25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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[揺蕩う夢は、遠き夢。
二人繋いだ小さな手、切りそろえられた黒い髪。 花咲く月夜の小さな庭で、砂の山を二人で積んで競って。
わたしのがくずれてしまったから、そなたもそれをわざとくずして。
されど、飾ろうとした蒲公英一輪は、わたしが奪って返さなかった。]
(10) 2010/08/08(Sun) 12時半頃
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…おは、よう……? [簾から漏れる昼の日差しと、それにきらめく蒲公英色の金糸の髪と。 寝ぼけ眼で、それへと白い手を伸ばし、淡くわらった。]
(11) 2010/08/08(Sun) 12時半頃
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[人としての情、獣としての欲。 ふたつの心は互いに違う方を向き。
どちらも欲しいと思うのは、己の罪深き浅ましさ。]
(12) 2010/08/08(Sun) 12時半頃
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構わぬ。 …手元に戻らぬのも、きっと巡り合わせ。 時満ちれば、戻るでしょう。
[済まなそうに言う顔に笑って。]
かりょう、琵琶を。
(25) 2010/08/08(Sun) 13時半頃
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[受け取った琵琶を手にして、撥を取り。 奏でるは、かつての舞の勇壮な。
彼奴以外には討たれてなどやらぬ。 かつて競いし旧友(とも)以外には。
人の噂に流れて聞くは、 彼はとうとう気が狂れた。 視えぬ亡者と笑っていると。
猛る音色は風に乗り、 黄泉比良坂、千里を越えて、 彼奴の元へと届けと響く。
こちらを向いてくれるなら、 修羅と化していようと構わぬ。 それでも黄泉に囚われたままなら、 すべてを食らいつくし、滅ぼすまで。]
(32) 2010/08/08(Sun) 14時頃
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そうなるような、気はしていた。 双ッ花は、共に咲くべしと。
[二輪を手折ったと聞いた時から、 そんな予感はしていたから。
羨む気持ちがなかったとは、言えぬ 。]
(33) 2010/08/08(Sun) 14時半頃
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届くものなら全て欲しいと、願うわたしが浅ましいだけ…
わたしの中では、イアンは今でも強敵(とも)だから…。
[恋しい者、愛しい者、共に高みを目指したき者。 思いの形は様々だから、どれか一つを選ぶことは出来ぬ。]
こんなわたしで、すまない。 [琵琶を脇に置き、華奢な体を胸元へと抱き寄せた。]
(40) 2010/08/08(Sun) 14時半頃
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…かりょう……
[焦がれ、染まって、変わりゆく。 そんな一つ一つの変化すらも、愛しい。 華奢な体が縋りつく。その腕に込められた淡い力が愛しい。]
(43) 2010/08/08(Sun) 15時頃
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[いじらしく見上げる姿に目を細め、そっと耳元に顔を埋めて囁く。]
…かりょう、わたしの愛しい子……
[どうか、どうか…この子が立派に育つまで、引き裂き喰らわずに済みますように。]
(46) 2010/08/08(Sun) 15時頃
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…いや、今暫く。 [ここで騒ぎを起こすのはマズい。そう思うて、怯える子を腕の中へ。]
(55) 2010/08/08(Sun) 16時頃
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[幾ら喰おうと、満ち足りぬ。 幾ら交わり抱かれても。
元より満ちる筈もない。 鏡写しの上弦下弦。 分かたれ生まれた双子月。
もしもひとりで産まれていれば、こんなに焦がれる事もなかった。
それは、あまりにも乞いしい…]
(138) 2010/08/08(Sun) 23時半頃
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[使いの言葉に目を伏せて、 その沈黙は、酷く長かった。]
…かりょう。
支度をして待って居なさい。 かならず"迎えに"戻ります。
[その言葉と、決意の色で、聡い雛は察するだろうか。
袖を通すは、白い薄衣。 髪も結わず、紅も差さず、そのままで。]
(139) 2010/08/08(Sun) 23時半頃
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ランタン職人 ヴェスパタインは、犬猿の仲などという言葉を、なんとなく思い起こしたりなどはしていない。
2010/08/08(Sun) 23時半頃
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[雛鳥の華奢な背を、一度そっと抱きしめて。
迦陵、花菱、愛しい私の傍の花。]
だから、良い子で待っているように。 [白い薄衣はまるで…
人目を避け、霞がごとくに向かうのは、その逢引の言伝の場所。]
(152) 2010/08/09(Mon) 00時半頃
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…おぼろ……。 [名を呼ぶ声は、昔のものより艶と憂いとを乗せて。]
未練を絶って来たのだと、そう風の噂に聞きました。
夢は最初の一夜限り、二度目は現…獣が本性。 それでも…後悔せぬならば。
[抑え切れぬ因果な本性と、己が手で断ち切らねばならぬ切なさと。
されど、それに勝るは…分かたれた二つが漸く、あるべき姿になれる喜び。]
…抱いて、くださいませ。 [見つめて、そう恋しげに乞う。]
(158) 2010/08/09(Mon) 01時頃
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[薄衣の肌蹴た背には、鮮やかに彫られた月下美人。 白き月下美人の花は稀に、赤い果実をつけるとか。 それは、甘く甘く天上の味。
此方が白き花ならば、其方は赤きその果実。]
(161) 2010/08/09(Mon) 01時頃
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…えぇ。 分かたれて産まれたことがあやまちならば、
あるべき姿に、ひとつに戻ろう。
[求め求められ、重なる躰。 月の見えないこの夜に、白い身体がひっそりと咲く。 その肩へとそっと歯を立てて、赤は果汁が如くに散る。]
(165) 2010/08/09(Mon) 01時頃
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[あぁ、何故… 心も体もこんなにも満たされていくというのに、 胸の奥が張り裂けそうなほどに痛い……]
(167) 2010/08/09(Mon) 01時頃
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…おぼろ、…おぼろ…… [その熱き血潮を啜りながら、はらはらと溢れる涙。]
我らが最初から…一人であれば、良かったのに…
(169) 2010/08/09(Mon) 01時頃
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[白い肌が映えるのは、灯火の下だけではなく。 鮮やかな返り血に染まっていく、その姿がおそらく一番映える。
積年の渇望を満たすように、息を荒らげてその肉を貪る。 それでも別れが惜しいのか、心の臓と顔には手が出せぬ。
血の気の引きゆく片割れの肌は、己の白い肌と同じ色。]
(174) 2010/08/09(Mon) 01時半頃
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―――…おぼろ…
[見つめ合えば、きっと鏡写しの笑顔。 血濡れた唇で、血の気の失せた唇を彩る。]
(175) 2010/08/09(Mon) 01時半頃
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…あ、……あぁ、ッ!
[爆ぜる白、爆ぜる赤。 彼の灼熱をその身で受け止めながら、一思いに心の臓を握り潰した。]
(181) 2010/08/09(Mon) 01時半頃
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[最後に耳に届く言葉。]
されど、もう決めたのです…。 ひとつになった月は、共に沈むのだと…
愛しい雛鳥を迎えに行って、共にそちらへ旅立ちます。
(183) 2010/08/09(Mon) 01時半頃
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欲しいものは、全て手に入れたから。
わたくしに、未練などもうありませぬ…。
(185) 2010/08/09(Mon) 01時半頃
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