103 善と悪の果実
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――終演――
[カーテンコールは無い。アンコールも無い。 ただ静かな幕引きを 伸ばされた二人の手が届かないのを、認めて。 耳を塞ぎながら呪詛を繰り返していた男は、口を噤んだ。
ふわりと
重さのない身体が、黄金の傍に寄り。衝動に駆られ手を伸ばす。 冷たさも、温かさも、硬さも、柔らかさも、色すらも。 ―――…失せてゆく。褪せてゆく。]
ああ、あああ………
[震える口唇から、永遠に失われた呼吸が漏れた。 何処で間違えたのだろう。何処から間違えたのだろう。 白黒に褪せる視界の中で。 生前から、手袋を嵌めていた左手に。冷えた感触が、とつり。]
(72) mo_om 2012/10/01(Mon) 21時頃
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[左薬指には、銀の指環。]
(73) mo_om 2012/10/01(Mon) 21時半頃
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「嬉しい。」
[安月給三ヵ月分で、意を決して買った銀の指環。 三ヵ月分纏めたってお世辞にも高いとは言い難かったけれど 妻は、暗い空にそれを掲げて笑ったんだ。
―――あの頃は良かった。 それだけで、良かった。]
……… くそったれ。
[キン、と床を弾く金属音。 薄れゆく男の、左手から解けるようにして、指環が落ちる。 銀は車輪のように滑り ころころ、ころころと、壁に触れて。―――*静かに*]
(74) mo_om 2012/10/01(Mon) 21時半頃
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[少年の姿をした"誰か"。
銀の紡ぐ運命に、小さく男は目を伏せる。 魔女の館に置去りにした――銀の環。 男の遺したたったひとつの、くそったれな運命。]
―――…ああ。
[溜め息のような肯定は、果たして届いただろうか。
烏の羽ばたく音が、耳元で聞こえた**]
(86) mo_om 2012/10/02(Tue) 00時半頃
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