270 食人村忌譚
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[神社に――ゆりに、 容に、 「ごはんをくれる」あてについて二人が話すのは、ふんふんと頷いて聞いていた。実際のところ、村の誰に彼に世話を焼かれるのが当たり前な中でも、その二人は特に娘に施してくれる相手ではあった]
えつおばさまは、お仕事?
[お肉を作る、お仕事。それがおばさまは、とてもうまい。皆が話すのを聞いて、それはよく知っていた、それが娘の認識だった。その勇姿を見る機会こそ、そうあるものではなかったけれど。 何とはないように聞いてみなどして、]
(174) 2017/11/24(Fri) 02時頃
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うん。 一緒に、行く。 えつおばさまと、一緒に行く。
[向けられた提案に、こくこくと頷いた。娘にとっては、江津子も、今しがた去った進も、大好きな村の、大好き、の一つだ]
おせんたく、する?
わかった。 おせんたく。
[続く言葉にも、頷いて。 猫を抱えたまま、江津子が向かうに従った*だろう*]
(175) 2017/11/24(Fri) 02時頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2017/11/24(Fri) 02時頃
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[ ―― これが 可愛げだろう。 ちいさなもみじ開いたたなごころ、 思惑に沿って――添いすぎたきらいはあるが―― ころりと掌の上に転がってくれるなら、 こうも表情の変わる>>165なら、 それこそがなりばかり玩具の男がもたない「可愛げ」で “ミナカタ”の名前の奥にいる男がもつ、 拭えない「憐み」の発露で、その男の、貌ではないか。
満足げにぎゅうと細まった眼も、その下の口元も、 真相を明るみに引き出すに十分な悪童のそれ
たっぷり間を、 それこそ相手の遅れた一拍も飲み込むほどの間をあけて]
(176) 2017/11/24(Fri) 02時頃
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うん、そうだな
まだ備えがあるからだいじょうぶだよ
(177) 2017/11/24(Fri) 02時頃
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[ことさら子供じみた音程で言ったのは、 あまり怒られないように、との打算もあったが]
ああ よかった おまえはどんどんミナカタ殿になってしまって、 つまらないと思っていたが まだいるな まだいるなあ
[確かに子供の時分を思い出して、 思い起こしてもいたもので。]
(178) 2017/11/24(Fri) 02時頃
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……だから、 まだ薬湯はあるから、 熱冷ましと咳止めだけ頼みたい……頼めるか、 遊びが過ぎてしまったが
[相手の生業に付け込んだ、 薬にはなりようもない毒をなめる遊びだ。 怒られるなら楽し気に、けれど、 神妙に受け止める用意はできている。 その怒られるのを次回以降に活かせるのかは、また、違う話だが。
とかく享受するべく物は享受し、 遊びが毎日だった時分を懐かしむ顔ぶれとは別れがあるのだろう*]
(179) 2017/11/24(Fri) 02時半頃
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発明家 源蔵は、メモを貼った。
2017/11/24(Fri) 02時半頃
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[遊ぶが毎日だった頃には、 書き記さんと思って筆を執ったことはなかった。
かたちの変わらない原因を、 それが原因だと思われる言葉を聞き、 母といえる女がいなくなったあと、筆先を墨に染めた。
とはいえ、始めた時分は、なにも考えず、 単に紙の上に線を引く程度、書き記したものをどう保管するのかなど考えもせず。 であるから、今も残る当時の紙は少ない。 血の緋色の似合う女が身籠る時期>>22>>25が 書き起こしのそれと重なったとしても、 紙面が残っていたとしても、それは紙片のようにみすぼらしい記録の塵芥になって読み解けるかは、それを行う者によるところが大きい。]
(180) 2017/11/24(Fri) 03時頃
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[それと同じ話だ。 口伝により守られた、薬師が薬師である所以の知の薬棚>>3>>71 得意げに指し示し語られた、受け継がれた知識は。 記憶に残れどもかすかな残滓、 ――文字に残れば墨の色あせるまで。紙のほどけるまで。 書き起こし、記し、子供の手習いの文字の踊った古い頁になった*]
(181) 2017/11/24(Fri) 03時頃
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[まだ備えがあると聞いて>>177 まだいる、と言われて>>178 詰まったのは躊躇いからではなく、 もっと胸の奥を刺された気がしたから]
……源蔵こそ本当に変わってないな。
[やっと絞り出せたのはほっと吐き出した安堵か 溜息かは俺の胸の内のみ]
判った判った。
今手持ちはこれ位だが、十分だろう。 ミナカタ様からだ、大事に大事に使えよ?
