298 終わらない僕らの夏休み!
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─9月1日深夜・叶い橋─
[皆や会堂と別れた祭りの夜、浴衣姿で橋の欄干に腰を下ろし、根良伊川の水面を覗き込む。
燻り続ける炎に炙られた思考は曖昧に掠れつつある。
嗚呼、この町の時間が巻き戻る瞬間が近付いているのだ。
時折橋脚に纏わり付くようにして渦巻く水の飛沫が、燃え上がる女の纏った焔に煌めいてチカチカと光るのを半ばぼんやりと眺めながら、浴衣の懐から一通の封筒を取り出した。]
[何度渡そうかと記し、その度に書き損じてはあきらめきれずに仕舞い込んでいた手紙の束は全て処分した。
娘を亡くした母親が机や荷物を整理した時にうっかり未投函のこれらを見つけ出して最後の願いとばかりに彼の元へ届けられてはたまらない───
この先の未来へ進むその背に重たいものなど残しては行きたくないのに。
伝えれば良かったと後悔した事も数えきれない。
それでも悔いる事が出来るのは生きてその先の未来へと己も進める者だけが持つ権利だと思えた。
それでも想いの全てをただ破棄してしまうのは哀しいと最後に記したこれだけは共に去ろうと持ち出して来たのだ。
封筒を開き、一枚ずつ切実に綴られた文字を眺めては、昏い水面へと落として行く。]
『嫌いにならないで』
[書き連ねられた文言の挙句の果ての最後の一文には呆れ笑いに肩を揺らしながら、そう言えば似たようなメッセージを送り付けた、と結局同じ事を繰り返した日の己を小さく鼻を鳴らして嗤った。
否、こうして繰り返した日々もまた死に際した己の都合の良い夢だったのかもしれないけれど。
最後の一枚を手放す。
ひらひらと風に舞い川面へ落ちて行く紙片を目で追う内にぐらり、と体が傾いで己もまた水面へと崩れ落ちる。
9月1日に託した願いを叶える事の叶わなかった燃え盛る亡者は、然し満足げに笑みを浮かべて水底に降り積もるいくつもの願いの上に溶け零れるように姿を消した。
苛まれ続けた痛みも熱も、憂いも悔いも既に無い。
後は川面にちかちかと瞬く星々の明かりが映るばかりだった───**]
[ひとりっ子だった。
けど、近くに住むふたつ上の姉貴分は、本当に本当のお姉ちゃんみたいで、口に出しては言わなかったけど、ずっと拠り所のひとつだった。
中学に入った時そうだったように、レイ姉のいる学校に入学する。
残り半分の中学生活を捨てる代わりに、戻ってきて同じ学校に通う。
それはいつも目指す場所で、帰る場所だった。]
[だけどもう、宍井澪はいない。
夏休みを終えたあとの拠り所は、どこにもなくなった。
それがわかったとき、ああ死ぬんだ、って思った。
帰る場所、目指すところが"向こう側"になった気がした。]
[ただ、反対に覚悟するだけの時間と思い出ももらったように思う。
こんなに楽しい夏休みは、今までになかった。
少し背伸びした新しい友達ができて、高校生活を先取りしたようだった。
疲れ果てるくらい遊んで、遊んで、遊んで。
それから最後に言葉を交わして、お別れを言った。
この日々が終わる時まで教えてもらった。
だから、覚悟を決めたんだ。]
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― 9月2日:学校・校門 ―
[校門の前にたどり着けば、そこはすでに学生服を着た生徒達で賑わっていた。 だるそうだったり、夏休み中にあったことを話したり、日焼けを比べたり、お土産を渡しあったり。 皆それぞれに校舎へと吸い込まれていき、それで夏が終わる。 昨日の静けさが嘘のようだと思いながら、校門を抜ける。 私の夏はまだ終われていないのかもしれない]
(132) sizu 2019/09/13(Fri) 23時半頃
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― 9月2日:学校・全校集会 ―
[ぼんやりとした意識をはるか遠くへと持っていかれそうになる、校長先生の話。 ただ今回は少しばかり、いやかなり様子が違う。 長いのは変わりないけれど。 休み中の交通事故で亡くなった生徒の話]
[彼女、明加さんとは同学年ではあるけれども、接点はほぼ無いと言っていい。 住む世界が違った、といっても良いくらいだ。 だから、私は彼女の事を何も知らなくて。名字が明加だというのも今知ったぐらいだ。 学校という狭い空間の中ですら交わる事のなかった私と彼女。 だけれど、ひょっとしたら、ほんの少しのきっかけでもあれば交わる事もあったのかもしれない 黙祷をしながら、そんなことを思った]
(133) sizu 2019/09/13(Fri) 23時半頃
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[今度は生徒会長である会堂くんが、壇上で話をしている。 たしか、明加さんと同じクラスなんだっけ。 校長先生の話と同じように通り過ぎていく言葉。 だけど、その一言だけは耳に残った。
『亡くなった人は、戻ってはきません』
胸に熱く痛みが走ったような気がした。 その言葉は当然で、当たり前で、わかりきったことで。 どうしようもなく正論で。 だから私は、その言葉を受け入れるしかない]
