25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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―食堂― ……華月。
[丁寧に茶器を持ち、 名を呼ばれて振り返れば 髪は揺れ鈴も鳴る。 ―――りん。 ]
……否。自分で飲むのではなくて
[茶に、視線を落とす。]
高嶺の花主に所望されてな。
[続く言葉に華月へ視線を戻す。]
…そうなのか。 なにやら陽炎のようにうつろうことだ。 嗚呼、…それは、邪魔するは野暮というもの。
[面白くもなさそうに、謂った。]
(335) 2010/08/01(Sun) 22時頃
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―本邸―
本郷様。高嶺様。
[どちらも聞き覚えのある名だった。 それだけ高名だったのだろう。今よりも昔には特に]
夜光と申します。
[会話の邪魔は出来るだけしないように。 けれど無礼にもならないように小さく名乗った]
(336) 2010/08/01(Sun) 22時頃
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いや、問題ない。 少し考え事をしていただけだ。
[むしろ邪魔してくれたおかげで少し頭を冷やせたとも言う。 その事については感謝するつもりはあっても口には出さない]
夜光。 趣味の悪いどこぞの虫取り網にでも追いかけられて水辺の宿に帰れなくなったか?
[その名前から連想したのは蛍だったのだろう。 興味はなくとも、からかうくらいはしておく]
(337) 2010/08/01(Sun) 22時頃
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―――…引き篭もりには飽いた。 私からすれば、お前の姿のほうが珍しいが。 此度はわざわざ花への文句でも言いに来たか。
[本郷と高嶺の縁は、先代の縁。 幾度か会話を交わしたことのある相手ではあるが、 花主として目の前の男と話すのはこれが初めてとなる。 言葉には気負わぬ揶揄が混じった。]
…果実の香に寄せられていたわけではないか。 壁に沿えば何時かは辿り着く、 だが、其れほどまでに難しい屋敷でもない。
[異なる雰囲気は下ろした髪の所為か、 霞のような艶やかさは其処にはないが。 夜光と名乗る花を見る、その名を呼び返すことは未だしない。]
(338) 2010/08/01(Sun) 22時半頃
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然様でございましたか。
[自分がどう役に立ったかは知らず、安堵だけを覚える。 花主を怒らせることは怖い。卑屈とまではならないが、腰はどうにも低くなる]
いいえ。その。 追いかけられたりなどはしていないのですが。
[からかわれていると分かっても、上手く受け流せない。 ただ困ったような顔をして頭を振った]
(339) 2010/08/01(Sun) 22時半頃
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― 庭園/果樹傍 ― [遠くに池が見える。 そちらまで行くではなく、建物の傍で少年は立ち止まった。 甘いにおい。 枇杷に、杏、柘榴に――幾つもの木々の中には見覚えのある木もあった。 吸い寄せられるように、目線の先にあった果実へそっと細い指を伸ばす]
……ひとつだけ。
[盗人のような心持がした。 けれど、喉の渇きと空腹に抗えるはずもなく]
(340) 2010/08/01(Sun) 22時半頃
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良く言う。 それに、私はお前ほど世捨てでもないし、 花への文句をつけるのはいつものことだ。
[今更に始まったことではなく、男は売り言葉に買い言葉をただ上乗せる。 以前話した時には、既に己が育てていたはどうであったか。 花の枯れた時期は覚えていても、目の前の花主に会った記憶が既に遠い]
…それと、髪は束ねるなり切るなりしろ。 そうしていると、買いに来たのか買われに来たのかわからん。 主宰に手籠めにされても文句は言えんぞ、その形では。
[忠告か、からかいか。 どちらの意味かを伝える必要は己と男の間には必要あるまい]
(341) 2010/08/01(Sun) 22時半頃
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―食堂―
[りぃん――涼やかな音が、耳に届く。]
嗚呼、高嶺様、明之進探す前に擦れちごうたなぁ。 茶、所望されたんやったら『そういうこと』なんやろか? そやったら、きばっていきぃな。
[青年の眼には高嶺の花となるに相応しいように見える、鵠の美貌を目を細めて見詰め]
そんなん、鵠さん、あんま好かんように見えるけど、色も芸のこやしやおもわな、やっていけへんで?
