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[彼女は歌は苦手だったけれど、代わりにヴァイオリンの腕前が素晴らしかった。
年の頃は自分の方が正確ではないから多分12か13ぐらいだったと思う。
夕暮れ時、よく二人でコンサートの真似事をして遊んだ。
聴衆は河原の虫やカエル達。
いつか二人で舞台に立とうねと、本当に無邪気に約束していたのだ。
夢はいつか叶うのだと、そう思っていたから]
[優しい家族と初めての友達、楽しい日々はずっと続くのだと信じていた。
けれど、ある日。
初めて友人を家に招いて、彼女を家に泊めた日に、またも大切な物を失う事になった。
夜更け、誰かが私の部屋に入って来たのだ。
その人はただの泥棒だったのかもしれないし、元々いかがわしい目的があったのかもしれない。
それは定かではないし、知りたくもない事だけれど。
とにかく家に入り込んできた暴漢に私は襲われた、口を抑えつけられる寸前、小さく悲鳴が出てしまった。
もしも人生をやり直す事が出来るのなら、この時に戻って大人しくしている事だろう。
運が良ければ生きていられるだろうから。
それとももっと昔、行き倒れる時にいっそ自分で命を断つべきなのか。
生家を出ないべきなのか。
とにかく私は最悪の選択の繰り返しなのだ]
【人】 見習い医師 スティーブン行くのかい? (8) 2011/10/27(Thu) 22時頃 |
[私の声を聞きつけてしまった友人が部屋に入ってきてしまった。
誰かに馬乗りにのしかかられて、口を抑えつけられている私を見て友人は――本当に優しく、正義感の強かった――友人は、子供ながらに見知らぬ影に飛びかかったのだ。
私を助けるために。
そして、彼女は私の目の前で滅多刺しにされて目の前で息絶えた。
私を見ながら、優しく笑みを浮かべながら。
まるで私に助かってよかったと言わんばかりのその顔は今でも夢に見る。
いや、これからはもう夢を見る事もないのだろうけれど]
[騒ぎを聞き付けた両親が二階に上がって来た時には、友人の死体と、背中を二か所刺され、血を流しながらも友人の手を握り泣きじゃくっていた私が残されていた。
両親にすれば私が生きていて良かったのだろう。
彼らに非はないし、生みの親とは違うぐらいに優しい人達だった。
それでも、大切な物を失くしてしまった。
二人の夢はもう叶う事はない。
それから数年、それでも私は音楽の道を志して学校に通った。
事件のあった後は家族で街を出て、また別の街に引越しはしたけれど、それからの数年は平穏だった。
私一人の夢となってしまったけれど、夢を叶えるために――舞台に立てればきっと彼女の夢も叶うからと――声楽家になるために、大学まで両親は出してくれ、その夢も遂に叶ったのだ]
【人】 楽器職人 モニカ[木々がざわめく音がする。 (9) 2011/10/27(Thu) 22時頃 |
[例え才能があろうとも、例えその上に努力を重ねていようとも、舞台で主役を張るのは途轍もなく遠い道なのだ。
今はただ、声楽家という夢の第一歩を踏み出したに過ぎない。
養父と養母は本当に喜んでくれた。
この二人には感謝してもしきれない。
けれど、いつまでも甘えていたくないからと、私は一人暮らしをしたいと二人に告げた。
当然二人は反対した、何せ二人からすれば二回も死にかけた私を見ているのだから当たり前の話だ。
それでも自立したい私は二人を説得して、今の暮らしに落ち着いていたのだ]
[子供は大好きだった、不幸だった自分の子供の頃を思い出すけれど、大好きな養父と養母の様な存在になりたかった。
だから孤児院という、昔の自分が多く集まっているような場所では良く唄わせて貰った。
きっと、彼らにも幸が訪れるからと、訪れるようにと、祈りを込めて。
子供だった友人を殺された傷跡は途轍もなく深い傷だったのだと思い知るのはここに来てからの事。
人が目の前で死ぬのはあの頃を思い出させるから。
私が本当に助けたかったのはあの三日月顔の男だったのだろうか?
