182 【身内】白粉花の村
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["悪くない"、そう聞こえた相手の言葉>>58に、思わず笑みが漏れる。触れただけの口付けの後、少しの間肩を震わせ、ひとしきり笑った後は何とも馬鹿馬鹿しい心地になった。
心にもない言葉には、心にもない言葉を。 成る程、そういうつもりなのだろうか。 息が詰まる程に笑った後に残ったものは、何とも惨めな気分だけで。未だ頭の中で煩く鳴り響く鐘に眉を顰め、引き剥がされるままに身体を離す。
――正直な所、安堵しはした。 まるで宥めるように背を撫でる手に、またその首へとこの手を伸ばしてしまいそうになっていたから]
…別に。馬鹿になんてしていませんが。
[身体を起こし、絡む足を振りほどこうと手をかけながら。さも鬱陶しげに溜息と共に、吐き捨てるように呟いてみせる。
――嗚呼、もう何もかも面倒だ。嘘を付くのも、取り繕うのも、嗤うのも。 ここまで剥がれてしまったのなら。隠す事すらも面倒になり、うっそりとした笑みだけをその顔へと乗せる。
――本当に、忌々しい。首を血で染めるその姿を嘲笑うように見つめ。 そうして今一度、机に手を付いて相手の鼻先までに顔を近付けてやった]
(60) ねこんこん 2014/07/07(Mon) 23時頃
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……"本音"ですよ。
["これでいいですか、他に聞きたい事は?"、と。おどけるように首を傾げ、その唇を一度だけ、啄ばんでやろうとしただろうか。
そうした後は、目を細めたまま相手の身体を振り解き。例え万一抵抗されたとしても、何とか振り払おうとしただろう。
態とらしい溜息をつきつつ、机の下に落ちたピアスを拾おうと身を屈める。 小さな石が欠けていない事を確認すれば、溜息と共にポケットへとしまい込んだ――あぁ、付ける場所が無くなってしまいましたね、なんて呟きながら]
ほら、いつまで寝てるんですか。 そろそろ貧血で倒れますよ。
[呆れたように、机の上の彼を見やり。 少し離れた所にあった車を引き寄せ、深く息を吐く。
嗚呼、馬鹿馬鹿しい。 苛立ちのままに強く拳を握れば、短く切りそろえた爪の食い込む痛がチクリ。 それに眉を顰めれば、岩を打ち付けるような耳と頭の痛みがズキリ]
(61) ねこんこん 2014/07/07(Mon) 23時頃
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(……頭が、痛い)
[こうも掻き乱されたのはいつぶりだろう、と。一人で喚き、笑い、そしてみっともなく情動のままに感情をぶつけ。 ――嗚呼、我ながらまるで、癇癪を起こした子供のようではないかと憂う。
情けなくて涙でも出そうだ、と胸中で自嘲するように笑いながら。 近くのシンクで血で汚れた手を洗うと、ガタリと音を立てて椅子へと座った。 適当なガーゼを裂けた耳へと当ててその血で張り付かせると、医者は諦めたように肩を竦め、そのまま準備を進めただろう]
(62) ねこんこん 2014/07/07(Mon) 23時頃
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[頭を抱えて立ち上がる相手>>68を助け起こすこともせず。此方とて、傷を負って疲れているんです、なんて理由を付けて、あくまで椅子に座って相手を待つ。 変な奴だ、と投げられた言葉には、否定とも肯定とも取れるような苦笑を一つ浮かべて見せて。 その後に見えた――何処か嘲笑じみた彼の笑みに、また傷を抉ってやろうかと伸びかけた手を握り込む]
(……流石に倒れますよ)
[自分へと言い聞かせるように胸中で呟き、何とか苛立ちを霧散させる。 代わりに溜息をひとつ、軽く顎を持ち上げて開きに開いたその傷を露にさせて。 そうしてただひたすらに無言のまま、見るからに悪化しているその傷の処置を進める。
処置の最中に、先程聞き流した彼の一言>>67をぼんやりと思い返しながら]
…さぁ。惚れてるんじゃないですか。 少なくとも執着はしてますよ。
[処置を進める手を止めぬまま、視線も傷へと向けたままに。ポツリとそれだけ呟けば、何事も無かったかのようにまた手を動かす。 依然として、耳も頭も痛んだけれど。その痛みを与えた彼に、苛立ちが無かったわけではなかったけれど]
(70) ねこんこん 2014/07/08(Tue) 01時半頃