[空いた間と同じだけ息を整え、望み>>179を渡し]
(182) 2017/11/24(Fri) 07時頃
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まだ渋が抜ける前の干し柿盗み食って 腹壊すんじゃねえぞ?
[先ほど丞さんが見せてくれた干し柿を引き合いに、 懐かしい幻は駆け抜け終わる。 変わったのか変わらないのか。 度を越す源蔵に呆れた表情で、見ていたなら 石動さんにも恥ずかしいところを見せたと 笑ってから離れよう**]
(183) 2017/11/24(Fri) 07時頃
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拗らせてなど……。
[ない、と言えなかった。 後を追って欲しい、後の世もまた一緒になどと、どの口で言えようか。 そう願った女は置いて先に逝ったというのに。
何も言えず口籠っていれば薬師がやって来て、恋の薬などと言い出す始末。 弟は大事だしそこに確かな情はあれども。 それに名前を付けるのならば恋ではないだろう。 付けるとするならば。]
私に薬はいらん。 この歳になって恋などと馬鹿馬鹿しい、あまり私を揶揄わないでくれないか。
私はただ弟の行く末が心配なだけだよ。
[愛だろうと思う。 恋し狂う激しさなどなく、しかし静かに絡みつく妄執は愛情の一つの形。 どちらにせよ付ける薬などあるまい**]
(184) 2017/11/24(Fri) 13時半頃
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―― 神社 / 朝食の席にて>>156 ――
[命をいただく。骨の髄まで。
薄らと湯気を立てるご飯と、頬肉の味噌汁。 先月亡くなり、塩漬けにしていた氏子の肉だ。
志乃とも親交のあった壮年の男ではあったが、 私がそれを彼女に告げることはない。
何度も“お清め”で私の胎に精を吐き出した男が、 今は私の腹に収まろうとしている。 これほどめでたいことがあるだろうか]
何か変わったこと、ね。 私は相変わらずよ。
[私は困ったように笑うことしかできない]
(185) 2017/11/24(Fri) 19時半頃
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[姉さんは帰ってこない。 男女を問わず村人たちと日々交わり、 その心と体を慰める毎日。 取り立て話すようなことはない。
沈黙が気まずくなった私は、 矛先を志乃に変えることにしたのだった]
……で。 志乃はミナカタさんの子はもう孕んだの?
[ミナカタのところに 志乃が度々出入りしているのは聞いていた。 “そういう間柄”と邪推する気持ちが半分、 旧友をからかう気持ちが半分**]
(186) 2017/11/24(Fri) 19時半頃
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―出立の時―
お仕事は、もう済んでいますから
[櫻子の問いかけに>>174そう微笑んで、 だから、と同行を持ちかけた>>172 自分の仕事について少し話すべきかと思うも、それは思いとどまった 屠殺の話を伝えたところで、櫻子の足しになるとは思えない お洗濯の契りを交わし、『一緒に行く』>>175と託されたなら、 行先は、江津子の選択では、1つしかない]
では、『ゆり様のもと』へ参りましょうか――――
[奔放に村を駆けることのある姉の元 社を鎮守する妹の元 異なる在り様の姉妹を思えば、 すれ違いなく櫻子の腹を満たせるのは、きっと後者だ
猫と卵を抱いた2人で、神の麓をゆっくりと目指した*]
(187) 2017/11/24(Fri) 20時頃
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―道中・壱―
[櫻子が退屈しないよう、所々で言葉を交わした
途中でふと卵を手にとり、こつんとおでこでひびを入れ、 片手で割ると舌の上へと中身を乗せて、 ごくんと呑み込んで見せる]
櫻子さんも、召し上がりますか? あまり、お行儀はよくありませんが……
[腹の足しにもなろうかと、1つ取り出し問いかけた 産みたての卵は、濃厚ですよ そんな言葉も、言い添えて。
櫻子が望むなら、彼女のおでこでこつんとやって、 その舌先へと落としてあげたことだろう]
(188) 2017/11/24(Fri) 20時頃
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卵の白ぃろいところからは、 メレンゲという菓子ができるんですよ
[どちらにしろ、抱いた卵を撫でながら、 どこか遠くに微笑みを送る]
甘くて、雲のようにふんわりしていて 焼けば、香ばしい風味も帯びて――――
[そこまで言って、口をつぐむ この村で、あの菓子を作れたものなど、いたことか 村の多くの者が、まだ生まれおちる前のもの、 遠く彼方の地の記憶をもとに、話してしまうことも、ままにある]
ときに、櫻子さん――――
[だから、強引に話をすりかえ、 はぐらかすように、問いかけたのだった*]
