204 Rosey Snow-蟹薔薇村
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[プリシラが指の付け根を噛む仕草に、ぎくりとした。>>294]
こら、噛むな。痕が残る。
[衝動の先触れではないかと、疑念を抱く。 昨夜男が残した噛み痕を服の上から撫で、今は我慢しろとだけ囁いた。]
(306) 2014/11/23(Sun) 04時半頃
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[ノックスから投げられた視線をただ受け止める。 僅かに表情を歪ませていただろう。
幼馴染の中でどんな葛藤があったのかは知らない。
ただ、引き起こしてしまった惨劇の謝罪を受け止めるのは男ではないから。 ただ、黙って見ていた。**]
(307) 2014/11/23(Sun) 04時半頃
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[溢れる泣き声と悲痛は幾度聞いても慣れることはない。>>239 獣と人の中間で生きる自覚が芽生えてから、数え切れぬほどに覚えた諦観はこんな時にちっとも役に立ちはしない。
耳を脅かす悲嘆の声は身を切られるほどの痛ましさに満ちて、伸ばす手も届ける言葉もない男はそっと視線を外す。]
(325) 2014/11/23(Sun) 15時頃
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[かたりと扉の音に目をやれば、ニコラとトレイルの連れ立つ姿。
見た目にそぐわぬ幼さをぶつけるように、ノックスに纏わりついていた姿が嘘のようだ。 若干の違和感を覚えながらも、こんな状態では何がおかしいのかさえ分からなくなりそうだった。]
(326) 2014/11/23(Sun) 15時半頃
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[何もかもが、あまり見ていて気持ちの良いものではない。 状況を確認することを優先していたせいで、プリシラの様子にまで気が回らなかったことに気がつく。
まだ衝動を知らない者に、この光景はつらいはずだった。 鈍感な己に、小さく舌打ちする。]
気分、悪くなってねえか。
[聞くうちに、何かの焼ける匂いがし始めた。
まともに血抜きさえできてない肉を焼く音は、歪な空間になぜかひどく似合いだ。
こんな状況下でそんなものが調達出来たのか、と訝しむ気持ちはあれど。 それが誰の肉かまでは当然思い当たらない。]
(331) 2014/11/23(Sun) 17時頃
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[じわりと鮮血の滲み始めた傷口に目を奪われる。>>309
鮮やかで生々しい赤を、プリシラの赤い舌がちろりと舐めとっていく。
食欲、衝動、性欲、本能、理性―――、一瞬のうちに何もかもがない交ぜになって、腹の奥をぐるりと駆け抜けていく。]
(332) 2014/11/23(Sun) 17時頃
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[噛みついて、その四肢を貪り喰らいたい。 内臓から溢れ出る血液を啜って。 温かい体が冷え切ってしまうまで、そのどこもかしこもに唇を触れさせたい。
まだ誰も知らない体奥に熱を穿ち。 その無垢を全て蹂躙しきって悲鳴も涙も手に入れたい。]
(333) 2014/11/23(Sun) 17時頃
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[湧き上がる衝動の向こう、脳裏ではらはらと赤が散る。
食べて、と囁く過去の声に―――首を横に振る。
拒絶する。]
(334) 2014/11/23(Sun) 17時頃
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[大事にしたいのだ。
小さな手を、ずっと引いて歩いてきた。
一度は獣の衝動に身を任せそうになって何もかもから逃げ出してから、 誰の手も取るまいと思った男が初めて手を伸ばした。
秘密のように交わした、本当の名前を。 宝物のように胸に秘め続けるほどに。 大切で、大事で。]
(335) 2014/11/23(Sun) 17時頃
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[プリシラの連れで、細工師。 それだけでいられたら。
昏く湧き上がった衝動を抑え、噛み続けているプリシラの手を取る。]
だから、噛むなっての。
[言いながら、傷口へと口を寄せた。 舐めた血は、誰でもそうであるように普通に血の味がした。
それなのに、ひどく甘く蠱惑的な余韻だけが舌から消えない。]
(336) 2014/11/23(Sun) 17時頃
