84 戀文村
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[女は読唇術など心得ていない。 けれど、自分の言葉は、きっと間違っていなかったと 彼の笑みを見て思った。
遠い国で、戀という字は、糸し糸し(いとしいとし)と言う心 と覚えるのだという。 それを知って、じっとその字を見つめた時、 クラリッサは別の解釈をした。 きっと戀というものは、心にあるものを 糸を丁重にこよらないと言葉にできない感情なのだと。 糸を紡ぐのは、思うより繊細で難しい。
実際、今の裡を、女がきちんと言葉にするのは難しい。 だから、肩に置かれる手を感じれば、言葉にするよりは、 そっと身を預けるのが自然なことだった。]
(33) 2012/03/30(Fri) 17時半頃
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[けれど、言葉にしなければ、戀という形を自覚は出来ず。 だからこそ、ブローリンが、文字(形)としてくれた気持ちは、 愛しくて、愛しくて……。]
(34) 2012/03/30(Fri) 17時半頃
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[ほんの少しか、それとも長い間だろうか。 抱き合うとも、寄り添うとも言えない触れ方は、けれど十分に暖かい。 やがてその手を、また彼女の頬にやる。 ゆるりと撫でて、もう一度微笑んだ]
ーありがとう。 そして、すまない。
[口も動かさず、彼女に思う]
(35) 2012/03/30(Fri) 17時半頃
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[互いに温もりが感じられる距離。 それは、近くて遠くて。 その時間は、短くて長くて。
頬を撫でられる感触、受け入れる。 鏡写しのように、微笑んでみせる。 戀と自覚すれば、今は辛いだけならば、 言葉(自覚)はいらない。 後で、自覚を覚えた時、それでも幸せだったと、 思えるこの時を抱きしめる。
――……いつか、再び逢えた時。 そんな想い(幸せ)をくれたのは、 貴方でしたと、その時は言葉で*伝えられるように*]
(36) 2012/03/30(Fri) 18時頃
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[どこからともなくセレストの呼び声が。
近くにいるのだろうか。
顔をあげ、声のする方へ。
ふわっと微笑んだ。
彼女もこのもどかしい2人を。
見守りたいと思っているのだろうか。
だけど、しかし。
2人の間に通うものは深く根強い。
春がくれば花を咲かす蒲公英のように。
ささやかだが暖かい太陽の様なあの花のように。]
[死神の振るう鎌も気まぐれだが。
恋の天使の放つ矢もまた気まぐれ。
たまたま自分に刺さったのは。
片方がない……それだけのこと。
この2人には互いに引き合う同じ矢が。
刺さって結びつけたのだろう。
クラリッサが愛おしい。
けれど、それと同じくらい……2人ともが愛おしい。**]
[これも気まぐれな天使の矢がもたらす想いなのだろうか?]
[セレストの声が聞こえて、色素の薄い金の髪がふわりとゆれる。
向けた視界の中、泣きそうな顔の幼馴染が見えて]
――うん、往生際悪いと思うけどね。
やっぱり、最後は村に居たかったから。
[ただいま、と小さく告げる。
また会えたのは嬉しいけれど、このような再会はしたくなかった。
やはりセレストも亡くなっていたことを実感して、薄水色の瞳が悲しげに微笑んだ]
[大切な人たちが心を交わしている。
どんなやり取りをしているのかは知らない。
そのやりとりを聞くほどに近くには居ないから。
ただ、その哀しくも優しく愛しい雰囲気をそっと見守っている。
幸せになって欲しいと願った人が居る。
それが叶うことを、ただ祈った**]
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[そうして、彼女と別れた後。村の入り口で、兵員輸送のトラックが来るのを待つ。 出て行く者のの見送りにはどれだけの数が来ていただろうか。 おそらくそのほとんどは軍人であったろう。 その中にまばらに見える村人の一人の前に歩み寄って、敬礼する。 普段、無口な自分自身への奇異の視線の中、その人に頷きを返した。 厚い幌のかかったトラックに乗り込み、エンジンが始動する。 その振動は、すぐにタイヤから伝わる地面のものに変わった。 見送りの軍人らが一斉に敬礼する中、一人だけを見て、微笑みを送る]
『この野郎、抜け駆けしやがって』 『口聞けないのにどうやって口説いたんです? 隅に置けないな』
