194 花籠遊里
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[近付く宵闇色に、焔は半歩後ずさる。
堪えるのが花としての生き様か。
触れる距離に飲み込まれ、記憶に焼け付いた痕が身体を強張らせた。]
決して、そのような……ッ。
[否定は僅かに悲鳴の音色を帯びる。
淫靡に委ね始めるべきまで張った熱が、怯えに急速に包まれて、混乱する。
笑みは薄れ、侵食する水音に跳ね、首筋への痛みに息を呑み、唾液に濡れた眉根をさらに寄せ。]
……手伝い、など、
花、主様、お、やめください……
[肌に触れる黒い絹さえ冷えて感じる。
別の生き物のような指先に動かされ、熱くなり過ぎた全身が震える。
羞恥と快楽に上がる小さな声が、花主様の耳元へ。
余裕は剥がれ、剥がされて。]
あ、……あっ、駄目です、
花主、さ、まっ、もう……
[退路は絶たぬ。
けれども逃がさぬ。
否定紡ぐ口許に笑みは消え、
本来の“丁助”が露にされていく。]
素直で可愛い、丁助。
ほうら、男に見られながら
ほうら、男に詰られながら
ほうら、己の芯を己で持って
お前の熱はどうなっている?
[下部からも耳からも犯すは水音。
やがて堪えきれず飛沫をあげるか。]
[果てたのなら、リヤサに白が飛び散ろう。
厭わず、構わず。
次には果てたばかりの肉棒に直に触れ。]
果てていいなんて誰が言った?
初めも我慢ならずに吐き出していたなあ。
その後、私に突かれて狂い悶えたのだったか。
けれども、あの時は甘やかした。
今日はちゃんと“仕置き”が必要だ。
[そうして落とす、優しい口付け。
啄み、吸い、絡めては嘗め。
まるで愛しいものに落とすそれ。]
さあ、丁助。
私によおく見えるよう。
―――机に乗って、足をお開き。
[揺り椅子には座らず。
こんこんと重厚な机を鳴らす。
自ら座れ、自ら開け。
深く濁った闇夜が見詰める。]
や……ぁっ、あ……
素直なん、かじゃ……
あぅ、あつくかた、の……が、もう……ッ!
[いやだと頭を振り、蕩けた声を響かせる。
身を震わせ、白に弾けた熱が黒い布地を汚す。
呆けていられたのは僅かな合間。
白濁が垂れたものに触れ、冷えた指先が音を立てる。]
もうし、わけ……ご、ざ、ませ……
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[あの日も、息を切らして同じように謝罪した。]
(110) lalan 2014/09/26(Fri) 18時半頃
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[未知に翻弄される恐怖に涙を零し。 教えられる感触に善がって。
初めては、ひたすらに、与えられるものに縋り付く様な夜だった。]
(111) lalan 2014/09/26(Fri) 18時半頃
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[舌を絡ませ、黒に触れ、思い出す。
唾液の甘さ。
受け入れる絶望。
弄ばれる悦び。
抗う感情と堕ちる身体が鬩ぐ。
そして狡猾に、自らに対して理由を差し出すのだ。
"望まれたから従うしかない"のだと。]
[布団の上では決して無い感触の上に腰掛け、おずおずと足を広げる。
恥らいと共にあるもう一つの自分から目を背けながら。]
……丁を、躾けてくださいませ、花主様。
[着物を肌蹴けさせ。
萎えぬ中心を見せるよう腰を浮かせ。
笑みを削ぎ落とすかのように、切なげな貌が媚を吐く。]
丁助は、櫻子を思う存分もふった
lalan 2014/09/26(Fri) 20時頃
[今に還るは、強請る声。
自分を躾けろと足開く姿。
そこに咲く色は、朱。
揺れくゆる、焔。]
お前は、“丁”。
私の可愛い、“ちょう”。
[狡猾に理由を差し出しては
色を重ねているのだと言い聞かす。
そこにある色が別と分かりながら。
二度と狂い咲かぬよう。]
[懐から取り出すは、豪奢な万年筆。
丸みを帯びた細い棒。
先端汚した蜜を絡めとり、
開かれた足の奥へと滑り込ませ。]
さあ、自分で動かしてごらん。
ほぐすついでだ、できるだろう?
お前が飲み込むそれは
私が普段使っているものだよ?
