162 絶望と後悔と懺悔と
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[なぁ。覚えてる?
サミュエルが野菜を育てていた小さな畑。 ちょっと楽しそうだからと、農家の人に種をわけてもらった。 畑の隅っこを借りて、サミュエルの真似をして世話をして。
でも、それは野菜じゃなくって花だったよな。 それを知った時、一緒に驚いてさ。 それから一緒になって笑ったんだ。
それから毎年一緒に世話をした。 今もあの花は咲いているかな。
また、一緒に見よう。これからもずっと。
本で調べたあの花の名前。 なぁ、覚えてる――?*]
(15) okomekome 2014/02/24(Mon) 03時半頃
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― キラキラ光るは ― [絢矢に貸し、絢矢が明之進に渡した軍服>>7:77>>7:83。 明之進の肩に羽織られただけのそれは、いつの間にか地面に落ちていた。
全てを見守ることなく、地面に落ちていた。 元の色を失って、黒く汚れていた。
その傍らには、二種類のガラス片。 大事に持っていた贈り物。
大事に持っていたのに汚れてしまったそれは、しかし朝の光を反射して、きらきら光って、其処に落ちていた。**]
(98) okomekome 2014/02/26(Wed) 04時半頃
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― 春の記憶 ― [まだ文字の読み書きができなかった頃。 絵本の世界は自由だった。
おかあさんに読んでもらって、暗記してしまった物語。 でも皆に読む時は、いつでも自由に作っていた。
ある時は美味しいものを探しに行く話。 ある時は動物たちと遊ぶ話。 同じ絵本でも、話は毎回違っていて。
いつだって、読みながらそのまま寝てしまった。 気づけば布団に運ばれていたけど、あれは誰が運んでくれたんだろう?
絵本の続きを夢の世界で皆で遊んだ。 暖かい、春の日差しの中だった。*]
(134) okomekome 2014/02/27(Thu) 00時頃
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― 夏の記憶 ― [川原に皆で遊びに行った>>97。 川のせせらぎ、光を反射するしぶき。
理依と周が取っ組み合いをする中、靴を脱ぎ捨て川へと走る。 冷たい水にはしゃいで、後から来た涼平めがけて水をかけた。 川の中で二人でびしょぬれになって、着替えを持ってこなかったのにと、安吾が困っていた。 そんなの二人には関係なくて、ただ楽しくて笑っていた。
それから、どちらともなく水切り勝負を始めた。 いつものように。
水面を跳ねる小石。 川原に響く、皆の笑い声。 それに混ざる草笛の音とせみの声。
暑い夏の、涼しい川原でのことだった。*]
(146) okomekome 2014/02/27(Thu) 03時半頃
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馬飼い キャロライナは、メモを貼った。
okomekome 2014/02/27(Thu) 03時半頃
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― 秋の記憶 ― [サミュエルが育てた野菜を収穫して、皆で料理をした。 リカルダと絢矢に揃いのエプロンをつけてやった。 真弓と並べば、カフェーの女給さんみたいだ。
どんな料理が良いか、零留に相談した。
たくさんの野菜を使ったご飯とおやつ。 匂いにつられて、小さな子らも積極的に手伝ってくれた。
手分けして切った野菜は、大きさも形もばらばらだ。 でも、それが美味しかった。 不恰好でも皆で作ったご飯。 その日は小さな子らも、野菜を食べてくれた気がした。
其処には美味しい笑顔が溢れていた。 よくある、秋の食事風景だった。*]
(150) okomekome 2014/02/27(Thu) 21時頃
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― 冬の記憶 ― [帝都に、何年かぶりの雪が降った。 初めて見る雪にはしゃいで。 たくさん積もれば良いな、なんてこっそり思ったりもした。
夜になっても止みそうにない雪に、ちょっと怖くなって。 夕飯を食べ終わってから寝るまで、ずっと円の手を繋いだまま窓の外が気になっていた。
翌朝すっかり止んだ雪に安心して、皆で遊んだ。 雪合戦で雪玉に当たってから避けるような明乃進の頭を撫でて。 女の子や小さい子、皆で遊べるようにと、雪だるまを作った。 周が作った雪だるまの顔が、妙におかしくて笑った。
はしゃぎすぎて、その次の日。 風邪をひいた。 理依に林檎食べたいと我侭を言ったっけ。
寒さなんて感じない、白い冬の日だった。*]
(151) okomekome 2014/02/27(Thu) 21時頃
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馬飼い キャロライナは、メモを貼った。
okomekome 2014/02/27(Thu) 21時頃
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― 訓練の合間に ― [孤児院では、身近な異性は「おかあさん」と姉妹たちだけだった。
だから、大人の女性であるジャニスに対して、初め持った感情は戸惑いだった。 女の子は守る対象。 しかし、ジャニスは守られるのではなく自ら守る女性。 戸惑いが憧れに変わるのに、時間は掛からなかった。
食堂で彼女が珈琲を飲んでいるのをよく見かけていた。 香ばしい香りのそれが、なんだかとても大人っぽく見えた。
少しでも近づけるかな、なんて思って初めて飲んだ。ら。 想像していなかった苦さに驚いて思わず吹き出して咽た。 尤も、隣にいた涼平の方が驚いたかもしれないが。
あんな苦い飲み物を飲める彼女が、またより一層憧れる対象になった出来事だった。*]
(152) okomekome 2014/02/27(Thu) 22時頃
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― ― [孤児院でのこと。 大好きな家族。 部隊で過ごした5年間。 寂しくても辛くても、家族を思えば耐えられた。
暖かかった、たくさんの思い出。 残された家族の顔。 取り戻そうとした、共に暮らす未来。 壊れてしまった。もう二度と取り戻せない。 手にしていたはずの温もりさえ、奪われてしまった。 希望を失って、伸ばす手の先には何もない。
何も、ない。
この世に残された身体からも、温もりは失われて。 霜がその顔に降り、溶けて涙の跡をなぞる。
そして。それっきりだった。*]
(157) okomekome 2014/02/27(Thu) 23時頃
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馬飼い キャロライナは、メモを貼った。
okomekome 2014/02/27(Thu) 23時頃
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― ある日 ― [サミュエルが来て話を聞けば>>156、どうやら円と喧嘩したらしい。 何があったのか、追求することはしないまま。 ひどいことを言ったなら、後でちゃんと謝れよ。 なんて言って、彼の頭を撫でて円を探した。
見つけた円>>158の頭を、何も言わずにぐりぐり撫でた。 癖のある円の髪を、くるくると指に絡めながら、 仲直りできるか? と心配そうに聞いた。
何があっても、どんなことがあっても許せる。 また笑いあえる。
それが家族だと信じて。疑うことすらなかった。*]
(164) okomekome 2014/02/27(Thu) 23時半頃
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