270 食人村忌譚
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……もし、私の身に何かありましたら、 私の部屋の、書置きをお読みください。
[背を向けたまま、それだけ告げて、 そうして、今度こそ私は歩き出した。*]
(177) 2017/11/28(Tue) 22時頃
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――>>11912>>120>>121ススムと――
……わかってくれるの?
[ススムの反応は志乃にとって意外だった。絶対に理解されないと思っていた志乃の心は、溜めた涙を拭って零れた優しさに、転げ落ちていくように心は傾いていく。 ススムの考えが透き通って沁みていくように頭の中にすんなり入っていく。 "独裁者"、"間違った巫女"、気づいたのは私だけ…… 判断力の低下している空腹の中で、心理のように囁かれた洗脳のような言葉に、自分は特別な、他人とは違う存在のように思えた。]
(178) 2017/11/28(Tue) 22時頃
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酷い……あんまりだよ…… 食べたかっただけで子供の命も…… 櫻子も殺すなんて……
[ユリは私を儀式の邪魔と言ったのだ。食べることの儀式に邪魔だとはっきり。食べたいからあんなに怒り、自分を正当化した。 思考は固まって怒りに変わっていく。]
きっとそうだよ…… 邪推なんかじゃない ゆりは……あの女は巫女の立場を利用してるだけ…・… なんとかしなくちゃみんな食べられちゃう……
[止まらない感情と確信。気づいた私がしなくちゃと自然に思えてしまうほど身体には怒りが溢れて手をワナワナと震わせながら俯き、殺意が芽生えていく]
(179) 2017/11/28(Tue) 22時頃
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[櫻子の腑分けをし終えて、腹に野菜が詰め込まれていくのを見ていたが。 これ以上は手伝えることはなさそうだとその場を江津子達に任せて後に下。
宴間へと戻って暫く経った頃だろうか、教え子が戻って来たのは>>172 彼の傍へと近寄り。]
先ほど容さんから聞いたのですが、どうも彼女は君を下手人だと思っているようです。 確たる証拠もないのに、そうであると言い張っていて、その考えに固執していて。
まるで自分から疑いを逸らす為の進君を下手人へ仕立てあげようとしているようで。 もし、彼女が自分の立場を利用して巫女に取り入るのならば、無実の君は殺されてしまう。
私はそれを止めたい。
[話す声は密やかに、しかし人数も少ない宴間の中。 聞き耳を立てずとも話は聞こえてくるだろう。]
(180) 2017/11/28(Tue) 22時頃
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もし、ゆり……巫女様が何の根拠もなくそれを許すなら。 言ってはいけないのかもしれませんが、容とゆりが手を組んでなどと疑ってしまいそうです。
[眉を寄せ、憂いを帯びた表情でぽつり、と*]
(181) 2017/11/28(Tue) 22時頃
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やられる前にやらないと…… 気づいた私が……しないと……
[虚ろな目は鋭く細くなり]そう決意してススムに話す。 それでも一緒にと言わなかったのは、巻き込むのが理性が残っていたからか。もともと妹が巫女を引き継ぐのも道理で言えば間違ったこと。正しい巫女が元の形に収まりそれで死れるならと、志乃は元あるべき村の姿を想像しては練り歩く]
……ありがとう。聞いてくれて。 私ススムと話せてよかった。
[その後、お礼を言って私は彼と別れる。あまり話していては誰かに聞かれるやもしれぬ。 どこに耳やら目もあるかもわからぬ。 これからやろうとすることを思えば、彼とあまり長くいるのはよろしくない。 そう考え自分の家へと向かって歩きだすだろう。*]
(182) 2017/11/28(Tue) 22時頃
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― 囲炉裏端 ―
そうか。 まぁ、なんだか、のんびり茶でもって雰囲気じゃあなくなってしまったからねぇ。
[>>115昨日のやり取りなど何処へやら。 悪戯じみた物言いに肩を竦め、笑う。]
うぅん、どうなんだろうなぁ。 まぁもしそうだとしても、下手人は見つけ出さなくっちゃならないけど。 いくら儀式だなんだといったって、幾つも命が消えるのは、やっぱ気分のいいもんじゃないからねぇ。
それに、弔いが追い付かなくなる。
(183) 2017/11/28(Tue) 22時半頃
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―回想・志乃と― [涙をぬぐい、慰めるように 易しい優しい唆しは、どうやら功を成したよう179]
勿論だよ、志乃さん……辛かったね。 話半分にしか聞かず、何も考えない人たちには誰にも、 理解してもらえなかったろう? 僕は、ちゃんと聞いたから、理解できたけれど
