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それとも、彼女は生きる権利がないものですか?
そうじゃないでしょう。
「生きたいと望む以上、それを全うする権利があるもの」です。
俺だってそのはずでした。
それを一方的に奪うのは……戦争を強要する側と同じです。
それでも彼らが正しいと思いますか?
[ふっと皮肉な笑みで。]
いい方を変えましょうか。
それでも、命を無駄に散らせていない。
幸せを得られていると思いますか?
どんなに辛くても、生きていられる以上。
俺は「生きていくのを望んでました」。
夢も希望も価値がなくても。
あなたはそうじゃなかったんですか?
[戦争は時期に終わり春が来るのだろうか。
そして、いずれ……自分の死だけでなく。
最愛のブローリンの死もクラリッサは知ることだろう。
せめて、その知らせがやさしく届きますように。
ふと、近くにあの不器用な軍人の気配を感じた。]
おかえりなさい、ブローリンさん。
クラリッサが……あなたを待ってますよ。
[赤いフードの旅人は。
新たな故郷を求めて旅立った。**]
メモを貼った。
そうですね、確かに私達がやってきたことは
戦争を始めた奴らと変わらないかもしれないです。
[ヤニクの言葉に答える]
でも、春になるまで、戦争が終わるまで安全に旅立つことなんでてきなかったはずです。
ヤニクさんが来た頃は、旅人ゆえにここにいれば安全だった。
でも、女子供だけでなく、そこに長期滞在している旅人にも赤紙は来ることになって、
ダーラさんは動揺したんです。
旅人とはいえ、馴染んでいた客が赤紙で殺される。
それが辛かったんだと。
…本人に確認しなかったのはダーラの落ち度でしょう。
でも、それだけ追い詰められていた。
[納得してもらえるとは思わない。でもヤニクがダーラ一人を責めている気がして、言わずにいられなかった。]
[話を続ける]
その要因は私にもあるかもしれない。
私に赤紙で出たから。
ダーラもヨーラも止めたかったと思う。
でも止めさせなかったから。
だから、責任を問うなら、私にも、その責任の一端はある。
今となってはどうしようもないですがね。
でも、人として最期を迎えることができただけでも、
良かったと…これはこちらのエゴなのは分かっていますが…そう思っています。
生意気なこと言ってごめんなさい。
[ヤニクに頭を下げた。]
[赤紙の出頭を拒否する人が多かった村があったという。
その村は、危険因子であるとして、村に駐留していた軍によって殲滅させられたと…父からの暗号の手紙で知ることができた。
だから、セレストは…戦場に出向いた。
村を、守るために。]
メモを貼った。
―長い長い、償いが始まる
…ああ
…ああ……やはりか。
やはり君もか。 君もそうなのか。
君がいつかあの村に
あの人の下に戻ってくれたなら俺はどんなに救われたか
君は確かに 彼女の支えになってくれたろうに…。
[一抹の希望が消える。彼を責めはしない。
その権利は自分にはないし、そんなつもりはまったくない]
行くか。 行くんだな。
君の旅は一度終わったんだな。
また新たな旅を始めるんだな。
俺はここで彼女を待とう。待ち続ける彼女を待とう。
それが俺の義務であり、俺の望みだ。
君の旅の終わりを祈っている。
今度は、君が終わらせるんだ。 自分自身で…。