[共に往く皆の囃し立てる言葉に、ほろ苦い笑みを浮かべて、目を閉じた。 今日あった事を、思い返すかのように**]
(37) 2012/03/30(Fri) 19時頃
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ブローリンは、ナタリアに預けた手紙を思い返す。彼女の分は、読んでもらえたろうか。
2012/03/30(Fri) 19時頃
ブローリンは、そして、預けた手紙が、届けられる日が来る事を切に祈る**
2012/03/30(Fri) 19時頃
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Dear Ma'am,
"この村に居た10ヶ月ほど、度々お騒がせして申し訳ない。 あなたは自分の心の拠り所でした。自分の母は病に倒れましたが、 おこがましくも、もしもこうして母に手紙を書くのであれば、 きっと今のような気分だったでしょう。
あなたのお孫が戦争に行ったきり帰って来ない事、 彼にまつわる手紙の、今もあなたに集う手紙の話を聞き、 こうして自分もあなたに手紙をお預けします。
あなたに対しての数々の非礼をお許しください。 あなたの為を思ってこそ、あなたのお孫が帰って来たかの様に 振舞っていた事を、どうかお許しください。 それがあなたを傷つけるだけだと知っての上での愚行を、 あなたは分かっていた上で、自分の我侭に付き合って頂けていたのではないかと、 今は思います。そのあなたの優しさこそが、あなたに母を重ねた理由だったのかもしれません。
最後まで甘える事になってしまいますが、あなたの'子'として、往きます。 どうかお元気で。
(38) 2012/03/30(Fri) 19時頃
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Yours,
Roy M. Brolin "
" P.S. 同封は戦場で撮られた写真です。もしもあなたが是とすれば、受け取って頂きたい。 そうでなければ、預けた手紙と共に保管願いたい。 最後の最後までご迷惑をおかけします。 いままで、ありがとうございました。 "
(39) 2012/03/30(Fri) 19時頃
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―朝―
[昨日はよく眠れなかった。いっそ駐屯地へ行って彼らを告発すべきなのかとも考えたが、やめた。どちらも、大して違いがあるとは思えない。いや、もともとの動機から言えば彼らをあながち責めてばかりも正しくはないのだろう]
・・・おはよう、母さん。
[見るからに憔悴しきった母親を前に、もう2日前のようにとりみだしたりはしなかった]
・・・あのね。わかってると思うけど・・・ エリアスは戦争に行ったの。 ・・・そうだね。私も戻ってくるって信じたいよ。
[薄々理解していたとはいえ、やはり最愛の息子を失った悲しみは耐え難かったろう。自分だって、あれだけ体の弱い弟が、無事に生きているとは思えなかった。この年まで生きてこられたのが、むしろ驚かれるほどだったのだから]
・・・ねえ、母さん。 母さんはさ。エリアスのところに行きたい?
[泣き腫らした目で自分を見つめる母の瞳に映る自分の目は、どんなだったろうか。ダーラやホレーショーと同じようなものだったかもしれない]
(40) 2012/03/30(Fri) 21時半頃
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・・・うそうそ。冗談だよ。 ねえ、母さん。だけど、もうじきこの戦争も終わるよ。 ・・・だけど、もう何人かきっと出て行くんだ。 わかるよ・・・私。
[母親を説き伏せて、ほとんど量のない食事を2人で摂り終わる。そのまま工房へと出た。昨日、自分が出て行ったあとの酒場で何が起こったかまでは、知るはずもなく]
(41) 2012/03/30(Fri) 21時半頃
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―工房―
[作業机の上にはいくつか物が置かれていた。指輪と、手紙と、それからある走り書き程度の紙切れ。]
・・・もしものために置いといたけど。これはもういらないね。
[手紙と指輪だけを残し、紙切れは破り捨てて火にくべてしまった。そうしておいて、少しの間全てを忘れるように、仕事に没頭する。扉がノックされたらきっと出て行って、それがあの無口な軍人だと知ると、一礼する]
(42) 2012/03/30(Fri) 21時半頃
