194 花籠遊里
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ー地下牢ー
[丁助と別れ、昨晩も降りた地下牢へと。 ちらりと黒蝶と櫻の花の姿を認めると、その牢からは離れた房を選び適当な場所に腰掛ける。
今日は昨日よりは幾分か月光が弱く、その分蝋燭の怪しい揺らめく灯りが明るく感じられる。
丁助が来るまでの間、手持ち無沙汰に部屋に備えられている花と蝶が夢を見るための道具の数々を手に取って眺め回してみる。
一見しただけで使い方のなんとなく分かるものや、説明してもらわないとさっぱり分からなさそうものまで多様だ……
露骨な性の形に少し気分の悪くなった僕はそっと道具を元に戻しておいた。
そうしていたところで白に身を包んだ赤い花が夜の帳に降り立っただろうか。]
彼岸花…
[決して可憐とは言えないのに、 その妖しい佇まいが美しい花を連想した。]
(146) 2014/09/18(Thu) 21時半頃
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[悪戯は思惑通りに成功いたしておりました>>136 呆けたお顔がこちらに向いて、瞬き繰り返されるのを 思い出しては、笑みを堪えて小さく肩が揺れるのです。 接吻けなどはいたしませんでした。 この判りやすい御方も、僕へ唇を重ねる事は無かったのでございます。
僕の微笑みに返る言葉は減らず口のようでもありました>>137 それでも僕を傷つける刃ではなく やられたと鳴る喉の音は、耳に心地よいものでありました。
独り、『花』が唄を紡ぐ頃合には 優しい手は、髪を愛しんでいてくださいます。 湿り気は髪からタオルへと移り 唄は『花』から何処まで移るのでしょう。
他の音を、他の存在を緩やかに拒むように。 穏やかな声が響いておりました。]
(147) 2014/09/18(Thu) 21時半頃
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おかしな御方ですね。
[それは多分に意味を含みます。
『人』で居られるあなたさまなのに。 櫻には蔦など在りはしないのに。 どちらも口には致しません。 僕はただ、眸を閉じた暗闇の中、どのような色も浮かべぬままに 『蝶』の応え唄を聴いておりました。
お互い、表情など見えません。
寂しさ募る悲しき笑みを浮かべる『蝶』も 眸を閉じて蓋をした迷子のような『花』も 聴こえるのは、牢屋に不釣合いな唄と唄。
『蝶』の綴る『夢』に 押し黙っているかのようだった唇は、再び動き出したのでございます。]
(148) 2014/09/18(Thu) 21時半頃
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―地下牢へと―
[昨晩と同じく、昨晩より以前の支度と同じく、白を纏うは慣れたもの。 箪笥に染み付く花の香りは、濃紅色の蕾の花のもの。
地下へと降り立てば、恐らく先に来ているだろう金色の蝶を探す。 先客の居る牢にはできる限り視線を向けぬようにして。]
お待たせ致しました。
[乾きたての赤い髪を揺らし、彼の元へと。
彼岸花。 呟きを耳に捕らえると、普段の笑みを更に深くした。]
宜しくお願いいたします。 ……ベルサン。
(149) 2014/09/18(Thu) 22時頃
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─────いいえ。
[それはまるで、拒絶するような声でした。 叫ぶというほどではありませんでしたが、確かに強く。 そして確かに、振り払うような調べでありました。]
他の『花』ならば判りません。 ですが僕は、この籠から出ればきっと。
…───枯れ朽ちてしまいますから。
[僕は微笑んで囁きました。 軋む音は、どこぞの牢の木格子でしょう。]
(150) 2014/09/18(Thu) 22時頃
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[抱擁見せ付けるような人の悪い笑みが向けられても>>143 大切そうに、銀月を抱きしめていても。 僕が返したのは、今のような微笑みでした。
蝋燭揺らめく薄暗き地下に 太陽のように輝く金が舞い降りたときも>>146 僕が向けたのは、微笑みでした。
僕は望まれるままにしか咲けぬ『花』。
櫻へととまる『蝶』を 癒し、慰め、満たすことこそが僕の『しあわせ』。
望まれなければ成り立たず。 望まれて初めて花咲くのです。
『外』の世界になど。]
(151) 2014/09/18(Thu) 22時頃