(134) sizu 2019/09/13(Fri) 23時半頃
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[気だるげに教室に戻ろうとする人の波が、ふと堰き止められる。 何か騒ぎが起きているようだ。 あれは、二年生の列の方だろう。 聞こえてくるざわめきを拾うと、どうやら明加さんに関する揉め事のようだ。 人の隙間を縫って、その場を立ち去る]
(135) sizu 2019/09/13(Fri) 23時半頃
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― 9月2日:学校・廊下 ―
[お花を摘み終えて、手を拭ったハンカチをしまう。 教室へと足を向ければ、聞こえてくる噂話。 固いものを壁に打ち付けたような音が廊下中に響く]
わかりました、先生に伝えておきます。 出口くんは、昨日生焼けのお肉を食べすぎてお腹を壊したようなので早退しますと。
[昇降口の方へと去っていく背中に、そう返答をした。 彼らはああして、感情を発露することができる。 それを酷く羨ましく思えた]
(136) sizu 2019/09/13(Fri) 23時半頃
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[隣のクラスを覗き込む。 果たさなければならない約束がある気がしたのだ。
『また、学校で』
相手からしてみれば、ただの社交辞令と思われたであろう約束。 私には、それがとても大切なものであるように思えた。 だけど、探す相手は見つからない。 それはそうだ、私自身ですら誰を探しているのかわからないのだから]
(137) sizu 2019/09/13(Fri) 23時半頃
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[そうして入り口から覗いていると、明加さんが所属していたグループの話し声が聞こえてくる。 ああ、そういえばここはヒナコさんのクラスだったっけ。 なら、あの机はヒナコさんが座っていた席か。 しかしなるほど、対象が故人であるかそうでないかに関わらず、ああいったものはやはり気分が良いものではない。 ふと、教室中に聞こえそうなほど大きく饒舌な声が止む。 会堂くんが集団に近づいて、何事かを告げる。 まめな男である彼にしては珍しく、強く突き刺さすような言葉だったように思う。 あ、秋山くんだ。彼は今日も無事元気なようだ]
(138) sizu 2019/09/13(Fri) 23時半頃
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[私には、スクールカーストの頂点に位置するらしい彼女たちの会話を咎める気は起きない。 二年と半分、それまでの事を見過ごして来て、ヒナコさんが対象になったからというのはムシが良すぎるというものだ。 それに、事故にあったのが彼女じゃなくて、その話の対象が彼女じゃなければ、彼女もあの輪の中に加わっていたのだろうと思う。 ただの私の想像だが。 これ以上ここに居ても探し人は見つからない気がする。 そっと、その場を立ち去った]
(139) sizu 2019/09/13(Fri) 23時半頃
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― 9月2日:学校・放課後の廊下 ―
[階段の踊り場から降り廊下へと出て、一人の少女、岸さんとすれ違う。 頭を下げて、挨拶を交わす。 たしか、岸さんは澪ちゃんと仲が良かった気がする。 どこでそう思ったのかはわからないのだけど]
[そんなことを考えつつ口を開こうとすると、岸さんがはっと顔を上げて廊下の奥を見る。 そこには一人の男子の姿。 私には誰かわからないが、岸さんにとっては大切な人なのだろう。 私へ頭を下げた後に男子の元へと駆け出す岸さんを見送る。 邪魔しないように別の場所を通ろうか]
(140) sizu 2019/09/13(Fri) 23時半頃
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― 9月2日:学校・放課後のプール ―
[昨日とは違い、その場所は部活動で賑わっていた。 もちろん皆、水着で泳いでいる。 当然の事だ、普通は水着に着替えず服を着たまま泳いだりなんてしない。 その皆の中に、澪ちゃんの姿が見当たらなかった。 私の姿を見つけた友人が、『昨日はゴメンね。どうしたの?』と寄ってくる。 だから、澪ちゃんの事を聞いてみることにした。 8月の途中から部活に顔を出していなかったこと、今日は連絡なく学校を休んでるらしいことを聞く]
(141) sizu 2019/09/14(Sat) 00時頃
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[そして、『心配なら連絡してみればいいじゃん?喜ぶと思うよ』。 なるほどと思いさっそく、メッセージを送ってみる。 澪ちゃんにメッセージを送るのはいつぶりだろうか、それほど前の事でもないような気もする。 そんなはずはないのに。
『お久しぶりです。お元気ですか』