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[彼の返答など、どうでも良かった。 ただ、聞かれたから答えただけだ、と。
そうしてやがて、顎とそして耳の処置が終われば、鮮血に染まった自分と相手の服を見て、思わず失笑を零す]
お互い、酷い格好ですね。 スプラッタ映画にでも出ますか。
[あぁ、でもそれにはもう少しグロテスクにならないといけませんかね、なんて。 冗談めかしてそう言うと、新しい包帯の当てられた傷を指で軽く弾いてやれば、彼は痛みに呻きでもしただろうか。
ガーゼの当てられた相手の耳へと手を伸ばし、避けられでもしなければその傷を指でそっとなぞっただろう。 そうして触れる事が叶ったのなら――腰を上げてその、頭を。軽く抱き耳元に顔を埋めただろうか]
(71) ねこんこん 2014/07/08(Tue) 01時半頃
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えぇ、そうですね。好きですよ。 ……これは、本音です。
[諦めたように、ポツリ。 顔を見せぬまま、極々静かに告げたその告白に、彼は嗤うだろうか。青ざめるだろうか。 そんな事は何方でもいい。何方にしても、愉快な事には変わりが無い筈だったから。
嗤うのならば、それこそ容赦なくまた嬲ってやれる。その心を折れずとも、疲弊させるくらいはしてやれる、と。 嗤わず、青ざめでもするのなら、それはそれで愉快な事だ、と。 今日は何度も、彼にはしてやられているのだから。
ならばせめて、この最後の嫌がらせくらいは。 ――成功する事を、願って]
(72) ねこんこん 2014/07/08(Tue) 01時半頃
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[まるで、媚びるように。 思いの外拒絶されないばかりか、軽く抱いた頭に擦り寄られ>>77、ぱちりと目を瞬かせ。 そして、笑う。相手の上がった口角は見えずとも、きっと今彼は笑っているのだろう。
悪くない、と。そう言いながら、まるで自分を抱き締めるように手を引く彼には、流石に閉口したけれど。 ――なかなか、捨て身の嫌がらせをしてくるものだ、と]
…別に、どうも。 何もしてくれなくて結構ですよ。
[随分と真剣な顔で聞いてくる彼には、一言そう返答を。彼がその問いをどういうつもりで聞いてきたかは分からないが、元々何かを"して貰う"気など更々無い。
彼に何かをして貰わずとも、手離す気などありはしない。その傷を抉ったその事実を、後悔した事など一度も無いと。 ――彼は何か、勘違いしているのだろうか。彼は自分が、支配する側に立ったと錯覚でもしているのだろうか。 例え"本音"を告げようとも、その傷が消えない事には変わりないのに。
――残念でしたね。無様に君に縋る俺を、期待でもしましたか? なんて。小さく呟いたそれが、彼の耳に入ったかは分からないけれど]
(80) ねこんこん 2014/07/08(Tue) 11時半頃
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…あぁ、それとも。 頼めば何か"してくれる"んですか。
[小さく肩を震わせながら、一言。 まったく、一体どういうつもりだか。抱き締めた背を撫でる手の感触に、ぞわりと背筋が粟立った。 嗚呼、本当に生意気な事を。その紛い物の触れ合いで、此方がどうする事を期待しているのだろうか、と。
変わらず痛み続ける頭と、纏わり始めた不快感に眉を寄せていれば、首筋へと吸い付く柔らかな感触。擽ったいそれに一瞬目を見開くと、すぐに堪らず吹き出した。
クスクスとまるで愉快に笑いながら、項垂れるように触れた肩へと、少し重くなってきた頭を預ける。 嗚呼、駄目だ。いい加減不快極まりない。少し冷えたその体温も、嘘にまみれたその触れた唇も]
(81) ねこんこん 2014/07/08(Tue) 11時半頃
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元々、執着は酷い方なんです。 逃がすつもりはありませんよ――例え君が、拒もうと。
[ひとつ。その血で赤く染まったシャツのボタンへと指をかける。大した抵抗が無ければ、そのままボタンを外し、するりと手を滑らせたであろう。 そうして喉元を締め上げながら、小さく動く喉仏へと歯を立てるくらいはしただろうか。
歯を立てたのなら、赤まったその喉へと舌を這わせ、彼がしたように小さく吸い付きくらいはしたかもしれない。 いつになく饒舌な自分に、吐き気すらも覚えながら。
