270 食人村忌譚
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[誤解のないように、加えておきたい 赤子を手放すその訳は、口にした理由、ただそれだけだ
この地に生まれ、やがて土となり還る 輪廻にとらわれたこの子の行く末に、幸あれと
たった一度の交わりで、生を授かった私の子…… 『ミナカタの子』>>0:70に、幸あれと――――]
―回想/二十余年前の神社―
(24) 2017/11/23(Thu) 03時頃
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―容の自宅から離れながら―
[その時分を生きた者なら、察する者もあろうけど、 源蔵の帳簿>>0:167に描かれるには、 時をさかのぼりすぎていたかもしれない
赤子はすぐに亡くなって、ひっそり弔われていたかもしれない 巫女が他の女から子を引き継ぐこともあり得れば、 『約束』が遂行されていたかも、分からない
これだけ近づいても、容がそうだとは、 血を引いた子、『捨てた』子なのかは分からないし 仮にそうだとして、なんだというのかも分からないけれど
時折あの赤子と重ねてしまい、江津子なりの生きる術>>0:97を 伝えてしまうことも、まれにある]
ごぉろん ごぉろん ダルマさん――――
[懐かしい唄を口ずさみながら、歩みを進めっていった]
(25) 2017/11/23(Thu) 03時半頃
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―丞の自宅―
[ここにたどり着いた時>>0:125には、 戸を叩けど求め人は不在だった>>0:213 鬼の一字に礼をして、鍵のない戸をあけて中を確認するも、 がらんどうの研ぎ場が見えただけ]
よく、すれ違いますね
[機が悪いのか、相性なのか、こうしたことはままにある だから、幾度か行ったように、鉈と肉をその場に置くと、 よろしくお願いします と呟いて、両手を合わせた
そのまま自宅へととって返し、その夜は床についただろうか**]
(26) 2017/11/23(Thu) 03時半頃
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うん! 食べたいもの、いっぱいある、から。 いっぱい、お願いしたい!
[容の言葉に、元気良く頷く。嬉しそうに、それは嬉しそうに、いらえをした。続く言葉にも、元気良く頷く]
うん、早く、おうち帰るね。 ちゃんと、早く、おうち帰るね。
[容と娘とでしばしば交わされる約束、それが果たされるかは、五分五分だ。娘はともすれば何かに気を取られて、何かに夢中になって、ひたすら辺りをうろついたり何処ぞに居座ったりなどするし、ふと男に連れていかれる事も多い。 母と二人暮らしていた小屋に、娘は今も一人住み続けている。容や、ゆりや、村人達にかわるがわる世話をされて、今もようなく、暮らし続けている**]
(27) 2017/11/23(Thu) 03時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2017/11/23(Thu) 03時半頃
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― ― [まだ幼かった頃の事だ。 風呂敷を手に、ススムが一人置き去りにされた家を訪れる姉妹が居た。 中身はその日によって様々で いびつな握り飯だけの事もあれば たくあんが添えられていた事もあったり 豪勢にも副菜がついて来たこともあった。 幼い頃のススムは、その出所を気にする事もなく ただ貰える食事に感謝するばかり。 いる姉、ゆり姉と慕っていた>>0:111のは昔の話。
成長するにつれ 差し入れられるものの裏に、人間模様が見えてくる。 種馬として育てようという打算 責務を果たしているという偽善感 ――世話焼き筆頭だった彼女らの裏までも、勘繰りそうになったころ]
(28) 2017/11/23(Thu) 08時半頃
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[巫女が世代交代を果たす。 その次の差し入れから、容が一人訪れるようになった。 理由を聞いたことは無い。 故に、ススムがゆりを避けるのは、 憶測の中の彼女の像が歪んでしまった所為でもある。
姉から巫女という職を奪った妹 その勝手な解釈を他者に話したことはなく 故に正す村人はいない。
農家の娘となってから、容の差し入れは野菜が多くなった。 変わらず自分を養ってくれる彼女には、感謝している。 姉への感謝が募るほど、妹のいる神社から足を遠ざける悪循環はどうしようもないまま]
(29) 2017/11/23(Thu) 08時半頃
