64 色取月の神隠し
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[椅子へと戻り、串に刺さった団子へかぶりつく。 よく味わったそれを、飲み込んでから]
居ながらにして、隠世の里に手え突っ込んで、 人ひとり引っぱり戻して来る子だよ。
さっきまで一緒に喋ってた色男が、 その黒い烟ん中に見えてるんなら――怖くは、ないんだろうさ。
[あまり驚かない様子で口を挟んだ]
(10) 2011/09/20(Tue) 22時半頃
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さあて。
あるいはあの子、鵺より怖い、大妖かも知れないねえ。
見ようによっちゃあ、ね。
……そうさ、それもさ。
何だって己の裡に、選りにも選って人の子なんぞ見出すんだ。
人の子なんか、己には仇か獲物でしかないというのに。
くそう。余裕綽々で団子なぞ食いやがって。
ああ、これ、旨いよう。
あんたも食べれば……って、今は無理か。
さっきはちゃんと、あたしの分も頼んでくれてありがとね。
たまこが包んでくれる前に、こんなことになったけど。
――難しく考えるこたあ、ないんじゃないのかねえ。
あの子に馴染みのあるあんたの姿が、人の形をしてるってだけで。
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[宵闇に似た黒がその形状を波打たせる様を見詰める。 漆黒は底知れぬ不安を煽る色だという。 まして、ひとは本能的に闇を恐れるもの。 古の時代ならばどれだけ畏怖すべき、忌避すべきものと映ったことだろうと思えば、唇を静かに引き結んだ。]
―――… “何故って……藤之助さんだから かな”
[椅子に戻っていた芙蓉に気付けば、驚いたように表情を変えた。 彼女が良く似た意味のことばを紡いだならば、その手にある団子に少し笑んでから頷く。 鵺に恐れを抱かぬ理由は、見えているものに他ならない]
“………もし、先に鵺さんの方に会っていたとしても 見えるものは変わらなかった と、何となく思う”
(11) 2011/09/20(Tue) 23時頃
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“だから、怖くないよ ”
[ほんの少し首を傾けて。 ひとよりも永い永い時を生きた藤之助が、 何を見、何を知り何を思い、世を渡って来たのかは、 正確に推し量ることは叶わないけれど。]
“……ただ、姿を見せてくれた後も、 やっぱり、痛むのかな って”
[それは心配だったよ、と。 最後にぽつりと、独り言のようなことばの破片を零す。 据えられた視線は逸らさずに、見詰め返して。]
(12) 2011/09/20(Tue) 23時半頃
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……ねえ、ひなた。 藤之助だから怖くないって、あんたは言うけど。
大妖と恐れられた、あやかし。 今は人の世に紛れるために、大人しくしてるけど……これまでに何人も、平気で殺めてきたとしたら?
昔よりはちょいと力を落としちまったけど、あんたのことなんか、その気になりゃ頭から喰らっちまうかも知れない、そんなあやかしだとしても? それでも、怖くないのかい?
(13) 2011/09/20(Tue) 23時半頃
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[己の問いに、事も無さげに日向が答えれば 鵺は――それこそ"鵺を見た人の子のように"得体の知れないものを見たような、そんな心持ちになる。
「鵺の姿を捉えた瞳には、何が映るのか」
当人だけは決して知ることの叶わないそれを 鵺は日向の言葉に見たのだ]
……痛む? この、脚の金創のことか。
[毒気を抜かれた態で、日向の問いに鸚鵡返しの様に答えて 心配だったよ、との呟きが耳を打てば、不思議そうに僅かに首を傾げる]
(14) 2011/09/20(Tue) 23時半頃
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[芙蓉の言葉に、瞳をぱちりと見開いた。 近くに腰掛けた彼女に、首を向ける。]
“食べるの―― ひとを”
[小首を傾げて、声無き声で漏らす感嘆詞。 大妖という言葉は、これだけの闇を纏えるのだから然もありなんと、自然に受けれて頷いた。]
“悪い事をしたり、怒らせたりしたらでは なくて だれでも、いつでも 無差別に ”
……?
“そりゃあ 勿論、 何もしないのに食べられるのは嫌だけど”
[と、難しい顔をして思案の仕草。 そうなの?と目で問うた。]
(15) 2011/09/20(Tue) 23時半頃
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勿論喰らうさ。
己は神さんでも何でもないからなぁ。 無辜の人の子だろうが悪党だろうが、喰らいたいときに喰らうのさ。
……どうだ、恐ろしかろう?
