162 絶望と後悔と懺悔と
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―城での回想―
忘れないわ。
だって、家族だもの。
[ 忘れられているという理衣の言葉に、
そう言葉を返したのは、淡い輪郭の記憶だ。
いつも目が覚めると消えてしまう、ゆめの記憶]
私とあなたも、家族だから、戦う理由はない。
[感情は遠くにあっても、それは大事なことだった。
なによりも、手放してはいけないものだと知っている。
知っているのに]
……ごめんなさい。
[彼の顔に浮かんだ苦笑、望む答えではなかったのだろう。
痛みのようなものを覚えて、けれどそれはすぐに遠ざかっていった*]
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>>109
は? 何いってやがる。マユミだけじゃねぇだ。
[リーの表情を間近で見た。 それは、サミュエルには泣いているようにも見え…]
おまーのごど、なんで忘れるだよッ! おでは、おまーもあの時消えた連中も!
[だが、次の言葉に頬をヒクつかせた]
なん……だど? おまー……本当は、おでと会いだぐながっだのが?
[孤児院で会えて、嬉しかったと思った。それはリーも同じく思ってくれてると、思っていたのに]
(113) 2014/02/10(Mon) 19時半頃
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サミュエルは、距離をとったあとでも、自身からは切り込めない。
2014/02/10(Mon) 20時頃
―現在―
……わかりました、お姉様。
[ 聞こえた声には従順に応じて]
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好きにいってろよ。
[特別は作らない。作れない。 だから、特別を持っている人へ向けた無意識の羨望]
会いたいわけねぇだろ… こんなんなってまで、さ。 世の中悲観しすぎて人間やめちまったよ、俺は。
[開いた距離。自嘲の笑いが漏れる。 けれど全部自分から望んだ結果だ。 ただ一つ、「生きて帰る」と、流砂の記憶の中に残ったもの]
もうさ。お前を殺す吸血鬼な訳でさ。 殺すか…殺されるか、しかなくってね。
(114) 2014/02/10(Mon) 20時頃
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は?
自分から――…だなんて、どうし―――…
[理依の襟を掴む。
世話役は止めもしない。]
マユミは、理衣たちの戦いの音は、届かぬ場所にある*
2014/02/10(Mon) 20時頃
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―ゆめ―
[胡桃色の髪は夏の日差しに熱をもつ。]
おとうさま! おかあさま!
[仲睦まじく庭を歩く二人を見かけ、男児は履き物を無視して庭に降りて駆け寄った。驚いた顔をして、けれど微笑みを絶やさずに母が抱き止めてくれる。胴を掴んで父が抱え上げてくれる。高くなる視線に男児は喜び。
履き物がなければ怪我をすると叱咤の声に肩を竦ませ。それでも足裏を払う手が優しくて。次は気を付けますと約束をする。
両親の愛情を一身に受けて、男児は育つ。 その『記憶』があるからこそ、孤児院で親からの愛を乞う子供達の痛みに共感し、時には父のように、母のように―――微笑み手を差し伸べた。**]
(115) 2014/02/10(Mon) 20時頃
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―げんじつ―
………おとうさまは?
[『お仕事で出掛けております。』 閉じた障子の前で、使用人の一人を掴まえて問う。答えた人の、その顔に見覚えがなくて。男児は、また人が替わったのだと受け止めた。
夏の日差し。蝉時雨。 裸足のまま庭に出て、下芝の痛みに慌てて草履を履きに戻る。 知らぬ顔の庭師が鋏を動かしていた。伸びた芽をぱちりぱちりと切り落としていく。男児は、また人が替わったのだと受け止めた。 仕事の邪魔をしないように、遠くから眺めることにする。]
……おかあ、さま。 今日、お庭にでたら、上から毛虫が。
[閉じた障子の前で。もぞもぞと動く黒の毛虫を置く。]
(116) 2014/02/10(Mon) 20時頃
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……約束、したから。
生きるか死ぬかなら、生きようと思った。
[死ぬわけにはいかなかった。
こんなになっても。生きて戻ると誰かと約束した。
その約束を果たした後なんて考えもせず
つかまれた襟に、やんわりと押し留めるように手を重ねた]
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さなぎになったら、ちょうちょになるんですって。 これはきあげは? もんしろちょう? それともあげはちょうになるのかな?
