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[今宵は二輪が共に買われているのかと
心のどこかで、そう思っておりました。
聞こえぬフリをしていても、耳には否にも届くのでございます。
お優しい藤の花が、辱められているのでしょう。
麗しい朧の花が、甚振られているのでしょう。
揺れる焔の花は、遠くに身を委ねているのでしょうか。
綻ぶ淡藤の花は、求められるまま咲いているのでしょうか。
───裡に渦巻くものから眸を逸らし。
僕は金糸雀の唄に、耳を傾けるのです。]
朧、お願い……もう……
[小さく、願う様に囁く声は涙と色に濡れ
彼にこんなことをさせてしまっているのだと自覚すればぱらぱらと汗に混じり雫が頬を伝った]
【人】 半の目 丁助 いいえ、どういたしまして。 (178) 2014/09/16(Tue) 01時頃 |
―――坊やの悪趣味に比べちゃ、俺なんぞ可愛いもんよな。
[喉を震わせた独り言を聞くものは居ない。
ただ、と思案巡らせ、瞳を微かに揺らした。]
あれもつくづく、面白い坊やだ。
[溜息のような感嘆は、男にしては珍しい他者への興味。
花籠の外に向ける視線は、久しく。
過ぎった感覚を自覚すれば、
笑気一つ零して、夜に再び身を浸した。**]
[ごめんなさい、と
唇は涙浮かべた子供の様に震えながら言葉を紡いだ]
[隣より聞こえるは、激しさを表す声でありました。
肌の打ち合う音も、粘膜擦れる水音も。
やがては明瞭でない嬌声が、弾ける瞬間を伝えたでしょう
見えぬはずの涙の音が、此方へ届いた気さえします。
他の牢でもきっと、花々は咲き乱れているはずです。
此処はそういう場所なのですから。
そしてそれが僕たち『花』の、『しあわせ』であるはずなのです。]
[僕の戯れのような接吻けに、頬を染めた銀花も
誰ぞ彼の腕の中、咲き誇っているのでしょうか。
丸窓からちらりとだけ、月の端が見えました。
「月が欠ける前に」などという言葉を
不意に僕は思い出し
傾く月を眺めては、彼の『花』の行く末を想うのです。]
あなたは、いま。
『しあわせ』ですか?
[尋ねる事が出来たのは、亀吉さんだけでありました。
丁助さんには、寸でのところで訊くのを躊躇ってしまいました。
朧さんに訊けば、叱られてしまうでしょうか。
藤之助さんに訊けば、困らせてしまうでしょうか。
他の花たちにも、訊きたくとも訊けないでしょう。
どうして、訊けないのでしょう?
何故、訊けないのでしょう?
わからないまま、僕はいつであろうとこう答えるのです。]
僕は『しあわせ』です、───と。
【人】 半の目 丁助 っ、……は。 (196) 2014/09/16(Tue) 05時頃 |
【人】 半の目 丁助[そろりと彼の腰へ手を伸ばす。 (197) 2014/09/16(Tue) 05時頃 |
──幸せとは、こんなにも胸が苦しいことなのですか。
[“教えて下さい”
闇世の中、音にさえならなかった吐息が小さく反響しては、消える。]
僕は『しあわせ』です。
[何時の時もそう答えましょう。
何方さまにもそう応えましょう。
胸が苦しいなど、僕にはわからぬ想いなのです。
朽ちた花の行く末を知ればこそ。
その毒に囚われてはならないと。]
[櫻は誠の『しあわせ』に、まだ散るを知りません。
咲いてさえ、いないのですから。]
‘Tis better to have loved and lost
than never to have loved at all.
[この感情をどう表せばいいのか。
腹の辺りに渦巻くこれを。
怒りか、呆れか、それとも悲しみか、羞恥か。
『花』として誇りを持ち、美しく咲き誇れ。
俺を育てた花は口癖のように言っていた。
どんな辱めを受けようとも、どのような思いをしても蝶を惑わせる花であれ。
その言葉を道標に、今まで歩んできたはずなのに。]
――……
[ごめんなさい、朧
と。蝶の言葉により友の貌を伝える際に小さく告げる
命によりその怜悧な顔を穢し、なおも言葉で責めねばならぬ事への謝罪と、それでも目を逸らせぬことへの懺悔であった]
【人】 半の目 丁助 ……そう、ですが。 (253) 2014/09/17(Wed) 00時頃 |
【人】 半の目 丁助[やがて解れた其処を拡げ、丁の上へと蝶を導く事ができたなら、言葉にした通りに出来る限りの気遣いを持って、沈めて行く事になる。 (254) 2014/09/17(Wed) 00時頃 |
[こんな、ゆめものがたりが誠であれば
所謂『しあわせ』というものなのでしょう。
ですが、なりません。
『特別』になることも
『特別』をもつことも
『花』には許されざるべきことなのです。]
[僕たちに許されているのは、ただひとつ。
『花』として咲く。
ただ、それだけなのでございます。]
[――朧、朧
声ならぬ声で彼を呼ぶ
そんな顔をしないでと虚空を見つめる彼の頬
友にだけは、こんなに泣き濡れた姿を見せたくなかった
失望されたくないんだ、と]
――――退屈だよ。
愛しい愛しい吾が子達。
お勤め、ご苦労様。
夢を売り売り、躯を売って。
せっせと借金返しておくれ。
いやいや、返せなくとも構わないんだよ。
花咲く内は、私が愛でていてあげるからね?
[どうせいつかは枯れる花なれば。
月下の元 夢に揺蕩うことは許されよう。
押し潰した筈の芽は 結局は小さく蕾を芽吹かせた。
けれども孰れ摘み取られてしまうのだから。
蜜濃くなるその一瞬だけでも。
『花』として、『蝶』を望む]
[花しかしらぬ男の一面。
笑い、嗤っては、今宵の対価をばら撒いていく。
地下牢に舞うのは紙幣の花吹雪。
花弁の枚数が、今夜支払われた対価。
さあ拾えと、男は花々を見下した。
歪んだ唇に滲むのは、狂気の沙汰であっただろう。]
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