194 花籠遊里
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── 書斎 ──
[哀しげな雨の微かな音に、僕は目を覚ましました。 『おうじさま』の接吻けなんてありません。 櫻は緩やかにその射干玉を、数度瞬きさせます。]
………さ …む ぃ。
[寝起きは直ぐに動けない体質です。 瞬いたあと、散らばる本をじいっと見詰め 表題を読むでもないのに眸を滑らせ 埃ゆるやかに舞う書斎を、暫くぼやりと視線泳がせておりました。]
(26) 2014/09/19(Fri) 22時半頃
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悪戯事と言うには到底及びませんが。 ふふ、ヘクターさんに認めてもらえたのなら嬉しい限りです。
[家庭教師に勉学の成績を褒められたときのような仕方で、ヘクターの言葉>>24を喜ぶ。
まるでこの館に相応しくない笑顔を金糸雀が纏い続けていられるのは、まだ宵の暗さに染まっていないためか。 それともその微笑みこそが不幸を知らぬ生が育てた確かな甘い毒であるためか。]
では是非…ご教授願えませんか。先生?
[美しい人と謂われたのなら、 薄い瞳を嫣然と眇めて毒蛾を先達呼ばわり。
甘い毒は苦い毒に教えを請うた。]
(27) 2014/09/19(Fri) 23時頃
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―→書斎―
[自室に籠る気分にもなれずに、どうせなら静かな場所へと足は自然と書斎へと向かう。
一度中に入ってしまえば誰の声も届かなそうな静寂。 それでも霧雨の音は微かに届いたか。
ひとつため息をついてから、適当な書物を手に奥へと向かえば。
ぼんやりと微睡む桜を見つけただろうか。>>26]
…櫻子、こんな場所で寝てると風邪をひくぞ。
(28) 2014/09/19(Fri) 23時頃
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[ぼんやりとまだ射干玉の眸が宙を見詰めておりました。 窓辺から差し入る月光も、今宵の泣き空では難しく 薄暗い部屋の中から見詰める廊下は 四角く切り取られたように、蝋燭の灯で彩られておりました。
廊下からやってくる気配に、その射干玉を向けます。 何方でしょう? 薄らとした意識は、記憶に重なる陰を幻に見ては何かを紡ごうとして動きます。 けれども言の葉になることを知らぬまま ゆうるりと首を傾げて、やってきた『花』を見上げました>>28]
お、ぼろ…… さん。
[いつもほやほやとしている声は、殊更のことでありました。 見上げて、見詰めた朧月はどこか陰っているようにも思えます。]
どうか、なさいましたか?
[首を傾げては訪ねてみるのです。]
(29) 2014/09/19(Fri) 23時頃
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[普段と何ら変わらぬ顔で、花は館の廊下を歩む。
昨晩、もっと、と強請った金色の蝶。>>19 彼は今日も、この花籠へと来ているのだろうか。
蝶に満足を与える事こそ花の使命と、激しさは言われるままに。 余裕の無い貌は、彼の中に果てるその刹那に。 優しさを全て取り払う等とは、きっと出来はしなかったけれど。
夜抱く熱とは正反対のように。 しとりと濡れた窓は、肌寒さを感じさせた。]
(30) 2014/09/19(Fri) 23時頃
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花街遊楽覚えても、性根が捻れちまうだけだが、 お前さんは火遊び程度で満足しない性分。そうだろう?
