240 なんかさ、全員が左を目指す村
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― 特殊施設《HOME》 ―
[携えたのはトランクひとつ、靡かせるはオータムコート。 薄ら寒ささえ感じるのは、秋の深まりの所為であり、 白々しくも聳える施設の所為ではないと思いたい。>>1
覚える眩暈を打ち払い、額に宛がう指の腹。 秀でた額を慰め、敷地に脚を踏み入れれば、 時間厳守か早期終了を目論む者か、先んじる先客一人。>>0:47
上背を見ても、体格を見ても、同性であるからして、 己と同じ運命に翻弄される役者の一人なのだろう。]
――― 君もこのBL計画の被験者か?
[掛けた声はやや警戒を滲ませるが、外面は弁えている。 トランクを持ち上げて見せながら、己も舞台へと昇った。]
(2) 2015/11/11(Wed) 00時頃
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[プライバシーと人権に訴え取った休暇は限りある。
政府からの要請ならば、被験中に発生した不利益程度は、 補うと云うが、事務所への申請は『私用』の一言で通した。
ちょっと子作りにそこまで。 ――― なんてフランクに言える立場ではない。 少なくとも、事務員改め、雑用係の彼には。>>5
此度の試験で集められたのは己を含めて6人、 苦楽を共にする4人と、子を押し付ける予定の1人。]
(12) 2015/11/11(Wed) 00時半頃
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[挽き立ての珈琲豆の香を深く染みさせる相手は、 自身の顔を知っているらしい。>>10 視察名目の腕章は、己にとって泡沫の宝物だ。 それとなく世界保健機構に打診を打ったがなしの礫。
それでも有権者たる彼に咳払いを零して我を取り戻しつつも、 脚を揃えて自動開閉の敷居を潜ろう。 遥かなる昔、分かたれた血がこんな場所で巡り合うとは 皮肉なものだが、Dの並ぶ名を知るまでは、悲劇の当選者だ。]
――― 立場に限らず計画に協力するという宣伝塔だ。 私はさっさと済ませて帰る心算だが、 君はこの機会を一人類として、謳歌したまえ。
貴重な経験になるだろう。
(13) 2015/11/11(Wed) 00時半頃
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[白く無機質ながら施設は父体へのストレスフリーを掲げ、 マタニティブルーの解消を謳っているだけに、手広く清潔。 己が推進させた福利厚生をこんな形で蒙るとは予想外だが。
ともあれ、歓待を示すサーヴァントに会釈して、 リビングを見渡す双眸。部屋へ続く扉は六つ。 己の記憶が確かなら、個室はみっつ、 共有スペースがリビングを合わせよっつの筈だ。
Cの名が並ぶ扉を探すのは自然な行為。 そっと身体の横で握り込んだ拳に他意はない。 時として平和の為には武力で以って、 自由を勝ち得る場面も必要だというだけ。]
――― Kilroy was here ?
[口をついて出たCの隣に並んだK 零した言を咀嚼する前に、売れた顔を目指す青年が一人。>>15 見やれば、まだ若さを残す学生然。 近づく彼に視線をくれて、鼓膜で受け取る仰々しい宣言。]
(19) 2015/11/11(Wed) 01時頃
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[―――― ふっ、と黄昏るように零す苦笑は下がり眉。 握り込んでいた腕を持ち上げるのに、 何の躊躇いも持たない相手で良かった。
地獄で仏とは正にこのこと、彼は曰く神らしいが。]
……私の名はクリストファー・クリステル・クリストフ。
[既に知っているだろう名前を告げる声は低く、 自己紹介に差し出すは、握手の右ではない。 勢い付け、拳の底を壁に叩きつける仕草は分かり易い威圧。 耳横の壁を打つ拳は、大人の節だったもの。]
―――…君の夫だ。キルロイくん。
[痙攣しがちの蟀谷を抑え、笑んだ顔に喜色は無い。 ただ、立場を教える重圧が、神様とやらの鼓膜を叩いた。*]