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[目覚め、身支度を整えたススムは、学び舎へと向かう。 今日の授業内容であれば 恐らく生徒は昨日よりも格段に減るだろう
汲み置いた水瓶から柄杓で一杯。 朝食を終えて、家を出る。 鞄の中には、紙の束。 蓄えていく知識は、時に生活に不要なものも交じる**]
(30) 2017/11/23(Thu) 08時半頃
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――>>4>>5>>6―――
うん、覚えてる。 そっか、あのおじいさん死んじゃったんだ。 凍え死ぬって……次は暖かいところで産まれるといいね
[伝承を私は信じてる。 熱いうちに汁を啜り、寒かってあろうに温かい体内へとソボロを流せば熱さで喉をトントンと数度押した。 あまり話した思い出はないけれど、たまにあったおじいさんの笑った顔を思い浮かべれば転生できますようにと祈りながら箸を進めた。]
(31) 2017/11/23(Thu) 11時頃
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すごく助かってるよ。お腹空かせてひもじい思いをしてるよりは全然いいし、弔えることも出来たから、負い目もない。
[貰いものでいつまでも食い繋いでるわけにもいかない。 余裕が出来たなら母の耕してた畑なども手入れしてきちんと一人で生きていくくらいにはなりたいと思っていた。 だからミナカタの提案は有難く、私が手伝えるならとあっさりと承諾の意思は沸く。]
ん……私でもなれるのかな?
(32) 2017/11/23(Thu) 11時頃
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火傷はもう大丈夫だけど、畑の手入れも時間かかるし 私に出来ることならやりたい
[箸を置いてミナカタを見つめ、その顔は真剣な顔、同情の視線にいつまでも耐えられるほど卑屈に生きてきたわけでもない。病気や怪我を治すミナカタの仕事はなりたくてもなれるわけでもないから、その機会が訪れることは志乃にとっても嬉しい*。]
(33) 2017/11/23(Thu) 11時頃
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― 現在・自宅 ―
[家に帰れば人の声と気配がした。 弟だけのものではなく、どうやら客がいるようで。 中へと入ればそこにいたのは教え子がいた。]
おや、進君いらっしゃい。 これは君が……?
[歪な握り飯を見て問いかける。 己が握り飯を作った記憶はないし、何よりもう少し上手く作る。 弟が作ったようにも見えず、ならば残るは彼しかいない。
話しながら荷物を置いて袖を捲り台所へと立つ。 味噌と僅かばかりの根菜を出して包丁で刻みながらいりこ出しをとり、刻んだ野菜を煮て味噌をとく。 簡単に作った味噌汁を椀に注ぎ教え子の前に置いた。]
(34) 2017/11/23(Thu) 12時半頃
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錠をここまで連れてきてくれたんですね、ありがとうございます。 弟は君に出会えて運がよかった。
他の誰に会っても連れてはきてくれたでしょうが……。
[あまり村人の手を煩わせては何時か罪人として裁かれるかもしれない。 これはずっと頭にこびり付いて離れない考えだ。]
食事が欲しいのなら何時でもここに来なさい。 君は一人暮らしですしたまには誰かと食卓を囲むのもいいでしょう。 まあ、ここも男所帯ですから容さんや江津子さんのような繊細な料理など出てきませんけどね。
[教え子を心配する教師のような顔をしてそう言った裏には打算もあった。 弟と懇意になんて面倒を見てくれれば、なんてそんな事を考えている。 己が死んだ後に残された弟がどうなるのか。 それだけが心配で堪らない。
それに対する返答がどうであれ昼飯を食べ終わった後は幾つか会話を交わし。 後片付けは自分がするからと断って教え子を帰しただろう**]
(35) 2017/11/23(Thu) 12時半頃
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― 自宅 ―
あぁうん悪いね、頼むよ。
[>>1筋肉の少ない痩躯は、成人男性にしてはおそらくだいぶ軽いはずだ。 進に礼を言い、身を任せ、布団の上に身を横たわらせてもらう。 たいして広くない家だ、寝転がったままでも台所まで十分声は通るだろう。]
梅干しの壺、分かるかな。 漬物とか足りなかったら、床下に糠漬けがあるからー。
[ゆるく自分で足をもみながら、声をかける。]
(36) 2017/11/23(Thu) 13時頃