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[根を張る『櫻』を、どなたさまが愛してくれると謂うのですか。]
(152) 2014/09/18(Thu) 22時頃
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[面と向かい合わせになった双方>>145を確認しただろうか。ふい、と視線を逸らした先には何もなく、これからどうするか思案する。
とりあえず花の戯れの間に蝶は不要。くるりと踵を返せば最後にひとつ。]
藤之助、気が向いたら地下に来い。 お色直しに時間掛かって遅刻してもいいからよ。
[選択の余地だけ与えて、蝶は主の元へと。 そしてこれは最後だと、廊下の板を踏みしめる。]
(153) 2014/09/18(Thu) 22時頃
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よろしくね。
[丁助の笑み>>149にこちらも笑みを返すが、少し硬かったかもしれない。些か緊張しているようだ。 昨晩はそんなことはなかったと思う。櫻子が相手であったからだろう。]
丁助さんは…身長は6フィートくらい? 僕より少し低いくらいだよね。
[白を纏った花の背格好を上から下まで眺め回して。 それでも櫻子よりかはよほど大きい。 丁助を手招きして自分の隣に座るように示すと、僕は話し始めた。]
少し恥ずかしいけれどね。 僕がこの館に来た理由というのを話すと、 女になる気持ちを識りたいからなんだ。
組み伏せられて、悦びを教えられる側の立場を。
[眉を下げて、少しも妖艶なところのない素朴な微笑みを隣の丁助に見せる。 昨日櫻子に見せたような妖しい笑みではなく、少年時代の面影を色濃く想起させるような幼い笑みを。]
(154) 2014/09/18(Thu) 22時半頃
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教えてくれる?
(155) 2014/09/18(Thu) 22時半頃
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……ごきげんよう、蝶様。 指導、と言われましても。 藤之助が何か失礼を?
[自分を呼び止めた声に恭しく礼を一つ。 藤之助に限ってそれは無いと頭の隅で考えながらも声かけを。 歩みを進めるよりも早く、蝶が己のもとへと藤の花を運んだか。 蝶に視線を、それから藤之助へと。 遠回しに理由を聞いてみたが、返事は貰えたかどうか。 残された言葉に更に困惑の色を強めると>>153、手にもっていたものを懐へと仕舞い花と向き合うことにしたのだった。]
(156) 2014/09/18(Thu) 22時半頃
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[蝶の声を背越しに聞く>>153 気が向けば地下へと誘う声音。少しだけ揺れる瞳でその声の主振りかえれば黒衣に包まれた背がそこにあった
ぺこりとお辞儀し、その気遣いに感謝する そして友と向き合った後>>156 ――二言三言、囁いた]
(157) 2014/09/18(Thu) 22時半頃
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[異国の単位は、何時かに読んだ本の知識をおぼろげに、頷き返す。>>154 些か、笑みに地上との差異を感じれば、横に座り軽く蝶に寄り添うように。]
女の気持ちを――?
[何故、と言葉に滲ませるも、何故、と単語にはしない。 言いたくない事を言わせないようにと、言葉の終わりを曖昧に暈し。]
恥ずかしい等と言う事は御座いません。 お教え致しましょう。
[腕を回し、無垢な表情の蝶を抱き寄せよう。
まるでこの場に似つかわしくない声色を奏でる唇に、そっと、甘く、唇で触れて。]
途中で止めて欲しい、こうして欲しいという事があれば、仰って下さい。
[と、念を押した。]
(158) 2014/09/18(Thu) 22時半頃
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[花の綻ぶ微笑が記憶の縁に掛かり、体温求めて月を抱いた。
気付かぬ内に蕾をつけて、知らぬ間に花弁舞わせ、 散花を知らず、四季を巡らせ年輪刻む。
そんな生き方を己は知らない。
自身は紛れもなく外の住人、境界線の向こう側に立つ。 夜な夜な翅を休めるは、飢餓を癒す為。
人の心を食い荒らす夜蛾は、やはり、蝶と似て非なる。 されどまた、―――彼も花とは似て非なる、>>151*]
(159) 2014/09/18(Thu) 22時半頃