[眼差しでの問いに、やや調子を取り戻し、答える]
(16) 2011/09/21(Wed) 00時頃
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芙蓉は、何やら問うている日向の視線>>13を受けて、そのまま鵺に首を傾げてみせた。
2011/09/21(Wed) 00時頃
芙蓉は、日向に話の続きを促した。
2011/09/21(Wed) 00時頃
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“脚と――― あとは、色々なところに。 古いものも、最近のものも…”
[淡々と並べる言葉。 自負心の強い大妖への遠慮もなく、ただ問われたことに答えを。 それから、芙蓉の首が静かに傾くのを見たなら、 再び藤之助――鵺へと視線を戻した]
“人と 似てるね”
[ひとを家畜のそれと貶める訳でも、 あやかしを人と同等のものと見なすわけでも、ましてやその所業を咎める含みもなく。]
(17) 2011/09/21(Wed) 00時頃
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“そういうものなら、 そういうものなんだな って。 またひとつあやかしの事が分かった、って…”
……… [返答はしごく真面目に、淡々としたもの。 ふと手を止めて、その場の空気を窺った。]
(18) 2011/09/21(Wed) 00時頃
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……ひなた。
[綴られる文字を読まずとも、淡々とした手の動き、その表情。 茶の双眸の奥に、静かな好奇心が垣間見える気がした>>17>>18]
あんたは、もっと、あやかしを―― 知りたいと、思うかい?
ねえ、藤。 あたしがこの子、やっぱり里へ来て欲しいって言ったら、どう思う?
(19) 2011/09/21(Wed) 00時頃
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己らと、人の子が、か。
[人と 似てるね――日向が地に刻む言葉に視線を落とし その意味するところを思う]
――――……。
こんな危うい人の子は さっさと喰らっちまう方が、良いと思うがね。
……まぁ、好きにするが良いさ。
[芙蓉にはそう謂うけれど、最早、鵺に日向を喰らうつもりはない。 それどころか、今なら日向の言葉の欠片>>12を 素直に受け取ることが出来るような、そんな気さえしていた]
(20) 2011/09/21(Wed) 00時半頃
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危ういから、さ。 この子には、ちゃあんと知って欲しいのさ。
[鵺の答えに、日向を見つめ>>12]
ただ恐れるでもなく、怖いもの知らずの情けをかけるでもなく、 あやかしのそのまんまを、ちゃあんと、ね。
現世と隠世、繋ぐ力を持ったなら、 きっと両方、知ってた方がいいよねえ。
それにあたしも――ひなたを、もっと知りたいねえ。
(21) 2011/09/21(Wed) 01時頃
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[問いが降り、静かに芙蓉を見詰めた。 読めない文字でも、この手の動きを追って、 彼女も恐らくは、知ろうとしてくれている。]
―――… “……うん”
[小さな頷き、間を置かずもう一度。]
“うん。知りたい。 私は、道の先を知りたい。 あやかしのこと、あやかしの世界、芙蓉さんのこと、藤之助さんの こと”
[決め事が一瞬だけ手を止めたけれど、確りと地に刻み付ける。 芙蓉と、藤之助―――二人を見詰めれば、 口元がなだらかな弧を描き、ゆると微笑む。]
(22) 2011/09/21(Wed) 01時頃
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――ありがと。
[返ってきたのは、頷きと、微笑みと、 しっかりと地に刻まれる文字>>22]
来てくれるって、思ってたよ。
(23) 2011/09/21(Wed) 01時頃
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で、ね。 藤、この子はあんたが里まで連れて帰っておくれ。
[いつの間にやら団子を食べ終え、指先を舌でぺろりと舐めてから、続ける]
さっきたまこたちを送って行ったとき、あたしがあんまり里に近づいたら、道がぐらついたのさ。 じんえもんのときは、ほとんど里の入り口まで行ったんだけどねえ。 ありゃ多分、辰次がまだこっちにいたから、道がもってたんだと思うよ。
この村に強い縁のあるあやかしが、こっちに残ってないと、道が途切れちまうかも知れない。だから、藤よりあたしが先に帰るのは、危ないのさ。――頼むよ。
それにあんただって、この子、嫌いじゃないんだろ?
[鵺の顔、覗き込むように]
(24) 2011/09/21(Wed) 01時頃
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たくさん、その目で、見ておくれ。 人を喰らう奴、化かす奴。 人に憎まれ祓われる奴、吉兆だなんてまつりあげられる奴。 人なんぞ見たことも無いまま、里の奥で暮らす奴。
そのまんまの、あやかしたちを。
そうして、ひなたは、あたしらに、現し世のこと、話しておくれ。 あんたの声で、聞かせておくれ。
[それを思い浮かべるのか、薬売りは、夢見るように微笑む]
そして、いつかは、きっとまた―― みんなで祭りに遊びにこよう。青葉の村の、このお祭りに。
[日向へそっと手を伸ばし、明るい色の髪を撫でようと]
(25) 2011/09/21(Wed) 01時頃
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結局、あたしの好きなようにさせてもらっちまったねえ。
でも、きっとこれで、里はもっと楽しくなるだろうさ。
綺麗どころも、増えるし、ねえ?