[明之進に関する応えに、鵠の裡を見た気がして要らぬ口を挟む。]
あ、いかんいかん。足止めしてすまへん。 はよう、高嶺様んとこ持って行きぃ。
[扉を支え、道を開いた。 その先に、鵠が向かう筈の人の姿があるとは知らぬまま。]
(342) 2010/08/01(Sun) 22時半頃
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―ヨアヒム邸前― ん、此処か?
[馬車に揺られるうちにどうやら眠っていたらしい。体をおこすとからん、と音を立てて何かが道に落ちる]
あ。……皹なんて入って無いよな?
[大切そうに拾い上げた其れは色硝子の薬入れ]
紐が切れたか。まあ、代わりの紐くらい何かあるだろ。
[大切そうに懐にしまいこむと、館の門をくぐる]
(343) 2010/08/01(Sun) 22時半頃
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[髪を下ろした人は花のように美しく。 けれど「花」とはどこか違う気品が感じられた]
はい。 特に何を求めて入ったわけではなかったのですが。
…次からは壁の位置も確かめて動きます。
[寄越された視線を正面からは受け止められず、つと睫を伏せた]
(344) 2010/08/01(Sun) 22時半頃
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……真面目なことだな。
[困ったような顔。横に振られる首。 その姿には機知と言うものが欠けている。 だが、生真面目さを花に求めるものならば歓迎すべきことだろう。
この花主はどうであったか、といえば]
迷いやすいと言うなら邸の見取り図を手に入れるなり 誰かに手を引いて連れて行ってもらうなり それこそ早く目印を覚えるなりしろ。
この場所で自分達が客だと思っているなら、それは間違いだと覚えておけ。 お前達は、私達に『買われる』ための『道楽品』だ。
[辛辣な言葉を、躊躇いもなく口にする]
(345) 2010/08/01(Sun) 22時半頃
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世捨ての私の耳にもお前の悪名は届くくらいだからな、 あまり花を泣かせてやるな。
[ああ言えばこう言う性分は互いに。 退かぬ姿勢で、けれども肩を小さく竦めることで 一端の話の区切りをつけたことを示して見せる。 本郷の花が枯れた時期と、高嶺の先代が死に 篭るようになった時期は確か重なっていたような気がする。 記憶が遠く朧気なのはその所為もあるか、]
…結う紐を忘れた。束ねるにしても戻ってからだ。 まんまるの悪趣味も其処まで行けば滑稽だな。
[うんざりとした顔は手篭めにされるにはあまりに色がないもの。 面倒そうに下ろした髪の先を摘んでから払った。 本郷と夜光の会話に、黒檀を細める。 口を挟むことは、しなかった。]
(346) 2010/08/01(Sun) 22時半頃
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[自分を客と思っていたわけではない。 けれど無様という自覚はあり、その辛辣な言葉は胸に痛かった]
申し訳ありません。
[『道楽品』の言葉に顔色が良くなることは当然ないが。 不快の類も見せることはなく、ただ頭を下げた]
(347) 2010/08/01(Sun) 22時半頃
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―食堂― …部屋にいないか。
[やはり少し遅すぎたか。難しい顔になった。]
…さぁどうだか。 あれで如何物食いかも知らん。
[不機嫌そうに云う。]
――――分かってる。 綺麗事だけではどうしようもない。 花は花主がいなければ身が立たないが 花主はそうではないからな。
[は、と息を吐く。彼ゆえにかついしゃべりすぎた気がして口をつぐむ]
ん、…行ってくる
[華月に一度視線を向けてから、食堂を後にする。高嶺の姿があれば瞬きをするか]
(348) 2010/08/01(Sun) 23時頃
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それは何よりだ。 いいことだろう、私を嫌でも忘れん。
…簡単に心萎れて腐る花など要らん。