(189) 2017/11/24(Fri) 20時頃
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―道中・弐―
お腹の赤子はどなたの子種か、 目星はついていらっしゃるんですか
[急いで用意してしまったせいで、はぐらかしの問いかけは、 我ながら節操のないものとなってしまった 櫻子からは、どんな答えが返ってきたのか 江津子は そうですか と受け止めて、 やがては、こう伝えたことだろう]
お産にあたり、不安になったり、怖くなったりしたときは、 遠慮なく、誰かの傍に、寄り添ってくださいね
[もしかしたら、これはゆりの言葉>>0:22の言い換えで、 すでに、さしたる心配はなかったことかもしれないが]
(190) 2017/11/24(Fri) 20時頃
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ご近所の方でも、ゆり様でも、私でもいいですが できれば、殿方の傍らに…………
[出産とは切り離せない、つきまとう『死』の影に、2度、怯えていた自身を思う 薬師の力でも打ち消せないあの不安も、 寄り添ってくれる誰かがいれば、少しは和らいだだろうか 『力になる人』>>162や『愛』>>184を交わせる人が、 もし、傍らにいてくれたなら
それに――――と、付け加えたのは、 少し、言い訳めいた言葉だったのかもしれない]
育まれていく過程に立ち会えぬことは、 殿方にとっても、寂しいことのように、思うんです
[子に愛着を抱かない櫻子>>0:108には難しかったかもしれないし、 実際この村の男たちがどう思っているのかまでは、 江津子にはうかがい知れぬことだけど
遠くに見えた社の姿は、徐々に大きくなっていく*]
(191) 2017/11/24(Fri) 20時頃
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―たどり着いた神社―
ゆり様 櫻子さんに朝餉を馳走いただけないでしょうか
[神社にたどり着き、声を送る 奉納として、丞に渡す1つ以外の卵を添えて、願い出る ゆりや、志乃は、まだここにいただろうか 1人となった志乃がこの場にいたならば、 誰かとともにいる姿に、微笑みと目礼は送ろうが それ以上、声をかけることはない]
櫻子さん 猫さんは先に洗って差し上げますね
[猫を受け取り、櫻子を託す
たとえ、江津子も一緒にとのご慈悲をもらえたとしても、 それは、こう辞していたはずだ]
(192) 2017/11/24(Fri) 20時頃
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『容さんが、本日も料理をされています>>0:238から 感想をお伝えする、お約束をしていますから』
[ゆりの姉であることを思えば、 こんなことも、口にしていたかもしれない]
『容さんのお料理からは、 いつも幸せを授かっておりますよ』
[もっとも、この約束に固執しているわけではない 出会えなくとも、石女>>93の自分が食事を抜いて、 それがなんだというのだろう ただ、交わした言葉を覚えていたから きっと、多分、それだけだ
血濡れた猫は預かって、手水で流して整える 濡れた猫をその場に残せば、神社を立ち去ったことだろう**]
(193) 2017/11/24(Fri) 20時頃
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――>>85>>86ユリと――
そっか、相変わらずか…… 変わりなくて良かったのかな。
[一人で神社にいるユリさんにお姉さんの話でも切り出そうかと考えたけれど、その前に質問がきてケホっと一咳で言葉を濁す。]
けほ、けほ…… え、えっと。 私、孕むどころか共にしたこともないよ。
[拒否と言うよりは不安や恐れと言った感情だけれど、初めてでの痛い記憶は健常な時も拒み、今は火傷痕でさらに拍車をかけてる。 巫女の務めを果たしているだろうゆりさんと比べれば私はまだまだ子供、それならと志乃は食べながらゆりに聞き返す。]
(194) 2017/11/24(Fri) 20時半頃
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ゆりさんは、するときどんなこと考えてるの? 今もだけれど… 私最初の時からもう終わってとしか考えられなかったから、 子供のためでもしたくないなって考えてしまう。
[自分から頼んでおいて原因になってしまっているリツ兄には悪いとは思っている。後をずっとひいてはいるけれど、それだけに経験がないから彼女に聞いてみる。 ミナカタさんは幸いにも求めてはこなかった、迫ってこなかったのはある意味良かったと思っている。 荒れてた時期に見返りのない治療が今の信頼につながったのだから。*]
(195) 2017/11/24(Fri) 20時半頃
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琴弾き 志乃は、メモを貼った。
