162 絶望と後悔と懺悔と
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─ 理依との記憶 ─
[理依が“特別”を作らないこと。 それ自体を特別──と感じ取れるほど 少女は大人ではなかった。
けれど、理依が──何でもないことのように 俺は皆が好きだと言った時>>193。
──きっとその時も、少女はリカルダと一緒にいて 理依が女の敵のように扱われるのを 側で聞いた後だったのだろうけれど──。
不意に、少女は理依の手を取り、握り、 その手の甲を撫でようとした。 何故か少女には、その言葉を言う理依が、寂しそうに見えて*]
(242) 2014/02/09(Sun) 00時頃
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─ いつかの、庭園 ─
『屋敷の外に出てはいけないよ菖蒲。
外には人を喰らう鬼が──棲んでいるのだからね。』
[艶のある低い声のその人は、 着物よりも洋装を好む幼子を膝の上に座らせ、 皐月から文月に掛けての数ヶ月間 庭園のそちこちを彩る菖蒲を見ながら、 童女の髪を撫でてそんなことを言った。
物心つく前から言い聞かせられて来た文句は 考えるより先に身に沁みて。
故に──。 童女は生まれてこの方一歩も屋敷の外へ出たことはなく、 それを疑問に思うことさえなかった。]
(257) 2014/02/09(Sun) 01時半頃
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[実際──。 屋敷のあった場所は、その当時既に吸血鬼の支配下にあり 屋敷の外で、人はみな吸血鬼に怯えながら 家畜同然の暮らしに甘んじていた。
そんな区域にあって、広い庭園を抱えるお屋敷だけは、 まるでそこが異空間であるかのように、 主と、その妻と、使用人達だけを竹垣の内側に抱え、 外の惨状から彼らを遠く隔てて在った。
童女が産まれた時、お屋敷に他の児童は住んでおらず、 かつて住んでいた胡桃色の髪の少年の話は、 時折父の口から断片的に語られるのを聞くのみ。
童女にとって『兄』とは、 現実味の伴わないお話の中の存在であると同時に、 淡く──それでいて尽きることのない、 幼い憧憬の対象でもあった。*]
(258) 2014/02/09(Sun) 01時半頃
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『とうさま、どうしても──お外へゆくの?』
[童女が四歳になって間もなく、 『父』は急に屋敷を出ると言い出して、 童女と、使用人達を驚かせた。
座敷で出立の支度を整える父の背に、 童女が投げた問い。
父は答えた。]
『待っておいで。 あや、お前に兄を連れて来てやる』
[童女は不安げに菫色を揺らし、 しかし何処かしら期待の篭った眼差しで、 一振りの刀を携えて屋敷を出てゆく父の背を見送った。
そして──。 それきり二度と、父が屋敷に戻って来ることはなかった。*]
(275) 2014/02/09(Sun) 02時頃
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『お前のせいね──あや』
[父が旅立ってひと月あまりが経った頃、 戻らぬ父を待って母と庭を眺める童女に、母が言った。
紅の引かれた美しい朱唇から、 零れ落ちる言の葉は毒花のように芳しく、 童女の髪を梳る母の細い指先が柔肌に甘く爪を立てても、 童女は小さく──痛いよかあさま、と溢すのみで、 その行いに、何らの疑心も芽生えることはなかった。
───母が屋敷から姿を消したのは、その数日後。
それから季節を三つ跨いだ春の夜。 母は、父の首を携えて屋敷へと帰る。
その日まで、 童女は二人の親がいっぺんに離れて行ってしまった悲しみに 泣き濡れて過ごす日々を送ることになる。*]
(276) 2014/02/09(Sun) 02時頃
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─ 帝都守護部隊隊員養成所・寝室 ─
[目覚めた少女の胸を占めるのは、哀痛と悔恨。 夢現に入り交じる喪失感に、 天井を見上げる少女の瞳は脆く揺れた。
けれど──少女は奥歯を噛み締め、 濡れた瞳が乾くまでそうしていると、 やがて立ち上がり、寝台を下りて部屋を出た。]
(288) 2014/02/09(Sun) 02時半頃
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[血塗れた服は洗いもせずに部屋に丸めて置いてある。 洗うか捨てると言うのを、少女が拒んだからだった。
代わりに支給された服は、 動きやすい綿のズボンと上着。
