64 色取月の神隠し
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『にしても、ほんと、あきのしんは何て言ってるのかねえ。 友達ができたって、あんなに喜んでたのにさ』
[何がなんだかわからない様子の一平太を眺めつつ、鵺に囁く]
『慰めてくれる筈の兄貴分は、いいヒトができて夢中だろうし』
(27) 2011/09/19(Mon) 23時頃
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[問いに返ったことば。>>13]
“あやかし。”
[真面目な表情とその声色は、不思議と静かに見えた。 声なき声でいちど、にどと繰り返す。 ふと芙蓉の声に振り返り、彼女を見詰めて瞳を細めた。]
“軽業とも手妻とも違う業だけど、 ――私は、ただの人間なんだよ。 力を持っているのはこっち。 御婆ちゃんから御爺ちゃんに、 それから最後に私の手に渡ってきたこの櫛。”
[熱の篭った声に眉を下げて微かに笑む。 軽くあたまを下げたのは、賛辞への礼。]
(28) 2011/09/19(Mon) 23時頃
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>>25 [傍にいるであろう日向を振り返り 静かな落ち着いた様子に、伸ばしかけた手をはたと止めて 薄茶の瞳が促すように微笑むのに、眉の下がったまるい笑顔を向けた 日向の手を取って一歩、一平太のほうへ歩みかけ]
日向ちゃん、が。 呼んでくれたの。 声が、聞こえた、でしょ。
[日向の声、は、隠世と現世を繋ぐ声 その狭間で届くように 現世での声を失ったは、その力のせいなのだろうか、と たまこは声を詰まらせながら、一平太へと呼びかける]
(29) 2011/09/19(Mon) 23時頃
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[強い想念が宿った古き品が九十九を生むと聞く。 しかし、この櫛はたまこの簪のように、あやかしをこの世に顕現させはしなかった]
“だけど、”
[切った言葉の続きを中々文字に出来ず、 幾度となくそうしたように、土の上で惑う枝先。]
“……ん そうだね。 こんな力を使役できるということは、 藤之助さんの言うとおり、なのかも知れない”
(30) 2011/09/19(Mon) 23時頃
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[>>25日向さんがいる。 そして促された視線の先に>>26たまこ姉さんがいる。]
戻って―来たんだね。 僕は。
[目の前で消えるのを見たであろう彼女がそこにいる。そして日向がそこにいる。
しかし表情は、心情はとても複雑で。]
そうだ、僕は戻ってきたんだ。 神隠しから戻ってきたんだ。
[同じ言葉をもう一度繰り返す。 それは、即ち同時に。]
明之進…くん。
(31) 2011/09/19(Mon) 23時頃
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>>13 [ぞくり、と背筋を冷たいものが走る たまこは、喜び勇んですっかり頭から消えていた 藤之助の問いかけを思い出す]
…いやだ。 藤之助さん、なに、言ってるの。
[半分笑ったまま、けれど少し震える声で、ふる、と首を振った]
(32) 2011/09/19(Mon) 23時半頃
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ねえ、いっぺいた。
[明之進の名を聞き取れば、少年へと呼びかける>>31]
ひなたが言ってたよ。 あんたが戻りたい、行きたくないって思ってるんなら、連れ戻せるって。
あんたが、こうして戻ってきたってことは、 無理に連れて行かれてたのかい? あきのしんと行くのは、嫌だったのかい?
(33) 2011/09/19(Mon) 23時半頃
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>>29あれは日向さんだったんだ。 聞いたことの無い、すごく綺麗な声だった。
手を、もたれてそのまま…戻ってきた。 気付いたら此処に。
[言葉はゆっくりと語られている。]
(34) 2011/09/19(Mon) 23時半頃
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>>16
[パン、と手を叩く音と笑い声に、びくりとして芙蓉のほうを向く 怪訝な顔で、その様子をじっと見つめた]
芙蓉さん…?