志乃さんは邪推しているわけじゃない 大事な人が、彼女の独断で勝手に食べられてしまう前に 僕らが何とかしなくちゃ、いけないんだ。
[大事な人。 駄目押しのように彼女が親密にしている者を連想させてから 火傷を負った貌へ、触れてしまった事を詫び 誰の目が集まらぬうちに>>182と 互いに別の方向へ向かって歩き出したのだった。 これで良い。 今宵の偽下手人殺しは、彼女が担ってくれる*]
(184) 2017/11/28(Tue) 22時半頃
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―ミナカタと―
[返される阿保の子>>174の時は、思案の最中 言葉を返す機を逃すも、進への言及に、 やや、迷いがちに話し出す]
いえ、本当に大したことじゃないんですが…… 愛理さんの切り口は、私の使っている鉈のようなものだった>>96のではないかと、思ってしまったんです 不慣れな方が使ったなら、ああいった切り口になるのではないかと そこから、ちょっと思い出してしまっただけなんです
[解体を学ぼうとしていた進なら…… そう感じたものの、やはりそれはただの憶測にすぎない 刃物の扱いが不慣れなのは、彼に限ったことではないのだから]
それより、阿保の子でい続けられては、困ります ミナカタさんも、子を作られた親なのですから
[だから、やや強引に打ち切って、 二十余年塞いでいた出来事を、ぽつりと簡素に切り出した]
(185) 2017/11/28(Tue) 22時半頃
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あの夜、ミナカタさんとの間に授かった女子は、 先代の巫女にお預けいたしました
[先ほど受けた大任の>>159のせいだろうか 言ったところで、何か変わるものでもないのだろうが]
きっと、良い子に育っているのだと思います だから、阿保の子のままでは、困ります
[大仕事の前に背負っていた業の一端を投げつけて、 身軽になって、その場を離れようとしただろう*]
(186) 2017/11/28(Tue) 22時半頃
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――ボロ屋敷――
[家に戻れば部屋に並べられた草束を袋ごとに詰めていく。 幸か不幸か、渡しに戻る理由に成り得るその試験の口実はとても大きなチャンスに思えた。 反省したように集会場に向かい、何事も無くみんなと共にし、その上で殺そう、生き返ることもなく無惨に死んでいくしか無い状態にして……、そう考えて手にしたのはトリカブトの根。
鎮痛剤としてとっておいたものを取り出して、それで殺せればきっと食べられることも叶わず生まれかわることもない。 出来るだけ苦しみを味合わせて殺してやりたいと、小さな袋で別にして、集会場へとまたふらふらと歩いていく]
(187) 2017/11/28(Tue) 22時半頃
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[櫻子の解体は進んでいるのだろうか。 部屋の中から、遠くをぼんやり見つめていれば、源蔵から白湯を渡された。>>127]
ん、ありがとう。
[袂へ入れておいた薬を取り出し、白湯に混ぜ、飲み干す。 飲めば、血の巡りが強くなるのを感じるが、足の先の感覚はやはり薄い。 やれやれと嘆息し、ミナカタに言われた手法で足先を擦りながら、弔いの肉が届くのを待つとしよう。*]
(188) 2017/11/28(Tue) 22時半頃
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[四肢を切断され、野菜を詰められる櫻子の姿は、死者への哀れみを以てしても美しいものには思えなかった。 腕を、足を落とした感触。 斧を振るった重み。 それらは、人ではないもの――家畜だったり、邪魔な枝を切る時と、なんら変わらないように思えた。
実際、変わらないのだろう。 生まれ変わるかどうかなんて、当人は元より他人にはわからない。この村に生まれた丞だってその自覚はない。 住人のほとんどが苗字を名乗る意味を持たぬこの村で、朽ちかけとはいえ表札の残る家を我が家と定めたのも、その姿がその名に相応しいのも、全ては成り行きだ]
(189) 2017/11/28(Tue) 22時半頃
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―集会場へ―
[草束の入った袋を3つ胸に隠したトリカブトの袋を携えて志乃は集会場へと戻っていく。 そこにはまだユリや他の人がいただろうか。
いた人に申し訳なさそうに深くお辞儀をして、青白い顔でユリに謝罪をとキョロキョロ彼女を探す。*]
(190) 2017/11/28(Tue) 22時半頃
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―集会所―― [石動の言葉に、思わず目を丸くした]
――――容さんが、何故僕を? 何時も、食べ物をくれていた 彼女の好意だと思っていたあれは――?