……………。
[応える声は、なかった。
夏の日差し。蝉時雨。**]
(117) 2014/02/10(Mon) 20時頃
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―過去:城にて―
[絢糸を幾つも束ねた様な鮮血の流れの中にあって、零瑠は笑みを深くする。
涙を零し、狂ったように嗤うこともあった。
始祖の前で喉笛を自ら掻っ切った事もあった。訓練用の、ただの武器では致命傷にもならず、傷が塞がる身痒さに滑稽に踊らされるだけ。]
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>>114
――……おまー
[そして、言いかけてしばし、絶句する。 人間をやめた。会いたくない。 その言葉に傷つかないわけじゃない だって、そのために、辛い訓練をしてきたんだ………]
おい………
おではおまーに会いたがっだんだど?
[なんでリーはそんなことをいうんだろう? あの時、リーに助けられなかったら、きっとサミュエルはひどい目だけあって、もう生きてなかったかもしれない。 孤児院に入ったあとも、リーの存在は大きくて、 そりゃ、おいてけぼりにされたのは悲しかったけれど、仕方のないことだ。 だって………]
おでは、おまーを一番の友達だどおもっで……
(118) 2014/02/10(Mon) 20時半頃
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[その時、目が熱くなった。 恥だ……。
だけど……]
おでは、おまー、ころさねーがらなッ!!!
[そう言い放つと、また大きく退く。 地に落ちていた九節鞭が息を吹き返したように、その周りで回り始める。 その奥から睨む眼光は、リーを刺すように睨む]
(119) 2014/02/10(Mon) 20時半頃
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今の…ってまさか直円…?
[その男を見たのは一瞬であった。 別れた時から5年もたっている ―でも、そう直感した。
身を屈めるように視界から消えた男を探す。
その時、隙をついてバイクから引きずりおろそうと敵の吸血鬼が腕を伸ばしてきた。]
(120) 2014/02/10(Mon) 20時半頃
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[時は経つ。
食事が不味いと我が儘を言い出した頃のこと。]
………
[唇を肌から離し、全身を染める恍惚に睫毛を震わせ口内に籠った温かな息を吐き出した。頭を僅かに反らして牙を抜く。零れかけた二粒の紅が愛おしく、再び首筋に口付け舌先で受け止め――啜った。
癖の強い胡桃色の髪が金色の合間に交じる。
血が固まりかけ、孔が塞がろうとするのを間近で確かめるまで零瑠は動こうとしなかった。何度も口付け落とすのは、忠誠や従順を示す為か。
固く絞った濡れ手拭いで首の周辺を丁寧に拭い、襟を閉じて1つずつシャツの釦を止めていく。]
これ以上ない褒美を賜り、ありがとうございます。
……お父さ、ま
[血の褒美を与えてくれた主人に、そう呼び掛けたのは幾年が経った頃か。
新しい『家族』であるならそれが自然で。
けれど零瑠の『記憶』の中の『父』との違和に、躊躇う。*]
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―ゆめ―
[買い物籠の豚肉が手に重い。掌は僅かに赤く。 買い忘れがないかとメモを見る。一番最後には『生姜←サミュエルから貰う』とあった。]
ただいま!
[わざとらしい程に大きな音を立てて扉を開ける。ばたばたと何かを隠すような気配。それでも零瑠は気付かない振りをする。]
ただいま、絢矢。無事に帰ってきたよ。
[目線を合わせて絢矢の頭を撫でる。殴られた形跡などない顔を見て、漸く安堵してくれたようだ。]
(121) 2014/02/10(Mon) 20時半頃
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[食事は豚肉のしょうが焼き。 最近流行りの料理があると教えてくれたのは直円だったか。 薄く薄く切った肉は醤油とみりんで艶を増し、生姜の爽やかな風味が舌を喜ばせた。 同時に食卓に並んだのは、金平糖、クリームシュークリーム、そして大きなマシュマロ。などなど。 火鉢を持ってきてマシュマロを焼くと、熔けていく様に歓声が上がった。
橙色の蒸しパンを美味しそうに頬張る幼子達を見て、キャロライナと目を合わせて笑う。人参好きな彼と相談しあった成果だ。]
(122) 2014/02/10(Mon) 20時半頃
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[ささやかな晩餐の後、零瑠は背をぐいぐいと押された。そうして一脚の椅子に座らされる。
はじまりはじまり。>>1:347]
すごいよ、凄い……。嬉しいよ。 みんな、俺の為に―――あり、がと
[泣かないと決めたのに。感動の涙が溢れる。何処か痛いの? と心配げに顔を覗きこんだ少年の、体を抱き締めて首を振った。]
俺はね。いま、嬉しすぎて―――…泣いてるの。痛くない。どこも痛くない。
……大丈夫。
[顔を上げて、皆の顔を見回す。 くしゃくしゃに顔を歪ませて、零瑠は笑う。]
(123) 2014/02/10(Mon) 20時半頃
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みんなのこと、だぁい好きだよっ。
[こうして、都零瑠は14歳の誕生日を迎えた。 13の祝い、12の祝い。
混ざっている事にも気付けず、夢は終わる。**]
(124) 2014/02/10(Mon) 20時半頃
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[手首をつかまれた―鋭い爪が肌に食い込んでくる]
バカッ 人探し中なんだ 邪魔なんだよ!