嗚呼。一体何をこんなに掻き乱されているのだろう。たかだか鼠ごときに、情けない。 ――今更何を、望むと言うのか]
(82) ねこんこん 2014/07/08(Tue) 11時半頃
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[まるで受け入れるような彼の様子>>86に、小さく口端を歪め。痛みに身体を跳ねさせつつも、呻くような声だけを漏らし、只々沈黙を貫く様子に首にかけた手を解く]
(…忌々しいですね、本当に)
[只一度。只一度だけの失態で、と。相変わらずの、自分の詰めの弱さに言葉も無く。 嗚呼、やはりもっと追い詰めておくべきだったのだろうか。それこそ、刃向かう気力も失う程に。
髪を梳く手に小さく眉を寄せつつも、返したのは小さな嘆息一つだけ。 相手の声音に滲む色も、きっと上がっているであろう口角も。そしてまるで楽しむような様子だって、察してはいたのだけれど。 しかし何故だか、先程よりは苛立ちも少なく。
此方の内にまで入ってきそうなその体温は、相も変わらず不快だったけれど。それでも特に何もせず、ただぼんやりと甘受したのは。 ――思いの外、心地が良かったから、だろうか]
…大丈夫ですか。
[力無く預けられた身体>>87に、そして短く繰り返される浅い呼吸には呆れたような一言を。 "そうなると思いましたよ"、なんて呟きながら、溜息をひとつ。 そうしてゆっくりと身体を離して腰を上げ、嘔吐物やら何やらで汚れたシーツを剥がし始めた]
(88) ねこんこん 2014/07/08(Tue) 14時半頃
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[剥がしたシーツと白衣を適当に床へ放り、棚から出したシーツをぞんざいに広げれば、椅子に座る彼の額へと手を当てる]
一眠りどうぞ。 暫くはここに居ますよ。
[そう言いながら、冷たい相手の手を取ろうと手を伸ばして。彼が自分でベッドに入る力があるのなら良いのだけれど。
もしもその力が無かったのなら、態とらしく溜息を付いてみせでもしただろう。そうして嫌々ながらに、なるべく揺さぶらぬよう、その身体をベッドへと運んだだろうか。
そうして彼をベッドに放り込むと、傍らに引いた椅子に腰掛けて、ぐったりと背もたれに体重を預け。 ――此方もいい加減、頭痛が限界だ。 痛む耳と頭に眉を顰めつつ、その痛みに苛立ったように血の滲んだ傷を指で抉るように押せば、強い痛みに息を詰め。 嗚呼それでもほんの一瞬だけ麻痺してくれたその痛みに、嘆息と共に目を伏せた]
(89) ねこんこん 2014/07/08(Tue) 14時半頃
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………、
[ふ、と。軽く視線を逸らし、暫しのあいだ思案するように目を伏せる。
"して欲しい事"。 そう言われて只一つだけ、思いついたものがあった。ただそれを口にするのは少々――躊躇われて。
しかしやがて諦めたような溜息をつくと、包帯の巻かれた相手の耳へと視線をよこす。先程歯を立てたその耳朶へと伸ばした手は、果たしてそこへと届いただろうか――この状態で、振り払えるとも思えなかったが]
(……後で一つだけ、聞いて貰いましょうか)
[彼が、本当に大人しく聞き入れるとも思えなかったけれど。それならそれで、今迄通りに無理矢理聞き入れさせれば良いか、と。
――一度歪んだ思考は、中々元には戻らないものですね、なんて。 そんな苦笑と共に、医者は伸ばした手を引いただろうか]
(90) ねこんこん 2014/07/08(Tue) 14時半頃
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[引こうとした手を掴まれ>>93、体重を掛けられれば、反射的に腕に力を込めて、結果的には彼が起き上がる手助けを。 寝ない、という彼には一言、"倒れても知りませんよ"、と忠告だけは投げておいたけれど。
手を持ち上げるのも億劫な癖に、と先程ぱたりとシーツに沈んだ腕>>92を思い起こし。しかしそれでも起きると言うのなら、勝手にすれば良いと、それ以上は口を噤んだ]
………、
[彼が起き上がったのを確認すれば、握られた手を軽く振り払う。 促される声にやはり沈黙を続けながら、対面に座る相手の瞳を何の表情もなく暫く眺め――しかしやがて、ふ、と小さく笑った]
…じゃあ、一つだけ。 その耳、開けても?