[姉のミッシェルや、幼馴染であるクラリッサが確かに生きているのを見る。
ブローリンが出立した日の夜に、命を落とす存在が居なかったことに安堵した。
旅立ったと思っていたヤニクと死者として再会したときに。
セレストやホレーショーが尋ねた言葉の意味を改めて理解したからだ。
だからこそ、案じた二人の命が無事であることを――他の村人も無事であることを喜んだ]
セレスト。 …セレスト。
彼にダーラを責める権利があるのは当然だ。
彼は旅を始める前に終わりを告げられたのだから。
例えその先に死が待っていても、彼にはそれを歩いていく権利があったのだから。
君らの善悪など、正否など誰もわからない。
人の争いとは、正しいと思う事がぶつかるから起きるのだから。
ダーラ。
君より多くの人を理不尽に殺してきた俺にはなにも言う資格はない。
だがあえて言おう。
君には分隊長…ホレーショー殿が居た。 セレストもそうなのか。
ヤニクには誰が居たか。それは彼と共にあるものにしかわかるまい。
君は君の会うべき人に、胸を張り会える君で居るといい。
間違いかもしれない。後悔しきれないかもしれない。
だが自分を嘆く事は君を支えたホレーショー殿を嘆く事だ。
君にも訳があったろう。後に引けなかったんだろう。
だがそれは罪だ。咎に濡れた君は、その咎の先倒れた人の言葉は受け入れなければならない。
[戦争の終わりと春の訪れと、どちらがはやかっただろう。
エリアスの死亡通知は戦争終了とほぼ同時だったかもしれない。
嘆く家族を見守り。
そして戦地に向かったブローリンが、かえってきた気配を感じた]
――おかえり、ブローリン。
[前にできなかった、出迎えの言葉を、笑みを浮かべてつげた]
君はこうして終わってしまった。
償うのもよかろう、罰を受けるのもよかろう。
なお己の善を貫く事だってよかろう。
だが全て、君のして来た事と向き合ってからだ。
ホレーショー殿が生き永らえるにせよ、命散らすにせよ、
彼を迎えられるのはもはや君だけだ。
村を愛したその気持ちを、その時は彼に向けてやってほしい。
……人殺しのくせに偉そうな事を言っている。 すまない。
[聞こえた声に、目を細める。いや、悲しむまい]
期限切れだったろうか。
今思えば、余計な物を渡してしまった気がしてならない。
[ブローリンの言うことはもっともで]
…償い…
[自分の償いは何だろう?]
ヨーラと一緒に、ずっと一緒にいたいのは、
償いじゃなくて、願望だし……。
[ヨーランダに寄り添って腕を掴む]
[生きていたときには聞けなかった彼の声
その声が紡ぐ言葉に小さく首を振った]
余計なものなんかじゃないよ。
どうあがいたって、死ぬようにして送り込まれただけだから。
――でも、ブローリンが持っていたほうがよかったかもね。
そうすれば、君は生きて戻ってこれたかもしれない。
[すこし、悔やむかのように小さく呟いた]
[
セレストも、ダーラも独りではないのだから。共に悩み答えを出すのは自分ではないと思う。
目を閉じて、エリアスに語りかける]
それこそ、誰にもわからない事だ。
君がもし、そのお守りで少しでも救われたなら、
俺に後悔は微塵もない。
[セレストを見る]
君もセレストも、村を思って往った。
ダーラも分隊長殿も、村を思って手にかけた。
村を思う気持ちは同じなのに、死んでまで争うな。
たとえ許してもらえても、俺は忘れない。
たとえ許してもらえずとも、俺に言葉はない。
君らはどうする?