[吸血鬼のニの腕から切り落とし。 アーミーブーツで思いっきり胸を蹴る]
死んじまいな!
[鋭い刃で撫でるように切りつけるだけで シュウゥゥという息を吐いて鬼は倒れた]
(125) 2014/02/10(Mon) 20時半頃
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うん。俺にもお前は一番の友達だよ。
[その一瞬は昔と同じ笑顔を浮かべた。 生きてまた会うために屈辱の選択をしたんだ]
サミィ。お前が誰かに殺されるくらいなら 俺が殺してやるよ。
[その九節鞭を見て間合いを測り また乾坤圏を構えた]
俺はお前を殺せるよ。 …逃げてくれないなら殺さないといけないからさ。
(126) 2014/02/10(Mon) 20時半頃
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このくらいでやられるなんて雑魚だね これだけの大人だ、きっと指揮してる鬼がいるはず
[辺りをぐるりと見渡す。人間と吸血鬼が血を流しながら入り混じり戦っているその向こう側]
直円にぃ
[間違えようのない顔がいた]
(127) 2014/02/10(Mon) 20時半頃
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うっせえ……。
[そのにやにやわらいは一瞬過去のものと被ったが……]
おでは、お前に殺されでもやんねぇ……。 殺されでたまっがよ!!
[もちろん、その後も自らから、出る真似はしない。 リーが攻撃すればその武器を叩き落とすつもりである。
そののち、ホリーを一瞥すれば、 全力で逃走を図る**]
(128) 2014/02/10(Mon) 21時頃
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―現在・駐屯地端にて―
[彼方此方で闘いの音が聞こえる。 気のせいだと、思い込みだと思おうとしたのに……。
確かな笑みは、零瑠に向けられたもの。零瑠だけに――>>56]
(129) 2014/02/10(Mon) 21時頃
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直円にいちゃーん!
[行方不明といっても、 あの事件で殺されてしまったと思われていた 連れて行かれたとしても餌にされるしかないと聞いていた。 でも生きているかもしれない。直円なら…。 私と違って頭のいい兄ならばきっと逃げて生きているんじゃないか、どこかでそう信じたいと思っていた]
まどかだよ! ねぇ にいちゃん まどかだよ!
[喧騒の向こう側へむかって大きな声で叫ぶ]
(130) 2014/02/10(Mon) 21時頃
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あらあら、逃げるだなんて。
[くすくすと笑いながら見送るが、追撃する気もあまり無かった。 理依を労うように声をかけた。]
お疲れ様、昔の仲間相手に毅然と攻撃する態度。 立派だったわ。
それじゃ、あたしの護衛はもういいわ。 また適当に獲物を探しなさい。
そうね、守護部隊の首でもいくつか取っていらっしゃいよ。
(131) 2014/02/10(Mon) 21時頃
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行くぞ、柊。
[場を変えようと明之進を促す。 もっともっと――…戦わねば。
駆けながら悲鳴を増やす。死体を増やす。助力をと辿り着いた先には――]
(132) 2014/02/10(Mon) 21時頃
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双生児 ホリーは、メモを貼った。
2014/02/10(Mon) 21時頃
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さすが、直円にぃ しっかり逃げてたんだね。
他の子は? まゆちゃんはリッキィは? 明お兄ちゃんも一緒だよね 零露にいちゃんは?理衣君はどこにいるの?
[バイクを置くとするすると戦いの合間を縫い 直円のそばへと駆け寄っていく ――もし、行く手を遮る鬼があれば 容赦なく刀で切り裂き血を浴びながら]
(133) 2014/02/10(Mon) 21時頃
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[その場から走り去ったサミィの後姿を追うこと はない。命じられたのはホリーの護衛であって、追撃じゃない]
…生きててくれた…生きてて……
[ただただそれが嬉しくて 同時に大きすぎる隔たり…人と鬼という関係に涙が滲む。 彼を見て、亡くしたと思っていた感覚がまた戻ってきたようだ。
ホリー>>131を一度睨みつけると、 何もいわずにその場を後にした*]
(134) 2014/02/10(Mon) 21時頃
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