["聞いてくれるんでしょう"、と。目を細め、何処か投げやりな眼差しを向けながら、形だけの質問を。 ポケットから乾いた血の付いたピアスを取り出し、指先で弄りながら、相手の耳へと視線を向ける]
(94) ねこんこん 2014/07/08(Tue) 18時頃
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君のせいで、付ける場所が無くなってしまいましたから。 代わりに付けておいてくれますか。
["人の耳を引き千切った責任くらい取って下さいね"、なんて。そんな何とも自分勝手な要求と共に告げた言葉を、彼は拒絶するだろうか。 ――否、きっと拒絶するだろう。妙に確信めいた考えに小さく肩を竦めながら、手の中にある赤い石を見つめる。
そもそも万一受諾されたとしても、もしかしたら、知らぬ内に捨てられる可能性だって十分にあるだろうに。 なのに、何故。手放そうと思うたのだろう]
……一応、大事な物なので。 無くさないで下さいよ。
[言うた後には、苦笑をひとつ。 嗚呼、こんなただの"口約束"に、何の効果もある筈が無いのに。 拘束力も何もない、こんな意味の無い約束を交わした所で、何の保証も無いと言うのに]
(95) ねこんこん 2014/07/08(Tue) 18時頃
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(……馬鹿らしい)
[――そう、思うのに。 もう笑みを浮かべる事すらせず、相手の顔を見ることすらせず。手の中でピアスを弄びながら、軽く目を伏せて返答を待つ。 彼がもし、自らの意志で捨てたのであれば。それはそれで――構わないか、なんて。 浮かんだ自分の考えに、少なからず驚愕しながら。
拒絶されたならば、無理矢理にでも開けてやろう。そう、思いはするのだけれど。 嗚呼、どうにもそこまでの力が出そうにないのは、この耳と、頭の痛みのせいなのか、それとも]
(どうかしてますよ、我ながら)
[――ほんの少し、針の先程度に抱いてしまった…期待の為だろうか]
(96) ねこんこん 2014/07/08(Tue) 18時頃
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(………楽しんでますね、これは)
[掻き上げられた髪には、す、と眉を不服そうに寄せて見せる。 どうやら彼の意趣返しは、未だ続いているらしい。 此方の予想の尽く逆を行って見せてくれる彼に、それはそれは不服だった。しかしそれでも、意趣返しの為に痛みと、傷までも甘受すると言うのであれば。 ――少しくらいは、我慢しても良いかもしれない、と。
しかし続いた言葉>>100には、流石に笑いを禁じ得なかったようで]
…おねだり、おねだりですか。 ………あぁ、そうですね…ックク、確かに。
それはどうも。君はお優しいですねぇ。
[髪を掻き上げ、何とも偉そうに言って見せる彼を前に、堪え切れなかった笑いが零れる。顔を逸らし、それでも堪えようとしてみせるのだが――やはり無謀だったようで。 揶揄るでもなく、嘲るでもなく。只々愉快に楽しそうに、笑い転げてみせた。
ひとしきり笑い終えれば、軽く噎せながら相手の方を見上げ、落ち着かせるように咳払いをひとつ]
(102) ねこんこん 2014/07/09(Wed) 00時半頃
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それは確約できませんよ。 一度言ったんですから我慢して下さい。
["精々、悲鳴をあげないように"、なんて。 どうやら不安に駆られているらしい彼には、もう一つ不安をプレゼントしておいてやろうか。 ここまで来たら、後には引ないだろうから――まぁ、実際に"痛くするか"は…まだわからないけれど。
車を引けば、その中を漁り何かを探す。やがて幾つかの注射針を見つければ、これでいいか、とその中で一番太いであろうものを手に取り、彼の方を向き直る]
