのまま挿れても問題ないけどね。
そう、持ち手のところまで全部埋めて。
出来たら深呼吸しながら尻を締めるんだよ。
[言う通りにすれば、彼の窄まりの奥
感じるその場所を先端が幾度も刺激して
体全体が硬直したり痙攣するような激しい快楽が襲うだろう。
一旦達すれば其れを引き抜かない限りは幾度も幾度も絶頂は訪れる。射精することなく絶頂を極めた青年が意識を保っていられるかは怪しいところだ*]
メモを貼った。
[言われたとおりに。その言葉にしたがって小さく頷く。
口にするには幾らか抵抗もあったけれど、自分が強請った以上は
やらなければ、また鏝でも引き合いに引っ張り出されそうで、それが怖い。
体の中に自分で埋める事に酷い羞恥を感じる。
自分を買った男の表情が見えなくて良かった、とこんな時だけ思った]
…っ
[意図的に締めるなんて、した事はないが、
ただそうするように言われたからその言葉通りに。
暫くすれば、血と蜜の匂いが薄く残る石室には今まで抑えていたのが
嘘のようにあられもなく喘ぐ響きが沁み込んでゆく。
元々精神的に限界だった事もあって、意識を失うまでそう時間はかからなかった*]
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
ひとり愉しそうじゃない。
[びくびくと跳ねる体を男はただじっと見つめていた。
此方の声など反応している場合ではなかったのだろう。
あれほど我慢していた声が石造りの部屋に響き染み入る。
糸がぷつりと切れた操り人形のように崩れてしまった青年を
荷物のように抱えれば、モニターで看視しながら控えていた双子の召使がやってくる。
彼等に手伝わせて彼の身を清めると、薄暗い地下から一度運び出すことにした。
連れて行った先は日の光が降り注ぐサンルーム。
重なり合うシルクのカーテンが揺れる其処には中東から仕入れた絨毯が敷いてある。薄暗い地下とは正反対の場所。
この部屋の雰囲気は若しかしたら彼の国に似ているのではないかと思った。
当然温情で連れてきたわけでなく
男に思いついた遊びがあったからではあるが]
メモを貼った。
[彼に新しい衣服はまだ与えていない。
青年を絨毯の上に転がすと、
男は蜜で汚れた自身の衣服を着替えに
その場を出て行った。
後には双子の召使が彼の両脇に座り
彼が目覚める様子をじっと見ている*]
【人】 子守り パティ>>263>>264 (272) 2010/04/07(Wed) 13時頃 |
【人】 子守り パティ[それからメイドは、獰猛な光を宿したまま、もうひとりの主人候補の元へと歩みを進める。扇子を持った貴婦人の元へと。 (274) 2010/04/07(Wed) 13時頃 |
[体が完全に、自分のものでなくなっていた。
熱さと苦しさでいっぱいになる。
その感覚で壊れてしまうと感じた意識は次には
悲鳴じみた嬌声を残して闇に沈んでいた。
気がつくまで、どれくらいかかったのか。
気がつくと、絨毯の上に転がされていた。
枷はなかったけれど、見張りはあの二人。
全身が疲れ切っていて起き上がる気にもなれなかった]
[2人の召使は彼が意識を取り戻した事に気付くと
翡翠いろの薄絹を差し出す。
彼が待ち望んでいただろうディスターシャは
しかし上に着る長い法衣のような其れ一枚だけ。
光の差し込むサンルームは温かく、仄かに香が焚かれていた。
男の姿は無い]
…。
[重い体をどうにか起こしながらきぬをうけとる。
差し出されたのは長衣だけ。下履きも肌着もない。
それしかわざと用意しなかったのだろうことは想像にかたくない。
受け取ったそれに袖を通す。
ふと、香の匂いに気付く。仄甘い匂いだ。
暖かな光は、母国を少しだけ思い起こさせた]
[青年が衣服に袖を通すのを見届けると、髪の短い方の双子が立ち上がり部屋を出て行く。
大分間をおいて、二つの足音と共に戻ってきた男と召使の手には大きな皿に乗った料理があった]
ああ、やっぱり似合っているよJade
前の身分は忘れろといったけれど、
そういう衣装を着せたまま貶めるのも悪く無いと思ってね。
まぁ、お仕置きの前にご飯にしようじゃない。
もうどれくらい食べてないのかな、お腹空いただろう?