[彼の喜悦は難解なれど、上流階級らしい育ちの良さを無下にする男でなし。>>27 彼は自身をこの花籠より浮いた存在だと判じているようだが、中々どうして、欲深さたるや一目を置かざるを得ない。
今もこうして誘い文句を遊ばせる彼に、喉の上下が収まらず。 霧雨に冷えた指先を彼に向かい伸ばした。]
夜の深さを、人の挫き方を? 止せ止せ、月のない夜に刺されちまうぜ。
[口では咎める素振りを見せながら、指先を彼の耳横について、廊下の壁へと彼を追い立てる。 静かなる軟禁は、花にする暴力的なそれでなく。 されど、対等であるはずの彼へ教える上下間。
視座の変わらぬ眼差し触れ合わせ、首を僅か傾ける。]
―――…それとも、心の遊ばせ方を? 情熱を知らず、毒に過敏なる籠の鳥よ。
(31) 2014/09/19(Fri) 23時半頃
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― 廊下→中庭 ―
[ごつりと一際大きく踵を鳴らし、開けた場所に出たならば。 硝子戸の先に透き通る曇天を、霧雨を。唯一瞥しては湿る髪先を揺らし。 急いで来る間に跳ねた水は脚を濡らしているだろうが――そんな事は、如何でも良く。 今宵も夜に咲く淡藤が、誰にも取られぬ様にと焦りの向こう側。 館の入口にて宵闇に聲を掛けられた事は、記憶に新しい。]
(32) 2014/09/19(Fri) 23時半頃
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――…今日は、部屋に居ると良いけど。
[仄暗い廊下を雨音を背曲に歩むのは聊か億劫だと、自分本位に胸中を染めながら。 銀月の沈む籠の元へと視線を向け、足音を響かせようと片足を宙へ浮かせた時に出でる彼の月儚気な月>>23
何を慌てているのか、それとも気でも狂ったのか。 急ぎ足にて硝子戸を引いた彼は、夕暮れ時の霧雨の中、ただ立ち尽くし。 思わずに唇を情けなく開いてしまったことは、隠す事も無く。]
…ねェ、何してんの
[未だ呆ける頭を飾ったまま、引かれた硝子戸から焦り月を覗けば、ぱちりぱちりと上瞼は下瞼を叩く中問うた。
傘を持たぬ手は月を雨から守る術を知らずに。 肌寒さの為に一枚持って来た羽織物を脱いだならば、それを被せ様と庭先に爪先を伸ばしたことだろう。
――常ならば雲上に在り濡れることも無い月が、その躯を濡らすなんて珍しいと、心中にからかいを乗せながら。]
(33) 2014/09/19(Fri) 23時半頃
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どうか……?
[櫻は月を見上げ問いかける。>>29 『何時も通りの日常』を過ごす朧の顔をしていたつもり、だったのだが。 その瞳に一体何を映したのか。
覚えは沢山あるせいか、無意識に書物を握る手に力が入る。 ちらつくのは、昨日見たきりの墨色と藤色。 具体的な何かを指しているわけでは無いと分かっていながらも過るのは、何故なのか。自分でもわからず僅かに歪んだ笑みを作った。]
どうも、してない。雨の音が煩わしくて逃げてきただけだ。 ……櫻子、
[同じ年頃の花の名前をなぞったところで音は止まる。 一体何を彼に問おうとしていたのやら。
今日の俺は、何処かオカシイ。]
(34) 2014/09/19(Fri) 23時半頃
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……?
[これといって、何が原因で気がついたなどと明確なことはございません。 そのお顔が『何時も通りの日常(もの)』ではないように思われたのです。 この花籠にて、長きを共にしてきた『花』同士でもあります。 仲のとてもよろしかった藤之助さんならば、きっと 朧さんが謂わずとも何があったのかまで気付けたことでしょう。
『何時も』なら優雅に微笑まれるお顔は どこか歪に、歪んでおられました>>34
続く言葉も、不自然さを助長してならないのです。]
……お座りに、なられますか?