そう言えば、噂はもう手遅れなんじゃないですか…もしかしたら。
[消毒綿を手に、耳の包帯を外そうと手を伸ばし、"ある青年"の顔を思い起こして。 …実際の所は、先程部屋を出た時に鉢合わせた看護師の様子から、どうやら彼の危惧するような事態にはなってはいなさそうだったけれど。 それでもその事を思い出させれば、彼は一体どんな顔をするだろうか、と]
(103) ねこんこん 2014/07/09(Wed) 00時半頃
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しかし君も本当に素直というか……馬鹿というか。
[呆れたようにそう呟くと、耳たぶを軽く引き、開けたばかりの針をそこへとあてがう。 ――わざとゆっくり、痛くしてやりましょうかね。 そんな悪戯心が、ふと頭を擡げ。あぁそれも中々楽しそうだ、と目を細めてにやりと笑ってみせた。
――けれど。]
……ほら、悲鳴をあげる準備はいいですか。
[クスリ、と。言うが早いか、医者は手にした針を、血の滲んだ耳の肉へと一気に突き立てただろう。彼が激しく動きでもしない限り、正確に、その箇所を貫いただろうか。
――本当は、ゆっくり突き立てて、じわじわと悲鳴を上げる様を楽しもうかとも思うたのだけれど。
"失くさないよ" 何ともなげに呟かれたその一言に免じて、ほんの少しだけサービスしてやった事は、胸の内だけにしまっておこうか]
(104) ねこんこん 2014/07/09(Wed) 00時半頃
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なら、たっぷり化膿して貰いましょうか。
[盗み見るような視線には気付かぬまま、差し出された手>>106には、"どうせ付けれないでしょう"と軽く制するように触れ。 針にピアスを通し、そのまま針だけを貫通させる。そうして留め具を付ければ、"出来ましたよ、痛かったですか?"なんて言って見せた]
何かあれば、いつでもどうぞ。 "責任を持って"処置してあげますよ。
[そんなまるで親切とも取れる言葉を投げて寄越して、ベッドの淵へと腰掛ける。 見えたピアスに満足そうな笑みを浮かべているのは、半ば無意識だったのかもしれない。 伸ばした手で、付いたばかりの赤い石に触れようとすれば、彼はどうしただろうか。
そうして、ふと。先程聞こえた言葉>>105に、ざわりと胸がざわつくのを感じた]
(…だから。倒れますよ、ってば)
[退院、と。その言葉に荒ぶりそうになる感情を宥めるように溜息を。 嗚呼、いけない。伸ばした手をその顎の傷へ、あるいは首へと滑らせそうになるのを必死に御しながら、小さく眉を寄せる。 それでも胸に広がり続けるそのどす黒い感情に、小さく奥歯を軋ませはしたけれど]
(107) ねこんこん 2014/07/09(Wed) 12時半頃
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……治らなければ、いいのに。
[ポツリ。 何時ぞや呟いた言葉を、何時ぞやと同じような笑みと共に。伸ばした手を彼の髪へと滑らせば、果たしてその指は届いただろうか。届いたのなら、笑みを徐々に薄れさせながら、先程彼がしていたように、指先でくるくると毛先を弄び始めただろう。
嗚呼、せめて。 せめてずっと、憎まれていれば良いのだが。その顎の傷も耳の穴も、きっときっと永遠に消えないだろうから。その傷が痛むたび、軋むたびに、自分への憎しみを思い出してくれれば良いのだが。
彼の心を蝕んでいる自信は優にあったのに。誰よりも、何よりも。憎まれ恨まれている自信は優にあったのに。 えらく大人しくなってしまった彼に対して覚えたのは、何とも言えない――"不安"]
………"忘れないで下さいね"
[またひとつ、同じ言葉を。 自信に満ちたあの時とは違い、何処か確かめるような――まるで"縋る"ような声音になってしまったその事実には、険しく顔を顰めてしまいはしたけれど。
