3 ビー玉坂〜卒業式の前に視るその場所は…
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[小さく肩が震えた]
――…。
馬鹿ですよ。
貴方は。
傍にいたいのではなかったのですか。
貴方が傍にいるのだと思ったから、私では声は届かなかったから、何も言わずにきたというのに。
―…それに。
私がどう想っていたかなど言わずともいいことでしょう。
言わずに、いてほしかったのですけどね。
[眼を伏せて浮かぶ苦い表情。
他人の口から告げられるならせめて自分の口で。
叶うことなどない想い。――あの頃と同じ]
「キャロル……――――?」
[耳を打つ声に少女だったモノは顔を上げる
見上げた先にはぼろぼろに傷ついた長身の男がいて
あれだけ慕って求めても、想いが届くことはなかったけれど
もう蒼を忘れて薄紫の傍に寄り添っていると、心のどこかで思っていたけれど
――本当にあの人は来てくれた
――愛しい人が来てくれた
間に合うことはなかったけれど、――それでも、彼は約束を果たしに来てくれた]
[少女だったモノは悦びに打ち震え、愛しい人に眼差しを向ければ――濃紺から涙がこぼれる]
――なんで、泣くの?
[小さく首を傾げ、問うた
愛しい人の涙が――想いの欠片が、僅かでも自分に向けられてしまったから
彼の全てを手にしたいという、望みを忘れられないから]
[いつか彼がそうしてくたように、涙に濡れた頬に口付けようとして
砕けてしまった蒼が、彼の裡にある薄紫の淡い輝きを映せば]
――……本当に……ばかだなぁ
[今更ながら、それは叶わないことだと知るけれど
奇しくも言葉は愛しい人と重なって
少女だったものの唇に僅かに笑みが浮かんだ]
|
―北棟付近―
[ あそびましょ ] [ あそびましょ ]
……みんなどこいったの か な ?
[下校途中の生徒達、 彼らには血泥に塗れた姿も、みえてないのか 挨拶して ゆるやかに手をふったり]
ちがう ……うん、ちがう ね あの子達 どこ か な? どこにいるの か な ?
[影に潜む、蜘蛛が視る。 銀色の眼は10個に増えた]
(62) 2010/03/06(Sat) 16時頃
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[彼が最後にもう一度 "蒼" を見上げて去った後も愛しさは消えない
異形に身を委ね、快楽で心を塗り潰そうとしたのに叶わなくて
最後に試すように彼を突き放したのに、それでも約束を果たしに来てくれたのが嬉しくて
――彼を求める心は本物だった
だから、その愛しい手が黒い花を手折らなかったことを悲しく思った
少女に終わりをもたらした闇色の手も、少女自身を求めたものではなくて
誰からも求められることもないまま、最期を迎えたことが今は悲しい]
[募る愛しさは、求められることのなかった寂しさへと変わり
少女だったものの心を悲しく満たせば
胎の中に蒔かれた種が、最後まで黒い花に侵されなかった胸の中心――ぽっかりと空いてしまった穴を侵食する
種は少女だったものを苗床にすると
空に向かって捩れた黒い芽を伸ばし、やがて艶やかな――本物の黒い花をつけた]
[――寂しい ――黒い花は、思う
愛しい人も、友人も、闇色を纏った鬼ですら、ここにはいない
咲かせた花は誰にも省みられることなく、徒に闇の中、ひとりぼっちで散っていくだけ]
[――寂しい
黒い花は寂しさを埋めてくれる誰かを求めて、甘く芳しい香気を闇の中に立ち上らせる。
誰でも良い、今はただ、自分を求めて手折ってくれる手がほしい]
[――寂しい
黒い花は、緋色の少女の想いを知ったような――そんな気がした。
誰かを求める渇望は、やがて黒い花に闇色の実を結ばせる
結ばれた実は寂しさを糧として色づき、やがてぽとりと落ちる
闇色の実はころりと転がり
――かつて "キャロライナ・コールリッジ" と呼ばれた少女の姿になった
そして少女は立ち上がり、異相の "蒼" がぽっかりと抜け落ちた昏い闇色の虚ろで、一度だけ空を見上げると深い闇の中へと消えていった]
[――……少女が去った後、一陣の風が吹いた
滅びの風を受け、苗床となった身体はあっけなく塵となり
最後に異相の左目――砕けた "蒼" だけが残った
やがて "蒼" は ぱきり と音をたてて完全に砕け散り
裡から蒼い蝶が一羽、ひらりと舞い上がる
蒼い蝶はしばらくの間、塵となった苗床のまわりを飛び回り
少女の後を追うように闇の中へと向かった]
わぅん
[かたちはまだ、獣のまま]
……がるるるる?