それでも痩せぎすの少女にはぶかぶかすぎるそれを ベルトでかなりウエストを絞って履いていた。
円はまだ病室にいて、 怪我の治療に専念している。 けれどそろそろ、 こちらの部屋に移って来るだろうとも聞いていた。]
(294) 2014/02/09(Sun) 03時頃
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[病室の看護師から聞いた、隊員の部屋の前。 少女は笑まぬ瞳を扉に据え、 身長に見合った随分低い位置を、拳で二度叩いた。
そこは──ジャニス・ハイムゼートの部屋だった。]
(296) 2014/02/09(Sun) 03時頃
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わた……、ボクを、隊員にしてください。
[中に招かれ、問うような瞳を向けるジャニスに 開口一番少女は言った。
菫色は怒りも悲しみも顕にはしていなかったが、 真っ直ぐにジャニスを見上げる眼差しだけは 何を問われても揺らぐことなく 頑なに、同じ言葉を繰り返した。]
ボクを守護部隊の仲間に加えて下さい。
[少女に守護部隊の話をしたのは病室にいた看護師の一人。 円も、理解出来たかはわからないが、 少女と共に、話だけは聞いていただろう。
望めば、部隊員として鍛えてくれるという話。 詳しい話は、隊員に直接聞け──と。]
(297) 2014/02/09(Sun) 03時頃
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[安吾でなくジャニスを選んだのは。
安吾は──優しい安吾は、自分の願いを断るかもしれない。 そう、幼心に考えたからだった。
少女の決意は変わらない。 力を蓄え、二度と大切な人の手を離さないために──]
何でもする。 強くなれるならボクは───…、
何にでも、なる。**
(299) 2014/02/09(Sun) 03時半頃
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[与えられた聖水銀の最初の一杯に 少女は躊躇なく手を伸ばした。
細い、棒きれのような手には 大きすぎるくらいのコップを顔の前まで掲げ]
“ ”
[唇を微かに動かし いつかの──目指す『その日』を思い浮かべ 咲き初める桜のような、淡い笑みを浮かべた。
息を詰めて、満たされた液体を飲み干す。 雫の一滴さえ残さぬように。
これが──少女の見せた、最後の笑み。]
(326) 2014/02/09(Sun) 10時頃
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─ 現在・帝都守護部隊隊員養成所 ─
[夜明けを待つ訓練場。 地平線は藍から東雲へと色を変えつつある。
他に人のいない、ガランとした空間に 響く──規則的な風切り音。
空気はまだ蒼い。 吐く息の白さごと空間を真横に切り裂くのは 刃のない訓練用の模擬刀。
それを握る腕は、五年前と較べ、 細くとも靭に伸びた少女の右腕だった。]
(330) 2014/02/09(Sun) 12時半頃
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[左の腕には模擬刀を収めていた白鞘を握り、 規則正しく、淡々と、澄んだ樋鳴りを重ねてゆく。
纏う装束は膝上まで裾を断った小袖。 色は烏羽。
死者を悼む黒に近く──しかし決定的なそれを否定した色合い。
小袖の袖を翻し、少女は只管に空を刻む。]
(331) 2014/02/09(Sun) 12時半頃
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[『聖水銀の試練』の日より、 少女は着物を好んで身に付けるようになった。
あの日──全身を千々に裂かれるような痛みの中で、 少女は幾つかの消し去りたい記憶を取り戻した。
家を出た父の末路。 母の乱心。
────己の犯した、その罪を。
紅に嘗め尽くされ崩れ落ちた孤児院とは違い あの桜と菖蒲の咲き乱れる不可侵の庭園は 今も何処かで穏やかに朽ちているのだろうか。
幼さ故に、断片的な記憶には謎も多いけれど。
少女は──父と母の名と貌と、 兄になる筈だった人の名前を思い出した。]
(332) 2014/02/09(Sun) 12時半頃
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[試練に耐える夜、痛みを感じたのは躰のみならず。 真に引き裂かれそうだったのは心。
四と十一の歳、 己の頬を叩いた血飛沫の温かさが 忘れようにも忘れ得ぬ血汐の腥さが 何度も、繰り返し少女を責め立てた。
同室の少女は、側にいただろうか。 深夜、縋る相手を求めて彷徨い出す手を 少女は己の肩に爪を立てて留め、 枕に顔を埋めて声を殺した。