嗚呼、何と情けない。 情けない、情けない、情けない。 身体を傷付け心を砕き、無理矢理縛り付けてやる筈だったのに。 これではまるで――縛られているのは、自分の方ではないか]
(108) ねこんこん 2014/07/09(Wed) 12時半頃
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真っ当って…例えば。 花でも持って、愛の言葉でも囁けばいいんですか。
[小さく言い淀んだ後の非難の言葉>>111に、髪を弄る指はそのままに肩を竦める。吐いた言葉は揶揄るようなものであれど、嘘もなにも込めないままに。
嗚呼、もう何もかもが面倒だ。 ここまで情けない姿を見せたその後ならば、最早繕うものすらも無いではないか。隠すのも、繕うのも。何もかもが面倒で、どうでも良くなってきた。 ――本当は、晒す気など更々無かったのだけれど]
花はいずれ必ず枯れます。 言葉も時が経てば、簡単に忘れますよ。
…なら、そっちの方がずっといい。
[チラリ、と。シーツの間から見える包帯に視線を移し、呟く。 例え向けられる感情が、暗い憎しみだったとしても。何の感情も向けられず、ただ忘れ去られるよりはずっと良いと。
"喜びよりも憎しみの方が、ずっと忘れ難いですからね"、なんて。 悪びれもせずにそう呟いた一言に、彼は理解の出来ないという顔をするのだろうか。 妙に刺々しく聞こえた言葉には、何処か少しだけ安堵してしまったあたり、どこまでも救えないのかもしれないと、少しだけ憂いながら]
(118) ねこんこん 2014/07/09(Wed) 19時頃
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だから言ったでしょう。 はぁ…君が眠ったら帰りますよ。
…寒くありませんか。 何なら、暖めてあげましょうか。
[限界を訴え、シーツに沈む様には苦笑をひとつ。ついでに彼にとっては"笑えない"冗談も、投げてはおいたけれど。 冷たい頬へと体温を分けるかのように、自らの手のひらを押し当ててみれば、彼は果たして拒絶しただろうか。
開きかけた唇と、微かに動いたその腕と。そしてポツリと零された一言には、どんな意味があったのだろう、とほんの少しだけ、気にはなったけれど。 ギシリ。重心を動かすと微かに聞こえたベッドの軋む音を聞きながら、やはり部屋主には無駄で取り出した煙草に火を付けようとし――小さく肩を竦め、そのまま懐へとしまいこむ。
そうして医者は、患者がこのまま眠るようならば、その寝息が聞こえて来るまでただぼんやりと、微睡むように目を伏せただろう。 許されるのであれば、手慰み程度に――ほんの少しだけ名残り惜しげに、その髪を指先で弄りながら]
(119) ねこんこん 2014/07/09(Wed) 19時頃
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[躊躇いながらも告げられた言葉>>124に、微かに目を見張り。 ――今日は驚いてばかりな気がしますね。 そんな呟きが自然に浮かぶも、意識は相手の言葉の上へと]
…そう、ですか。
………、さぁ。どうしましょうかね。
[吐露されたそれに、態とらしくそう返してはみるけれど。きっと今更こんな事を言った所で、何も隠せやしない事など分かり切ってはいるのだが。 "何故"、とは聞けなかった。代わりに、微かに混乱する脳内で、何とか彼の思考を探ろうと頭を巡らせる。
――悔しいですね。 そうして浮かんだのは、そんな一言。彼の事だ。自分のこの考えを、理解したとも思えない。きっと、これも報復の一種なのだろう。 そう、解ってはいるのだけれど。 "早く忘れて解放してくれ"と。その言葉ならば、きっと笑って受け取っただろうに。
添えた手にゆるりと絡められたその指も。預けられたその頭も。そのおどけたような冗談も。まるで自分のこの歪んだ執着を"赦された"ような。 そんな滑稽極まりない勘違いを起こしそうになるなど――たちが悪いにも、程がある]