2017/11/24(Fri) 20時半頃
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[>>194咳き込む志乃の反応があまりにも可愛らしくて 私は思わず食事の手を止めて、微笑むのだった]
あらあら。 志乃はまだお子さまなのですね。
[旧友をおちょくる姿は、 尊敬を集める巫女の欠片もない。 おかわりはいりますか、と志乃の膳を受け取る。 誰かと食事を共にするのは久しぶりだ。 だから私は、胸の内に過った疑問に蓋をする]
(196) 2017/11/24(Fri) 21時頃
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[志乃の答えを聞いて、安堵したのはなぜだろう]
(197) 2017/11/24(Fri) 21時頃
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[考えてはいけない。私は巫女なのだから]
どんなことを、考えている。ね。
[首を振って志乃との会話に集中する。 思い出すのは、先日のミナカタとのまぐわいであった。 そっと胎をひと撫でする。 子種を注がれる熱い感覚が、鮮やかによみがえる]
誰かに必要とされて嬉しい、かな。 村人のみんなが、私の“お清め”を望んで 夜な夜な神社を訪れるの。
私がこの身をささげることで、 誰かの悦びにつながる。
それに勝る幸せはないわ。
(198) 2017/11/24(Fri) 21時頃
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[巫女としての模範解答を述べてから、少し間をおいて]
巫女としての勤めもあるけれど、 私は誰かと“ひとつになる”瞬間がとても幸せなの。 自分はひとりじゃない、と感じられる。
[そうして志乃の言葉に、少し口を尖らせて>>195]
あらあら、子孫繁栄を司る巫女からすれば 聞き捨てならない台詞ですね。
[冗談めかして言ってから、頬を緩めた]
(199) 2017/11/24(Fri) 21時頃
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例えば……そうね。 志乃に分かりやすく言うと。
自分を求めてくれる男性に抱かれて 子を為すことができたら、女として幸せでしょう?
きっとそういう単純な話よ、これは。
[孕み子を産む自分を想像する。 昨日のミナカタとの行為で私が孕めば、 きっと焦茶色の髪を持つ可愛らしい子が生まれるのだろう。
――頭に浮かぶのはなぜか、幼い日の姉の姿だった*]
(200) 2017/11/24(Fri) 21時頃
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巫女 ゆりは、メモを貼った。
2017/11/24(Fri) 21時頃
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―― 村の路を歩く ――
[歩に合わせて袂が揺れた。 >>182“ミナカタ様”よりの賜りものが布の合間で跳ねる。 「変わらない」との言葉、 分別のない悪童>>183にかけられるような言葉へも まとめて呵々と後ろ手をふるう。
路傍の邂逅はかたや過ぎた昔を思わせて、 かたや>>184「この歳になって」の現実を引き戻し。]
あれがそう言うなら 悪巫山戯でも墨に残すはしないがね
[恋でなかろが思い強いは事実だろう。 どちらにせよ記録に残す類の、生きた、死んだ、流れたではないのだ。帳面の賑わいになることはないだろう]
(201) 2017/11/24(Fri) 21時半頃
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[たった、 た、 小気味いい足音は常通り。 >>107小屋に下がった干し柿の横を過ぎる。 歩みの滞ることはない、 手を伸ばせども自分の背丈ではどうせ届かぬことは知っているし、 ―― おにの吊るした柿の首だ。 手を伸ばしでもすればお零れに預かっている子供らが騒ぐ。]
(202) 2017/11/24(Fri) 21時半頃
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[餓鬼か幽鬼か。
骨の浮き出ているに違いない体躯で刃研ぎの音をさせるその姿は、硝子板越し遠目に見て、そう思わせたもの。 男が見た目相応の年齢であった時分に刃研ぎの姿をみていれば、それこそ地獄の餓鬼だと口にしていたのだろう。
「きさらぎ」を、名にし負わば、かくもありなん。 あれが研いだものに何がこめられてようと不思議だに思わないが、とかくよく切れる。肉を断ち、骨を断ち、――あるいはそれ以上を断ち切ろう。その手腕が一目置かれているのは周知のことだ。
見上げた干し柿を通りこし、そしてまた歩んだところで]
(203) 2017/11/24(Fri) 21時半頃
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