279 【突発R18】Temptation NightPool
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― 二週間前:船着き場 ―
[例年のこととなっている、リゾート諸島でのバカンス。その中でも拠点となるのが、グロリアの経営するスターダイナーホテルだ。夫と共にタラップを降りた私を出迎えたのは、よく見知った娘の姿だった。]
こんにちは、メアリー。
今年も休暇を過ごしに来たわ。
[ハグと共に交わされる頬への口づけ。ナイトプールでの愉しみではそれ以上の事もしていたけれど、どちらもそれを窺わせるような素振りひとつ、出しはしない。それは夫もまた同様。深みのある声で再会と健勝な様子を祝う声が聞こえた。]
今年のフロアは、どのような趣向で迎えてくれるのかしら、と。
この時期が来るのを心から楽しみにしていたわ。
[メアリーへ笑いかけて、先導する彼女に続いていく。グロリアの様子を尋ねれば、聞き及んでいた通り溌剌と事業に勤しんでいるとのこと。少しワーカホリックなところがあるんじゃないの、とジョーク混じりに苦笑した。]
バカンスの季節だというのに、毎年こうやって招待してくれるのだもの、彼女。
私たちよりずいぶん若いとはいえ、ねぇ?
[夫を見やると彼もまた、真面目な表情で頷いていた。彼女の羽根は、一体どこまで羽ばたき続けるんだろうね?と。
尤も、それが作った真面目さだということは知っている。クリスマスシーズンになれば、今度は私たち―に限らない、多くの友人達―が彼女を招きたがるのだから。]
ま、そうは言っても。
メアリー達のような娘が、グロリアの元にいるのですから。
働きづめなんて心配は、私たちがする必要もないのかもしれないけれども。
[オーナーを心から信頼する笑顔と共にメアリーが振り返り、頷いた。
それではお車に、と指し示す彼女に従い、リムジンへ乗り込んでいく。
短い距離とはいえ、真夏の暑さの中。冷房のよく効いた車内は快適だった。]
― 二週間前:宿泊フロアにて ―
今年も私は、コンパニオンの子たちを見ていこうかと思うのだけど。
貴方はどうするおつもり?
[これから半月ほど滞在するフロアに落ち着いて、私は夫へそう尋ねた。私にとってのこのバカンスは、実はもう一つの目的のためでもある。人材の目利きに長けたグロリアが、彼女のホテルのコンパニオンとして選び抜いた人物をスカウトしてしまうというのが、それ。
とは、言っても――]
もぅ、諦めたらなんて言わないでよ。
それは確かに、一度も成功してはいないけれど。
[夫が可笑しそうにくつくつと笑う。このスカウト行為はグロリアも了解ずみのこと。だけれど今までに誰一人、スターダイナーを離れてハノンへ移籍しようとする者は居なかった。条件だって間違いなく良いものを提示していても、それ以上にグロリアの人心掌握術は優れているらしい。]
だって、これは賭けごとなのよ。
私が勝つか、グロリアが勝つか。
ハノンとスターダイナーが、とまでいうつもりはないけれど……狙った子と私との勝負でも、あるのだもの。
負ける賭けを楽しむ贅沢だって、一年に一度くらい許してもらったって良いじゃない?
……去年の子は、行けるかなって気もしたんだけどなあ。
[夫の笑みはますます深まって、去年も一昨年も聞いたような気がするよ、と茶々を入れる。
私は頬を膨らませて彼を睨んだ。]
だって、とっても可愛いらしかったのよ。
連れ出した時はおずおずとして、だけど素直に、身も心も委ねてくれて。
貴方は見かけたかしら、クラリッサという娘のこと。
[逃した魚を値踏みする。
大きく見積りすぎないよう修正しても、私たちのホテルにいてくれればどれだけ価値が高まることかと思わずにはいられなかった。]
去年が初めてだって言っていたの。
ほかには二人ほど、採用された中のひとり。
一年目であれだけのスキルを身につけていた子だもの、きっと――
[検討は知らず知らず、過剰なくらいになってしまったようだった。近づいていた夫の手が、軽く私の肩を叩く。
ふぅ、と溜め息を吐いて、私はカウチに腰を落とした。]
……ま、それはもう済んだこと、よね。
クラリッサはナイトプールの後、うちで休暇を過ごしてくれて、リフレッシュして帰っていった。
今までの子達と同じように。
きっとまた今年も、笑顔で迎えてくれるでしょう。
メアリーみたいに、ね。
[これで大丈夫かしら?
そう夫を見上げた。彼は私の何よりの理解者だ。時に感情が行き過ぎそうになる私のことを見守り、こんな風に方向修正してくれる。]
――さ、それじゃあバカンスの過ごし方について。
もう一度確認していきましょうか。
[気分を変えるためにあえて、そう口に出した。
半月余りのバカンス期間。過ごす場所はスターダイナーホテルだけではないのだから。]
グロリアとのディナーの服装も、最後に確かめておきたいし。
貴方の感想も聞いておきたいものね、旦那様?