(135) ねこんこん 2014/07/09(Wed) 22時半頃
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…漸く食べる気になりましたか。
[振り払われた手にひょいと肩を竦め、腕を伸ばして葡萄を一粒つまみ取る。食べさせろ、と口を開く彼に対し、怪訝そうに眉を寄せつつも拭いた手で皮を剥いて相手の口へと押し付けて――]
……ッ、…
[腕を引かれるままに沈む身体を支えようと手を付くも、すぐに唇に押し当てられた柔らかさと甘い香りに思わず腕から力が抜ける。 押しやられた葡萄の粒を、相手の促すままに喉の奥へと押しやり、うっそりと笑うその――何とも表情豊かになったその顔を、その瞳をじっと見つめた。
そうして悔しげに眉を寄せれば、シーツに沈まる相手の頭を抱きかかえるようにして再度、唇を重ねようとしただろうか。 先程よりも、強く、深く。重ねた唇の間から舌を差し込み、唇の縁をなぞるように。口の中に残った葡萄の香りを味わわせようとでもするように、相手の舌を追いかけて、絡め取ろうとしただろう。 その舌を、噛み切られでもしない限り]
…忘れませんよ。 よくもまぁ…人の好物を。
[小さな音とともに唇を離し、軽く睨み付けながら。触れる事が叶っているのであれば、抱きかかえた頭に顔を寄せ、小さな口付けでも落としたかもしれない]
(136) ねこんこん 2014/07/09(Wed) 22時半頃
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[――それに、しても。 こうまでやられてばかりは、やはりどうにも気に食わないのは確かで。 ちらりと芽生えたそんな感情のままに、相手の瞳を覗き込むように目を合わせ、やがてゆっくりと口を開く]
…愛していますよ。 誰よりも、何よりも。狂おしい程に。 君だけを…ディーン。
[指先で髪を梳き、目を細めて柔らかく笑いながら。 未だ血の流れる自分の耳に指先で触れ、付いた血で相手の唇へと触れる。 す、と小さく指を引けば、そこにはひとひらの薔薇の花弁のような赤。 花束の代わりだとでも言うように、唇の先でその赤い花びらを啄ばみ摘み取ってみれば、彼は満足してくれただろうか。
"真っ当な努力、これでいいですか"、と。 見下ろしながらそう笑ってやれば、彼は果たして。少しは驚いてくれるだろうか]
(137) ねこんこん 2014/07/09(Wed) 22時半頃
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おや、満点ですか。それは光栄ですね。 …でもそんな顔をされると、本当に勘違いしてやりますよ。
[思いの外赤らんだ頬と、それを隠すように覆う手>>147に、クスリと小さく笑い。 ポツリと冗談交じりに告げた言葉は、彼にはどう伝わっただろうか。 自分の口付けを拒絶する事なく受け入れて、囁いた言葉にはまるで照れたように僅かに顔を赤らめて。その上満点まで頂けて。 違うと解りきってはいるけれど、それでも勘違い"してしまいたくなる"、と。
ぽすん、と。 軽い音を立てて、彼の隣に寝転がる。そのままシーツに包まった彼の身体をシーツごと抱き寄せてやれば。 "一緒に寝てくれるんでしょう"、なんて、彼の寄越した冗談をほじくり返してやれば。 彼は、どうしただろうか]
……ディーン。
[未だ痛むであろう、彼の傷へとそっと触れながら、小さく小さく名を呟く。 この傷を付けた事を、欠片も後悔などしていない。この傷のお陰で彼に"忘れさせない"と思わせられたのなら、それだけで十分、付けた価値はあるだろう。 その考えはきっと、これからも変わる事は無いのだろう]
(151) ねこんこん 2014/07/10(Thu) 01時半頃
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[嗚呼、それでも、もしも。 このまま全てを勘違い"してしまえた"のなら。してしまう事が、出来たのなら。 ――それもそれで、なかなか悪くはないかもしれませんね。 そう思ってしまった自分には…もう、呆れるしかないだろう]