許されたいのか、許されないと思っているのか。
今さら何が君らを止める。
君らは今、本当に君ら自身だ。
そして、君らは独りではないだろう。
独りで悩むな。 答えは、傍に居てくれる人と出せばいい。
それも、そうだね。
――ありがとう。
僕にとっては、とても助けになったよ。
[ブローリンの気持ちが嬉しい。
前線に送られる間も、死に向かう間も。
縋るものがあったから、まだ立つこともできた。
きっと、なにもなければ。
熱を出したまま寝込んだ役立たずとして、味方に殺される未来もあっただろう。
どちらも死する未来であったとしても、まだ自分の足で立てただけましというものだった]
仮に俺が持っていたとして、死んだかもしれない。
生き残っていれば、君に渡しておけばよかったかと、後悔しただろう。
だから気にする事はない。
人を、人を殺す為の道具としてしまった、道を外れたこの国で
君は村のために戦った。誰に誇らずとも、俺は誇りに思う。
死んだ事でも、命令を遂行したからでもない。
君は、君の思う、村の為に出来る事をやり遂げた。
恐怖から逃げずに。
怖いと思って、そしてそこから逃げない事は戦う事だ。
だから君は、村のためにこそ戦ったのだと、俺は思うよ。
死ぬとわかって往く事も戦いだろう。
罪とわかって殺す事も戦いなのだろう。
理不尽を拒み、自ら死を選ぶ事も戦いだろう
帰らぬと分かって待つ事もまた、戦いだろう。
人は自分とすら戦うから。
だから、戦いを終えた君は休むがいい。
戦いをやめた君らは自分を許すといい。
戦わなかった君らも、今は癒されるべきだ。
死んでまで、戦火に、軍に蹂躙されるな。
もう戦いは終わったのだから。
だから俺はあの老婆が、ナタリアさんに感謝したい。
伝えられぬ俺のデブリーフィングを、彼女に届けてくれるのだから。
自分で渡せられていればどんなによかったか。
それでも彼女が居てくれるから、俺は救われる。
うん……ありがとう。
君が誇りに思ってくれるのなら十分すぎる。
そうだね――見守りたい人たちを見守ったら、休むつもり、だよ。
[そっと笑みを浮かべて頷き。
村の人たちへと視線を向けた。
生きている人たちへも、救いとなるものがあればいい]
エリアスに微笑んで、同じように村を見る。彼女に"ただいま"が届くまでは―
償いを、したいか?
[頭一つ分背の低いセレストを見下ろして静かに問う。]
もし、セリィがそれを望むなら共に償おう。
ヤニクの、痛みと恨みを胸に、悲しみ続けよう。
[セレストの肩に、手を伸ばし、自分の傍に引き寄せる。]
いつかヤニクの魂にも、安らぎが訪れん事を願う。
忘れないよ、ここで在った事。
皆が傷ついたことも、悲しんだことも。
笑顔も、貰った優しさも。
奏でた音も、交わした言葉のひとつひとつも。
全て、覚えていよう。
───私に出来るのは、それくらいだから。
ヨーラ……
[引き寄せられてヨーランダの肩に頭をあずける]
うん。それが償いになるなら…私も覚えておく。
…でも、私が体験した辛いことは忘れる。
それが、ヨーラへの償い。
[ヨーランダの顔を見上げて、微笑む。]
…──あの日、旅立っていれば、
ヤニクは村を出れたのかな。
[傍らのセレストにだけ聞こえればいいと、声は囁くよう。]
村に駐留する軍人に見つかれば、
捕まって戦地へ送られたかもしれない。
そう思えば、私もダーラと同じ事をしていたかもしれない。
止めてもきっと、ヤニクは出て行ったろうから。
…──いや、私はそこまでの思いを抱いていなかったが、
思いが強ければ、或いは……な。
[視線をダーラに遣って]
とはいえ、彼女の考えは彼女にしかわからない。
私達は、私達に出来る事をしよう。
[セレストの微笑に気付き、首を傾けて笑む。
いつも人の事を考えて、笑顔を絶やさないセレスト。
自分の為の笑顔だとしても、きっといつか、それを浮かべる人の心からも痛みや恐れの記憶を和らげてくれると信じて。]
愛した村と、
そこに暮らした人達と、
想いを共に────。
[己は、生きて待つ事より、共に往く事を選んだ。
村の外で散った魂が迷わぬよう、ここへ導くを選んだ。
だから死んで後も、そのように在ろう。
ただ、静かに待つのだ。
それぞれの出す答えを。
そしていつか、ここへ還る事を望む者がいるなら。
その時は標になろう。
遠く輝く星のように。
全ての魂に安寧が訪れても。
変わらず輝き続けよう────。]
メモを貼った。
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