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[ひらりと空気を揺らす手のひらに躊躇なくつま先を忍ばせる。>>142
間も無くして鼻を掠める男の匂い。 体躯に回る腕の力に頬を引き攣らせども口許の笑みはそのままに鼓膜を揺らす聲に耳を傾ける>>143
囁く色は、背に回る腕の力は、廊で書斎で視線交わした時とは別のもの。 抱かれながらも応えるよう蝶の翅へ伸ばそうとしていた指先は一度空を切り。 誘われるまま、格子の外を見やる。
そこには昨晩閨を共にした月下蝶と、寄り添うように傍にて香を漂わせる櫻の梢>>125>>126
乾いた咽喉は大した音もせずに喉仏を嚥下させ、その様子を双眸眇めて見やり]
…朽ちてしまった花より、瑞々しい櫻の蜜がお好きなのでしょう。
[掠れた声でやっと紡げば、寄り掛かるようにして体重をかけて一笑を送る。]
(160) 2014/09/18(Thu) 22時半頃
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[渇きつつある目尻の先に顔を近付けられたとして避ける様子も見せない>>144 されども徐々に花と蝶の温が重なり合うことに眉間を寄せれば、歪む唇。歯を立てぬように引き結んでは視線を逸らす。
やがて幕を上げるだろう悪辣な遊びには先程まで視界に収めた蝶の姿を探すように追って、その片手の黒布が失せていることに気付く>>124]
──はは…。
[震える声は咽喉を揺らして唯々嗤う。 一通り肩を揺らし終えれば、そっと顔を上げて熾烈な瞳に鼻を鳴らす。]
……成り代わりたいのは貴方の方では? 蝶が今更蛹のように葉に成りすまし、隠蔽することに何の得があるのか、私には分かりません。
[からからと花弁揺らし花は心底愉快そうに滲んだ瞳を歪ませる。 されど蝶の願いはこの宴にて絶対。 やがては情人のように胸元へ指先を伸ばし、そっと囁く。]
…お慕い申しております。 …ペティンガー様。
[名を呼ぶ声は小さく直ぐに空気溶け込む。果たして蝶の耳に届いただろうか。]
(161) 2014/09/18(Thu) 22時半頃
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[花主の部屋へと続く廊下は、今日に限って短い。憂鬱そうな灯りの道をくぐり、花主の元へと歩み寄れば。 今日の花は藤だと、しかし無理強いはするなと伝えただろう。 いつもよりも幾分か多い金を渡して。]
で、朱色のアレは今日どちら様が?
[昨日約束を交わした朱の花。 それを買い取ったのはどの蝶だと。 花主が口を割らなければ、「金は払った」と勝手に探しに行くだろう。]
約束破るのは、どうも……昔から嫌いなんだ。 一言入れて–––––––…
[言葉は皆まで続かなかった。 一言だけ。一言だけだと、言い聞かせるのは目の前の男に対してか、それとも己に対してか。
煩わしささえ感じて、金を投げるように寄越す。そうして、当てもなく地下へと降り立つ。*]
(162) 2014/09/18(Thu) 22時半頃
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座敷守 亀吉は、メモを貼った。
2014/09/18(Thu) 23時頃
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――……
[酷く強く、耳に、脳に浸透した「負の言葉」>>150 思わずぴたりとタオルに掛かる手は動きを止め、また息を吸うことさえ。
――朽ちると、ちいさくちいさく囁かれたその綴。 かの中庭の夏花のように、月光に照らしても生き返ることは無く …この花も、苗床を喪ったならば、その身を――綺麗な花弁を、ぼろぼろと零してしまうのだろうか。 其れはまるで、雫を垂らす人の様に。
されとて強い拒絶の裏、伺い見た花の顔は、「いつもの笑み」 雫の気など毛頭見せずに健気に咲く花。夜の櫻。 何処から見ても美しく、軈て散る花。刹那の夢。
ぱちり。ぱちり。 瞬きふたつ。牢に囚われた翅の代わりに狐色の睫が宙を跳ね。 枯れ朽ちるのならば水を遣ろうかと、開く唇は静かにこくりと腹へと下った。
どうせ今宵も、蝶は蜜をば吸う側、花を枯らす元なのだからと。]
(163) 2014/09/18(Thu) 23時頃
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…籠は窮屈で仕方が無いけどね。
[花が何に想いを馳せ、何を抱えるのか。 上を向いては月が煌き、下を向いては土色が咲く。 唯只管それを繰り返す真の花の気持ちなどは到底分かり兼ねるけれど ――夢物語ならば、いつかは王子が迎えに来るのに。なんて。