[小さく息を吐き出すと、扇をパチン、と一つ鳴らした。 それはまるで拍子木のように会話の終了を伝える。 曖昧な記憶なら辿る時間も既に無駄である。 実際にお互いがお互いを忘れていないという事実は確かにここに横たわっていた]
…子供か、お前は。 いっそ其の悪趣味に引っ掛かって食われてしまえ。
[パチン、パチン。 花を剪定するような響きは、廊下に響いた]
(349) 2010/08/01(Sun) 23時頃
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[どうにも俯くことの多い花だ。 何度か顔を会わせど、眼が合うことが無い。]
夜光。
[初めて、名前を呼ぶ。]
迷うことは構わぬが、顔は上げて歩け。 今にも萎れそうな花は、あまり好ましくない。
[それもまた、多くの花主ではなく高嶺の好みの話。 止まっていた足は再び食堂へ向かおうとして、 鵠の姿が見えたのはそんな時]
(350) 2010/08/01(Sun) 23時頃
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―本邸・書斎―
[そして、どかどか廊下を歩きつつ、使用人を捕まえるとまんまるの居所を聞く。 どうやら、書斎か買い物かのどちらかだといわれた。]
その書斎とやらはどこだ?
[そして、案内をさせ書斎の扉を一応ノックしているか?とどっかり開ける。]
(351) 2010/08/01(Sun) 23時頃
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始末屋 ズリエルは、賭場の主 ヨアヒムの姿を書斎に、みつけた(奇数) みつけられなかった(偶数) 62
2010/08/01(Sun) 23時頃
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謝罪するならまず行動で示すんだな。 言葉なんてものより確かだ。
[それ以上の言葉はない。 行動がまず大事、とはこの花主の考えでもあった。 何事まず動かねば始まらない。 芸事も、政も、何もかも。
ぱちり、と扇が静かにもう一つ鳴る。 それは急かす秒針ににも少し似ていた]
(352) 2010/08/01(Sun) 23時頃
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[名を呼ばれて顔を上げる。 今にも萎れそうと言われ、自分が花主達からどう見えているのかを一つ知った。 本郷の言>>349も相俟って、すぅと息を吸い込む]
はい。高嶺様。
[緊張がおどおどした態度とならないように。 背筋を伸ばして高嶺に頷き、はきとした声で答えた]
(353) 2010/08/01(Sun) 23時頃
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チッ まんまるいやしねぇ。
[書斎はカラで、つまりはヨアヒムは買い物にいっているようだ。 しょうがないからそこで待つかと呟くと、使用人がおろおろとそれはご遠慮くださいと書斎からは追い出される。]
なんだ?ああ、一応仕事場? ああ、なるほどね。
[まんまると仕事というのが実に不似合いだが、それには頷いておく。]
→書斎前
(354) 2010/08/01(Sun) 23時頃
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[茶器を手に、立ち止まる。 ――夜光と、見目麗しいがどうやら態度から 花主らしいと知れる青年と。]
――…高嶺様。
[――丁寧に頭を下げた。鈴が微かに鳴る。 規則正しい刻むような音が重なった。]
(355) 2010/08/01(Sun) 23時頃
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―食堂―
うん?すれちごたんは、鵠さんと別れる前の話やで? 今何処に居られるかはわからへん。
[難しい顔をする人の勘違いに気がついて訂正するも、実際相手は部屋には居らず、直ぐ背後に居る訳だが。]
ま、色求めん主さんも居られるけどな。
[気休めを謂うのは、鵠が自分だから口を滑らせたと知っているから。 華月は、鵠が色に向いてるとは思ってはいない。 否、そうであれば佳いと思っているのは、自分勝手な想い。
涼やかな美貌をだからこそ、そのままにと想う主も。 逆に乱したいと想う主も居る。
彼が色を望まないなら、彼を囲う主は前者であれと願う。]
(356) 2010/08/01(Sun) 23時頃
