213 舞鶴草の村
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座敷守 亀吉は、メモを貼った。
2015/01/23(Fri) 22時半頃
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― 街のどこか ―
くそッ、どこだ…
[弐区の楽屋へ行けばまだ鏡は帰っていないと言う 日は暮れていて、辺りは夜の明かりが灯っていただろう。公演は終わり、明日も朝が早いと言うのに関わらず、どうにも抑えきれない胸騒ぎを抱えて男は小走りで駆けていた]
人も、時間も、建物も…
[もしかしたら、心も じゃあ自分が盗まれた物はなんだ?劇に必要な能力も、ここしばらくの公演も何も問題が無かった 自分の生き甲斐である演劇が、公演が全て自分の“宝”だとしなかったのなら]
『一座の宝』、か…
[足の疲れと、体力の意味と。駆ける速さを緩めればふと、言われた言葉を思い出す]
(115) 2015/01/23(Fri) 22時半頃
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馬鹿が…。そんなの、俺も同じ事を――
[ふと、そこまで言ってから気が付く 彼が盗まれて居ないのなら、自分にとっての宝は彼では無かったのか。演劇よりも、人よりも大切な物とは?]
思い、出せない のか……
[ゆるゆると歩く速度は止まり、一度俯いてから空を見上げる 満点の星空は嫌というほど輝いていて。ふと辺りを見回せば暗がりで自分に気がつかないのか人の視線は感じなかった]
――懐かしいな
[過去の話 誰も自分の事を見ていなくて。劇に出ても脇役だった頃。生まれから励んでいても実らなかった才能。それがいつからか、人気になり、街を歩けば人が振り向くような。それに慣れてしまって]
しかし、よく続いたものだ いくら生まれが役者でも、道はあったのにな
[どこかで見た小僧のように、どこかで見た酔っぱらいのように。それから、もしかしたら誰かのように、金にうるさく そんな生活だってあったかもしれないのに。自分の根気で続くような仕事でも無いのに]
(116) 2015/01/23(Fri) 22時半頃
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――不思議だ
[不思議、だろうか ふと、胸が苦しくなる。空いた穴が塞がらない。抜けた何かが埋まらない。一体どうして、自分はこんな事を続けていたのだろうか]
盗まれたもの、か 思い出せないのに思い出せだなんて、一休でも無理だろう
[ふっ、と呆れたように溜息を吐いて 鏡は大丈夫だろうか。おもんから貰った情報を教えてやらないと。なんて心配をするが、いつの間にか道に迷ってしまっていたようだった]
帰るか…
[今日は、久しぶりに手作りの飯が食えるんだ。どうせ帰れば待ってましたとばかりにあいつも居るだろうと 暗くなった道を、明日の演目はなんだったか。どんな役だったかと思い出しながら帰ろうとして――]
…なん、だ?
[ふと、懐に手をやれば見た事の無い櫛。それは女性のもので、女形をする鏡が使っているのを見たことも無い それに、自分が使うにしてはやけに古びていて、少し欠けている部分もあった]
(117) 2015/01/23(Fri) 22時半頃
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これは、一体――
[そう、思考を巡らせてからものの数秒。意識は暗転する 何が起こったのか、それを男に理解する事は出来なかっただろうし、周りの者が偶然にも自分を見ていない時で、“気が付いたら居なくなっていた”だろう**]
(118) 2015/01/23(Fri) 22時半頃
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― 回想/壱区 ―
あァ、従姉弟……、 話には聞くけれど――、中々の“綺麗どころ”だとか。
[女と見間違えてしまうほどの美形となりゃァ、見世に置いても金になりそうだ、と目を細め。 江戸の女を虜にする美形は――従姉弟に御執心となりゃァ叶わないねェ。]
残念ながら。 何が盗まれたか分からないし、検討もつかないのさ。
思い出せってェくらいだし、 何か忘れているのかもしれないが、心当たりがない、
[そもそも忘れているものをどうやって思い出せ、っていうのか。いや、優先順位は鼠を捕まえる方が先だ。 奴を捕まえて千両を頂戴した上で盗まれたものを何か口を割らせてやればいい。 相手が満足したようであれば口元を緩め、またご贔屓に、と。
その背中を視線で追ってはくるり、と壱区の外れの川の方へ。]
(119) 2015/01/23(Fri) 23時頃
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ちっ…!どこにいやがる…!
[鼠小僧を探して、辺りを走り回る。 この近くにいるはずだ、全部が本当なら。 あの、あの一瞬の記憶。そこから、まるで広がるように。 きっかけの記憶は、より鮮明になって。 ……あれは、俺の最後の仕事だった。報酬のない最後の仕事。 俺ぁあの家の家主を殺した。家主は俺の雇い主だった。 そいつを、俺ぁ殺したんだ。 そして、そこから思い出した。俺の大事なもの。 人気のない路地で、俺ぁ叫ぶ。]
鼠!出てこい!俺ぁ思い出したぞ!
[俺の、誓いの証。それこそが。]
さあ返せ!俺の刀ぁ!!!
(120) 2015/01/23(Fri) 23時頃
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