[追求するでもなく、僕はそっとソファの隣を空けました。 散らかした書物は重ねて端に寄せましょう。]
(35) 2014/09/19(Fri) 23時半頃
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ええ。今まで知りませんでしたが僕はどうやら欲張りなようです。
[欲する前に欲しい物を与えられてきた人生の中では知りえぬ自分の一面。僕はその一面を嫌悪するどころか、むしろ益々自分のことが好きになったのだった。]
人の挫き方ですか? 僕は自分で兎の肉を捌いた事が無いのですよ。 いつも他人が捌いたものを食しています。 そしてこれからもきっと。
[姿だけで威圧感を齎す毒蛾に壁へと追い詰められても恐れは無く。>>31ただ距離が近づいたことに胸を高鳴らせるのみ。 見詰め合うには丁度良い位置にあるその顔ににこりと笑みを返す。]
心の遊ばせ方。ええその通りです。 僕には彼岸花の優しさだけでは物足りませんでした。
もっと別のものを、その奥にあるものを… そう求めずにはいられません。
[一字違いで毒に成り得る人の心の深さを。 あるいはその浅ましさを識りたい。]
(36) 2014/09/20(Sat) 00時頃
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[廊下を進む翳がある。 濁った空気を身に纏い、濡れた体は足音も無い。 窓辺に佇む焔を見つけて、男はそっと傍へと寄った。]
“丁”。
[ゆっくりと背後に立つ。 霧雨が落ちている窓辺より、冷えた空気が背を撫ぜるだろう。]
(37) 2014/09/20(Sat) 00時頃
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……あぁ。
[櫻子が空けてくれた空間に腰を下ろして息をつき。 手に持っていた図鑑は膝の上にでも置いておいただろう。
突き詰めて聞いてこないでくれるのは、彼の正確故にか己の寡黙ゆえにか。>>35 少なくとも、長い付き合いなために機嫌が悪いわけでは無いのは見て取れただろう。
少しの間、口の中で沢山の言葉を転がす。 どれも本来なら『花』へと投げていい言葉では無いものばかり。 しかし自分一人だけでは迷路からは脱出する事はできずに、その苦悩は小さく音となり。
そういえば昔。まだ己が花としての知識教養が足りなかった頃、同じ問いかけをした事があったかもしれない。]
櫻子は、自分が『花』であった事を後悔した事はあるか?
[櫻子は、自分が今知る中で最も『花』らしい花は。どんな反応を示したか。]
(38) 2014/09/20(Sat) 00時頃
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……花主様。
[低く呼ばれる聞き間違うはずの無い音色。>>37 かけられる方向を向けぬは何の圧力か。 冷えた空気は傍へ、されどじっとりと纏わりつく悪寒を伴って。
前方に、誰の影も見えずとも、取り繕った笑みを浮かべるは、花ゆえに。]
何か、御用がお有りでしょうか。
[声は日頃に異ならず。 染み付いたるは、花籠じみて。]
(39) 2014/09/20(Sat) 00時頃
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懐刀 朧は、メモを貼った。
2014/09/20(Sat) 00時頃
半の目 丁助は、メモを貼った。
2014/09/20(Sat) 00時頃
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[空いた場所にお座りになる所作は、流石に崩れず美しいものでした。 遅咲きの淡藤に『花』の作法を教える先生でもございます。 優美なそれを射干玉に捉え、彼を見詰めておりました。
しばしの間、霧雨の音だけが響きます>>38 口を開かずあったのは先程、彼が僕の名前をお呼びになったからです。 名を呼ぶということは、何かを伝えたいときでございましょう。 そして名だけで止まってしまったということは なにか、言の葉になりにくい思いが胸の裡にあるからでしょう。
やがて舞い降りた一片に、僕は射干玉をまあるくします。
そしてまた少しの休符を添えた後に答えるのです。]
僕は、後悔を『した』ことはありません。
[謎掛けのような一言を落とします。 それから言の葉にはせず「あなたは?」と問うのです。]
(40) 2014/09/20(Sat) 00時頃
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─中庭─
[宵闇を切り裂くような琴の音がもう廊に響くことはもう無い。 いつかの約束>>0:263が果たされること無く泡沫に消えてしまったことに寂寥感が胸を過る。
いつか耳にした『花』の行方を脳裏に浮かべれば、鼓膜揺らすは一つの唄。>>0:278
あの日>>2:19言葉の意味を知ってからずっと。 胸に渦巻く約束は雁字搦めに身を捉えていく。
何をもって櫻の梢に『』はその言葉を伝えたのだろう。 何をもって櫻の梢は『淡藤』にあの言葉を伝えたのだろう。]
(41) 2014/09/20(Sat) 00時頃
