151 雪に沈む村
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お針子 ジリヤは、メモを貼った。
2013/11/24(Sun) 02時頃
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―回想・工房―
[ソフィアが財布を取りに戻る少し前。 新たに工房に訪れたのは、先ほど行方を気にしていた龍族の青年だった>>2:79]
あらドナルド、ご機嫌よう。 丁度いいところにいらしたのね、ウォーレンと火種の件でお話をしたところだったのよ。
[空いた場所を探して腰を下ろした彼へと、歓迎の言葉と笑顔を向ける。 『火種の件』とだけ説明すれば、毎冬の事だ。彼には何の話か伝わるに違いない]
もうじき、村は雪に沈んでしまうでしょう? その前に、ひと仕事しておかなければと思って。
[探す手間が省けたわ、と少しだけ悪戯っぽい光を瞳に宿した]
(28) 2013/11/25(Mon) 03時半頃
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折角、偶然とはいえ私達二人が揃ったのですもの。 『火種』を提供していただいてもいいかしら?
[訪ねてきたばかりの彼には性急すぎる申し出だけれど、うっかり忘れてしまっては事である。 ドリュアスの催促に、ドナルドは快く応じてくれた>>3:89 彼の指先で踊る紅い炎を見遣れば、いつ見ても見事ねぇ、としみじみと感心せざるを得ない。
ドリュアスたるジリヤは、植物に属する者だ。 その性質上、炎を扱う魔法は不得手だった。 全く使えないわけではないが、ジリヤが生み出す炎は弱々しく、辛うじて火の形を保っているような代物に過ぎない。
一方、彼は浄火の炎を宿した紅蓮龍である。 そのひと吹きで、指先に揺らめく炎を生み出す事ができる。 炎の性質自体も、ジリヤが扱うそれとは雲泥の差だ。 力強く、絶え間なく形を変えて踊り続けるそれは、生命力に満ち溢れたサラマンダーそのもののようだった。 目にも鮮やかな炎の舞いに、どうしても目が引き寄せられる]
(29) 2013/11/25(Mon) 03時半頃
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有難う、それでは次は私の番ね。
[ドナルドへ微笑んで感謝を口にしてから、彼の指先に揺らめく火種を譲り受けた。 水を掬うようにして掌で炎を掬い取ると、炎が直接肌を焼く事がないように透ける魔法の膜で覆う。
そうしてから、先ほどと同じように炎を両手で包み込んだ。 クシャミのチャームに込めたのは、魔除けと加護の魔法。
――けれど、今度掛ける魔法はそれとは別種のものだ。
目を伏せ、意識を集中する。 村を雪に沈める長い冬の間、炎が絶えることのないように。 つい先ほど生まれたばかりの、この力強く鮮やかな炎が、いつまでもこの荒々しさを保っていられるように。
再び仄かな燐光をまといつつ、編み上げた魔法を炎に被せた。 上に被せた左手をそっと避けると、生き物のように揺らぐ炎が、一度だけぼっと激しく燃え上がる。 空中に火の粉を撒き散らし、ひときわ鮮やかな舞いを見せた炎が元の小さな火の塊に収まると、その周囲を囲むように球状の半透明な枠が生じた]
(30) 2013/11/25(Mon) 03時半頃
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はい、これで出来上がりよ。
[完成した火種をウォーレンの方へと差し出して、にっこりと微笑んでみせる。 傍目には、中に小さな炎を閉じ込めた球状のケースのように見えるが、炎を覆う枠は魔力の層だ。
暴れる炎が、枠を超えて他の物を燃やし尽くそうとしないように。 触れたもの全てを、炎が焼いてしまわないように。
魔力で作られた覆いは、そうした目的のためだけに働きかける。 外部から枠の内側の炎に接触する事を妨げはしないし、望めば枠の中に差し込んだ木の枝などに、炎を燃え移らせる事も可能である]
なんとか間に合って良かったわ。 やっぱり、古いものよりは新しいものの方が確実だし、炎の鮮やかさも段違いなんですもの。