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・・・昨日はすみません。あなたとはもっとゆっくりお話ししたかったのだけれど。 ・・・行くんですよね?行ってらっしゃい。
軍人のあなたは、やっぱりぴしっとした服の方が似合ってます。だけど、次に来る時は。もっと普通の服でいてください。あなたに一番似合う服は、それじゃないと思います。
・・・あの2人を見かけたら、一言伝えておいてくれませんか。 ・・ゆっくりとお話しすることができず、心苦しく思いますって。
[彼との話は短かったかもしれないが、努めて平静を崩さず。努めて。 ・・・再び工房から出てきたのは、もうかなりいい時間だった]
(43) 2012/03/30(Fri) 21時半頃
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[ちらっと酒場に立ち寄ってもみたが、開いているどころか、人の気配もないようだった。クラリッサはまだいただろうか。いたとしても、中にまでは踏み込まなかったのだけど]
・・・・・
[そうして次に辿りつく先は、結局いつものあの場所。
扉を叩き、主の在るやなしやをうかがう事になる]
(44) 2012/03/30(Fri) 21時半頃
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[夕方。村の入り口。見送りの中に女の姿があった。 見送られる中から、一人の軍人が女の前に立つ。 奇異の視線に晒されても、女もまた揺るがなかった。]
……いってらっしゃい。
[穏やかな顔で、約束の言葉を、もう一度。 頷きに、頷きを返す。 無口な人の背が、トラックへと向かう。 瞬きを忘れたかのように、 クラリッサは、ずっとその姿だけ追っていた。 その笑みを刻みつけるように。
やがて、エンジン音が響き、トラックは走り出す。 その姿が肉眼から消えて、その音も聞こえなくなっても 陽が暮れる中、その間何があっても、女はその場に立っていた。]
(45) 2012/03/30(Fri) 21時半頃
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[そして陽が暮れてから、女はやっと詰めていた息を吐く。 眼を瞑れば、瞼裏には、旅立ちの時の笑みが、 影送りのように鮮やかに映る。
涙を見せてはいけない人は旅立った。 今は闇が顔も隠してくれるだろう。
信じていても、信じているからこそ。 胸前で手を組み祈りを捧げながら、 声を殺して泣くのだ。
唇が動く―――…… 、と。
けれど、それはあの無口な人のように、音にはならず。]
(46) 2012/03/30(Fri) 21時半頃
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[クラリッサとブローリンを見つめる。
クラリッサと同い年のセレストにとって、淡い恋心を抱く相手なく死んでしまった悔いが全くないといえば嘘になる。
しかしそれよりも、ブローリンに出撃命令が下ったほうが切なかった。]
…クラリッサ…。
[今、彼女は何を想うのだろう。それを測り知ることはできないが、なんとか、クラリッサには幸せにと願う。
エリアスの言葉が耳に入れば、
同意するように頷いた。]
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− 見送りの時 −
[乗り込む兵士達は皆凛として誇らしげに見えた。 それが本心なのか虚勢なのか自分の心根のせいなのか。 旅立つ者達に敬礼を送り、その顔を見つめる中、 ブローリンがほんの僅か、微笑んでいた様に見えた>>37 その笑みを贈られた人物を見つければ、 彼女にそっと近寄り声を掛ける]
(47) 2012/03/30(Fri) 22時頃
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クラリッサ…ブローリンの見送りに来てくれてありがとう。 ……ブローリンの笑顔を…ありがとう。
[ブローリンが愛したこの村で、 何より大切にしたいと思う者だろうと確信して感謝を示す。 余計なものを抱えさせてしまった彼を癒してくれた クラリッサに本心の感謝を述べて]
クラリッサ…あんたは…ここで待ち続けるのか?
[もう、還って来ない。 判っていると思ったが、その言葉だけは飲み込んだ]
(48) 2012/03/30(Fri) 22時頃
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―本屋―
[何時ものように店を開けて 来客があったことは、後ほど語ろう。 ただ、今は]
おや、開いていますよ?