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[霧雨は音も無く地を濡らし、水気を吹くんだ土はつま先を直に汚していく。 見上げた先には一向に晴れる気配のない灰色の空。
唯一外へと出られる小さな箱庭へ向かう際、月下蝶>>33の翅を視界に収めど一瞥も暮れずに。
ただ隠れた月を求めるよう視線は空へ。
背後から伝わるつま先の気配には]
──…此処に蜜はありませんよ。
[淡々と抑揚無く呟いては、空を仰ぐ。 雨に打たれ水気を含んだ髪は銀色ではなく、灰色。]
(42) 2014/09/20(Sat) 00時頃
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[足を踏み入れた花籠で知る本質。 求める前に与えられてきた傲慢さは己とは異なるが、 やはり、彼は親の世代の後に生まれた青い血の貴人。]
――…知っている、それがお前さんの在りようよな。
[蝶らしいと言えばそれまでだが、彼から覚える異質は、鱗粉撒いて拡げる翅だけに在らず。 ほんの少し上体を傾け、彼に迫る顔貌と落ちる影。>>36]
お前さんが知らぬものを余所に求めるとは結構。 しかし、奥ってぇのは――…、
[空の右手がスラと昇り、正装の上に至る掌。 大きく武骨な五指は彼の心臓を捉えて、淡く圧し。]
この奥のことだろう。
[人を暴きたがる彼に向ける言葉は訳知り顔。 撓る唇は弓形を描き、小さく喉を震わせた。]
(43) 2014/09/20(Sat) 00時頃
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座敷守 亀吉は、メモを貼った。
2014/09/20(Sat) 00時頃
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用がなくちゃ呼んではいけないのかい? 寂しいことをいってくれる。
[振り向かない花の直ぐ背後に立つ。 男の気配に、空気も一層冷え込んだらしい。 常日頃と変わらない、飄々として見せる声が耳に届く。 男はまた、ねっとりとした声音で嫌味たらしく囁いた。]
姿が見えたから傍に寄っただけだよ。 雨が降っては、寒くてねぇ。
[くすり。 喉を軽めに鳴らし、後ろから回す手先。 氷のように冷たい指先。 首筋へと、這わせ。]
(44) 2014/09/20(Sat) 00時半頃
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……いえ、そのような事は、決して。 唯、陽のある時間帯にこうして御声をかけて頂くのは珍しい、ので。
[背後の小さな笑い声が、空気を揺らす。>>44 冷たい感触が素肌に触れれば、背がびくつくのは反射。]
……冷えて、おられますね。 暖めなくては、風邪を引いてしまいますよ。
[植物の蔓が如く首に纏わった指先へ、そっと手を重ねた。 冷たすぎる温度に、じわりと熱を奪われる。]
(45) 2014/09/20(Sat) 00時半頃
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[そのままで取れぬような響きを持った返しに>>40暫しの間口を閉じ。 ゆっくりと瞼を下し、尽かぬ息をまた小さくはく。 こげ茶も蔦色と共にゆるりと揺れ動き、半分程瞼を明け映すのは美しい射干玉ではなく己の足元。
厚い雲は微かな月光さえも通す事無く。]
俺は、花である事に誇りも無ければ後悔も無かった。今までは。 だが、昨日は………止める事が出来なかった。 手を掴んで、もっとましな言葉を伝える事ができなかった。 俺もあいつも『花』であるがゆえに。
なぁ、櫻子。花は『大事な物』は何一つ、持ってはいけないのかもしれないな。
[それは彼に向けながらも朧の独り言にも近い言葉。 櫻子が聞いても何の事やらわからない言の葉に困らせてしまったかもしれない。 それでも誰かに聞いて欲しくて。今の朧は『花』としてなっていないと言われたかったのかもしれない。
『大切な物』を持つのがこんなに苦しい事だなんて、知りもしなかった。]
(46) 2014/09/20(Sat) 00時半頃
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[見詰めていた朧月は、ゆるりと瞼を伏せられました>>46 吐かれた息は『しあわせ』が逃げてしまうような呼気。 射干玉とは違うこげ茶色は、蔦色と共に揺れ やがて再び開かれたそのお眸は、足元を映しておられました。
連なるお言葉の意味は、よくよく考えても 僕にはわからないものでございました。 けれども幾つか判ることもございます。
朧さんは、何かを悔いておられるようです。 何かを悲しんでおられるようです。 何かに苦しんでおられるようです。 それは『大事な物』が、原因であるのでしょう。
そしてそれはきっと、藤之助さんなのではないでしょうか。 『あいつ』などと呼ばれる御方は、藤の花しか思い浮かばなかったのでございます。]
(47) 2014/09/20(Sat) 01時頃
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僕は、たくさん『大事な物』を持っておりますよ?