ペン一本、すぐに飲み込むはしたなさよ。
中はどんなふうに締め付けている?
[言葉で詰り、行為で嬲り。
自らで動かせと手を離す。]
お前が自ら欲しいというまでだ。
見ていてあげよう。
私の可愛い―――…
[身体は花の所業に染まり、抵抗無く細いものを飲み込んだ。
白に濡れた先端は、面白いほどに滑る。
与えられた其れを握り、くちりくちりと淫音を奏で。]
形……を、覚えるよう、に。
ナカ、が、ッ……
きゅうと、なって……
[自らの身体を知る指先が、刺激を求め揺れ動く。
はしたなく、快楽に浸るべく。
嬌声を滲ませながら。]
っ……
嫌だ、嫌です、足りません……
このようなものでは、もう。
[満足できぬ身体なのです。
堪え切れずに、根を上げるのは、きっとすぐの事。
再び熱をもたげる雄から、とろりと蜜を滴らせ。
まるで涙のように。
認め、腕を伸ばし、求めたのは、――。]
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花主さ、ま……
[お前は誰も見ていない、と告げた宵闇の声。
繕った仮面の奥で、本心を隠し、傷付かぬようにと笑むばかりで。 そんな己に、誰を愛することが出来ようか。
何を好きになっても、何を嫌いに思っても、苦手に思っても構わない。 感情を否定しない己こそが、嫌われぬようもがくばかりの哀れな枯れ花なのだと。
花籠の外にさえ出ることが出来れば、何もかもを零からやり直せると。
信じていたかったのは、甘すぎた子供のような理想。]
(130) lalan 2014/09/26(Fri) 22時半頃
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花主、様……ッ。
[本当は理解していた。
理解して、見ない振りをしていた。
花に求めるものが"男を受け入れ悦ぶ事"だったと。 其れを求めてしまうほど、自らが逃れられぬほどに、低俗な花らしくあったこと。
同じ花である者たちを眺め、彼らのような強さに嫉妬していたこと。
"ちょう"のように、生きてみたかったこと。]
(131) lalan 2014/09/26(Fri) 22時半頃
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花、主、さま。
[造花の振りをして居たかった。
そうでなくては、寂しくて。
"誰に言われず、誰に愛でられず、誰の目にも留まらず"
花は、潰れてしまいそうだったから。]
(132) lalan 2014/09/26(Fri) 22時半頃
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――…。
[闇に誘われるのは、歪な劣情。 嫌がらせをして縫い止めた、独り善がりの錆びた楔。
飛べぬ沈丁花は蒲公英を夢見、白い蝶と交わしたたった一つの約束は、遥か彼方。*]
(133) lalan 2014/09/26(Fri) 22時半頃
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[ けれど、僕は あの御方に逢うことが出来たのです。 ]
おかあさんのように
ぼくを
おいて、おいていかないで。
いいこにするから
わらっているから
なかないから。
はしたない、淫らな“ちょう”よ。
十分喜んでいるというのに、足らんと言うかい?
欲張りなものだねえ。
[嬌声滲ませ揺れ動く体。
痴態を晒す、焔花。
中を犯すは人の熱でなく、
無機質で冷ややかな万年筆。
男はゆらりと立ち上がる。
蝶が花を買い付けに訪れたなら
その秘所晒すように言いつけよう。
時には指先で溢れる蜜を掬い上げ。
喚く口の中へと運んでやろう。]
[知っている。
重ねる色が違うこと。
知っている。
造花の振りを望むこと。
―――“私”と“お前”は背中合わせ。
向かい合うことなど在りはしない。
あってはならない。
“ちょう”になりたい男と。
“花主”たる男なのだから。]
―――おいで、丁助。
[おいでと言いながら。
圧し入る熱は硬く。
初日花開かせたのと同じよう。
否、それよりも荒さは増そう。]
丁助。
[耳に落とす冷たい声。
氷の微笑は、歪んだ想い。]
“ちょう”。
[重ね合わせてすり合わせ。
穿ち貫いては、内へと爆ぜる。]
[雁字搦めの錆びた楔。
幾度も打ちつけ。
花を *手折る*]
あゝ。
煩わしさなんて、滅相もありません。
『花』でいられると謂うのなら。
僕はなんでもいたしましょう。
[その時の僕はどんな顔をしていたのでしょう。]
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