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ラルフ! 今日がお前の命日だ!
[ラルフが見上げた天井に――ゆっくりと広がる、赤。それは誰かの血だっただろうか]
ああ――。ようこそ。ラルフ様?
どうやら此度の招待状はわらわが出したものが届いたようじゃな。
もう一方はベネット様か。永眠をお望みのように見受けられたが、よき夢には――まどろめたかや?
[声に重なって含み笑いが響いた]
どちらから、と問われるか。
まぁ…上からかのぅ。多分。
ああ、姿かたちはよりしろの小娘のものゆえ、あまり気にせぬことよ。
わらわの名前、は――なんじゃったかの。ヒメ、と呼ばれた事はあったかもしれぬな。
まぁまぁ、ゆるりとするがよい。こちらから生者の動向を見守るも、なかなか無い余興になろう。
おお?
ほうほう、これは面白い、煙のカタシロか?
そうじゃのぅ。寒いからのぅ。うっかり寝てしまうとどうなってしまうかわからんものよの。
[楽しげな声がベネットの周りを踊った]
[ゆらゆらと揺らぎながら、ラルフには答える]
うむうむ。そうじゃな、所謂幽霊は実在する。
今やおぬしもその仲間じゃな。
ほほ、楽しく遊ぼうではないか。
火だけは絶やさぬようにせねばのぅ。
寒いからのぅ。ほほほ。
[声はまた、煙とも踊る]
ああ、そうそう、その顔じゃ。その声じゃ。
[にやり――という形容すらまだ安らかであるかのように、ラルフの様子を見て、口の端がつりあがる笑みを浮かべた]
皆、頭が良いのじゃのぅ、中々怖がってくれなんだが。ほほ。
頭が良いと、そこに気づく事ができるよのぅ。
どうじゃな?『自分の身体を鏡以外で見た』という気持ちは。
じゃから、ぬし様はわらわたちのオトモダチになったのじゃよ。
ふふふ!
あらあら。そう睨まないでくりゃれ。
ふふ。そうそう。わらわを例え消滅させたとて、ぬし様が生き返るわけでなし。
これからまだまだ呼んでこれるのじゃから、ここでゆるりとなさるがよいぞ?
死んでも、きれいさっぱり何もかも、と言う事は――ほとんどないようじゃの。ふふ。
[煙と踊る声は応える]
そうじゃな、わらわは楽しい仲間を増やしたいしのぅ。
ナカマも、全員分の招待状を用意してとてもやる気であったからのぅ。
わらわが見破られて捕まらぬ限りは、皆分け隔てなく招待してあげたいのぅ。
幽霊もこれはこれで便利じゃぞ。
行きたい所に、好きなように移動できるでな。
ふむ――? さて、どうであろうなぁ。
難しい事はわからぬよ。わらわには、な。
[ラルフの呟きに、笑みを絶やさず答えていた]
ほほぅ。それはまた良い名前をお持ちだったのじゃのぅ。
どうやらぬしの書いた本とわらわ達のやっていることがだだ被りらしいが…。さてさて、どこまでこの偶然は続いてくれるかのぅ。
さて――次はナカマの希望を通してあげたいわらわでもあるのぅ。
一番いい招待客を頼みたいところよの。
ぬしがラルフでよいのではないかなぁ。
なに、いずれ名前などどうでもよくなるとも。わらわのようにな。
あらあら。あんなに取り乱しちゃって。
やっぱり仲の良いお友達が死ぬと違うのかしら。
[薄く笑う]
挨拶が遅くなってごめんなさい?
この子、思い出したように抵抗するものだから。
ようやくこっちも賑やかになりそうね。
折角招待してあげたのに管理人さん達喋ってもくれないんだもの。
招待状は全員分用意されてるから、そんなに焦って送らなくても大丈夫よ。イアンさん。
それとも実はやりたかったのかしら。
相方が恐怖を感じてないと不満そうだけども… 怖いのを怒りに振り替えて誤魔化しているように見えるわね。
目に見えない犯人より目の前にいる誰か。
盛り上がってはきたけどまだ真面目っ子が多くてつまんない。
あのまま、これから皆さんに殺し合いをしてもらいますでもよかったのに。
死んだ感想ねえ… ラルフさんはあったのかしら。
感想は?
さて、そろそろ次を決めないといけないわ。
男性を2人だったから次は女性にしようかしら・・・?
退屈ね。
することもない。愉しみもない。
時間が無限にあってもなーんにもできない。
そもそもコレだけやってるのに存在に気付いてすらもらえてないわけ。
ガン無視されるのが一番嫌よね。
前の時はもっと騒ぐ人が多かった気はするわね。
イアンさんみたいな人が勢い余って本当に殺してしまったり?
幽霊になる方法も知らないけど、幽霊になってから成仏って言うのかしら? そういう方法も知らないしね。
誰も迎えになんて来なかったわよ。案外、みんなそうなんじゃないの。
こういうペンションで… 貴方たちみたいなナンパな大学生に襲われて殺されたの。
あら信じた? 冗談よ。
覚えてないわ。そんな昔の話。
ふぅ。わらわのヨリシロ、あっさりと意識を手放すもんじゃのぅ。
まぁ特等席で面白いモノが見れたからよしとするかの。
ナカマも戻ったようじゃな。
ほほ。此度はぬしの希望で招待客を選ぶとよいと思うのじゃ。
前回わらわの希望で通ってしまったからのぅ。
幽霊って時間感覚が結構曖昧なのよね。
どのくらい時間が経ったのかってわかんないの。
だから年齢も良く分からない… 覚えてるのは、死んだ時は10代後半だったはずってくらいね。
さあ? 神様が本当にいるなら効くんじゃないの。
それで昇天できれば退屈からも解放されるし、試してみる?