亀吉さんは僕が教える、大事な花のお一人です。 丁助さんは不器用ですが、気を使ってくれる大事なお一人で。 藤之助さんも、大事な甘いもの仲間ですし。 朧さんも、数少ない同い年の、大事なお人です。
中庭の花々だって大事です。 此処へ来ては花にとまっていかれる『蝶』も。
[話の内容がわからないだけに、何をどう伝えていいのか 僕に出来る限りの言の葉を、僕は口に致します。]
(48) 2014/09/20(Sat) 01時頃
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それらを捨てろといわれても、きっと僕には出来ません。
朧さんの『大事な物』は そんなに容易く捨てられるものだったのですか?
[指先をそっと、お膝の上に伸ばしましょう。 触れることを許していただけるのならば 慈しむようにそうっと撫でて、微笑むのです。]
『大事な物』を、なくされてしまったのですね?
(49) 2014/09/20(Sat) 01時頃
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[反射には、機嫌よさげに唇の端を吊り上げる。 口裂け女とでも比喩できそうな程。]
他の花なら声は掛けないさ。 お前はすこうし、特別だからね。 素直で可愛い沈丁花。
風邪を引くのは莫迦だけだ。 それとも何かい、お前が暖めてくれるとでも?
[重なる手から伝わる温度。 奪うよに冷えすぎた氷の指先が、熱を求めて掴む。]
(50) 2014/09/20(Sat) 01時頃
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この…奥?
[影が落ちれば毒蛾の表情は少しだけ読み取りづらくなって。 胸に圧を覚えながらのその言葉の指し示す意味に思い当たることがなく、微笑が固まる。
鳥籠の中のようなそこで生まれ育った金糸雀が、宵闇の蜜を求めて訪れた花籠で出会った毒蛾は真理を突いた。
なに不自由ない生だったはずなのに 何故鳥籠の外に蜜を求めたのか。 何を識りたいのか。
孤を描く唇に答えを探して視線を這わせた。]
(51) 2014/09/20(Sat) 01時頃
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左様で御座いますか。
[疑問符は幾つか。 其れを全て、言葉の隙間に押しつぶす。 訊く事を躊躇うのは、相手が籠の主であるがため。
冷えた冷えた感触に掴まれ、]
今宵は、花主様が丁を買っていただけるのでしたらば。
[欲する対価を素直に口にし、もう片方の指先を重ねる。]
(52) 2014/09/20(Sat) 01時半頃
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お前に買い手がつかないのなら。 “また”私が、教えてあげようか。
[冷えた手を首から離し、意味深に囁くは去る *間際*]
(53) 2014/09/20(Sat) 01時半頃
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――――――もう、男は“慣れた”かい?
(54) 2014/09/20(Sat) 01時半頃
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……いいや。 俺には『最初から』大切な物は無かったと、言い聞かせてはいるんだが。 捨てる事も忘れる事も、容易では無いな。
[朧に伸ばされた指先は暖かく優しい。 沢山の大切な物を両の手に抱える事ができる櫻と>>48 不器用で全てを手放そうとする月。
……同じ長い年月を過ごしてきた身にも関わらず、こうまで違うかと先程より柔らかな笑みと少しの苦い色を浮かた。]
無くした、のだろうな。この身じゃ探す事もできやしないが。 ……女々しいと笑うか? 一つ失くしたくらいで上手に振る舞えない、枯れてしまいそうな勢いの『花』を。 忘れろと言われたのに、最初から無かった事にできない月を。
(55) 2014/09/20(Sat) 01時半頃
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