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……ん? あれ、僕のぶんまで作ってくれたんだ、ありがとう。
[>>2進が拵えてくれた握り飯は、少し不格好だった。 けれど自分は、この不格好な握りすらままならない。 ありがたくいただこうと、受け取って、一口目を頬張って]
……んぐ……。
[そこに、兄の戻る気配>>34を感じ、急いで租借し、呑み込んだ。]
お帰り兄さん。 うん、畦道で難儀してるところを助けてもらってね、お礼にご飯でもって思ったんだけど、逆に僕が握り飯を作ってもらっちゃったよ。
[兄は、さっそく台所へ向かったようだ。 進と話し、味噌汁を作っているような気配を感じながら、もくもくと握り飯を食し、少し薄い茶で流し込む。]
(37) 2017/11/23(Thu) 13時頃
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そうだね、いつでも来てくれて構わないよ。 兄さんが忙しい時でも、誰かいてくれれば僕も助かるし、進くんも食事ができるし丁度いいんじゃないかな。
[>>35兄の打算には気付かぬままに、相槌を打つ。 脚が病み始めた若い時分は、兄以外の人間に頼るなど、みっともないし申し訳ないと思い、散々兄に苦労をかけたし、自身も必要以上に苦心した。 だが年が経つにつれ、誰かを頼るという要領も得てきた気がする。
……しかし、そうして、常に施しを受ける身としては、同時に、それらをいかにして返そうかということも、考えてしまう。 いま自分ができる仕事といえば、兄の書物の整理や修繕、手伝い、あとは縄を綯うなど、家でできることが大抵だ。 女性になら、子種をという選択もあるかもしれないが、女自ら腰を振ってくれなくては碌に事を進められない、しかも病人の胤など、好きこのんで欲しがる者は、あまり多くないのではないだろうか。]
(38) 2017/11/23(Thu) 13時半頃
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[握り飯に、味噌汁も加わった食事は、質素ながら腹を満たすには十分だった。 兄以外と話しながらというのも久しぶりで、つい、飯をおかわりなどしてしまった。]
じゃあ、今日はほんと世話になったね。 また何かあったら、頼むよ。
[そして食事が済み、進を見送れば、またいつものように兄と二人の時間となる。 兄の、後片付けをする音を聞きながら、自身は薬を飲んでこうして横たわっていることくらいしかできない。]
薬、そろそろ減ってきたし。 明日あたりミナカタさんに頼みに行かないとなぁ。
(39) 2017/11/23(Thu) 14時頃
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………………。
[そして、ふと]
あのさぁ。 兄さん……。
……今夜は、いっしょに寝ても……いいかなぁ……。
[兄の背に、小声でそう呟いたのは。 昼間、進と話したことのせいか。 ただいつも以上に、どこか、兄は己のものなのだという欲求が強まっていた。
その肉も、血も**]
(40) 2017/11/23(Thu) 14時頃
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抜荷 錠は、メモを貼った。
2017/11/23(Thu) 14時頃
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―翌日/養鶏に勤しむ、とある農家の庭で―
帰りゃんせ――――>>0:7
[抱いた鶏を撫でながら、その首に指を絡めたところで 「なんで」>>#1との呟きを耳にし、面をあげた 足元を覆う、たくさんの鶏の囀りをも越えて 耳に届くは出鱈目な歌>>#2>>#3]
愛理さん ごきげんよう
[そう声をかけたけれど、彼女は一瞥もせずに 奇妙な歌を携え、ただただ、この場を通り過ぎていく 江津子は、その姿を追いながら
ゴッ――――
手にした首をへし折って、頭を垂れて 見送った 歌は止むことなく延々と、まるで、取り囲むように 『平穏な村』を、巡っていった*]
(41) 2017/11/23(Thu) 15時半頃
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―続・養鶏に勤しむ、とある農家の庭で―
『鶏の育ちは早くてかなわん 潰せど捌けど 追いつかん』
[これは、低い柵に囲われた、この養鶏場の主の言葉 先約として優遇された愛用の獲物は、丞の元>>8に さらばと主より借りた包丁は、切れ味が悪く、難儀する ようやく首を落とした幾羽を、庇に逆さに吊るしたところで 覚えた気付きに江津子の眉根は くっと小さな皺を寄す]
……足りませんね
[足元にたむろする鶏の数が合わない 愛理の歌に気を取られた>>41隙に、逃げ出した一羽がいるのだろうか]