疑いを晴らすために 別の誰かを告発する、という事ですか? それが、どうして僕なのか……
嗚呼、ひとつ仮定の話ですが 容さんは自分の食べたい相手として、僕の名を出したのかもしれません。 昨日、食べたいという理由だけで櫻子さんを儀式に選んだ巫女様のように。 ……巫女様と容さんは、違うと思っていましたが……矢張り姉妹なんですね。
[声を潜め、沈鬱な表情を作る。 櫻子を儀式に選んだ理由など、勝手なねつ造だ 少し離れた炉端には>>183人の気配もあるから 其れなりの説得力のある話に作り上げてはいるけれど*]
(191) 2017/11/28(Tue) 22時半頃
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なるほど。 それは流石に俺じゃそこまで判らないな。
扱い慣れているだけはありますね。
[素直に江津子さんの観察眼>>185に感心した声で 昨日ちらり覗いた愛理の傷を思い出す。 自分では腑に落ちなかった所が すとんと落ちた気がしたが、次の発言>>185>>186で 全て飛んで行った]
(192) 2017/11/28(Tue) 22時半頃
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あの時はお世話に……って、は? 今何て?
[儀式とかそれ以前の問題発言に、 思わず手が止まり、江津子をまじまじと見つめてしまう。 あの時、一夜で紡がれた命。 その存在を今知らされて、思わず手が震えてしまう]
(193) 2017/11/28(Tue) 22時半頃
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えっと、いや……えっと。
[下手人とか儀式とか優先すべきことはあるのに。 頭の中が全く進まない。
自分で言ってなんだが、まさに阿保になった気分だ]
それ……って。
[誰と言わずとも、先代の巫女の元で育った 自分と似た者がいるとしたら一人しかいない]
容、ちゃん?
[恐る恐る尋ねた声に答えは返らなかったかもしれない>>186 それがむしろ答えのようで。
うわー、と唸りつつ、頭を抱えて水でも被ろうと 水場へ向かうだろう*]
(194) 2017/11/28(Tue) 23時頃
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[それからしばらくして。 取り分けてもらった弔いの肉は、野菜とよく馴染み、柔らかで美味だった。]
見てやれなかったの、残念だな……。
[体毛を削がれ、腹に野菜を詰められて焼かれたという、櫻子の姿。 己のもとに届いたときには、もう切り分けられていた。 だからせめて、目を閉じ、分け与えられる前の姿を想像しながら、口にした。*]
(195) 2017/11/28(Tue) 23時頃
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……その言い方だと巫女様は櫻子を食べたいから『儀式』をしたように聞こえるが。 巫女様を疑うなどあってはならぬ事、だが。
[容に対する不信感が新たなる不信感を誘発する。 少なくともそう見えるように表情を作ってみせる。]
ゆりは何故櫻子を下手人だと断定したのだろうと思っていたが。 そうか、食べたかったからか。
そうか、そうか……。
[沈痛な表情。 これは嘘ではなかった。 ゆりをも殺さなければならないのかと思うと、自然そうなってしまうのだ。 巫女は巫女であらねばならない。 だから彼女を疑う事はあってはならない。 そのはずなのに、教え子を守る為に嘘を重ねて行く。 それが憂鬱で堪らず、何かを堪えるような表情へとさせる*]
(196) 2017/11/28(Tue) 23時頃
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[この村に生まれたから人を食べている。 この村で生きるために人を食べている。
巫女を信じ、情欲とは別に男である証として女を抱き、儀式に異を唱えず、ただ村人が餓えない分だけ作物を耕す。 儀式に異を唱えずに……。 巫女の言葉>>17を思い出し、櫻子を食む口の動きが止まる。 儀式はいつまで続くのか。今夜も執り行われるのか。新たな糧が供されることとなり、そしていつか……]
冬の蓄えが村人の数を超えちまうんじゃねぇか
[箸を置く。 必要十分よりも多くは求めない。 それが、自然の力を借りて食糧を得ているものの鉄則だ。 弔いの肉は勿論、食糧としての意味は薄いかもしれない。それでも、ようやく「気持ち悪いことが起こっている」と言う感覚を得た]
(197) 2017/11/28(Tue) 23時頃
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―夜明け前― ん。そういうことなら俺も付き合うよ じゃあ、次はお互い逆回りってことで
大丈夫大丈夫、江津子さんに襲いかかる命知らずなんて居ないよ
[見回りは続けると江津子から聞けばそう頷く 一人というのには少々の不安は覚えたものの 自身はともかく、江津子の武勇伝は村中に響き渡っているのだ よほどのことが無い限りは返り討ち似合うのがオチだと気楽なもので*]
(198) 2017/11/28(Tue) 23時頃
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―現在・集会場― ほんと、女の人ってのはすごいもんだ