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……望んで隠されるとは、何とも物好きなことだな。 [隠世に行くことを望む日向に、ぶっきらぼうな言葉を向ける。 眼差しと共にゆるり微笑みを向けられれば、鵺は何ともやり辛そうに視線を逸らした]
分かったよ。 けど、己が前に里に戻ったのなんざ いつ以来のことか覚えちゃいないくらい、昔のことだからな。 迷わない保障はないぜ。
[日向を里まで託されれば、諾う]
(26) 2011/09/21(Wed) 01時半頃
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藤之助は、芙蓉が、この子、嫌いじゃないだろ――と、口にし 覗き込むようにされれば渋面を向けた。
2011/09/21(Wed) 01時半頃
自分の好きなようにするのは、あやかしの本分だろう?
里が楽しく、か。
己は綺麗どころが揃えば、それで良いさ。
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“そろそろ 青葉村の祭りも御仕舞い。 繋がっていられるのも、もう少し…なんだ”
[祭り囃子に、灯を滲ませる吊るし提燈。 面を付けた村人たち、手には林檎飴。 それらをそっと振り返る。]
“今度来るときは……皆、一緒がいいな”
[伸ばされた芙蓉の手が、柔らかく髪に触れた。 話をしよう。声を聞きたい。そんな言葉には、強く頷く。 何やら視線を逸らすひとにも、首を傾げながらくすりと笑んだ。]
(27) 2011/09/21(Wed) 01時半頃
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ありがと、藤。
なあに、あんたが可愛い子と二人で迷いそうになったりしたら、血相変えて探しにくるのがあっちにいるだろ。
[軽口を叩いてから、まっすぐ鵺を見つめる>>26]
ひなたをよろしく。 あたしも、すぐに後から行くよ。
(28) 2011/09/21(Wed) 01時半頃
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“それじゃあ 案内、お願いね。――藤之助さん。”
[どっち、と迷いながらも、 今は慣れた呼び名を口にすることにして。]
………
[一度腰を折って、傍に佇む古木の根元に、 買ったばかりの風車をそっと挿した。 いつかまた、迷わずに此処を目指せるように、迷わぬように。 後から来るという芙蓉に一礼し、行こ、と見上げた。]
(29) 2011/09/21(Wed) 01時半頃
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[ふと短い沈黙が訪れれば、祭り囃子が聞こえる。 楽しげに笑い、行き交う人々の声]
きっとまた、来ようね。
[柔らかな髪を撫でていると、首を傾げる動きが伝わってきた。>>27 つられるように笑んでから、少女を鵺の方へ促す。
道しるべのように残された風車を、しばし見つめて>>29]
さあ、先にいっておいで――
[やがて、ふたつの影が消え、 のこったひとつの影も消え、
賑わう夜を照らす提灯、ひとつ、ふたつとだんだん消えて、 今年の祭りは終わるのだ]
(30) 2011/09/21(Wed) 02時頃
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[風が吹き、山を撫で、木々の葉が色を変える。
色取月の神隠し、その行く先は――
未だ終わらぬ、あやかしたちの祭り**]
(31) 2011/09/21(Wed) 02時頃
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[くるり、くるり。
音無く回るは、籠目の紋の―――**]
(32) 2011/09/21(Wed) 02時頃
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薬売り 芙蓉は、メモを貼った。
2011/09/21(Wed) 02時頃
ありがと。
あんたが好きなことできたかなって、ちょいと気になってさ。
まあ、里でまた、楽しくやろうよねえ。
ああ――いい祭りだった。
先に帰った皆に会うのも、楽しみだよ。**
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藤之助、ね。
[適当に拵えた名なんだがなぁ、と思い けれど、鵺さん、と呼ばれるのも調子が狂うしな、と頷く]
……あぁ、先に行ってるよ。
[軽口を叩く芙蓉に軽く手を挙げてみせ 行こ、と男を見上げる日向に 道行を迷わぬよう、黙って手を差し伸べる]
――――……。
[やがて祭りが終わる頃には 村人達も、神隠しのあったことに気付くだろう。
けれど、隠された者たちが何処へ去ったかは 古木の根元に挿された、標たる風車の他に知るものはなかった――**]
(33) 2011/09/21(Wed) 02時頃
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子守り 日向は、メモを貼った。
2011/09/21(Wed) 02時半頃
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