(20) 2015/11/11(Wed) 01時頃
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[生真面目に見えたのも束の間、噴飯の気配に眉が跳躍。>>21 同性との子作り精を出さねばならないと云う状況は、 確かに腹を抱えて然るべきものだろう。 己とて召致が掛からねば、今頃政務室でほくそ笑む立場だ。
だが、当事者となった今では笑えない。>>21
早々、秘められた身体を抉じ開け、己の胤を刻んで撤収する。 それが目下の目的であり、最優先事項。 神経に触れる感覚は、一市民に向けるには珍しい気質だが、 新世界の神を前に撤収する目敏さは抜け目ない。>>24
つい、視界の端で追った男の肩越しに見るは一枚のプレート。 彼の視座と重なり、微かな瞠目と共に、薄く唇が開く。]
―――……DDD, 秘密を明かす大公の血筋か。
[聖人の名を持つCの血統から分かれた分家。 思わず呟いた後――、あまりの遺伝子の悪戯に眩暈がした。*]
(33) 2015/11/11(Wed) 01時半頃
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[自身の家系が数代以前からバライラ因子に呪われていた事実。 思わず長躯を揺らめかせ、壁に掛けた自重が増す。 まるで、出来過ぎた喜劇の配置。 頭痛の種は増えるばかりで減りはしない。
無論、最も勢いよく殴りつけてくるのは、 目の前の年若い青年であるのだが。>>28]
君と私の保持する因子が適合した事実こそ理解しかねる。 ―――…分かった、とりあえず話の席を設けよう。
君とは深く理解し合い、互いに譲り合い、 手を取り合うことが必要だ。
[口先三寸と取り繕った態度。 政治家お得意のその場凌ぎは露骨。 彼の態度に折れた振りする大人の寛容を見せて、 指先はそっと彼の肩を叩いて落下。]
(38) 2015/11/11(Wed) 01時半頃
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……時に、喉は乾いていないかな?
[アドバンテージは我に在り。 そそくさとウェルカムドリンクを持ち出すサーヴァントも、 その、桃色濁ってドロリと粘つく液体の本質も>>0:1 己の立場で知らぬ筈がない。
悪い大人が笑んだ時は、往々にして碌でもないものだ。**]
(40) 2015/11/11(Wed) 01時半頃
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[この尊大な青年は自身が初当選した年頃よりも、ずっと若い。
神経を爪弾く発言に膨らんだ叛骨精神を慰め、 マウントを確保するよう揺れた蟀谷には鍍金を塗して隠蔽。]
――――…幸運と呼べるかは未だ結論に至らないが、 バライラ因子保持者は世界単位で見ても限られている。
故、人類に貢献出来る身体で在る責は、弁えている心算だ。
[彼の織りなす独特の空気を飲み込んで。 叩かれた肩を揺らしつつも、形ばかりの協力姿勢を提示し、 彼を立てる言葉を操って、勧める水分補給。>>43]
(52) 2015/11/11(Wed) 20時半頃
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[見た目には余り意欲をそそられぬ液体だが、 香りは芳しい―――胡散臭いほど高い桃の馥郁。>>44]
それは痛み入る。 キルロイくんの緊張も解けてくれるだろう。
[尤も、彼の物言いは緊張から来るものではなく、 重度の病が根源に見えるが、誘い文句は何でも良い。 多少、黒い歴史を患っていようと、不審者然としていようと、 己の子供さえ孕んでくれれば、彼にそれ以上望むことはない。
仮令、多額を請求されても、養育費の支払いなど容易いものだ。 彼の性格と性質はともあれ、見目が悪く無かったのも幸運。 既に視界の隅で揚々と明るい家族計画を展開させるDDDよりは、 年齢と経験を笠に着て、煙に巻くことも検討し易そうだ。>>47]
(53) 2015/11/11(Wed) 20時半頃
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―――…キルロイくん?