(42) 2017/11/23(Thu) 16時頃
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[急ぎ、主に報告する よくあることだ と主は笑う 村の誰かが届けてくれよう、そう主の『鈍(ドン)』は笑うけど それでは江津子の気が収まらぬ 謝礼の卵も、受け取れぬ]
急いで、探して参ります ……本当に、申し訳ありませんでした
[無刀で表に飛び出せば、きょぉろりきょろりと眼を走らす 普段の微笑みも弱々しく、すれ違う村人ごとに訊ねるも 実のある応えは返ることなし
鶏さぁんと呼びかけながら、江津子は村を、巡りだす*]
(43) 2017/11/23(Thu) 16時頃
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[農家の朝は早い。 昨夜汲んでおいた常温の水を一杯飲み、畑の世話をした。 米が終わったあと、冬に向けて種を植えた畑は、収穫までまだ間がある。世話をして、土の色を見て、雲を見上げて今日の天気を想えばそれで終了だ。 朝食は冷や飯でいい、と考えながら家に戻る途中、ふらふらと歩く愛理を見かけた。>>#0 視線は向けない。 お互いに、そこにいないかのようにすれ違う。
狭い村だ。 閉じた村だ。 その理由は知らぬとも、気が違ってしまったような振る舞いをする者は、この村においては珍しくなかった。 久しぶり、だと思うくらいのこと]
(44) 2017/11/23(Thu) 17時頃
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[朝飯を済ませれば、昨夜乾かしておいた鉈の様子を見る。 柄が濡れていないことを確認して、口金を嵌め、目釘を打ち付ければそれで完成。 実用のための鉈だ。刃以外の部分は磨いてもいない。美しさなどは欠片もないが、ただよく切れる、というだけで十分であろう 出来上がった鉈をぞんざいに包むと、江津子の家へ向かおうと戸を開ける。
風にのって「鶏さぁん」と呼びかける声が届いた。>>43 江津子の声が響くのはめったにないことだが、それでも日常だ。 頼まれた時と同じく戸の外へ置いてもいいが、少し考えて声の下へ向かうことにした。手にした包みで用件はすぐに知れるだろう。途中、鶏を見つければ捕まえてもいい。また逃げ出したのだろう、そう軽く考えていた]
(45) 2017/11/23(Thu) 17時頃
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―鶏さんを求めて―
[右へ、左へ、逃げた鶏を求めて彷徨う 久方ぶりに、胸に焦燥が宿っている 遂行しなければならない 託された『仕事』は恙なく そうしなければ――――
気もそぞろに眼を走らせば、目に付いたのは丞の姿>>45]
今日は>>26お会いできましたね 丞さん 昨日は、不精なお願いで、失礼いたしました
[鶏はその手にあっただろうか ともあれ、手にした荷物、愛用の一物だろう包に気づいたならば、 まず述べるべきはその言葉 彼のもとへと歩みより、微笑みとともに頭を下げた]
(46) 2017/11/23(Thu) 17時頃
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[鶏の一羽くらいは捕らえてみたものの、それが探している鶏かどうかは知れず。といっても囲いの外にいるならば、それは誰のものでもないはずだ。 首を捻り大人しくなった鶏と鉈で塞がった両手]
いやぁ、 俺は大抵畑にいるからな 肉、 ありがとよ
[対価は貰っているのだから問題はないとばかりに、少し迷う素振りの後両方の手(の中のもの)を江津子へと差し出してから]
おっと、これじゃ両手が塞がっちまうな これでよけりゃぁ届けよう 違うならば俺が食っちまうが、 どうなんだい
(47) 2017/11/23(Thu) 17時頃
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― 翌日 ―
にー。 にー、にー。
にゃー。 にゃー、にゃー、にゃーっ。
[日が沈み、また昇って。朝の村を、娘はぱたぱたと駆け回っていた。空き地めいた材木置き場の片隅、灰の縞柄の一匹の猫を追って。呼ばわるように鳴き真似しながら、右往左往に]
――あっ。
[その途中。娘の意識が、ふと、他に向いた。 見えたの、は遠く歩く、一人の少女、愛理の姿。彼女の出鱈目な歌を、娘は真似たり、別の出鱈目を歌ったりと、その度「一緒に遊んで」いるのがしばしばだった]
(48) 2017/11/23(Thu) 17時半頃
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あいりー! あいりー、おはよー!