[近づきかけた一平太へ背を向け立ち、 手を引こうとした日向をそっと引き寄せようと たまこの腕が宙を掻く]
(35) 2011/09/19(Mon) 23時半頃
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何って……? 己は事実を述べただけだよ。
[>>32ふるり首を振り、怯えを隠せない様子のたまこに にたりと笑い]
望むと望まないと日向ちゃんは、もう人の子じゃいられない。 それはおたまちゃんにも、分かっているんじゃないのかなぁ。
……いや、芙蓉の言う通り おたまちゃんや、一平太くんだって、もう――
[>>22芙蓉の視線を受けて、人の子たちの裡を毒を滴らせる]
(36) 2011/09/19(Mon) 23時半頃
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[それは、力を手にした三人に向けた芙蓉の言葉への返答にもなろうか。>>22>>30]
“それでも……特殊なのかな。 ………こういう力も、あやかしも、自分がそれに近いといわれても、 そりゃ 驚いたし、不思議だとは思うけど、 やっぱり身近すぎて 恐いとか変だとか思えないの。”
“人間とあやかしの境界って、なんだろうね”
[たまこの反応は自身とは違う。>>32 其処にあるのは明確な怯えで、恐らくはそれが自然なのだろうとも、思う。静かに文字を土で覆った。]
(37) 2011/09/19(Mon) 23時半頃
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たまこは、一平太を振り返り、もう一度芙蓉を見た。
2011/09/19(Mon) 23時半頃
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[たまこに手を引かれ、一平太の方へと一歩、踏み出す。>>29 気掛かりであった問いは芙蓉の口から問われ、微かに緊張した面持ちで彼の表情を窺う>>33]
[道を往く彼の声音に、はっきりとした拒絶の色は無く。 判断しあぐねて意見を求めに走ったくらいなのだから、 現世に戻ること、それが彼を連れ去ったあやかしは元より、一平太の本意でないことも有り得ると分かっていた。
それでも、たまこの強い意志に動かされ、後押しするように隠世への道を覗いたのは自分だ。]
(38) 2011/09/19(Mon) 23時半頃
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[あやかし、と呼ばれた娘は、薬売りの賛辞を受けて、小さく笑んだ>>28 何やら文字を綴ってから、櫛を捧げ持つようにして、こちらへ頭を下げる仕草。
それは落ち着いたものだったけれど、やはり戸惑いを見せ>>30
怯えるたまこを見つめてからは、また、静かに手を動かした>>37 そんな日向を評して、囁きを送る]
『あんたの言う通りだね、藤。 ――強くて、面白い子だ』
(39) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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あなたは…? 何で明之進君を知ってるの…?
[>>33女性の問いは尤もと言える。しかし、自分は彼女を知らない。傍に居るようである男も。]
僕は―アヤカシに会うことを望んでいなかったわけじゃない。寧ろ、望んでいたんだと思う。
[しかし、独白は行って。きっとアヤカシを知っている女性もまた、アヤカシなのだろう、そう思った。]
(40) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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何で、って。
[一平太の問いに、怪訝な表情になったが>>40]
知り合いの辰次ってのが、たまたまこの村に来ててさ。 あきのしんとは、そいつの伝手で知り合ったのさ。
――なんて、ねえ。 今言ったのは嘘じゃ無いけど、あきのしんから、聞いてないのかい?
あたしは、あきのしんがあんたを気に入ってたのを、知ってるよ。 仲良しの友達ができたって、一緒に里へ帰れるって、喜んでたのを、ね。
[そう言って、穏やかな笑みを向けた]
(41) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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奪い返す、なんて。そんな恐い言い方… …一平太ちゃんは、明ちゃんのものでも、わたしのものでも、ないし。
なんで連れてかなくちゃいけないの?
わたしだって、明ちゃん…友達ができたって思ってたよ? 悪いあやかしだなんて、今も思ってないよ。 だけど、勝手なお願いって、わかってても、 わたし一平太ちゃんがいなくなるの、いやだったんだもの。
(42) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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もう誰も、いなくならないで、ほしいもん…
[だんだん、声が震えるのを止めることはできなかった 日向とは反対に取り乱す様子はあやかしたちにどう映るのか]
[それと知らぬたまこは、じり、と後ずさった 芙蓉や藤之助が、あやかしを畏怖する人間であれば 日向を、それだけでなく、自分も、一平太も 追い詰められ、危害を加えようとするのかもしれないと]
(43) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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でも、そうかい。 じゃあ、明之進と行くのは、嫌だったわけじゃないんだね。
[一平太の答えを聞いて、頷く。>>40 それは日向やたまこを責める響きではなく]
……安心したよ。
(44) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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[日向をちら、と見れば、落ち着いた様子で地面に綴る返答があった]
日向ちゃん、恐くないの… この人たち、わたしたちを捕まえようとしてるん だ よ。
[と、言いかけて、えっ、と顔を上げる 一平太の問いに応える、芙蓉の言葉に、まるい瞳をもっと大きく見開いた]
里…? 知ってる…?