[だが、そんな思惑を無視して、先も行動も読めない若人が、 また何かの天啓を受け、身悶えだした。>>48 液薬に毒素が無いのは重々承知。けれど此処で見捨てれば、 彼の中にある警戒心に水と肥料を撒くことになるだろう。
そっと伸ばした腕は彼を気遣う振りして追い詰める。 大人の指先が包んだのは口元抑える彼の手背。 逆流を禁じる関を設け、トランクを持つ手が彼の背に落ちた。]
慌てず、ゆっくりと嚥下すれば良い。 飲み干せたら、君の希望にも耳を貸そう。
[取引めいた餌を眼先に吊り下げ、重ねた掌で仰がせる彼の貌。 真っ直ぐに伸びる喉は、胃袋までのガイドライン。
譲歩の振りして、子供相手に大人げない甘露を流し入れた。*]
(54) 2015/11/11(Wed) 20時半頃
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[やはり、この青年は独特だ。
至る結論は自身の幸福よりも先に転がり込んだ。>>55 鼻に突くような選民思想は嫌程浴びてきたが、 彼の告げるそれは洒落たアクセサリーにしか感じない。 嫌味は多分にあるが、見下される苛立ちよりも、 頭蓋の中身に完治を願う憐憫が先に立つ。
元々バライラ因子は奇人から検出される例が多いと聞く。>>56 己のような例外は別にして、彼はスタンダードなサンプルだ。]
違うのは次元ではなく、常識―――…いや。 何も君と弁舌を交わし合いたい訳ではない。
君は随分とこの計画に乗り気なようだが、 目的は自身の血を分けた子が欲しいと云うことで良いかね?
[うっかりとツッコミに乗じて売りそうになる喧嘩を押し留め、 代わりに飲ませた薬液の嚥下を見届ける。>>57]
(61) 2015/11/11(Wed) 22時頃
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[一度胃袋に流れ込んでしまえば、あとは染み渡るばかり。 身体の中を這いまわる甘露に、供物の準備を任せよう。
するりと引いた指先で、口角から垂れた雫を拭い、 褒めるように喉を擽り、愛玩の仕草。>>58 成程、言動に問題はあるが、この見てくれであれば、 言葉を操り、双眸をタイで隠さずとも本懐まで至れるだろう。]
ありがとう、だが、私は喉に渇きを覚えていない。 それよりも、君の渇求の方が癒えぬように見えるが――…、
[受けったグラスは右から左。 御代わりもありますとフレッシュネクター絞る従僕に返し、 胡乱な顔した男は緩やかに彼の腰に腕を回した。 下肢に響かせるエスコートはややも強引に。 社交界での手習いも、政治家にとっては教養の内だ。]
少し、部屋で休むかい?
[囁いた言葉は、彼の股間に垂れる聖剣を嗤うよう跳ねた。*]
(62) 2015/11/11(Wed) 22時頃
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クリストファーは、キルロイの漏らす、笑気は低く、
2015/11/11(Wed) 22時半頃
クリストファーは、キルロイが零す呼気すら抱き寄せて。
2015/11/11(Wed) 22時半頃
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[彼と勝ちだの負けだの論じる心算は毛頭ない。 欲しいというなら勝利など幾らでもくれてやろう。 充足に酔い痴れる彼に隠れて、己は実益を得れば良い。]
君の遺伝子を後世に残すというのであれば、 痛める腹はどちらのものであっても違いあるまい。 いいや、寧ろ腹に納めるプロセスを踏むのだ。 母体を選択することこそ、君の目的に叶うのではないかね。
[詐欺師と政治家は紙一重。 凡百ぶって語尾を持ち上げながらも、声色は説得調子。 否、正しくこれは誘導だった。>>68]
ゼウスもロキもイザナギも、神は皆、自ら子を産んでいる。
新世界の神、キルロイ・クリムゾン・アッシュフォードが、 子を産み落とすなんて、神話の一節らしいと思わないかい?
[抱き寄せた腰を掻き混ぜてやるのは示唆の意図を含む。 睥睨してくる眼差しに、女の婀娜は無いが悪くは無かった。]
(70) 2015/11/11(Wed) 23時半頃
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いいや、君の希望は聞いた。 此方に判断を委ねるものだったので、 気持ちだけを有り難く頂戴しただけだ。
[彼は決して飲め、と強制しなかった。 彼が本当は持たない傲慢さを指摘し、刺される釘に頷き返す。 繰り返し首を縦に振る程に、胡散臭さは増すが致し方ない。
大丈夫、無理強いはしない、なんて軟派男の常套句だ。]
無論、私たちの中に在るバライラ因子が繋いだ縁だ。 君の苦しみをそのままに置いておくのは憚られる。
[するりと腕を抜けてしまった彼を追い、 此方はゆっくりと脚を踏み出し、扉を潜る。>>69 警戒の増した背中は、それだけ減った余裕を教えてくれる。
さて、それでは、新しき世界に君臨する神の賞味と行こう。*]
(71) 2015/11/11(Wed) 23時半頃
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