くぐもった呻き声は時折数名の名を成し 夜明けを前に、遂に震える腕が虚空へ伸びた。
その手は最後、誰かに掴まれたように一度震え、 不意に脱力し、寝台に落ちた。]
(333) 2014/02/09(Sun) 12時半頃
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[この日、枕に吸わせた雫を最後に、
少女の眼から──涙は涸れた。**]
(334) 2014/02/09(Sun) 12時半頃
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アヤワスカは、イアン(安吾)の訓練の最中も、表情を変えることはない。
2014/02/09(Sun) 13時頃
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[円が不安定に泣き叫ぶ夜、 少女は──絢矢は、円の手を握り、撫で それでも落ち着かなければ、円の肩を抱いて 眠りにつくまで背を撫でてやる。
円が朝まで眠らぬ夜は、絢矢も朝まで寄り添う。 そんな日は、円が寝付くのを見届けてから、寝ずに早朝修練に出た。]
円──円。 大丈夫だよ。 ───大丈夫。
[円を抱いて、耳許に囁く静かな声に かつてのような無邪気さも豊かな抑揚もない。
涙は捨てた。 笑顔は忘れた。
それでも──。家族が困った時、 絢矢のとる行動は昔のまま、何も変わってはいなかった。]
(404) 2014/02/09(Sun) 20時頃
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─ 波羅宿 ─
[某日──。
帝都に吸血鬼の侵入ありとの報告が入り、 偵察隊の調査により吸血鬼二匹の姿が確認された。
数の多寡と敵の実力を鑑み、 派遣されたのは絢矢を含む孤児院組。
判断したのはジャニスか安吾か──。 サポートに、どちらか──あるいは二人とも 付いて来ていたかもしれない。]
(416) 2014/02/09(Sun) 21時半頃
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ターゲット確認。 一匹はスクランブル交差点内にいる。
もう一匹は──上。
[建物の陰から状況を窺っていた絢矢の視線が 109ビルの屋上を見る。
身に付けているのは既に着慣れた烏羽の小袖。 袖に淡い桜の花弁散るそれは実戦用にと誂えたもの。
周と並ぶと、夜桜が軍服の スタンダードであるかのようにも見える。]
下はまだ若い個体。 恐らくは上の一匹がリーダー格。
叩くなら先に若い個体から 一気に囲んで──潰す。
(418) 2014/02/09(Sun) 21時半頃
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[交差点の中央で辺りを見回しているのは 白い長髪に紅の眼の少女。 周囲に獲物の姿がないことに苛立っている様子。
先遣隊の指示で波羅宿からは既に人払いが済んでいる。 屋上の個体は赤毛に眼帯の男。]
多分──気付いてる。 だけど恐らく、あれは監視役も兼ねてるから すぐには攻撃して来ない。
念のため目を離さないで。
北と南に分かれて挟撃だ。 ボクは──北から行く。
[周の問いに瞬時に答えを返す。]
(423) 2014/02/09(Sun) 22時頃
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[サミュエルのように素早く走れる足はない。 周のような変幻自在の動きを可能にする筋力もない。
体力もリーチも兄達に劣る絢矢が選んだのは 足りない武力を智で補う方法だった。
修練の合間に戦術書を読み、 先輩隊員に実戦さながらの訓練を頼み 兄妹達と幾度も模擬戦を重ねて動きを叩き込んだ。]
(424) 2014/02/09(Sun) 22時頃
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アヤワスカは、白い方は気付いてない──と追加報告。
2014/02/09(Sun) 22時頃
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[周はいつだって自ら先陣を切ってゆく。 敵の視線を引き付け攻撃を集め、 後方が戦いやすい陣形へと導く。
最も命を落としやすい危険な役目を 彼は進んで引き受ける。
けれど──絢矢は黙って頷いて、北へと走り出す。 南へ向かう周の姿は見ずとも動きはわかる。
昔のように服の裾を握って 後をついてゆくことはなくなっても 絢矢の周に対する信頼は変わってはいない。]
(426) 2014/02/09(Sun) 22時頃