[ゆっくりと夫が頷きを返す。私たちの今年のバカンスは、そうやって始まりを迎えたのだった。*
― 一週間前:密林のプール ―
[熱帯の木々がひときわ密生したジャングルの中、細い道の先にぽかりと開けた場所があった。周囲の視線から遮られた、隠れ家めいた空間。
そこに設えられているのは長辺10mほどのプールだ。パラソルの影の下、カウチに俯せで寝ころぶ私の姿がこの日、そこにあった。]
――そう、あの二人はミッシェルとノッカというの。
皆、同い年なのかしら?
[振り返って尋ねる先には一人の少女。昨年のナイトプールで私の相手を求めた、クラリッサだ。少し考えるように瞬いて、彼女は答えを返す。]
ミッシェルだけ、ひとつ年上。
そうなんだ。三人とも、仲良さそうね。
[はい、と微笑する声が掛かる。
サンオイルを塗らせる手が私の背中全体に触れて、俯せる元の姿勢に戻った。]
[今日着てきたのは、イエローのビキニの水着。上も下も、留める紐を外してしまって背面全体にオイルを塗るよう指示していた。]
ん。お尻も。
塗り残しなく、お願いね。
[クラリッサはもう、私がナイトプールの後に望んだことを知っている。それを断ったからと言って、何も悪感情を私が持ちはしないことも。だから、独り言のように続けて聞かせた。]
今年は、誰を呼ぼうかしら。
二人のどちらかと、出会えれば。
それも楽しめそうなのだけど。
[一瞬、クラリッサの手の動きが反応した気がする。ハノンへの誘いを、同期の友人が受けた時のことを心配したのだろうか。
私はくすりと笑い声を洩らした。]
どうしたの、クラリッサ。
友達が私に引き抜かれちゃうかもって、心配した?
くすくす、でも一年前の貴女は、ここに戻ってくることを選んだでしょう?
二人も同じように選ぶことは、十分考えられるわね。
[控えめな声が肯定を返す。
最初から負けるつもりで賭けに向かう気は、私にだって無いけれど。必ず勝とうという思いでもないのは、確かなことだった。]
[足の先までクラリッサの手が伝っていった後、私は身を起こす。恥じらい混じりの視線を難なく受けとめて、水着のブラを脇へどけた。]
――ふふ。それも、あんなに何度も『花を贈って』あげたのに。
ううん、でも良いのよ。
それだけ、クラリッサが此処の仕事を気に入っているという事だし。その中でこうやって、貴女のサービスを受けられるんだから。
[客と従業員、というのと、経営者と従業員、というのとでは関わりかたもずいぶん違ってしまうだろうから。ひたりと肌へ触れてくる白い手を見ながら、昨年の一夜へと思いを向け始めた。]
去年は貴女に、こうしてあげたっけ。
時間も場所も、違ってたけど。
[少し赤くなった顔へ、それに塗るものもね、と言い足した。彼女の中でもはっきり記憶されているのだろう、初めてのナイトプールでの最初の行為。くすりと微笑んで、つんと勃ち上がり始めた自分の胸の先を見やり、少女の瞳に誘う視線を送った。]
私に塗り終わったら、今度はクラリッサの番ですから、ね。
あの時みたいに、してあげるから。
オイルはたっぷり塗ってしまって頂戴ね?
[見つめるうち瞳の距離は近づいていく。ついと伸び上がって唇を奪うと、甘い吐息がクラリッサの口から淡く零れた。]
― 一年前:青の入り江 ―
[今年が初めてだというコンパニオンを一人伴って、私はナイトプールの島内を散策していた。先に立つのは私の方。なぜなら、]
夜中にこうやって歩いて回るのは、まだあまりクラリッサにはない経験なのでしょう?
大丈夫、私は慣れているから。
エスコート、させて貰うわね。
[事前にいくらか、リハーサルは受けているとしても。イベント本番は彼女にとって、初めてのことなのだ。]
この洞窟も、夜になると雰囲気が違ってみえるのよね。入ってみましょう?
照明は奥まで、ちゃんと点いているから。
[緊張した様子の少女を連れての目的地はいくつか目星をつけていたけれど、どれも先客が居ることは十分あり得る人気の場所。最初に到着した場所で人の気配がまだ無かったのは、幸運といえただろう。]
[洞窟内の通路を、手を繋いで奥へ進む。淡く柔らかな光は幻想的に辺りを照らし出していた。]
ふふ。すぐに向かったお陰かしら。
私たち二人だけ、みたいね。
[声は壁面に反響して、静かな水の音に溶け込んでいく。何度かカーブする洞窟の一番奥までやがて辿り着くと、広くなった辺りに一機の艀が係留されていた。円形のジャグジーを中央に配置した、この晩のためだけの移動浴槽。幾つかの品々が収められたバッグが、その傍らに置かれている。]
おいでなさいな、クラリッサ。
今夜の楽しみ方を、教えてあげる。
最初に言ったとおり、ね。
[先に私が乗り移って、艀へ招く手を差しだした。上がり込むクラリッサの身体を抱き止めて、そのまま軽く抱きしめてしまう。]
[身を一瞬固く強ばらせ、クラリッサが私を見あげる。緊張を解させるように柔らかく微笑んだ。]
くすくす、驚かせちゃった?
これでも少し、考えたのだけど。
[抱きすくめたまま、近い距離で耳元へ囁く。二人の水着はどちらともワンピースタイプのもので、寄り沿うと密着してしまうかのような感触。水に濡れればその感覚は一層高まるだろう。]
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