162 絶望と後悔と懺悔と
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― 重ねの常磐 ―
[主の躯を浚う零瑠の腕が在った。
どれ程紅に身を染めても、抱き、誰の手の届かぬ場所に退く。]
……
[浮雲に隠れた月を探して、幼子は屋敷を抜け出した。さ迷い歩き、熱に魘された結果、記憶と言葉を失い孤児院に引き渡された。]
(18) 2014/02/22(Sat) 21時半頃
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[父を忘れ、母を忘れ、妹を忘れ、 家族を忘れ、帰るべき場所を忘れ。
知らず『父殺し』の罪を背負う。
そして、今も――また。
零雨は 止まない。**]
(19) 2014/02/22(Sat) 21時半頃
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― 吾の安きを ―
[光は闇獣と化した。
守るべき『家族』。
生が苦しみを生むのなら。 絶望も後悔も懺悔も無い場所へ。]
脅し? 我儘? このままあなた達の目的を果たしても同じことだと……。 解放を願った行動の先には、安吾さんの言う多くの人の犠牲しかないって……、そう俺は言ってるんだ。
[立場の違いは重々知っている。 今回の殲滅戦でどれ程の数が減ったのかは知らないが、それでもあの城には人が――家畜が、多い。
一部の解放なら許可を得られるのではないか。そんな甘い考えが底に在る。]
(32) 2014/02/22(Sat) 23時頃
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[願う。傍に在りたいと。 その為に何を捧げても。 『家族』の、『兄』の命を捧げても。
主のことを想い、その生を願い、そのためになら他の犠牲も―――厭わない。]
(33) 2014/02/22(Sat) 23時頃
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[広げられた安吾の腕。 左胸に刺さった刃。間近くで浮かぶ笑みを見上げ。
頭に触れた手の、懐かしき昔。 どうしても手離すことが出来なかった学帽。]
あ……
[自ら手離して、しまう。 壊してしまう。
最後に『兄』を――…**]
(36) 2014/02/22(Sat) 23時頃
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―とおく―
[主の傍にはリカルダの。 表情の細かな処までは見えないが、ひどく苦しげに思えた。
黒刃の小太刀は彼女のものではない。では誰の?>>8:119
零瑠の視線の先。在る姿は5つ。]
……待っ
(39) 2014/02/22(Sat) 23時半頃
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[期待を寄せられて居たのに。 主の元へと辿り着いたのはジャニスが先で。
命と引き換えにでも、殺しておけば良かったのか。
明之進の姿が在る。 真弓が持っていたはずの、剣を手にしていた。鬼を刺す棘を。
紅染まった、棘を。]
(42) 2014/02/22(Sat) 23時半頃
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ぁ、
[動かす脚の、なんと遅いことよ。
何故、自身の刃は『敵』を退けることが出来なかったのだろう。
振るわれそうになる三日月の、影に一矢。>>3
真弓から話を聞き、主の元へと向かいながらも探して居た姿に漸く……出逢えた。]
ぁ ……や
[身を強張らせる。射られた矢の向かう先。刺さってくれるなと手を伸ばしたが――…。]
(43) 2014/02/22(Sat) 23時半頃
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―菖蒲―
[瞬間の、見えた菫色は記憶よりも色が濃い様に見えた。
だから。 もう冷たい主の身を抱えながら、別の方より近寄り、 名を呼ぶ。
桜の枝は、まだ張っているだろうか。
あの花は、また今年も咲いているだろうか。]
(46) 2014/02/22(Sat) 23時半頃
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トレイルは、リカルダの抱く少女を見て。
2014/02/23(Sun) 00時頃
トレイルは、明之進に血を与え、彼が助けを求める少女を見て。
2014/02/23(Sun) 00時頃
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―――…菖蒲。
[日に日に大きくなっていく腹を、撫でた。 鼓動を聞き、誕生祝いにと ……あぁ、あれは菊結びだったか。
右の輪が僅かに膨らんだ……*]
(49) 2014/02/23(Sun) 00時頃
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[昔ならば、見て即座に倒れていた量の、紅。 菫色が此方を向く。>>51
開く唇。
けれど、言葉は伝わらない。]
……明。リッキィ
[二人の名を呼びはすれど。]
(62) 2014/02/23(Sun) 00時半頃
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[菖蒲の命を断った刀の銘を。
知る者は、居ない。
最期まで手の内に在った『常磐』は、意志を持たぬ武器であるけれど。]
(65) 2014/02/23(Sun) 01時頃
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[痛みも苦しみも切望も、長く共に在ったからこそ。
これで彼女の『罪』が、贖われるのなら―――…と
頸に刃が滑るのを 止めやしなかったのだろう。*]
(66) 2014/02/23(Sun) 01時頃
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トレイルは、アヤワスカ(菖蒲)の兄は障子にまだ見ぬ妹の姿を描き残していた。
2014/02/23(Sun) 01時頃
トレイルは、アヤワスカの、『菖蒲』の名と共に。墨の字体の癖は変わらず。**
2014/02/23(Sun) 01時半頃
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―喉を通る紅の味―
[どうせならば、甘い味であれば良かったのに。蜂蜜をかけたような、甘い――…。]
キャロライナ…
[牙を離してそっと表情を窺う。 なんと虫の良い話だろう。
安吾の様に。 彼もまた、微笑み浮かべて居てくれれば良いのに……だなんて。
問い掛ける。]
キャロライナにとって……『家族』って、何?
(76) 2014/02/23(Sun) 01時半頃
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[答えて欲しい唇は、もう動かない。 命を奪ってしまったから。
微かに紡いで居た声は、細かった。]
……そう。何の花が良いかな。 桜? 梅?
あぁ、もしかして怪我したこと? もう忘れてよ。恥ずかしい。
[守護隊に居る『家族』も。鬼の城で共に生きた『家族』も。棄てる覚悟を決めたのに。
揺らがないようにと、鬼の爪を見詰め。 散る人参色を、じっと見詰め。 致命傷を、避けてしまう。]
(79) 2014/02/23(Sun) 02時頃
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……うん。
[キャロライナが零瑠の名を呼ぶ。 居るよと、小さく返す。
煙の中、髪を鬼に掴まれていた。 今にも死んで、しまいそうだった。
他の鬼に殺されるぐらいなら――…
いっそ。]
………きゃ、ろ
[飲み込んだ紅の味。 願えば――また『家族』にと叶ったかも知れない。
けれど、周のようには……したくなくて。]
(81) 2014/02/23(Sun) 02時頃
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[零瑠の事を、まだ『家族』だと思ってくれる彼となら。
鬼と、人と。 望んだ世界への第一歩が踏めたかも知れないと思ったのは。
少し離れた倉庫の壁に寄り掛けられた円の躯と、緑色のスカーフを見付けた後のこと。**]
(82) 2014/02/23(Sun) 02時半頃
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― 桜花 ―
……
[遠目から、少女の衣装に在る桜花を認めた。 だからもう一度、菖蒲と名を呼ぶ。
身から流れる紅の筋が糸の束のように見えて。 絢矢と名を呼ぶ。
主の躯を支え直し。
瞼を一度閉じた。散る桜花は朝陽の光で淡く。
明之進とリカルダの様子を、 あと少し見守ろうと。**]
(83) 2014/02/23(Sun) 02時半頃
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