[言葉の意味を、飲み込むまで、少し時間がかかった]
(45) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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そう怖がらないどくれよ、たまこ。
[不安げな様子に、苦い笑みを向け]
あたしはね、あんたやひなたのことが好きなのさ。 ――本当だよ。
[簪に潜む九十九へも、それは聞こえているだろう]
「よそ者」のあたしらにも、親切にしてくれた。 団子をくれてさ、雉を焼いてくれてさ。 ああ、店に来てくれて、喋ったのは、楽しかったねえ。
[語る眼差しは、柔らかく]
(46) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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明之進君と友達になれて、それでアヤカシだって聞いて本当に嬉しかった。アヤカシと行けるというのは、嬉しかった。
でも、やっぱり、行く時は。 たまこ姉ちゃん―心配だった。 残されていく人が、心配になったんだ。
[連れて行くと言った瞬間。短い時間の中で喜びと不安が重なって。ある種の覚悟を決めるまでずっと戻りたいと行きたい、入り混じった思いが、流れ出ていた。]
(47) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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人の子は知らないものを恐れ、分からないものを爪弾いてきた。 それは遥か昔から変わらないし――きっと、遠い先にも変わることはないだろうさ。 [永い歳月を、人の子の傍らで積み重ねた鵺は告げる]
だから人の子はあやかしを恐れ、あやかしは人の子に恐れられる。……それこそが両者の境だろうね。
(48) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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たまこは、芙蓉を見たまま、ぽかんと、口をあけて、固まっている。
2011/09/20(Tue) 00時頃
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ああ、そうだ、いっぺいた。 あたしの名を、名乗ってなかったねえ。
あたしは、芙蓉。
[立ち上がり、一同を見渡して]
あんたたちの言う、あやかし、さ。
(49) 2011/09/20(Tue) 00時頃
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たまこは、芙蓉を見たまま、ぽかんと、口をあけて、固まっている。
2011/09/20(Tue) 00時頃
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>>37
……そうさ、人の子は普通、おたまちゃんのように 己たちみたいなを得体の知れないのを恐れるものさ。
[>>43怯えの色を隠せぬまま、後じさる たまこを引き合いに出して] けど、日向ちゃんが それでも尚、怖じずにいられるのは何故だと思う?
簡単だよ――日向ちゃんは人の子でありながら、既にあやかしに近いところに立っていたからさ。
(50) 2011/09/20(Tue) 00時半頃
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僕の勝手な推量だけど。明之進君は前に、同じような―似たような別れをしたんだと思う。
さよって、多分女の子の名前。 みたいに、いなくならないで、って聞こえた…。 [そんなことを、あの狭間で聞こえていたのを覚えている。]
僕は帰ってきたかった。間違いないと思う。 だってたまこ姉さんの顔見たとき、すごい嬉しかったんだ。心配させてごめんって、ごめんって…帰ってこれたんだって。
でも、どうしよう、僕はまだ明之進君に何も言えてない…!思いを伝えられてないんだ!
[安堵、後悔、他入り混じる暴発が、涙を誘発させて。 ひたすらに、涙を零した。]
(51) 2011/09/20(Tue) 00時半頃
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いっぺいたは、あきのしんと一緒に行くのを、喜んでくれたんだろう? でも、たまこを残していくのは心配なんだね。
たまこは、いっぺいたがいなくなるのが、いやなんだね。 あきのしんのこと、今も友達だって、思ってくれるんだろう?
だったら、さあ。 ふたりとも、一緒に隠世へ来ちゃあくれないかい。
[たまこと一平太へ、交互に視線を向けながら、誘う]
(52) 2011/09/20(Tue) 00時半頃
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一平太は、芙蓉の名を>>49涙目になりながら覚えた。
2011/09/20(Tue) 00時半頃
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[恐れるのは、知らぬから 知らぬもの、わからないもの、理由のつかない災い それらを恐れ、なくそうとするのが人の子]
>>48
じゃあ…お互いに知り合えば…? これまでがそうでも… わたし、もう知ってる… あやかしが、恐いばかりでないって。
[藤之助の言葉に、誰に言うともなく呟いて 呆然としていた表情を徐々に戻す]
>>46 [芙蓉の言葉は、ゆっくり、たまこの心に染み込んでいく]
わ わたしも 楽しかった。
(53) 2011/09/20(Tue) 00時半頃
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いっぺいた……あんたも、優しい子だね。 あきのしんのために、泣いてくれるのかい。
ねえ、でも、泣くことはないんだよ。 もう一度、会いに行けばいいじゃないか。 こんどはたまこも連れて、さ。
そうしたら、あの子もきっと喜ぶよ。 もう、寂しくなくなるんだもの。
[ぼろぼろと涙を流す一平太に、手ぬぐいを差し出した>>51]
(54) 2011/09/20(Tue) 00時半頃
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……そう言えば。 日向ちゃんは己の本当を見たいと望んでいたっけ。
一平太くんは秋月の旦那の弟子らしいから、興味はあるのかな。 けれど、たまこちゃんには刺激が強いかもしれないねェ。 [哂う鵺の眸から、ごぼり闇が零れた。 森がざわめき、ひょう、ひょうと虎鶫の不吉な啼き声が響き渡る]
(55) 2011/09/20(Tue) 00時半頃
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[明之進や辰次との繋がりを芙蓉が語れば、 薄茶は仄かに驚きを乗せるが、直ぐに眼差しは柔らかに]
“芙蓉さんが、あやかし……”
[怖くないのかと問うたまこには、 曖昧に眉を下げて、先刻消したばかりの文字跡へと目を落とした。 捕まえようとしている、その言葉に懐疑的であったためだろうか。]
(56) 2011/09/20(Tue) 00時半頃
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