[愛理に向かい、大声で呼ばわる。ぶんぶんと大きく手を振ってみせる。と、愛理は気が付いた様子で娘の方を向き]
? ……行っちゃったー。
[だがそのまま、去っていってしまった。それを見ると、娘は少し残念そうにして、 ただ、すぐにまた、猫を追い始めた**]
(49) 2017/11/23(Thu) 17時半頃
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看板娘 櫻子は、メモを貼った。
2017/11/23(Thu) 17時半頃
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―回想:母が死んだ日・その後―
[突如農家を名乗り始めた巫女の姉へ 向けられた視線は様々だったと思う。 湧き出た噂話に、私は否定も肯定もせず、 噂を吐き出そうとする舌先があったなら、 自らの力で作った料理を突きつけ、恩を売る。
そうすれば、人の噂など直ぐに薄れるものだ。 ましてや、尊い巫女様当人でないと言えど その職に泥を塗るような下衆の勘ぐりを、 大声で話すことなど出来まい。
隠しきれない哀れみ、奇異、好奇の眼差しを 時折感じながらも気付かない振りをして、 私は畑を耕し、作物を育てた。]
(50) 2017/11/23(Thu) 17時半頃
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畑は落ち着いた時期>>44だとしても お世話は欠かせないものですね そう言っていただいて、嬉しいです 相互に託しあえる仲も、とても尊いものですから
[丞から差し出さ両の手を見>>47、くたりとした鶏に安堵する 潰せど捌けど追いつかん>>42のなら、一羽余分でも構わないだろう 丞の言葉から、焦りの声が聞かれていたことを恥じらいつつも 鈍(ドン)の養鶏場での出来事をさらりと話し]
では、まずこちらから
[と、愛用の鉈を受け取った。 それを、常のように腰に差して、続いて鶏に手を伸ばす]
(51) 2017/11/23(Thu) 17時半頃
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残念ですが、そちらも託されたものなので…… お礼に卵をいただく予定ですので、そちらでよければ、後ほど必ず
[命を失った鶏を、赤子のように胸に抱き 残る片手で、鉈をすらりと抜き放った 武骨な獲物を陽に透かし、刃先を見つめて、ほう、とつく 抱いた鶏の首筋に刃をあて、ひと思いに薙ぎ払えば ことり、と落ちる、小さな首]
御見事なお手前ですね…… どうしたら、これほどの業を得られるのか 素晴らしいお仕事を、ありがとうございました
[胸を鮮血に湿らせながら、再び頭を下げたのだった*]
(52) 2017/11/23(Thu) 17時半頃
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[丞さんに教えを乞うた判断は間違っていなかった。 与えられる知識はどれも適切だった。
元々、料理も食べることも好きだ。 好きに裏打ちされてたとはいえ 小娘に教えるのは骨が折れたろうが、 彼は、根気よく知識を与えてくれたと思う。]
もし、私が丞さんより先に死んだ時は、 ……いいよ。私の舌と頬、食べても。
だから、農家の心得を、やり方を教えて。
[あの時、突如語られた彼の好みの話は、 即ち、対価を求めるものだろう。そう推し量った。 自分の死に実感を持たない人参を好む娘は、 あっさりと頷いて頭を垂れただろう。
はるか未来の話より、 ただただ、巫女の影から逃れたかったのだ。]
(53) 2017/11/23(Thu) 17時半頃
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