そうしてゆうるり再度手を動かし始めると、今度は髪先へと締めに上がる。 水分を無くした髪は、先よりかは柔らかに成っただろうか。 片手をタオルから外して見れば、その髪に触れては直に撫で――
――その際視界の隅にて見えた光景、淡藤が毒蛾の翅に抱かれている>>143事を知ったならば。紺瑠璃を大きくさせては揺らしたことだろう。]
…の、…毒蝶…
[掠れる音色は、震える声は、誰の鼓膜を突ついただろうか。 自分が欲した銀月に、安安と触れる蝶に抱くは嫉妬か、はたまた別の感情か。 その銀月が此方を見た>>160事など、狭まった視界では目にも入らず、ただ乾いて行く脳内と喉を自覚し得ては唇を噛み。]
(164) 2014/09/18(Thu) 23時頃
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……月は誰にでも優しいから。
[――それはまるで、幼子の対抗心を露わにしたもの。 睨む様にそちらを見詰めたならば、直ぐに逸らしては目前に揺蕩う蝶へと視線を落とし。 その射干玉の毛先から布がするりと抜けたならば、震えを抑えた声色で「出来たよ」と。…花に終わりを告げた。]
ねえ、キミ達って普段、何してるの。
[そうしてまたも紡がれるは、花の事。 空気を変えるかの様にまた、話題をすり替え。 その布団にごろりと寝転がったのならば、頬杖をついては丸窓を見上げて。また坐る花へと視線を移せば、ぽんぽんと先の通り自分の横を無言で叩く。]
キミはさあ、さっき中庭を手入れしてたみたいだけど。 …秋の花、なのかな。綺麗だけど、色彩が眩しかったよ。
[記憶を思い巡らしながら、視線を牢の床へと移し。 脳裏を彩る花々を思い出しながら、再び唄う]
(165) 2014/09/18(Thu) 23時頃
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[言外に何故?との言葉を聞けば少し頬が染まる。>>158]
…秘密。
[僕の笑みは恥ずかしげなものになっていたろうか。微笑んで答えた。
回された腕の暖かさについ身体が魅き寄せられる。 金糸雀は唇に触れる温かさにぱちくりと無垢な瞳をぱちくりとさせて。]
は、はい…。
[口づけが落とされたのだと分かると胸の鼓動が速くなった。]
じゃあまずは、脱がせてくれませんか? 自分で脱ぐのは恥ずかしいので。
[昨晩のことを思い出しまずは最初のお強請りを。]
(166) 2014/09/18(Thu) 23時頃
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[存外軽い。>>160
彼を抱いた最初の感想は、そんな他愛無いものだった。 寄り添う彼は玲瓏とした月光が人の形を得たよう。
彼の双眸に映る睦まじい宵仲、花籠では極当たり前の光景。 しかし、揺れた瞳を見逃さず、白衣に包まれた背をあやす掌。]
枯花を抱かせていると俺の腕の中で言うかね。 ―――…良いさ、多少の気鬱は加糖よ。
その顔は嫌いじゃねぇ。
[移り変わる自重を支え、己の膝の上へと招き。 両の体躯は密着を成して、互いの鼓動が布地越しに接近。]
(167) 2014/09/18(Thu) 23時頃
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そう見えるかね、お前さんも捻くれたもんよ。
[彼の憂いを肌で知りながら、花の宿命に小さく鼻を鳴らした。もしも、月下に閃く蝶を知らなければ、これほどに傷付き、美しい顔貌を拝む事は終ぞなかっただろう。>>161
乾いた笑い声は、とても愉快に聞こえなかったが、咎める事はなく、そっと首筋に唇を押し当てた。 肌理を楽しみ、皮膚下に走る血管から鮮血を集めて穿つ刻印。]
………良い子だ。
[幽閉した衛星は、別の男の名を慕い、情を余所に明け渡す。 そうして幾度も切り売りしてきたのだろう心を抱いて、片手を閃かせると指先に携えるは細い帯。懐より取り出した幅の広い漆黒の一巻。]
なぁに、やがて、誰も分からなくなろうよ。 誰の手かも、誰の匂いかも、誰の唇かも。
―――解からなくなろうや。
[呪文のように唱えて、拡げた帯は彼の瞼の上へと掛かる。 視界を閉ざす黒は光を遮断し、視覚を奪う本日の趣向。 ――――――彼を一層深い夜の闇へと誘うように。]
(168) 2014/09/18(Thu) 23時頃
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[友と別れた後白の着物に袖通し、白梅の香りに身を包めばすっくと立ち上がり]
……。
[鏡台をひと撫ですれば地下へと降り立つだろう 砕け散った鏡でも、一夜の慰めにはなれるだろうと 地下へと降り立てばさて銀の蝶はいたか、どうか 遅くに来たから、もしかしたら他の花を探して移ろい歩いているかもしれないが