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門下生 一平太は、懐刀 朧と初めて視線を合わせた。良く似た黒檀の色。
2010/08/01(Sun) 23時頃
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お前を忘れることが世が平和である証拠になるとはな… それ以上まんまるの話は出すな。 回廊に飾られた数多のまんまる絵で既に胃もたれだ。
[篭っていた間にも聴こえていた本郷への評と 違わぬ姿には小さな笑みが零れた。 パチン、 花を剪定する音は目の前の夜光にはどう聞こえるか。 鳴らぬだけで他の花主も、花に会えば見定めている。]
―――…
[>>353夜光の声音が変わると、満足気に黒檀の瞳は細まった。 そのまま本郷と夜光の前を通り過ぎ、 頭を下げる>>355鵠の横もまた物言わず通り過ぎる。]
(357) 2010/08/01(Sun) 23時頃
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― 庭 ― [果実をひとつ手の内に納め、さてと振り返る。 本邸の回廊にはあいも変わらず人の気配が多数] ……
[思わず漏れる溜息。 勝手をした事を咎められるのは好ましくない。 戻る事を諦め、人の気配の無いほうへ 池のほとりへと歩みを向けた]
(358) 2010/08/01(Sun) 23時頃
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―裏庭―
―――……あ、
[わずかな眩暈に溺れる、気がつけばここに戻ってきてしまっていた。 日陰の葉椿、咲くはずのない冬の花。 その枝にゆるり、手を伸ばす]
……日陰なれ、日向なれ。
[手折る枝には、黄泉銀花の紅く咲く]
(@29) 2010/08/01(Sun) 23時頃
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……運べ。
[そう告げたのは鵠に背を見せてから。 振り返らず、目的地であった食堂へと向かう。]
(359) 2010/08/01(Sun) 23時頃
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[ちりん。鈴の音に視線を向ける。 茶の椀を載せた盆を持つ、恐らくは花。 高嶺の名を読んだので、視線を茶を運ぶ花から高嶺へと向けて]
…何だお前、猫でも飼い始めたのか。
[ぱし、と美しい蒔絵と細工を施した蓮香の馴染む親骨が 軽くだが扇を持たぬほうの己の掌を打つ]
世捨て人を卒業したかと思えば随分手の早いことだな。
[そう告げながらちらりと鈴の音の持ち主に視線を向ける]
(360) 2010/08/01(Sun) 23時頃
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―食堂―
あらま。
[そして、鵠の背を見送ろうとすれば、廊下に高嶺の姿を苔色は見る。僅か心配するような色を顔に浮かばせつつ、パチンパチンと鳴る扇の音を聴く。もう一人、明之進を探す時に入れ違った花の姿をそこに見た。]
[少しの沈黙の後、食堂の内へと視線を戻し、そこに在った使用人に茉莉花茶を頼む。 席に移り待つ間に、手に持ったままだった李を戯れに噛めば、今度はすっぱさの中に甘味を感じた。]
(361) 2010/08/01(Sun) 23時頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2010/08/01(Sun) 23時頃
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まんまる?
[まんまるとは何のことであったのか。 少し考えてから、納得がいったのか扇が掌を打つ]
心頭滅却すればとも言うだろ。 見慣れればそのうち食欲だって戻ろうさ。 三日もあるのだし。
[先は長いだろうが、己は既に気に止めぬ。 見なかったことにすればいいだけの話だ。
鈴の花に告げて背を向ける姿に溜息を一つ。 相変わらずの自由気ままぶりだと思えども 己も似たようかもしれないとそっと内省をするに至る]
(362) 2010/08/01(Sun) 23時半頃
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