……きっと俺は、変わらないでしょうけど。
君にその傷を付けた事も…喜びこそすれ、悔やむ事はこの先一生無いでしょうけど。
[ポツリ、ポツリと。 抱き寄せる事が叶っているのなら、寄せた髪に顔を埋めるようにして、言葉を零していっただろうか]
それでも、少しくらいは。 …君の言う"真っ当な"努力を、させて頂きますよ。
[告げながら、小さな息と共に顔を上げ、付いたばかりのピアスへと――軽く腫れたそこに、口付けようとしただろう。 そうして告げた言葉を裏付けるように、傷へと軽く触れながらも彼を此方へと向かせようとしただろうか。 向かせる事が出来たなら。笑みと共にその鼻先へと、そっと唇を寄せただろう]
(152) ねこんこん 2014/07/10(Thu) 01時半頃
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(……足掻いて、みましょうか…ね)
[随分と長い間、諦めてしまっていた気がするけれど。誰かを求める事なんて。 だけどもしも、この命が尽きるまでに後一度だけ…誰かに対して、足掻く事があるのだとしたら]
………、もしも、満足したら。 その時は、俺にも見返りを下さいね。
[そのたった一度は。 他の誰でもない、君に対して足掻いてみようと。そう、思いますよ――なんて。]
(153) ねこんこん 2014/07/10(Thu) 01時半頃
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そうですか。 なら、好きにさせて貰いますよ。 ……言いましたからね。
[もごもごと、口の中で呟かれた言葉>>164には、ほんの少しだけ意地の悪い声音で。 あぁそうですか。好きにしろと言うのなら――大いに"勘違い"してやりましょうか、と。
手繰り寄せるように回された手に目を細め、相手の顔に笑みが浮かんでいるのを見れば、一瞬だけ、眉を寄せた。 ――しかしそれも、ほんの僅かな間の事であったけれど]
…生意気ですねぇ。 あんまり調子に乗ると、知りませんよ。
[軽く押し付けられた頭に何処か擽ったそうにしながら、僅かに不服そうにそう告げる。 少し前――それこそ、ここに見舞いに来たばかりの時ならば。吐いた言葉に意味もあったのだろうけれど。 今はきっと、恐れも何もしないのだろう。それが何とも腹立たしく――少しだけ、気分が良かった。
聞こえてきた寝息>>165に、小さく口端を持ち上げて。暫くの間、ぼんやりとその髪へと指を通す。 するり、するりと。流れるようなその感触は、中々に心地が良いもので]
(169) ねこんこん 2014/07/10(Thu) 08時半頃
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…満足したら、ちゃんと"おねだり"を聞いて貰いますからね。
[まるで、いつかの未来を約束を強請るような、そんな言葉を投げかけて。 何の保証も確約も無い、ただの希望。そんな不確かなものを信じようと思う事など、希望を願う事など。 そんな事、今迄決して、しようとしなかったというのに。
もしも、この勘違いが赦されるのなら。 柄にも無く、甘ったるい言葉でもって、君に愛を囁いてみせますよ。 君の言う"真っ当な"方法でもって、君を、君だけを。心から愛してみせますよ。
それで君が、俺を忘れないのなら。 一度だけ、信じてみてあげますよ。
――だから、ディーン。君も。]
……忘れないで下さいね。 例えもしも、その傷が…癒える事があっても。
[眠る彼には、きっと届かないだろうから。 だから今のうちに、ただただ浅ましく希望を願ってみるのも――悪くは、無いのかもしれない]
(170) ねこんこん 2014/07/10(Thu) 08時半頃
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