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[隻眼の吸血鬼は109ビルの上から にやついた表情で地上を見下ろし、
9……8……7……とカウントを始めた。
南から複数の帝都守護部隊が現れるのを見ても 余裕の表情は崩れない。]
───、
[北の路地へ素早く移動しながら、 絢矢は109の屋上から目を離さない。]
(431) 2014/02/09(Sun) 22時半頃
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[名乗りを上げる周の声が波羅宿の空気を震撼させる。 表情は変えずとも、奮い立つものがある。
屋敷の外へ出ては行けないという、 父の言葉を鵜呑みにしていた童女はもういない。 黒鉄の門の中で少女を守ってくれていた家はもうない。
絢矢は──いくらかの人間らしさを犠牲にして 自らの足で竹垣の外へと歩み出した。]
(433) 2014/02/09(Sun) 22時半頃
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[絢矢の側には誰がいたか。 北の路地に身を潜め、右手を翳して待機を促す。
もう少し──あと少し。
長ドスと九節鞭の連携は幼い吸血鬼を容易く追い詰める。 そのまま二人で息の根を止めてしまえるだろう実力差。
けれど、二人がそれをしないのは 万一の反撃──窮鼠が猫を噛むことのないように 一部の隙さえなく敵を圧倒するためだろう。]
(446) 2014/02/09(Sun) 23時頃
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[109ビルの上では、赤髪隻眼の男の吸血鬼が 平坦な地面を歩くような自然さで 屋上の端を蹴り、地上へと降りて立つ。
周とサミュエルは、男に背後を取られる形。]
(447) 2014/02/09(Sun) 23時頃
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[少女の吸血鬼は男の参戦に気付いていないまま 二人の襲撃者から逃げる為路地裏へと駆け込んだ。
片手を切り落とされ、太腿を九節鞭の先端に抉られ、 長い髪は途中で断たれた憐れな姿。
紅の瞳に涙を湛えた外見は ともすると守ってあげたくなるような可憐さであるけれど]
────
[絢矢は、北組を制していた手を下ろすと 漆黒に宵闇色の刃紋の浮かぶを黒刀を構え 一歩目の踏み込みで、残る少女の片手を落とし、 次の一歩で左手を切り上げ、少女の喉を切り裂いた。]
トドメを──。
(449) 2014/02/09(Sun) 23時半頃
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[隣には誰がいただろうか。
仲間が少女の心臓へ 決定的な一打を叩き込む音を聞きながら、 絢矢は既に、周とサミュエルの背後に迫る吸血鬼へと 漆黒の二刀を構え駆け出している。
距離は──、まだ遠い。
間に合わないと知るや、 帯から抜き出したくないを一本、 隻眼の吸血鬼の残った瞳へと投擲した。]
(451) 2014/02/09(Sun) 23時半頃
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アヤワスカは、投げたくないが狙った的を貫くのを見た。
2014/02/09(Sun) 23時半頃
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[編み上げの革靴が交差した縞模様の中心を蹴る。
周は──サミュエルは──。 九節鞭の先端は──吸血鬼の心臓へと──?]
(455) 2014/02/09(Sun) 23時半頃
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─ 戦闘後 ─
────…、
[余裕を見せていた吸血鬼も 周とサミュエルの前にあっけなく斃れた。
朱の下緒で帯に結ばれた 艶やかな黒鞘へ対の黒刀を収めると、 絢矢は背伸びをして、周の頬に手を伸ばした。]
血が──。
[周の頬についた一筋の赤を、指先で拭う。
昔のように、血を見て青褪めることはない。
──けれど。 伏せた夜色の睫毛は微かに震えた。*]
(458) 2014/02/10(Mon) 00時頃
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アヤワスカは、ビルの屋上に立つ安吾を見上げ、視線で作戦の終わりを告げた。*
2014/02/10(Mon) 00時頃
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