[ふと聞こえて来た医者先生の言葉にぽつりと呟き 手持ち無沙汰に集会場の中を見回す
弔いの準備は着々と進められ、男に出来た事といえば薪を用意した程度
しばらくして、弔いの品が配られるとそれを手に静かに黙祷を捧げて]
いつまで続くのかなぁ
[なんとなく、素直な言葉が漏れる 無論、下手人が見つかるまで]
(199) 2017/11/28(Tue) 23時頃
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何時までも終わらなかったら、俺もそのうちに死ぬのかな
[死ぬ事は解くに怖いとは思わない 弔われ、食われるのだから、そのうちにまた産まれてくるだろう ただ……]
道具箱、誰か使ってくれるだろうか
[父から受け継いだ大切な物を返せないのは少し残念だと思った]
(200) 2017/11/28(Tue) 23時頃
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―ミナカタとの離れ際―
[ミナカタに言い切るだけ言い切って>>186、背を向けた 感じられた視線や動揺>>193に、 くすりと笑みがこぼれていく 捨てたのに、放棄したのに、 そういった自責の念は残っているけれど、 そんな反応を見れたことに、少しほっとした自分がいた
無関心でもなく、投げ出すでもなく もし、自分の娘がこんな父親の姿を見れたなら、 それは少し、喜んでくれることではないかと
背後から問われるも>>194、答えはもう返さない 江津子自身にも、確証はないのだから 後は、目の前のことに集中しよう
櫻子を弔い、夜へと備えようと――――*]
(201) 2017/11/28(Tue) 23時頃
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―水場近くにて―
[ひとり、切り分けられた櫻子の肉を胃に収める。 生きている間も、美味しいものを食べていたのかもしれない。 見た目だけでなく、その味も極上のものだった。 うっとりと目を細め、嫣然と笑って、 私は、集会所の外、水場に近い場所で座り込んでいた。
考えるのは、儀式のこと。 自分の身は惜しくなどない。 どうせ、巫女にも成れなかった時点で、 私は母からも見限られてしまっているのだ。 居なくなったところで、誰も困りはしない。]
(202) 2017/11/28(Tue) 23時頃
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[ただ、そう。 儀式を失敗することだけが恐ろしい。
石動に疑いを伝えはしたものの、 彼も半信半疑のようだった。
私だけが死に、確たる証拠もなく、 石動も口を噤んでしまえば、 きっと、村に平穏が訪れることはないだろう。]
(203) 2017/11/28(Tue) 23時頃
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琴弾き 志乃は、メモを貼った。
2017/11/28(Tue) 23時頃
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[袂に潜ませた短刀を、布の上から撫でる。 それは、子供の頃、母から譲り受けたものだった。 やけに使い込まれている印象を受けはしたけれど、 母―巫女がそんな物騒なものを 使い込んでいるところを見たことはない。 気まぐれか、或いは、誰かしらから譲り受けたものか。
まぁ、いい。 今まで、草や動物の命を奪っていたそれで、 私は今日、彼を傷つける。そうして、村を― 妹を、脅威から守らなければならない。
一つの釦がもたらした迷いは、いつの間にか確信に。 その切り替わりがどこで訪れたのかは、私自身にも分からない。]
(204) 2017/11/28(Tue) 23時頃
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[静かな、水面のように深い色を湛えた瞳を思い出す。
誰よりも、信じたかった人の筈だった。 何処で、彼は違えてしまったのだろう。 食事を振る舞った時の笑顔も、何もかも。 全て嘘だったのだろうか。
太陽は、僅かに残る迷いを嘲笑うように、 少しずつ、西へ、沈んでいく。*]
(205) 2017/11/28(Tue) 23時頃
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[これまでは高揚があった。 研ぎの仕事をしている時は常にあるそれが、続いていた。 しかし、昇ればいつかは下るもの。 ここ暫くの傑作、と自負する短刀への賛辞>>126は、自尊心を満足させ、そして同時に常ならぬ事態への自覚を促すこととなった。
―――それでも、常と変わらぬ仕事は必要だ。 人一人を丸焼きにした竃は、いつもの弔いよりも汚れている。 子を養うためについた脂肪は煤けてこびり付くようで。 今日の汚れは今日のうちに、と丞は竃の掃除をかってでた。 もしかしたら、また明日使うかもしれない。 儀式が続くならば、また明日――あるいは今夜、人が死ぬのだから]
(206) 2017/11/28(Tue) 23時半頃
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