[だけど、黒い花の変化には、警戒の声を…。]
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―伝説の木付近―
[ さがさなくちゃ ] [ さがさなくちゃ ]
そうだね はやく さがしてあげないと … はやく さがして 還ろう ね …
みんな いっしょ さみしく ないよ
[黄昏の空は茜色、 一日で一番 影が濃く長く 力を持つ時間。
本当の探し物がなんだったのか、忘れてしまう。 せめて、こわれないでほしいと願ったものが、 壊れてゆく音も聞こえなくて。
長い長い影のさす大樹に、寄りかかった。]
(85) 2010/03/06(Sat) 20時半頃
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―伝説の木付近―
[語りかけてくる ヒトの 言葉。 深淵から、重い思考を 引きずり上げる]
いいえ、少し――… 夕日が綺麗だったので、
[顔のぼやけた、誰か ちがう。 赤黒い頬も、指先も、見えてないみたいだから ちがう。
卒業式、遠い言葉。 倒れたら、倒れてしまったら、沈める。闇の中。]
…お気遣い、ありがとうございます。
[ざわめき落ちる木の葉たち、不協和音]
(86) 2010/03/06(Sat) 21時頃
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そうだね。着々と、扉は一つずつ閉じていく。
救いの光は、そこかしこにあるって言うのに。
まるで、それを拒絶するみたいに。
[目の前に広がる光の、過去の光景。
その中であがく友人達。彼らは徐々に闇に染まっていって]
……………。
[だから、黙って目を逸らす。
ピッパと目を合わせて、冗談言って、笑いあう。
手と手をとって、唇合わせた。
囁くように、何度も、何度も]
[それは、死者にはきっと何の意味も無い行為。生者の真似。
生きていた時の、酷く滑稽だったあの倉庫でのやり直し]
[しばしの後、そっと身を離した。だって、ケイトが見ている。
過去の世界の幻影見せて、生前の行動なぞって、それでもこの闇の中、たゆたっている。そんな気がする]
[………それに、そこら辺にきっとサイモンいるし]
[多分、恨みがましい闇を送り出している]
[全力で目を逸らす]
理事長の孫 グロリアは、伝説の木 ―――木陰にしゃがみこんで、抱えたひざに顔を伏せる。
2010/03/06(Sat) 22時頃
………まいったね。
[でも、どんなに目を逸らしても。
ついつい視線は光に向かう。そこで生きてる人に向かう]
[スケッチブックに手を伸ばす]
…ダメだな、もう。欲しくなる。
描いたら、きっと欲しくて欲しくてしょうがなくなる。
[綺麗なものが。美しいものが。生きてる人が。
欲しくて、見たくて、描きたくて、そちらに行きたくて。
全力で手を伸ばして、そして引きずり込みたくなる]
[そうしたら、彼らのその力強い素敵な光は変質してしまうのに]
[目の奥にきらりと浮かぶのは渇望と葛藤。
変質してしまった己と、ピッパが闇を吸い取ってくれたお陰でかすかに残る理性との戦い。握りこむように、手を下ろした**]
[蒼い蝶は獣と化したバーナバスの鼻先を掠め
眉を顰めるディーンのまわりをしばし ひらひらと舞い
やがてどこかに飛び去った]
[深いモノクロームの景色の中、飛び去るは鮮やかな蒼い蝶。
かなしみのいろだと、ふと思った。]
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―伝説の木―
――……、っ………
[大粒の涙は 頬を伝うことなく 零れ落ちて、 草生す地面に、抱えたひざに 吸い込まれていく。
本当に 泣いてばかりだ。
でも、壊れゆく音が 耳に 響いたから。 こころ のいたみを抱えていたい。あともう少しだけ]
……ごめんね、頼りない先生で。
[夕暮れ、燃える あかい 空。 視線を 彷徨わせる。 その空よりも まだ あかい 紅 へ と ]
(95) 2010/03/06(Sat) 22時半頃
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[寄り添う恋人達の上を
蒼い蝶は ひらり ひらり と飛んで行く]
……ちょうちょ
[鳶色の眸にも蒼い蝶は映るか。
戯れるように手を伸ばし、くるりと身体を回転させた。]
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―伝説の木→北棟―
放課後、北棟 東階段…
[向かう場所は そこ しか思いつかない、 よぎる少女のうすむらさき、 あの子は彼が見ていてくれる、だから。]
……先に、見つけて
[ さがさなくちゃ ] [ さがさなくちゃ ]
うん、さがそうね… さがして あそんであげよう…
[北棟に迎えば、校舎内へと足を踏み入れた、長い 影]
(98) 2010/03/06(Sat) 22時半頃
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[蒼い蝶は
戯れるように差し述べられた、鳶色の少女の白い指先で
しばし羽を休める]
ねぇ、君はどこから来たの?
迷い込んじゃったのかな。
[指先に止まる蒼い蝶に言葉をかける。
美しいその色に目を細め、眸を瞬かせた。]
…メアリー?
[感じる気配。蝶と戯れるようにふわりと舞う様に目を細めた。]
理事長の孫 グロリアは、瞳は極力感情を失せたまま、ミッシェルの姿を2階で見出すか
2010/03/06(Sat) 22時半頃
[鳶色の少女を呼ぶ声が聞こえれば
蒼い蝶は羽ばたき、白い指からふわりと飛び上がる]
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[階下を見下ろせば揺れる金髪。 あかぐろい やみ が蠢く衝動は激しく]
……まだ、おにごっこ、続けているの?
[押さえ宥めるその高揚は、声を上ずらせた]
(105) 2010/03/06(Sat) 23時頃
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