返信が来ることはなかったけど]
(142) sizu 2019/09/14(Sat) 00時頃
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[『泳いでいかないの?』、平泳ぎの身振りを添えて尋ねられた。 首を横に振る。 今日は水着を持ってきてないから]
(143) sizu 2019/09/14(Sat) 00時頃
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― 9月2日:学校・放課後の図書館 ―
[早く帰って勉強をしなければ、と思いつつも足を運んでしまい、何故か、これまで見向きもしなかった郷土史の棚の前に立つ。 こういうのに興味があっただろうかと一冊手に取り、ページをめくる。 中に書かれていた伝承は、読んだことなどなかったはずのにどうしてかその中身を知っていた]
[せっかく来たのだから一つ勉強でもこなしていくかと、書架を抜ける。 出た先は、図書館の奥の奥。窓際の席。 そこにはやはり、後輩の根岸くんが座っていて本を読んでいる。 軽く二回、人差し指と中指でテーブルを叩く。 そうしてから、頭を下げて挨拶。 そして、颯爽と少し離れた席へと向かうのだった。 今日も暑かったけれど、事前にちゃんと汗を処理したから残り香は以前と同じ、女子高生のフローラルな香りのはずだ]
(144) sizu 2019/09/14(Sat) 00時頃
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― 9月2日:放課後の帰り道 ―
[スーパーに寄って夕食を買った帰り道。 エコバッグの中には、ポテサラとナスの煮びたしに大玉のトマトが一つ。 それと、チョコミントアイス。 バッグを揺らし、歩いていると近所の奥様方に呼び止められる。 頭を下げながら、長くなるな、長くなるな、と心の中で祈る。 私のチョコミントアイスが溶けちゃうでしょうが]
[受験生ということが考慮されてか、予想より早く解放された。 これならチョコミントアイスは軽傷だろう。 聞かされたのは、大須賀さんの家の話。 颯成くんのお話]
(145) sizu 2019/09/14(Sat) 00時頃
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― 9月2日:自宅・夜 ―
[帰ってからは、シャワーを浴びてまず勉強。 その間にご飯が炊けているから、夕食をすます。 改めて勉強をしてから、ゆっくりとお風呂に浸かる]
[パジャマに着替え、湯上りの火照った体をクーラーの効いた部屋の空気がひんやりと冷ます。 さらに、チョコミントアイスで内側からも。 空になったアイスの器をテーブルの隅に置いて、しばしぼーっと]
(146) sizu 2019/09/14(Sat) 00時頃
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[ふと、なんとなく、引き出しを引くと見覚えのある文字が飛び込んできた。 見覚えがあるも何も、長年連れ添ってきた私の字だ。 【私は忘れない】、そう書かれた紙に手を伸ばす。 開くとそれは地図になっていて、そこに書かれている内容は良くわからなくて。 それでも、その蛍光ピンクを引かれた能天気な文字を見ていると、胸が苦しくなって、熱くなって。 紙上に落ちた雫が文字を薄めて歪めてしまわないように、*丁寧に丁寧に拭き取った*]
(147) sizu 2019/09/14(Sat) 00時頃
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[ごぼごぼと喋るあたしはもういない。
彼女がいたら、有難うとこたえたんだろうか。
水風船は、跳ねては水音をたてていた。**]
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― 9月2日:自宅・夜 ―
[ねぇ、やっぱり変だと思わない? 何かあったんだって、9月1日に。 忘れちゃいけないようなことが]
[【私は忘れない】だっけ? そんな風に誓っておきながら、薄情なものだよね。 でも、いいじゃない、しょうがないじゃない。 どうしても思い出せないんだから、さ。 過去に囚われてもしょうがないでしょう。 それも、記憶に残っていない過去に。 ひょっとしたら、辛くて嫌な記憶かもしれないしね。 忘れたことを誰かに責められたとしても、その責められる理由を忘れてるんだしさ]
[え?うるさいって……酷くない? 私は私なんだよ?うるさいのは自業自得じゃない。 ん……【ちゃんと思い出してしまえば忘れたことにはならないでしょ】? そっか、そりゃそうだ]
(179) sizu 2019/09/15(Sun) 20時頃
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― ?年後・9月1日:夏呼駅 ―
[夏も終わり、なんて言われるけど 帰ってくるのはきっかり一年振り。 一年に一度、9月1日に私はこの地を訪れる。 帰省したところで家には基本的に誰も居ないのだから、今日以外に帰ってくる意味は無い。 思い出深くも思い出が薄れてしまったあの夏の後、私は無事志望校に大学に進学した]