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[舌に残る誘惑を紛らわせるよう、意識を他へと向ける。
暗く冷え切った怒りを瞳に湛えたフランシスが>>318ノックスを睨みつけるのを見れば、抱く感情は複雑だ。
フランシスの憤りは無理もない。 養い子が殺されて、嘆くだけではいられないのは当然のこと。 怨嗟と憎悪の向かう先がノックスでなければ、男も同調して加害者を責めていたやもしれない。
殺されたのは仔狼で、直接の庇護関係でないとはいえ、ノックスは本来ならば導く立場の保護者だ。 仮に襲われかけたのが本当だとしても、もっと他にやり方があったのでは、と今更に第三者ではどうにもならないことを悔いて――]
(340) 2014/11/23(Sun) 17時半頃
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[気付く。
違和感。]
(341) 2014/11/23(Sun) 17時半頃
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[最初に、『全員が狼だ』と教えたのは。 自分の同行者がその牙に襲われぬよう警戒していたのは。
目の前で己の連れが捕食者としての衝動に負けたのに、
それなのに、何故、
警戒を、怠った?]
(342) 2014/11/23(Sun) 17時半頃
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[問うてしまえば、疑念が本当になってしまう気がした。
疑いたくない。 その躊躇いとともに、口を閉ざす。*]
(343) 2014/11/23(Sun) 17時半頃
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[ノックスを責める気持ちはある。 疑念もある。 けれど、幼い頃の思い出や情は容易く切り離せず。
ドナルドの期待>>353は知りようもない。 ただ、言葉少なに時折フランシスやドナルドを気遣わしげに見る。]
(356) 2014/11/23(Sun) 20時半頃
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[男がもし他の者の牙によって同行者を奪われたら。
想像する間でもなく。 たとえ、どんな正当性があろうとも、どんな理由があろうとも。
考え得る限りの苦痛を与え続け、最も恥辱を覚える報復を行い――決して愛しい子の魂の元へなど行かせやしない。
その思いだけは、獣の叫びと人間の業がきれいに重なって、明確な意思となる。
想像しただけで呼吸が苦しくなる。 そんな思いを今まさに、フランシスとドナルドと、…フィリップは抱えているのだろうかと思えば。 ノックスへ向ける視線もまた物問いた気なものとなる。]
(362) 2014/11/23(Sun) 20時半頃
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[舐めとった血の誘惑から意識を逃がそうとする中、くい、と服の裾を引っ張る仕草に>>359身をかがめた。
覗きこんだ瞳の色が、昨夜男の手によって情欲に濡れた色にも似通っていた。
呼ぶ声に続いて拙く重なる唇を>>360、拒む意思などどこにもありはしない。]
(364) 2014/11/23(Sun) 20時半頃
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[甘く誘う血の香りを残して、口内へと差しこまれた舌は逃げていく。
首筋に、肩に。 昨夜教えたことをなぞるようなプリシラの動きに、こんな時でなければ押し倒して食欲以外の獣の衝動をぶつけていたことだ。
かろうじて死の匂いと哀悼の空気に理性がしがみつく。]
(366) 2014/11/23(Sun) 20時半頃
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[喰らいたい、喰らいたい。 愛したい、愛したい。
獣と人のどちらの声もが、競うように叫びだす。]
(367) 2014/11/23(Sun) 20時半頃
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[ドナルドがフランシスを呼ぶ声に>>377我に返り、少々気まずげに視線を彷徨わせる。 それでも、プリシラが己のものだと他の狼を牽制することへの後悔は全くない。]
(384) 2014/11/23(Sun) 21時半頃
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[ひび割れたような大きな音に>>376思わず耳を塞ぐ。 掻き消され、ニコラの「会いたい」、そんな声は届かない。