そっと、地下の扉を開いた]
(169) 2014/09/18(Thu) 23時半頃
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[秘密、と頬を染める蝶。>>166 己より綻ぶ花に似た彼の纏う愛らしさに、瞳を細め。
薄く重ねただけの行為に動揺する様子がまた、]
……可愛らしい。
[悪意なく感じたままに呟き一つ。 強請られるまま、彼の上着に手をかけて、肌を曝け出していく。
白い首筋、悪戯に口付けてみたならば、動揺は更に大きくなるのだろうか。]
(170) 2014/09/18(Thu) 23時半頃
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―回想・廊下―
失礼以前に、客の前に顔色真っ青の花を出す奴があるか。 お前の監督不行き届きだろォ。
[何か失礼でも、と問う朧>>156にはあっけらかんとした様子で文句を垂れる。]
何があったかは興味はねェが、色艶出してからこっちに寄越せ。 ……別の艶が欲しけりゃお前も来い、な。
[離れる前に、綺麗に結われた髪のたばのおかげで露わになった額を手の甲で叩く。 お辞儀には気付いて気付かぬ振り。>>157 そうして、男は花主の元へと*]
(171) 2014/09/18(Thu) 23時半頃
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懐刀 朧は、メモを貼った。
2014/09/18(Thu) 23時半頃
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[地下に降り立った蝶は、彼方此方で始まる夜の空気>>168>>170に身を窶しながら空っぽの牢を探していた。
その中に昨晩口約束を交わした朱色が視界にはいれば、「一言」と念じて、息を、止める。 その時は、視線だけ向けて、何も語る事は無かった。すぅ、と静かに地下の奥へと進む。 そうすれば、いずれどの蝶花とも近くない籠の中を陣取って。
藤の花>>169の訪れを、煙に乗せて待った。]
こっちだ、藤色。
[姿が見えれば、手招き手招き花を誘った。 布団の上に鎮座した姿勢のまま大手を広げて花を迎える。その意図を藤の花が察するかは定かではないが。]
(172) 2014/09/19(Fri) 00時頃
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[背に回る手のひらの圧は依然として戯れるようなもの。 瞳を覗き込めば鏡のように映る蝶の貌。>>167
揺らぎはそのままに導かれた先に腰を下ろせば、泡沫の夢が薄っすらと浮かび上がる。]
……お嫌なら、添え木でもして下されば良いのです。
[曲がった唇のまま捻くれ者は言葉を紡げば咎める代わりに刻まれる印。 赤い花の形を模した痕に唾液嚥下し、体躯を拘束する枷が音を立てて蝶の元へと落ちていく。]
(173) 2014/09/19(Fri) 00時頃
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……ッ、
[耳元掠める聲は背筋に冷たい水滴を一筋垂らす>>168 貌を、指先を視線で追いつつも視界の月が眩むのは一瞬。 閉ざされた世界の中、口角を上げて花は綻ぶ。]
……趣味が悪い。
[恨めしいような言葉投げかけては、知らぬ男の胸元に寄りかかり、結局は小さく唇に歯を立てつつ。]
………触れて下さい、早く。
[周りから聞こえる囁きが満ちる牢の中で、甘ったるい声色を作っては強請った。]
(174) 2014/09/19(Fri) 00時頃
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[拒絶の声に、一度指先が止まるのが判りました>>163 切り離されてしまったかのような、僕と彼のいる房の中で 呼吸を止めた音さえもが、はっきりと耳へ届いたのです。
幾許か、同じく呼吸を止めました。
吐き出しそうになる呪詛は、仄紅い焔にくべて燃やしてしまいましょう。 軋む音など耳を塞ぎましょう、眸を逸らしましょう。 籠の『外』にて生きるを知らない櫻の『花』は 人様の涙のように花弁零すこともありません。
零れ落ちるのは、穏やかな笑み。
瞬きの音が聞こえるようでもありました。 唇が動きかける気配がいたしました。 けれども何も変わることなく 止めていた呼吸を元に戻したのでございます。]
(175) 2014/09/19(Fri) 00時頃
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