[9月3日の夜、眠い目をこすりながら玄関で父を待ち、決意を伝える。 志望校は変更しないけれど、受験する学部を変更したいと。 学校自体は両親の希望をのみ、学部の方は自分の進みたいものにする。 これならば、時間を掛けてでも説得する自信はあった。 が、返ってきたのは『愛海がそうしたいと思って自分で決断したなら、そうしなさい』と言ったもので、とてもとても肩透かしされた気分になる。 ありがたいけど。 母には父から伝えておくとも、言われた。 ちゃんと話すの久しぶりなんじゃないか、この夫婦。 愛があれば大丈夫なのか。そういうもんか]
(180) sizu 2019/09/15(Sun) 20時頃
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[かくして、目的と目標を得ることで受験ノイローゼから開放された私は、それまでの悩みが嘘のように成績がぐんぐん伸び、自分の受験番号が張り出されるのを見上げる事ができた。 今では、【弔いの文化】研究のため各地を歩き回っていたりする。 ……それと、【繰り返し】の伝承なんて言うものもほぼ趣味のように収集していたり]
(181) sizu 2019/09/15(Sun) 20時頃
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― ?年後・9月1日:墓地 ―
[墓前に花を供える。 真新しい花が供えられていたので、私の前にも誰かが来たのだろう。 澪ちゃんの命日はもっと前のはずだ。 だから、そういう事だろう]
[あの、9月1日の事は少しずつだが思い出す事ができている。 日常のほんの些細な出来事や、または調査のため出向いた先なんかで、ふと。 きっかけを見逃さないように気をつけていれば、少しずつ確実に、思い出せる。 一緒に花火をしたり、制服のままプールに飛び込んだり、BBQをした、あの夏の事。 それでもまだ、全てを思い出せたわけじゃない。 例えば、澪ちゃんがあの日どんなふうに未練を果たして、どんな結末だったのか、とか]
[墓前で手を合わせる、なんてことはしなかった。 それをここでしても、届くかどうかなんてわからないから]
(182) sizu 2019/09/15(Sun) 20時頃
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― ?年後・9月1日:とある道端 ―
[目印となる電柱に花を供える。 やはりここにも、真新しい花が供えられている。 毎年のことだ]
[私は彼女の事を知らない。 繰り返しの中で共に過ごした日々のことは少しずつ思い出してはいる。 でも、彼女がどんな気持ちであのグループの中に居続けようとしていたのかとか、どうして事故に合ってしまったのかとか、彼女自身が作る明加家の味とか、私の自撮りどうだったとか、出口くんと会堂くんどっちが好きなのとか、他にも趣味とか色んな事。 逆に、私の事で知りたいことはないか、とか。 全部、私の思い出の中には無いもので、直接彼女から知りたかった事。 もう、それが叶わぬ事だとわかっているけど]
[せめて安らかになんて、そう祈る場所はここじゃない。 ここは、彼女にとって良くない出来事の場所だろうし。 なんて、私の思い込みだけど]
(183) sizu 2019/09/15(Sun) 20時半頃
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― ?年後・9月1日:奏生橋 ―
[高校生だろうか、制服姿の少年少女達が何事かの願いを託し、白い紙を流す。 それを邪魔しないように見届けてから、橋の欄干に身を寄せる。 川面には、学生服でない別の私が居た]
[こうして毎年この時期にこの土地を訪れてたり伝承を収集している理由を尋ねられて、答えたりすると、『君はその過去に囚われているんだよ』、なんて指摘を受けたこともある。 『過去に囚われることなく前に進むことこそが望まれているだろう』とも。 実に失敬な話である。 囚われるなどという受動などではなく、私は自分で望んでそうあろうとしている。 それは私を形作る、一本の芯だ。 それがなければ今の私は無く、忘却する事を受け入れてしまえば、私は私ではなくなってしまう。 そういうものなのだ。 前に進んで、たまに後ろを振り返って、そしてまた前に進む。 すべてをなかったコトにしてただ前に進むことも、過去に囚われ歩みを止めることも、私は拒絶する。 過去も、未来も、そしてもちろん現在も、私は諦めるつもりはない]
(184) sizu 2019/09/15(Sun) 20時半頃
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[二人の少女を象ったお手製のフェルト人形。 我ながら、可愛くできたように思う。 一枚の紙を握らせて、川に流す。 それは一つの誓い。 【私は忘れない】 あの夏は、*私の9月1日はまだ続いている*]
(185) sizu 2019/09/15(Sun) 20時半頃
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