[冬越えするための火種は、新たに作るに限る。 しみじみとした感想をこぼしていると、何度目になるか判らないノックの音がした**]
(31) 2013/11/25(Mon) 03時半頃
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お針子 ジリヤは、メモを貼った。
2013/11/25(Mon) 03時半頃
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―回想・工房―
あらまぁ、今日は本当に来客が……
[多いわねぇ。 ウォーレンが出迎えた相手の姿を見て、続けるはずの言葉が宙に浮いた。 おろおろとウォーレンに何事か相談しているのは、ブランフォート家の爺やさんだ>>3:66 その慌てた様子と、姿の見えないお嬢様を思い浮かべ、目をゆっくりと瞬かせた]
……あらあら。
[口元に手を当てたのは、どんな事態が起きているのか想像ができたから。 お嬢様の冒険譚を聞いてみたいものだと、好奇心が胸の内で踊った。 流石に、顔に出すのは爺やさんがお気の毒なので控えたけれど]
(34) 2013/11/25(Mon) 22時頃
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[お気の毒な爺やが再び雪舞う村へと姿を消してから少し後。 工房の外から控えめに掛けられた声は、先ほど思い浮かべたばかりのお嬢様のものだった>>3:54]
爺やさん、いらっしゃるのが少し早すぎたわねぇ。
[誰にともなく独白して、くすりと口元を綻ばせる。 本人達は大真面目なのだろうが、傍観者の立場からするとこの追いかけっこは可愛らしく微笑ましいものだ。 冬の訪れを前にすると、こうしたささやかな日常の風景すらも尊く思える]
まぁアリス、こんにちは。 ご機嫌はいかが?
[工房を覗くアリスへと、おっとりした挨拶を掛けた]
(35) 2013/11/25(Mon) 22時頃
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[アリスがクシャミに雪玉を投げつけたのには、少しだけ驚いた顔をする。 けれど、その後に続く応酬はまた随分と可愛らしいもので]
まぁ、ウォーレン。 大事なかったのですもの、これから気をつけて貰えばいいじゃない。
[大きな声で叱りつけるウォーレン>>3:68に、つい取りなすような声を掛けた。 続くお嬢様の脱走劇と、ウォーレンの苦笑いにはクスクスと声を立てて笑う。
しばしそうして平和な風景を心ゆくまで眺めてから、去りゆく二人を見送った]
本当に、若い子って可愛いわねぇ……!
[感極まって零した呟きが非常に年寄り臭いのには、目を瞑っていただきたいものである]
(36) 2013/11/25(Mon) 22時頃
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[やがて工房を辞したのは、財布を取りに向かったソフィアが戻ってから。 去り際に告げられたウォーレンの遠まわしな誘いには、実は私達もなのよと笑って応じてみたりして。 もしこれから向かうならご一緒にいかが、と気取った口調で誘い返した。
ピエールの店へ向かう道すがら、自宅近くにお嬢様と爺やさんを見つければ、お店に寄って髪飾り選びに喜んでお付き合いしただろう。 彼女が脱走後の時間をどんな風に過ごしたのか、爺やさんに内緒でこっそり冒険譚も催促した。
その後のピエールのお店では、気のいい料理人の料理に舌鼓を打ちながら、再び賑やかな時間を過ごす。 話し上手のピエールは、きっと食事の席の談笑を楽しいものにしてくれただろう。
――村が雪に沈む前の、貴重な数日間。 初雪がちらついたその日を、ジリヤはそんな風にして過ごしたのだった*]
(37) 2013/11/25(Mon) 22時頃
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ご老体。世話になった。
[改めて素の口調でオセローに朝食の礼を言う。そうしなければ気が済まなかった。
“カルヴィン”は礼儀を欠いた子供だが、ピーターは筋を通す男だ]
また――
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