[扉を叩く音に不思議そうにそう声をかけたのだった]
(49) 2012/03/30(Fri) 22時頃
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ああ・・・ごめんね。ここのところ毎日でさ。
[少しばかり申し訳なさそうに、扉をくぐり、いつもの位置に腰かけた]
・・・・・今日はブローリン・・・あの無口な軍人さんが出立するみたい。私もちょっと挨拶したきりだけどね・・・ 他にも随分多く、軍から出て行くらしいよ。
・・・と言っても、ここでいるベネットにはあんまり関係ない話かも。 ・・・・・何か待ってて離れられないみたい・・なんてね。
[ほとんど時の流れを感じさせない、その場所を見上げた]
・・・栞が売れちゃったみたいだし代金も貰いたいんだけどさ。 ・・・昨日飲みそびれちゃって。そっちの方もね。 気分が乗ってるなら一献お願いしたいんだけど。
(50) 2012/03/30(Fri) 22時頃
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[そんな女にかかる声がある。 すんっと鼻を鳴らして、その人を見た。 いつも陽気な軍人は、けれど、その時は真面目に見えて。 随分上の方にある顔を見上げて、問いかけに頷く。]
ええ、私にできることは、そのくらいだから。
[それは、ブローリンだけでなく]
約束したんです。 『おかえりなさい』って迎えること。 互いがどうなっていても、この村で。
[この先、自分が戦場に向かうことがあるかもしれない。 けれど、魂は此処に戻ってくるのだと、 確固たる意志を眸に宿して。]
(51) 2012/03/30(Fri) 22時頃
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いいえ、毎日ご無事が確認出来るのは嬉しいことですよ。
[何時もの椅子は、相変わらず其処に用意されている。 ブローリンの話には、頷きながら口を開いた。 朝方から、青年の一日は何時もと変わりない。 たとえ昔馴染みが静かに狂い旅立って行ったとて 知る術が此処には無いもので]
……ついに軍人が動きましたね。 此方へもブローリンさんが、いらっしゃったんですよ。 本を、引き取って欲しいと。 代金無しで良いのか問うたんですが、持ってゆけないのだと。
[ちら、と視線を向けた先 栞を並べていた机には、置き去りの本が幾冊か]
(52) 2012/03/30(Fri) 22時頃
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―昼間・工房にて [彼女の言葉に首を振って、そして頷く。 服のことを言われ、自らの胸元を見下ろす。 あいまいに頷いて、服の中から、カバーに包まれた本を取り出して差し出す。 一枚のメモと一緒に]
"この本をエリアスに貸してやりたい
[栞が二つ、違うページに挟まった詩集。 彼女が作ってくれたカバー。全て、預けておきたいと]
戦場には、連れて行きたくない"
[ミッシェルは受け取ってくれるだろうか]
(53) 2012/03/30(Fri) 22時頃
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おや、御代金を渡し忘れておりましたね。 昨日はてっきり私抜きで 酒場に出かけたものとばかり思っておりましたが ……飲みそびれた、というのは?
[首を傾ぎながらも、奥から預かっていたブランデーを持ち出し 本屋のカウンターにグラスを二つ置いて、静かに注ぐ]
ダーラが店を開けていなかったとか? それとも、お酒がもう村には無いんですか?
[酒の出所が途切れたのだろうか。 不思議そうに、いくつかの可能性をあげる]
(54) 2012/03/30(Fri) 22時頃
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ベネットは、ごそごそと仕舞いこんでいた金銭取り出し、袋ごとミッシェルへ渡した。
2012/03/30(Fri) 22時頃
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ありがとう。そう言ってもらえると、助かるな。
[遠慮なく、いつもと変わりないように振舞うが、少し愁いが顔に出てしまっているかもしれない]
ブローリンさんが、ね。何の本なんだろ。 詩集かな?
[以前に会った時の様子を思い出して、その本を一冊手に取る。ページをめくる音だけ響かせた]
・・・・うーん、つまり何と言うか・・・ ちょっとした喧嘩をしちゃってね。ダーラさんと。 見解の相違ってヤツ。
ヤニクさんも旅立っちゃったっていうし、ちょっと残念だったな。 ああ・・・ごめんね。まずこれはもらっちゃう。
[カウンターのグラスに注がれブランデーを黙って眺めて、受け取る。その間に代金の袋はしっかりと回収した]
(55) 2012/03/30(Fri) 22時頃
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―昼間・本屋にて [もう読まないのか、持って行かないのかという問いに、 ゆっくりと首を振る。戦火に焼かれるよりは、ここでほかの本と共にあり、 いつか誰かに読まれる方がいいだろうと思う。 すこし表紙が広がってしまっている―"月世界旅行"―ものを申し訳なさそうにめくる]
……
[もともと、代金を貰うほどのものでもないのだ。 第一、金を貰ってゆっくり使える戦況とも限らない。 やんわりと、しかし固辞して、本屋を後にする]
(56) 2012/03/30(Fri) 22時頃
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