聖書? ああ、伴天連の経典かや。
さてのぅ。わらわには別にあの本があったとて苦しむ事は無いが…。
信仰は結局、心の力を増すものじゃからのぅ。
もしかしたら、そこから本当に力を得てしまうものもおるやもしれんな。何といったか、『信じる物は救われる』じゃったかな?
銃が欲しいって。やっぱ変ね、こいつら。
そんなに殺し合いがしたいのかしら。
イアンと言ったかのぅ。別に拭いてやってくれてもよいのじゃがな。
このヨリシロもさほど憎からず思っておるようじゃぞ?
ほほ。よい性格をしておるようじゃがな。
しかしイアンの大暴れを危険とみなすものが多いようじゃなぁ。
その割には、この小娘がかつがれていても、誰も危険とは思わないようじゃな。ほほ。不思議不思議。
なんだかんだゆって自分が一番大事なんじゃないのかしら?
武装して殺し合いを始めてくれるなら手間が省けるし、止めることもないんだけど。
銃ではわらわたちをどうにかできるわけではないからのぅ。
とはいえ、ヨリシロを壊されてしまうと、次の憑依先を見つけるまでは、現実に干渉する触媒がなくなってしまうでな。
あまり物騒なものは持って欲しくないが、いやはや。
殺られる前に殺るという考えでは、自滅してしまうのではないかのぅ…ふふふ。
わらわ達以外の死人が増える分には、お客様が増えるだけじゃから、嬉しいことであるがのぅ。
あら残念ね。
ふふふ。でも、何かその気になっているみたい?
オスカーさんは違うのかもしれないわ。
不寝番の片方が死んでたらどうするつもりなのかしら?
生きているもの同士は信じたいものじゃろうからのぅ。
生きるためならどんな手段でも取ろうとすることは、悪い事ではなかろうと、わらわは楽しく思うぞ。ふふふ。
であろ。本自体にそんな力があるわけではないのじゃよ。
まぁ、わらわたちもぬし様も、実際に触れることができているわけではないから、というのもあるかもしれぬがな!
[ラルフの呟きに、ころころと笑った]
んふん。やはりぬし様もそう思うか?
見えないところでばかりご招待してしまったのもいけなかったかのぅ。
まぁ――逃げても無駄、と言いたかったのでこれはこれで仕方なかったのじゃがな。
[ラルフの言葉に、にやりとした笑みを浮かべる気配をさせた]
不寝番の片方が死んでいたら――そりゃあもう一人は疑われるじゃろうなぁ。
不寝番をしそうな彼を、ぬしも招待したいかや?
[メアリー(?)にはそう尋ねる]
今日は女の子にしようかなと思ったんだけど…。
彼にしようかしら?
一番、明日が面白くなりそうなのは… 彼なのよね。
決まりね。今日の招待状はドナルドさんに出すことにするわ。
明日の皆の顔に期待しましょう。
んふん。彼じゃな。よいのではないかな。
アイリスといったかな、あの子をお呼びして、残った彼の顔を見るのもぞくぞくしたやもしれんが、一番混乱は起きそうじゃのぅ。
[くるん、首だけをラルフの方にむけて]
ぬし様はでも男ばかりこちらにご招待するより、女の子の方がいいなあとかは無いかや?
お客様のご希望も容れていこうかなと思うわらわは次のためにもアンケートを催すのじゃぞ。
おやおや。これは嬉しい事を言ってくれるのぅ、ぬし様は。
ほほほ。そうよな。
わらわもこんな言葉を使うが、果たして生前本当に女だったのかどうか、もはや記憶もあいまいじゃからのぅ。
[そう嘯く。やはりどこか陽気であった]
今度は自殺? 招待状は全員分あるのに気が早いわね。
あの娘の雰囲気、確かにたまに来る自殺志願者のソレに似ておったからのぅ…。
この状況に、心が後押しされてしまったのやもしれぬな。
ヨリシロの小娘ががんばるかもしれぬが――生き延びるかは、当人の心次第…死にたがる者を止める事も無いのは確かじゃのぅ。
まあ… 遅いか早いかだし、来たいなら好きにすればいいけど…。
手に最初からあった痕といい、発見された時の状況といいそんな感じよね。
そういえば何かで凍死は一番楽な死にかただと読んだことあったわ。
生きてる人はわからないもの。
死は最期の救済だなんて誰が言ったものやら…。
ふふ。そうじゃの。
なくなったりはできぬよ。特に自殺はな。
今までもたくさんの自殺者が、がっかりしてそのまま自縛霊となっていったわ。
凍死は眠ってしまえばエレベーターじゃからのぅ。
ただ本気で寒いのは痛いと思うがのぅ。
冬山の谷間はなかなか賑やかじゃぞ。
やつら、死んだばかりで集まると何故か不幸自慢をはじめるからのぅ。
…ま、誰かに聞いて欲しかったんじゃろうな。
死ぬと寂しいからのぅ。だからわらわ達もこうして遊び相手をさそっとるわけじゃし。な。
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