届いていたなら――幼馴染のその養い子。 その手段を、可能性を消したのはお前自身だと殴りつけて説教でもしたかもしれない。
けれど、彼とは遠く隔たった他人のまま。 不審を抱いた他人のまま。
信じることも、期待することも、何もない。
ただ、目の前で震えたプリシラの肩を抱きしめた。>>387]
(390) 2014/11/23(Sun) 22時頃
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[これはやらない。 誰にも、どこにも。
俺だけの、愛しい子。]
(392) 2014/11/23(Sun) 22時頃
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[歪む気持ちと情欲。 理性でコーティングして、愛情だと己に刷り込む。
愛しい、喰らいたい。 喰らいたいけれど、愛しい。
獣の欲を優先させれば永遠に失う。 ダメだ、と律する声が耳の奥で幾度も響く。]
(393) 2014/11/23(Sun) 22時頃
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[喰らいたい。
けれど。
居なくなってしまう。それはひどく寂しいこと。悲しいこと。]
(395) 2014/11/23(Sun) 22時頃
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[響く音は不快で耳障り>>399。 腕の中でびくりと震えたプリシラや>>405、動きを固めたフランシス>>400が可哀そうだと思いながら。
駄々っ子のようなニコラの振る舞いだけ>>399端々から垣間見る。
ドナルドが庇うように進みでる姿に>>402そちらの心配は忘れ。 男自身はプリシラを庇うような体勢をとった。]
分かんねえよ。でも。お前は心配すんな。
[不安そうな表情を浮かべるプリシラの頬を撫でて。 不愉快な音源を注視する。
歪な子ども。 そうとしか表現できない相手を前にじわりと警戒が湧く。]
(408) 2014/11/23(Sun) 22時半頃
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[悲鳴のようなニコラの声に向けるは冷ややかな視線のみ。
ずるいずるいと喚くだけの子ども。 我慢も何も知らないで、手を伸ばせばそれでいいと思っている子ども。
愚かな愚かな。
本能に負けてしまえば、失うだけだと。 教えてさえももらえなかったのか。]
(533) 2014/11/24(Mon) 03時頃
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[ただ、プリシラを庇うように立つ。 喰らうよりも、喰らわれるよりも、本能さえも飼い殺してともに在りたい。
そんな我慢さえも知らないのか、と。
壊れたオルゴールのように不協和音を奏でるニコラを憐れむように、――蔑むように。]
(539) 2014/11/24(Mon) 03時頃
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[だから、彼の微笑みの意味は分からなかった。>>505 手を伸ばす暇もないほど、鮮やかに、唐突に終わっていた。
分かった時には、もう何もかも手遅れ。>>506]
プリシラ、見るな。
[それでも真っ先に思うのは別のこと。
ノックスが悲しむであろうことまで想像して、それでも男は別の選択肢へ手を伸ばす。]
(542) 2014/11/24(Mon) 03時頃
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[瞬く間に充満する血の匂いに、しがみついたプリシラを庇うように抱きしめる。
ぐら、と本能は揺れるものの、ニコラの血にも死肉にも心惹かれるものはない。
ドナルドの声に>>546ノックスを思いだし、彼がこの惨状を見れば心痛めるであろうことを想像してため息を吐いた。]
ひとまず上に退散した方がいいな。
[同じく保護者であるフランシスへ声をかけ>>544、自身はプリシラを抱え上げた。]
(551) 2014/11/24(Mon) 04時頃
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[取り残していくニコラの姿に憐みを覚えないでもない。 それを見つけたノックスがどれほど嘆くのかも。
けれど、抱え上げた温もりをこの汚れた匂いから遠ざけることが何よりも優先されるべきことで。]
嘘つけ、顔色悪いくせに。
[歩けるというささやかな主張を無視して>>555抱いたまま、ニコラの亡骸に背を向けた。
首筋に触れる温もりに、どくりと心臓が波打つ。**]
(558) 2014/11/24(Mon) 04時半頃
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