[そう言いながら絨毯の上に並んでいくのは手づかみでも食べられそうな、男にとっては異国の料理。
香辛料を効かせた肉や野菜をブドウの葉で包んだもの。
ピザに似たひき肉のパイや、ミルフィーユに似た菓子。
青年の前に胡坐をかいて座り、薄い笑みを浮かべて見せた]
[髪の短いほうが部屋を出ていく。長いほうが部屋に残る。
何をどの言葉で喋ってもいいか解らないので、幾らか気不味い。
無言の時間は、確実に重たくて、腹立たしくも見慣れた顔に少しだけほっとした]
『…相変わらず、趣味の悪いことで』
[意識が戻ってくると、言葉も視線の鋭さもだいぶ戻ってくる。
並べられた皿に、幾らか瞳を瞬かせる]
『……ギリシャ料理?』
[少なくともドルマとバクラヴァぐらいはぱっと見て理解できた。
ひき肉が乗っているものが、ムサカかどうかが自信がないくらいで。
何でこんな料理が出てくるのかが不思議で、目の前で胡坐をかく男に
ちらりと視線を向けてみる。答えは、あまり期待していないけれど]
趣味が悪い?
Jadeが着ていた服に似せて作らせたんだけどね。
[硬翠に力が戻っているのがわかる。
衣服を作らせ、料理をつくるほどの時間が経過していたのは、彼にも理解できるだろう。
恐らくあの弱い薬は殆ど抜けている。
彼の問いかけに男は頷いた]
御前と同じような白い服を着ていた商人にご馳走になった料理だよ。
つくるにあたって多少アレンジはしたけどね。
何しろ此処じゃ手に入らないスパイスもあるから。
صفيحة
……だったかな、これは。
[スフィーハという発音になった其れはひき肉のパイを指差して。男は手をつけようとしない彼に首を傾いでみせた]
食べないのかい?
『そうじゃない。
服に関しての文句を言っているわけじゃない』
[しようとしていることが気に入らない。ただそれだけのことだ。
自分と同じような、と言われて、ああそうか、と何となく理解した。
恐らくこれは自分達の国よりもう少し上のレシピに近いのだろう]
『…。貰う』
[空腹なのは事実だったから。
そう言えば、肉料理と気づいて一瞬指を止めかけたが、自分と同じような姿の人間が
食べていたというなら、おそらく肉の種類も大丈夫なのだろう。
どうせ父も兄姉もいないのだから種類なんて気にせず口に運ぶことにした。
自分と母は肉を選ぶ宗教ではなかったけれど、流石に宗教が違う家族が
いる時は気にして食べていたから]
うん?
服じゃないとするとなんだろう。
[首を傾ぎ、青年の手が料理に伸びるのを見て、頷いて見せた]
ああ、どうぞ。
なるべく忠実に再現してはみたけどね。
[肉料理に伸びた手が一瞬止まったのに気付いたが
男は小さく笑うだけ。
傍らに双子の召使を侍らせて、彼が食べる様子を
胡坐をかいて観察している。
男が料理に手を伸ばす様子は無い]
飲み物にリクエストはあるかい?