多分違うのだろう。
本当に助けたかったのは、あの時の友人なのだから]
【人】 見習い医師 スティーブン…ふむ。 (10) 2011/10/27(Thu) 22時半頃 |
[あの時の友人を助ける事が出来なかった私は、きっと目の前で死んだ人の仇を討てれば、彼女の仇が討てるのだとそう思い込みたかったのだ。
だからあの道化を自分の手で殺したかった。
あの時の犯人の罪を、道化に被せたかったのだ。
結果としては、自分では殺す事は出来なかったのだけれど。
そして、子供を殺したという事実を突きつけられるのはやはり瞬間的に見境がなくなってしまうのだ。
だから憎かった、ゾーイを殺したあの黒猫が。
無謀だったのだ、自分の状態を認識していれば――
いや、それでも私は黒猫と戦う道を選んだのかもしれない。
だって最悪の選択ばかりを繰り返すのが私の人生だったのだから]
[昔、イカロスというギリシャ人は蝋で固めた鳥の羽で空を飛んだそうだ。
けれど、太陽に近づきすぎたイカロスは蝋が溶けてしまい、空から堕ちる事になった。
分を弁えない人間の最期など、そんなものだ。
だから、力の差も弁えずに黒猫と戦ってしまった私の最期もそんなものなのだ]
【人】 見習い医師 スティーブン―路地裏― (11) 2011/10/27(Thu) 22時半頃 |
メモを貼った。
【人】 楽器職人 モニカ― 路地裏 ― (12) 2011/10/27(Thu) 22時半頃 |
メモを貼った。
― 広場 ―
[目を覚ました頃には辺りには誰も居なかった]
あれ……。
私、どうなったんだっけ。
[黒猫はどこに行ったのだろう、そんな事を考えながら身を起こす。
今まで身体がだるかったのが嘘のように軽やかだ]
……夢……って訳じゃないわよね。
[自分の手を見る、道化と戦った時に開いた手の大穴も綺麗さっぱり無くなっていた。
変わりに、手が透けて地面まで見えた]
あ……。
[思い出す、黒猫との戦い。
最期の一撃はどこに刺さったのか全く覚えていないが、透けた掌から自分の血塗れの死体が転がっているのが見えた]
そっか、死んじゃったんだ。
[ぽつりと、感慨もなく呟く]
そっかそっか……。
あーあ、これからって所だったのに、私の人生。
[やはり、倖せにはなれないまま、終わってしまった。
本当に申し訳ないのは両親へだ]
死ぬ時にお養父さんお養母さんの事を、
真っ先に思い出してあげられない親不孝でごめんなさい。
本当の娘みたいに育ててくれたのにね。
ここまで大きく育てて貰ってから死んじゃうなんて、
本当に親不孝だな、私。
[額に手を当てて、自嘲気味に嗤う。
泣きたいのに、涙は出ない。
お化けってそんなものなのだろうか、それとも自分がそういう風に出来ているのだろうか]
【人】 見習い医師 スティーブン…見つけたらしいね。 (13) 2011/10/27(Thu) 22時半頃 |
今なら本当のお母さんもお父さんも許してあげられるのにな。
死んじゃったから。
生きて帰れたら許さないままだったけど。
[ふぅと小さく溜息をついて、誰に言うでもなく独りごちる]
切ない。
って言うか幽霊になったのって私だけ?
その前にあの猫と先生はどこ行っちゃったんだろう。
先生は確かに先生だったもんなあ。
[能力は今も使えるのだろうかと、掌に念を込めてみるが当然何も起こらない。
空も飛べそうにない、幽霊って以外と不便だった]
ゾーイと道化だった男には未だ気付かずに**
メモを貼った。
【人】 楽器職人 モニカ[枯れ木が近付いてくる。 (14) 2011/10/27(Thu) 23時頃 |
【人】 見習い医師 スティーブン戻るかい? (15) 2011/10/27(Thu) 23時頃 |
…やれやれ。さすがにこの絵は俺も退くな。しかし、どうせならもう少し綺麗に… おい、どうした?気分でも悪いのか。あんまり大声出すなよ、それとも女の子に今のを見せてやりたいか? だとしたら随分と下卑た趣味を…おい、落ちつけって。
[長身の男が目の前で食われる様に声を上げた男や周りの者に、妙に冷えた頭のまま語りかけた]
…大体さあ…人間が人間を、だって? …違うね、あんたの考えてるようなのが人間なら、俺らはここで殺し合いを始めてからこっち、そもそも人間じゃなかったと。 そういう事じゃないのか?なあ…兄さんよ。
【人】 見習い医師 スティーブン…ピアス? (17) 2011/10/27(Thu) 23時頃 |
[男はどこか、楽しそうに足を進める。
進んできた道を帰ろうとしかけた時に、広場から来る二つの影を見つける。
建物の上からその行進を見下ろして、さてあの二人は死体を見た時どう反応するか、考えてみた]
無残な有様に泣き叫ぶのでしょうか。
死体に慣れて、なんとも思わないでしょうか。
死が多くなるにつれて、悲劇ではなく事故になる!
どこか感覚が麻痺して一つ一つの死には注意が払われない。
まさにそんな状況だ、とは言えませんが少し通じる気もしてきますね。
まだ女の霊が起き上がったことを知らず、建物の上からそうこぼす。
[口の中から銀細工が取り出されていることなど知らぬまま、
男は広場の方へ帰っていく。
無残な死体を作り上げた人間の、行方を探す様に
路地を覗きながら。]
しかしまあ… どうせ子々孫々に見取られつつなんてのは期待もしてなかったが、どうも体が軽すぎて落ち着かなくていけないや。
…見知った子の顔がこっちにない分気は楽だが、早いとこジャンナでもゲヘナでもいいから開いてくれないもんかね…なあ?前座が悪趣味なのは勘弁してやるとしてさ。
[誰にともなしに、近くの人間に聞こえる程度に呟いた]
【人】 楽器職人 モニカ[彼の耳を確認してみれば、それらしき跡もある。 (18) 2011/10/27(Thu) 23時半頃 |
メモを貼った。
[ふ、と。地獄の責めのような時間の末に潰えた男の意識は、再び浮かび上がる事になった。
最初はただ、ぼんやりとして、深い海の底でたゆたっているかのように、何もわからずに。段々と、音が認識出来てきた。話し声? 笑い声? 誰かの。そして、像が認識出来てきた。三法が閉じられた空間。散る赤。不穏な臭いが認識された、ような気がした]
……
[何だろう、と思う。本当に、何だろう。何か。そうだ、俺は、エリックだ。エリック・リンディ。人間。でもって、此処は、街だ。街の――そう、普段のそれではない街で。
悪夢のような世界。悪夢のような状況。
それで、俺は。ええと。何だろう? ぼうっとしている。夢から覚めた直後みたいだ。夢。ああ。もしかしたら、本当に夢、悪夢だったのだろうか? あのお化けに満ちた世界は。
思考はふわふわと、ぐるぐると、彷徨って]
【人】 見習い医師 スティーブン…此処じゃあ、僕は戦いにくいからねえ。 (20) 2011/10/27(Thu) 23時半頃 |
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