84 戀文村
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― いつかどこか ―
[春の訪れと共に終わりを迎えた戦争は。 予想外に深い爪痕を各地に残していたようで。
戦火で故郷を追われた両親は。 生まれたばかりの自分を遺し。 戦後の混乱で命を落とした。]
花が好き、歌が好き、春が好き。
[どれだけ馬車に揺られたか。 赤い髪に青い瞳の持ち主は。 その長旅で少し疲れていた。]
(87) natuka 2012/04/03(Tue) 14時頃
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[旅の途中、何度も窓の外から見ていた夕日は。 空ににじんで……とても、赤く。 血のように不吉という人もいたが。 しかし、何故だか嫌いになれず。 自分の髪のようでもあったから。 何故だかとても好きだった。]
それから、やっぱり赤が好き。
[馬車がようやく着いたのは。 出発をしてすでに数日後。 庭に透明な不思議な建物のある小さな屋敷。]
(88) natuka 2012/04/03(Tue) 14時半頃
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[初めに通されたのは、不思議な建物の方で。 そこに佇む婦人は、自分が生まれる前の戦争で。 夫を亡くした未亡人ということらしい。子どもはいない。
花咲き乱れる中をぐるぐる見回すと。 婦人はくすっと笑いながら、近づいて。]
……温室は初めて?
[とやさしく問いかけるので、それにこくりとうなずいた。
初めて会ったはずなのに。どこか懐かしく。 死んでしまった母に似ているのかとも思ったが。 そもそも、自分はその顔すらも覚えてなく。
不思議なことに、天国のようなこの場所も。 光あふれる暖かな場所というのも知っていて。
思わず、そばに咲いていた花を指さしてつぶやいた。]
(89) natuka 2012/04/03(Tue) 14時半頃
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……チューリップ?
[帽子のような花弁のその花は。 燃える夕日や、自分の髪の様に真っ赤。
その言葉に婦人は驚くが。 ふわりとほほ笑みながら近づいて。]
ええ、そうですわ。 旦那様が遺してくださったお花ですの。
[そう語る瞳は夢見るようにうっとりしていて。 これが恋する瞳なのかとぼんやり思う。
婦人は軽くしゃがみ込み。 同じ目線に立ちながら。 自分の羽織ったマントの頭巾を下ろしてくれ。 それからこう続けた。]
(90) natuka 2012/04/03(Tue) 14時半頃
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あなたのマントと同じ色ですわね。
[故郷の村では男性は赤。 女性は白を纏っていたようだが。
自分のそれは、亡父の形見で赤かった。 母が身につけていたのは。 血にまみれて元の色が分からず。 すでに使える状態ではなかったらしい。
かなり丈夫な布だったが。 すでに十年以上、旅を続けていたのだから。 経年で色は褪せていて……古びていた。]
(91) natuka 2012/04/03(Tue) 15時頃
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そうだわ、まだお名前を聞いてませんでしたわ。
[思い出したように婦人はつぶやく。 うっかりなのか。 それとも自分のように。 ……初めてでないような気がしていたのか。
笑いをかみ殺しつつも名乗った。]
(92) natuka 2012/04/03(Tue) 15時頃
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……ヤンファです。
[それが今の自分の名前。 年端もいかぬ少女が旅をするのに。 男性用のマントは役に立ち。 遺してくれた亡父が護ってくれている。 そんな気がして、この赤いマントも好きだった。]
(93) natuka 2012/04/03(Tue) 15時頃
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[婦人は彼女にそっとほほ笑みながら告げた。]
……お帰りなさい、ヤンファ。
[ふと、胸が痛くなり。目から涙がひとしずく。 婦人はそれをそっと拭ってから、彼女を抱きしめた。 花のような柔らかい香りを感じながら。 ヤンファは返事をした。]
ただいま、メアリー。**
(94) natuka 2012/04/03(Tue) 15時頃
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ヤニクは、ブローリンなでこなでこ。灰に埋めてた俺も悪かった。すまんかった。
natuka 2012/04/03(Tue) 17時頃
さすらい人 ヤニクは、メモを貼った。
natuka 2012/04/03(Tue) 18時半頃
ヤニクは、戀文村の薔薇バージョンに期待しながら。おやすみなさい。**
natuka 2012/04/04(Wed) 01時頃
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-ある夕暮れ-
[庭で一番大きな木に登り。 枝に腰かけ遠くを見ていた。
真っ赤に熟れた太陽が地平線に飲まれていく。 その光景を見る度にいつも思う。
向こう側には何があるのだろう。 どんな世界があるのだろう。
自分の頬を優しく撫でる。 この風はどこから来るのだろう。
帰る家があり、待っている人がいる。 それが故郷とヤンファは思う。 そして、それがあることが幸せだと思う。
でも、あの地平線の彼方にいってみたい。 そんな焦がれるような思いもあった。]
(126) natuka 2012/04/04(Wed) 22時半頃
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[赤いフードをかぶって旅をして。 いつかあそこへいってみよう。
メアリーの待つこの家は。 今の自分のかけがえのない故郷だが。 いずれまた旅立つための止まり木。 時々、そんな気もする。
まだ、今はその時ではない。 だけど、いつか。いつかそのうちに。 どこか遠くへ旅に出よう。
そして、また。ここに帰ってこよう。 そう思った。**]
(127) natuka 2012/04/04(Wed) 22時半頃
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