[そう問いかける今は、今だけは
まるで奴隷に対する扱いではないように見せていた]
『…もういい』
[葡萄の葉の包みを口に運ぶ。刻んだ香辛料の香りが肉や野菜に染みていて、
其れは久しぶりに食べものを胃に入れたこともあって随分上手く感じられた。
小さい包みだから、二つ三つとすぐに消えていく。
ちょっとぱりぱりとしたスフィーハも、ピスタチオの緑が鮮やかな甘いバクラヴァも、
どこか故郷を思い出させて時々指が止まったりもした]
…『薄荷茶』
[飲みものを、と聞かれたので少し考えてから素直に答えた。
酒はあまり飲まない。食事をしながら甘いものも苦手だった]
ふぅん。
……しかし、御前がそうしているところを見ると、此処が異国のように感じるよ。
[軽く流すと、男は彼の注文に双子を振り返る。
同じタイミングで頷いた召使二人は音も無くサンルームを後にした。
時折手を止めながらも食事は進んでいく。
餌を与える飼い主はそんな彼の様子を口元に笑みを浮べて見つめていた]
味は気に入って貰えたかい
御前、餌は他に何が食べられる?
[男の言葉は暗にこれからも食事は与えられるという事を示している。
交わす会話内容をよく聞いていれば、その食事を男が作っている事が理解出来るだろう。
暫くして、薄荷のスキっとした香りの茶が運ばれてくる。
双子は一礼してサンルームを後にした]
[スフィーハの、ソースを吸っているのに少し焦げてぱりぱりとした耳が好きだ。
これはちょっと気に入ったので、少し時間をかけて食べる]
『そうさせているのは、お前だろう』
[小さな破片を口に運ぶ。
食事も、服も。こんな風にされるなんて思ってもみなかったし、
逆に、買われた身分にしては手を掛けられている気がしてそれがどうにも違和感があった]
『…悪くは、ない』
[破片や細かい屑が膝に落ちないように、軽く手を添えながら食事は進む。
何が食べられると聞かれて、幾らか間をおいて、大抵のものは、と告げるだろう。
香の中に薄荷のひんやりとした香りが混ざれば顔を上げる。
相変わらず声を発しないその二人が出ていくのを見てから、
ポットから注がれた薄荷茶の碗を傾けた]
ああ、そうだよ。
御前を少し着飾ってみたくなってね。
[手をかける真似事をしたのは、あの場で育てる者に会ったからかもしれない。単なる気まぐれの一つ。
どうやらピザのような料理は彼の気に入ったらしいと観察しながら男は記憶する。
食事の進め方も矢張り身分の差を見ているようでそれが男の深い部分で仄かに燻る]
そう?
美味しいならつくった甲斐があるね。
確か牛だったか豚だったかは食べられないと聞いたけど
それも大丈夫かな?
[悪くないと、碗を傾ける青年に笑い]
御前を飼うにあたっては
少しばかり時間をかけて見ることにしたんだ。
そう簡単に殺さないから、安心するといい。
[食事が終わる頃合を見計らって、低い声で未来を語る。
殺さない、とは言うが、壊さない、とは言わない]
……。
[あからさまに嫌そうな顔をしただろう。
多少立場上見目に意識を使うこともあったけれど、着飾るのは範疇外だ。
唇と指に残ったピスタチオを舌で舐めとる仕草は子供のようでもあったか]
『俺は異兄姉達とは信仰が違うから問題ない。
こちらの血も混ざっているから普通に牛も豚も食える』
[こちら、とは言ったが果たしてこの場所が欧州なのかは解らない。
甘い残り香を薄荷の香りと共に飲み込む聞こえた言葉に幾らか睨んだ。
命以外は持っていかれる可能性があると、言葉を聞いて判断したからだ]
[紅い舌が覗く仕草には、少年らしさと同時
誘う意図をも読み取る。恐らく彼は無意識だろうと思いつつ]
へえ……? 混血児ってやつかな。
兄弟多いんだね。
[彼の身分を確かに知っているわけではない。
男はそんな風に語りかける。
此方へ向いた鋭い視線には、褐色を細めて笑んだ]
――聡い子は嫌いじゃないよ。
俺の機嫌を損ねないように、気をつけるんだね。
殺さないってことは
どんなに痛くても辛くても死ねないって事だから。
『母は、こちらの人間だ。
兄姉は……数えたくもない』
[数を上から数えようとして、両手両足でも足りないと気づいてやめた。
どうせ買われた今となっては帰る事も多分ないのだろうから]
『喜ばしい展開でないことだけは確かだとは、理解している』
[あの格子の中に放り込まれた時点で、碌な運命にならないと解っている。
ただ決めているのは、ひとつだけ]
『そう簡単に飼いならされるつもりはない』
Jadeの父親はハレムでも持ってたのかい。
[男は小さく笑った。
今更思い出させたのにも幾らかの意味はある]
そうでもないよ?
御前にとって悦ぶ事も用意してあるし。
[青年の宣言には、愉しげに頷いた]
直ぐに服従する奴隷が欲しかったわけじゃないんだ。
生意気そうなのが一つ欲しくてね。
……でもただ生意気なだけじゃ壊して終わりだ。
御前みたいなのが欲しかったんだよ。
でもまあ……早速おねだりが聞けたし
はしたなくひとりでオナニーショーも見せてくれたし
飼い慣らされない心算でも
服従せざるを得ないいまのこの状況
どんな気分だい?
[男は青年の前に胡坐をかいたまま。
薄荷茶を碗に注ぎ、唇へ寄せながら問うた]
『…持っていたら、どうなんだ』
[否定はしない。そこまで辿らせた意味は何なのだろう。
自分も、足を開いて父を待つ母達と同じなのだと示したいのだろうか。
悦ぶ。其れはどういう意味なのだろう。
首を傾げると前髪が硬翠に薄く紗を掛けた。
お前みたいなの。
そう言われて、不機嫌そうに口元が歪む。
言葉を吐くことはなかったが空になった皿を少しだけ押しやり、
それからまた薄荷茶を口に運んだ]
[小さくむせた。
聞こえる言葉に、苛立ちもあったけれど微かに表情に乗るのは羞恥]
『不愉快だ』
[いい気分でないのは確かだ。
ただそれだけははっきりと口にする]
いや?
そんな身分の父親が居たなら、御前も手解きくらい受けてるのかと思ったんだけど。
[青年の容貌を改めて見遣る。
笑みを深め、皿が押しやられるのに気付いて腰を上げた。
リン、とベルを鳴らす。
サンルームの外へ聞こえはしないだろう小さな音ではあったが、間も無く二人の召使は現れる。
長い髪の片方がむせた青年へ白いナフキンを差出し、短い髪の片割れが黙々と片付けていく]
だろうね。
御前言葉通りお姫様だったんだろう?
それが今、奴隷として此処にいる。
しかも買ったのは金持ち貴族じゃないとくれば、さ。
『…あまり、父とはそういう話をしなかった』
[それ以上は思い出したくなかったから口を噤んだ。
元々性的なことにそれほど興味がなかったし、軽い苦手意識の様なものもあった。
体が育ってからは、それだけでは済まなかったこともある。
思考を中断したベルの音は、香の中で清かに響く。
視線を持ち上げれば、白いナフキンが差し出されて、
軽い戸惑いと共に受け取る。礼の言葉はどちらで言えばいいのだろう]
『女になった覚えはない』
[姫、という言葉は酷く気に入らない。
蔑み交じりに兄姉達にそう呼ばれていた事もあったから]
『別に、誰に買われたところで不愉快なものは不愉快だ。
貴族だろうが、賎民だろうがそんなもの関係ない』
おや、跡継ぎと言うわけではなかったかな。
……嗚呼、尻のほうが感じるみたいだったしね。
女になった覚えはなくても
Jadeはお姫様だ。
[差し出したナフキンを受取られると、長い髪の召使は一礼して下がる。片割れと共に茶器と皿を片付け出て行くまで、一言として言葉は発しなかった。
彼等の声が聞けたのは、蜂蜜風呂の中荒い吐息だけだ]
そう?
俺は其処が一番関係あったんだけどね。
どっちにしろ御前のプライドが高いのはわかってる。
へし折ってやりたいんだ。
さ、食事も終わった事だし、遊ぼうじゃないか。
[スパイスの残り香は大分薄い。
男は青年の目前に立つと、蛇のような視線を向ける]
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